【カオ転三次】終末を約束された世界で心のままに生きていく 作:緋咲虚徹
「行くぜ!星符【
《認証完了、術式展開【
スペルカードの宣言に合わせて、探求ネキからテスト用に貸し出しされた
術式の展開により戦闘フィールドの天井に夜空が現れ、対戦相手としてフィールドに立つペリーヌ目がけて、瞬く星々から放たれた光が降り注ぐ。
「っ!?【スクカジャ】!いきなりですわね!」
「確り勘付いて避ける辺り流石だな!まだまだ行くぜ!」
降り落ちる星形の光に何か感じる事があったのか、スペルカード発動直後に
「仕事以外だとパワー寄りなのは相変わらずですわね!反撃ですわよ【ジオンガ】!」
「命掛かってる
反撃で放たれた電撃に防壁結界がゴリッと削られるのを見つつ、手動操作可能にしている分を動かし、移動先を予測して星を降らせていくが、上手いこと躱していく辺り、やっぱり戦闘でのペリーヌはいつもより思い切りが良い様に思えるな。
今宣言してるスペルカードは、COMPに搭載されてた補助アプリを使い、私の使える【アクア】を素に【マハジオ】、【アギラオ】と属性変換に威力増強を重ね、〝誘導〟の効果を付与した弾を降らせるって物で、対戦相手に誘導する弾と、周辺へ誘導して逃げ道を減らす目的の弾、それに手動で操作可能な弾を加えた感じの術式になっている。
「あーくそっ、やっぱ攻め切れんかったか」
「直撃だけは避けたおかげで、何とかギリギリと言ったところですわよ。これ、直ぐさま次ぎと言うのも、厳しい感じがしますわね……」
「つっても、模擬戦は実戦を想定してやるもんだし、疲れ切ってるからと悪魔が待ってくれるとは限らんからなぁ。特にメシア教の連中」
「……それもそうですわね。継戦能力を鍛えるつもりで、やれる限り頑張りますわ!マリッサ行きますわよ!雷符【
《認証完了、術式展開【
私のスペルカードが攻略されて、戦闘フィールドが基本状態に戻った後、ペリーヌがかなり消耗した事を告げてくる。
パッと見た表面上は、多少煤けている程度で普段ならだいぶ余裕が有る様に思えるところだが、よく見ると肩で息してるのがわかるし、見栄張って普段通りを装ってるだけで、本人が言う様に余裕は殆ど無いんだろう。
まあ、今度は私がその苦労を味わう番な訳だが……。
「おいおい、数が多すぎねぇか?」
「貴女を自由に動かすと確実に防壁が持ちませんもの。まあ私の力量不足で完全とは行きませんが、咲き誇る雷華を攻略してご覧なさいな!」
スペルカードの宣言に合わせて術式が展開され、見える範囲に種々様々な花の形をした雷が咲き乱れる光景が広がる。
しかも、大量に出現した雷の花が一斉に動き出し迫ってくるのだから驚きもする。
「動いてるっつっても、こっちへ直接向かってきてる訳じゃ無いのか?花同士の距離が変わってるようにも見えんし……まてよ?スペル名で迷宮って言ってたよな?……っ!」
花と花の隙間へ滑り込む様にして、迫り来る雷の花を避けつつ攻略方法を探していると、対戦相手を攻撃するためのはずの花の間隔が、一定のまま変化していない事に疑問を感じた瞬間、不意に【ジオ】の直撃を受けた様な衝撃に襲われる。
「ミスった!等間隔の花は雷の道を繋ぐ中継点か!」
気付いて直ぐ【マハアクア】の範囲攻撃で花を壊し、退路を確保しながらの反撃に移るが、無数に展開されている花に当たってペリーヌまで届かなかったり、辛うじて届いたのも手応えが鈍く、防壁結界を上手く削れていない様に感じられる。
「さあ、逆回転行きますわよ」
「30秒経過で変化させたって事は、最大時間の耐久狙いって事か!」
向かって右から左へと動く時計回りから、反時計回りに雷の花が動く方向が変わり、序でとばかりに破壊した花も補充され、気分的には振り出しに戻った様な気にさせられる光景が目に映る。
私の得意な属性的に、コンビを組んでる時は兎も角、対戦相手としては相性が良くないのも有って、有効なダメージに繋がらないのも厳しいところだが。
「さっきのスペルカードを発動した時の感覚的に、行けるか……?」
【マハアクア】で周囲の花を破壊する感覚と、星符【
「【マハラギ】!」
「なっ?!私の雷華を触媒にするなど、器用な真似致しますわね!」
「コンビで行動するのも多かったからな!ペリーヌの霊力と合わせるぐらいなら、今の私でも行けるってこった!」
私の放った水撃が雷の花に触れた際、そのまま魔法の威力で破壊するのではなく、水行から木行、火行へと霊力操作で属性を変化させ、雷の花を呑み込んで勢いを増す火炎の連鎖を作り出し、【マハアクア】で破壊可能な範囲の倍以上を焼き払う。
破壊する範囲の向上と属性的な相性も合わさり、はっきりと分かるレベルで防壁結界の耐久力を削って行くのを感じる。
そうして反撃してる間に30秒が経過したのか、今度は列ごとに時計回りと反時計回りが互い違いになるパターンへ変化し、またもや破壊した花が復活する。
とは言っても、こっちとしてはやることもやれることも変わらないため、ペリーヌの霊力を取り込んでの【マハラギ】で、花と防壁を焼き払い続ける。
「くっ、でも、私の勝ちですわ!」
「げっ!?」
ペリーヌの勝利宣言と同時に、破壊されずに残っていた雷の花が、一斉に弾丸へと形状を変化させたのを見て、警鐘を鳴らす危機感に突き動かされる様に走り出す。
直後に雷の弾丸が私の居た場所で交差する様に発射され、互いにぶつかり合って派手なスパークを轟かせる。
流石に無数の弾丸を全て避ける何てことは出来ず、いくつか直撃を受ける事になったが、一番の驚きは迎撃で咄嗟に放った【アクア】が素通りされた事だろうか。
その性で思った以上に攻撃を受けてしまった訳だし……。
「そこまで、初回はペリーヌの作戦勝ちの様ですね」
「だぁーっ、もうちょいだった気がするんだがなぁ」
「防壁結界を強化出来る様、補助アプリを使って花の配置なども考えましたのに、結果的にはギリギリでしたわ。あの【マハラギ】がもう少し早ければ攻略されてましたわね」
「うげっ、んな細工までしてたのか……」
「花と花の間に雷の通り道を作ってすり抜けを阻止しつつ、雷の通る道で紋様を作り防壁結界の強化術式にした発想が上手く嵌まった感じですね。力量不足と言っていた部分は、最後の弾丸変化を30秒の区切り毎に行う感じですか?」
「それもですが、雷華を破壊した時に打ち返しが出来れば、とも思ってますわ」
「んな事まで考えてたのかよ」
「仕事モードのマリッサなら、これぐらいの対策はしてくるでしょう?そうなると普通に負けるか、良くてどちらも攻略出来ずに引き分けでしたでしょうね。面白みという意味でなら、今回の方がパワーとテクニックの対比になって良いとは思いますが……」
互いにスペルカードを披露し終わり、予定通りにデータの確認や実際にテストした身としての意見などをまとめる時間に入る。
アプリを停止させたCOMPを探求ネキが回収して確認する横で、ペリーヌと感想を話し合いながらまとめ終われば、体力や霊力の回復を兼ねて休憩時間と言う事だし、もう一踏ん張りするとしようかね。
「それにしても、〝どうせなら一晩考えて作ったスペルカードでテストしましょうか〟何て言われた時はどうしたもんかと思ったが、やってみると思ったより楽しかったよな、スペルカード作成」
「補助アプリのおかげな部分も大きいですが、やってみたい事が形になったのは楽しいですわね」
テスターの契約書にサインし後は、メインの目的だと言っていた【非殺傷設定】の安全確認テストだけをさらっと終わらせ、SDアプリ――
そんでもって、今日集まってから早速とSDアプリのテストを行っていたのがさっきまでの状況。
まあ趣味に走った結果として、ペリーヌに負けることになったが、普段は使えない様な火力を出せたし、属性変換のコツみたいなのも掴めたしで、個人的には楽しかったし得たものも大きい感じだな。
「それに、スペルカードで水行から火行まで属性を変化させるのを何度もしたおかげか、触媒有りとは言え自力で【マハアクア】から【マハラギ】を発動出来たし、多分【ジオ】と【アギ】も使える様になってるかもな」
「私の霊力を使って【マハラギ】を発動したのは驚きましたわよ、本当に……。私としては、術の設置や儀式的な使い方を試せたのは良かったですけど、他の術者に利用される危険性や対策に関して、意識が足りてなかったと反省するところですわね」
「ふむ、得られた物や気付けた事が有るなら何よりですね。見た感じまとめ終わってるみたいですが、確認しても?」
「あいよ、確認してくれ。データの確認ってもっと掛かるかと思ったが、そうでも無いんだな」
「こちらもご確認下さい」
「
そこまで時間を掛けたつもりは無いが、どうやらデータの確認は終わっていた様で、丁度書き上がった所感を渡しつつ軽く聞いてみると、どうやら個人のスペックにより短縮された結果らしい。
「覚醒してからは、以前より記憶力が良くなったりしてるのは感じるが、ゲームでも有るまいし、レベルアップで知力が上がったりするのか?」
「私は多少心当たりが有りますわね。フランスに居た頃と、日本へ来て異界に潜る様になった後では、今の方が物覚えも理解力も上がってる気がしますもの」
「学びの園に有る教材の質って部分を抜いての話か?」
「アトリエ式錬金釜からの関連で、量子力学を学び始めて感じた事ですわ」
「レベル15辺りまでは、筋力や動体視力などの方がわかり易く違いが出ますからね。個人毎の適性なども有って一概には言えませんが、レベル20を超えた辺りから、一般的に天才と呼ばれるぐらいの能力を発揮可能になりますね。まあ普通は能力を扱える様に鍛練する必要が有るので、極一部の感覚や感性で動ける人達以外は、レベルが上がるだけで天才になれるって訳でも無いですが」
「そのレベルってのもガイア連合で設定したやつだっけか?」
「ええ、黒札の中でも霊視や見鬼に特化した人の【アナライズ】を基本とした指標で、10の倍数で色々と説明し易く区切る事が出来るのも有って、黒札がレベルと言う場合はコレになりますね。Dレベルとか言う、デモニカが人外ハンターとかの一般連合員にも手を出せる様になって出現した、曖昧な数値なんかも有りますが……」
「そう言えば、黒札の方々はDレベルを嫌悪されてる人の方が多いですわね?」
「まあ無用な混乱と問題を引き起こしてますからねぇ。例えば――」
ガイア連合内での探求ネキがどんな立場に居るのかってのは不明だが、昨日ペリーヌに聞いたところ東京の巌戸台って所で支部長もしているらしく、島一つを拠点として所有して連合員に一部開放もしてるぐらいだし、それなり以上に影響力を持つ立場だろうとは想像付くが、そんな立場でも――いやだからこそか?Dレベルという基準が蔓延したのには、色々と思うところが有るらしい。
そもそもとしてDレベルとは何か?と言うと、デモニカと呼ばれているパワードスーツの様な装備を元にして、ガイア連合で強さの指標になってるレベルに倣ったデモニカレベルの事。
ステイツに居た身としては、日本へ避難してきてレベルなんてゲーム的指標が使われている事を知ったぐらいだし、仕事上必要な情報はハンターアプリ*2で計測可能なガイア連合基準の物な上、デモニカを得る伝手なんて無いからDレベルなんてのは話に聞くだけだったが。
探求ネキが話すところによると、レベルは肉体や霊体の強化度合いみたいな物で、未覚醒はレベル0、覚醒する事でレベル1と成り、霊的な成長限界は個人毎に異なる物の概ね30辺りが限界で、其処を超えるのは稀だが居る所には居る、ってのがメシア教が暴れる前の話。
メシア教が台頭して世界各地の霊能者を殺し回った事で、全体的に平均が下がっているらしく、特に日本は二次大戦の関係で歴史有る霊能組織ほど執拗に殺され、平均を語れる程も覚醒者が居ない状況になっていたとか。
そんな中でガイア連合なんて強力な霊能者集団が、どうやって唐突に出現したのかは謎な話だったけど、連合盟主の一族がメシア教から逃れるために、能力封印して隠れ潜ませた策*3と、日本神が信者を根切りにされたり封印されたりする中で、メシア教に一矢報いるため、分霊などを人に転生させる策*4が噛み合った結果と言う所らしい。
まあ日本神の転生体を増やす画策に他の神話も相乗りしたらしく、黒札の中には日本神以外の転生体も多いとの事。
黒札の条件というか出自関係も興味深い所だけど、本題からずれたので話はレベル関係に戻り、霊的な成長限界が低く、そう簡単には限界突破できない中で、覚醒の補助からある程度の戦力化までを熟せる装備として登場したのがデモニカ。
このデモニカは装着者と霊的に繋がっていて、装着者本人の代わりに霊的な成長を行う事で、レベル30まで成長可能になっていて、レベルが30で制限されてるのは、作成素材的なコスト面もあるそうだけど、一番の理由は装着者の安全を保証出来るのが30以下の範囲で、レベル31以上になると装着者を取り込んで悪魔化する危険があるから、と言う事らしい。
で、〝レベル30〟と言うのが、ガイア連合では〝人間の範疇に収まる霊能者〟の段階だそうで、レベル31以上になると人を超えたと言う事で〝超人〟と分類してるそうだけど、黒札間も含めて通りが良いのは〝修羅勢〟の呼び方だそうな。
つまるところガイア連合においてのレベルってのは、色々な判断の基準として使用している指標な訳だけど、其処にデモニカの上限である〝30〟を、百分率でのパーセント表示した〝Dレベル〟なんてのが出てきた上に、見栄のためかどうなのか不明だけど、Dレベルでの数値をガイア連合基準のレベルと混同して話す連中が出てきた事により、依頼などでの認識の齟齬が多発した事から、黒札からは嫌われているとの話。
更にはその百分率自体も、機器の精度の関係でバラつきが発生している事も有り、撲滅したがるぐらいに嫌っている黒札もいる程、動画配信のチャンネル名にしている宮城支部の幼女ネキって黒札がわかり易い例だな。
「まとめると、メートル単位で話してる所に、インチやフィートなどの1単位の基準が異なる指標を持ち出して、そのくせ別単位の名称では無くメートル呼びして混乱させてるって訳か」
「強さの指標という意味では同じ分類に属しますが、測る方法が事なる物を混同させてるのでは、嫌うのも当然ですわねぇ」
「
「発動する側なら一回二割消費だから負担って感じは無かったが、直後の攻略で押し切れなかった理由の一つにはなった感じだな。ミスがあったのは事実だが」
「私は攻略での消耗がもう少し大きければ、スペルカードの発動がそもそも出来なかった可能性も有りましたわね」
「レベル10を超えてる二人でその消耗具合となると、スペルカードの発動に必要な霊力もCOMP側に負担させるのが良さそうですね。勝敗やルールなどの判定のみなら、そこらの機器をCOMPにした物でも利用可能なんですが、一般に普及させるのを考えると
「あの、休憩は良いのですが、出来たてに見えるパイやタルトなどは、一体何処から……?」
話をする間もメモを取る様にホロキーボードを操作していたが、結論でも出たのかウィンドウなども閉じていき、休憩と言う事で、焼きたての香りが漂うアップルパイやチーズタルトなどをテーブルに並べていく探求ネキ。
それらを袖の袂から取り出していく様は、ある意味特大のファンタジーな光景だった。
「空間拡張や内部時間停止の効果を付与した収納道具に入れてるだけですよ。ガイアポイントで交換可能な鞄系アイテムに有りますし、学びの園には造り方を書いた技術書も有りますから、調べて見るのも良いでしょうね」
そう何でも無いことの様に話つつ、今度は空中に水球が出現したかと思うと、無造作に茶葉が投入され、いつの間にか用意されていたカップへと紅茶が注がれていく。
紅茶の入れ方に詳しいわけでは無いが、数分間蒸らしたりと言った工程を無視した入れ方にもかかわらず、カップから漂う香りは、今まで飲んだどの紅茶よりも際だって芳しい。
どうぞ、と促されるままに、用意された紅茶――見た目は普通の紅茶の様だが、甘く感じる嗅ぎ慣れない香りが混ざってる辺り、フレーバーティーと言う奴なのだろう――に口を付けると、爽やかな甘さとでも言うのだろうか、舌で味わい喉を通る間に体内へ溶けて消えていく様な、不思議な感覚が私を満たしていく。
「「美味しい……」」
自然とこぼれた言葉がペリーヌと重なり、互いに何かを言う事も無く、ゆっくりと満たされていく感覚を味わう様に再び口を付け、気が付けば無言のまま飲み干していた。
そんな紅茶の余韻に浸っている間に、テーブルの上のパイなどは切り分けられ、トングや取り皿なども並べられており、何と言うかこう凄く手慣れてる様子を感じさせてくる。
「気に入った様で何よりですね。お代わりいります?」
「はっ?!わ、私としたことが、不躾に申し訳ございませんわ」
「なら遠慮無くもう一杯頼む。にしても、ペリーヌのそう言う所は家柄かねぇ?」
「随分と前から有名無実化してますが、それでも一応フランス貴族ですもの、淑女らしく在りたいと私が思い、行っているだけですわ。父は研究一筋で貴族らしさなど邪魔と言った感じですし」
「自身でそう決めて行動してるのでしたらそれで良いと思いますよ。後この紅茶、
「何か回復してる様に感じたのは気のせいじゃ無かったのか……」
こうして提供されてる辺り、探求ネキにとってはこれらの霊薬程度、なんて事無いって話なんだろうが、正直少し食べただけでも分かるぐらいに回復する霊薬とか、どんだけの値段になるか想像するのも怖いな。
流石に仕事上必要ってのと、好意で出された物の値段について言及する様な事をするつもりは無いが、気安く話す事が許されていると言っても、色々な意味で住む世界が違ってるのは忘れない様に、ってとこかねぇ。
「霊力回復を促進する紅茶と言うのは初めて聞きますが、ガイア連合で作られてる霊薬ですの?」
「私が管理してる異界で製造して連合内の流通に乗せてますから、一応ガイア連合で作ってるとも言えますね。まあ十分に行き渡る程の量が揃って無かったので、黒札のお茶好きが購入してるぐらいの物ですが」
「それはつまり、霊薬の製法含めて探求ネキが新しく創り出したって事か?」
「普段から良く飲むお茶に拘ってみようかと思い立った事が有りまして、その時いくつか製法を試して上手く行った物の一つってところです。基本的なお茶は連合でも普通に製造してますから、私の所では製法を確立した二種、プーアル茶である蓬莱熟茶と燻製紅茶である蓬莱小種を製造してる感じですね。生産量を増やしましたから、近々外部解放区画の店にも並べる予定です」
「それは良い話を聞けましたわね。販売が開始されたら絶対に購入させて頂きますわ!」
「確かに、霊力回復を促進出来るお茶なら常備したいしな。まあ探求ネキが入れた時と同じ効果量になるのか?って疑問はあるが、そもそも入れ方からしてどうやってるのかわからんし」
実際のところ値段がいくらになるのか不明だが、探索の途中にでも飲むタイミングが有れば、安全性がぐっと増すと思える効果だし、日常的にも霊力を消費する様な作業や鍛練の回数を増やせるってのは、多少の出費を考慮しても常備する価値はあるだろう。
値段によっては、ペリーヌと共同購入ってのも考えておくかねぇ。
「やってた事は基本的に【アクア】の応用ですね。必要量の水を出現させて空中に留め置き、紅茶を入れるのに丁度良い温度まで水温を変化させて維持、今回は直ぐに飲める様に時間加速もしましたけど、蒸らしの間維持し続ける方法でも同じ様に入れられます。後は丁度良く抽出し終わった所で水分を抜いた茶葉を取り出して、カップへ注ぐ様に操作して完了ですね」
「見た目はそれこそ物語の魔法使いみたいな方法でしたけど、入れ方自体は紅茶の基本そのままですのね。いえ、時間加速なんてのがさらっと混じってるのは、あえて無視しますが……」
「【アクア】一つの応用でどれだけ細かく操作してんだか、普通にポットで入れるってのでも良い気がするんだが……」
「身近なちょっとした事を術で代用するってのは、細かい霊力操作や精密な制御能力が必要になる事も多くて、良い鍛練になりますからね」
「普段の生活自体が訓練とか、徹底していると言うべきかぶっ飛んでると言うべきか、どっちなんだろうな?」
「私としては、レベルによらず出来る基礎的な部分の鍛錬法の様ですし、気になる所ですわね。基礎の積み重ねは疎かに出来ない部分ですもの」
「興味があるなら軽くですが教えましょうか?観た感じ次のテストを出来るぐらいに回復するのはまだ掛かりそうですし、消費を抑えて制御する鍛練なので回復に其処まで影響はしませんし」
「是非お願い致しますわ!」
「仕事に影響しない範囲って事なら、私も一緒させて貰いたいな」
「構いませんよ。では使えると便利な【浄化】から――」
突発的にプチ講義が始まることになったが、ここで教えられた術の数々は、確かに私達の生活を便利にしてくれたし、日常的な鍛練のおかげか、探索へ行った時の継戦能力なんかも実感出来る程に上昇する事になる。
テスターとしての仕事も、いくつかルールを追加して試したり、スペルカード同士をぶつけ合う対戦方式なども試したりとあれこれやって、結局一週間きっちり掛ける事になったが、その間は霊力回復序での休憩時間に色々と教えて貰う事になり、私達二人にとって忘れられない一週間となるのだった。
身につけて持ち運び易い様に、勾玉状に結晶化させており、防壁結界や戦闘用フィールドを展開する基点にもなっている。
メンマ竹の茶葉が持つ回復力向上を、甘葛茶と合わせることで霊力回復効果に特化させ、霊薬効果を高める乳香樹の樹脂を合わせた燻煙により、霊力の自然回復速度を向上させる効果を持たせた物。
なお、拙作でのペリーヌの父親イメージは、ふしぎの海のナディアのジャン・ロック・ラルティーグ。