【カオ転三次】終末を約束された世界で心のままに生きていく 作:緋咲虚徹
「思い付きで一般連合員からテスターを募集しましたけど、学習意欲の高い学生二人と知り合えましたし、良いデータも取れましたから結果としては大成功ですね。ただ、SDアプリのルールはスペルカードをぶつけ合うのを基本にして、より難易度の高いルールを追加で設定する感じにした方が良さそうですかね……」
実のところ
まあそうした方が良さそうって感じたからと言う話だけども、将来的に学園都市みたいに発展させていくつもりの外部解放区画を考えると、遊びと学びを両立できて、エンタメ的な娯楽にも出来そうなSDアプリは丁度良いかとも思えるって事で、ルールの再構築や調整も含めて、予定の最大日数である一週間掛けてテストする事に。
そうして二人からの所感も参考に、一応はレベル一桁でも遊べる様に考慮しつつ、対戦者同士の力量などから、対戦状況を大まかに三パターン程に別けて想定し、共通となる部分のルールと各パターン毎のルールを設定し直した感じになる。
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<共通ルール>
・決闘の美しさに名前と意味を持たせ、共通及び使用ルールを記した契約書〝スペルカード〟を作成する事。
・作成したスペルカードの使用数を開始前に提示し、提示枚数以上のスペルカードを行使しない事。
・決闘の間は、互いにアプリ内の【非殺傷設定】を通して攻撃を行う事。
・勝敗が決した後は、余力があろうとも負けを認める事。
・決闘の勝敗に、何かしらの付随事項を設定する場合、生死に関わる内容以外であれば、互いの了承の下締結可能とし、決着後には速やかに履行の上、互いに遺恨を残さぬ事。
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理念やスペルカードの作成要項に関しては、別段問題となる程でも無いだろうって事で大部分は継続するとして、スペルカード発動時の霊力を完全にCOMP側で負担する事にしたため、変更点としては其処ぐらいだろうか。
共通ルール部分は各パターンで変化するだろう部分――対戦終了の条件や勝敗判定の条件など――を除いた物でまとめ、どんな場合でも最低限遵守するルールとして設定。
この辺は理念と同じく
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<基本対戦ルール>
・対戦相手とのレベル差が20未満の場合に使用可能。
・互いに同じ枚数のスペルカードを提示し、互いに最後の一枚が終了した時点で決着とし、攻略されたスペルカードの枚数で勝敗を決定する。
・攻略数が同数の場合は、引き分けとするか、攻略に要した時間で判定する。
・対戦中の攻撃や防御は、スペルカードに設定した物での行動のみとなり、自身のスペルカードが全て終了している状態で、相手のスペルカードが継続中の場合のみ、スペルカード以外での攻撃や防御が許可される。
・なお、回避行動に関しては、上記の制限を受けない物とする。
・全てのスペルカードが発動し終わる前に気絶者が出た場合、その時点で決着となり、決着時までに攻略判定となったスペルカードの枚数で勝敗を決定し、展開中の物や未発動の物はカウントしない。
・スペルカードの攻略判定は、防壁結界を破壊された場合と、発動中のスペルカードにて相手の防壁結界に一度もダメージを与えられなかった場合の二パターン。
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対戦ルールとしての基本と言うか、一般的に一番多く使われる事になるだろう状況を想定し、設定したのが基本戦闘ルール。
主にレベル30以下の霊能者同士で対戦する場合を想定した物で、スペルカードの発動を含め対戦中に使用されるマグネタイトの殆どはCOMP側で負担し、対戦者自身の霊力は回避関係のみに絞る事で、勝負を成立させる事を目標としている。
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<ボス対戦ルール>
・対戦相手とのレベル差が20以上有る場合のルール。
・レベル上位者がボス役となり、下位者側が何枚攻略出来たかで勝敗を決める。
・互いに同じ枚数のスペルカードを提示し、提示枚数の半数以上攻略で攻略者側の勝利となるが、ボス側のスペルカードが全て発動し終わる前に、攻略者側が気絶した場合、ボス側の勝利となる。
・このルールでの攻撃などに関して、ボス側は基本対戦ルールの制限に準拠するが、攻略者側はスペルカードの使用に加えて、スペルカード以外での攻撃などの行動も許可される。
・スペルカードの攻略判定は、術者を守る防壁結界の破壊、または一度も直撃を受けずに回避・防御・迎撃による相殺をする事で達成となる。
・紙一重の回避による削りダメージは可とするが、防御や相殺の余波による削りダメージの合計が、計測された体力の半分以上となった場合は、自力で回復を行ったとしても攻略失敗となる。
・なお、攻略者側のスペルカード発動により展開された防壁結界へのダメージは、失敗判定に含まれない。
・相手の力量において、攻略の目が無いスペルカードは御法度であり、その場合はスペルカードを宣言した側が、攻略された物として扱う。
・攻略の可能性は、アプリのシステムにより、攻略者の所持スキルや霊力の動きなどから判断する。
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基本の次ぎか、或いはそれ以上に利用者が出てくるかもと想定しているのが、元ネタである東方のスペルカードルールの再現に一番近そうなボス対戦ルール。
こっちは迎撃側と攻略側を最初から決めて行うパターンのルールで、迎撃者側が不利になる様ハンディキャップを付けて、ようやく勝負になるぐらいに力量差がある場合が前提となっており、その分共通ルールの付随事項で設定出来る内容も上限が低くなるのが、ちょっと特殊な部分だろうか。
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<熟練対戦ルール>
・互いに同じ枚数のスペルカードを提示し、互いのスペルカードが全て発動し終わるか、どちらかが気絶した時点で決着となる。
・スペルカードの発動タイミングは任意となるが、どちらかが気絶した時点で、気絶した側の未発動スペルカードは、相手の攻略分としてカウントされる。
・気絶による決着となった際、互いの攻略数が同数だった場合は、最後まで立ていた方を勝者とする。
・スペルカードの攻略判定は、術者を守る防壁結界の破壊、または一度も直撃を受けずに回避・防御・迎撃による相殺をする事で達成となる。
・紙一重の回避による削りダメージは可とするが、防御や相殺の余波による削りダメージの合計が、計測された体力の半分以上となった場合は、自力で回復を行ったとしても攻略失敗となる。
・なお、スペルカード発動により展開された防壁結界へのダメージは、失敗判定に含まれないが、防壁結界の受けたダメージ内容が攻略判定条件をクリアしている場合、完全攻略扱いとする。
・決着時の攻略数が同数だった場合、完全攻略したスペルカードの枚数を追加で攻略数に加算し、勝敗を再判定する。
・完全攻略を含めた再判定した上で同数となる場合、引き分けとするか攻略に要した時間で判定する。
・相手の力量において、攻略の目が無いスペルカードは御法度であり、その場合はスペルカードを宣言した側が、攻略された物として扱う。
・攻略の可能性は、アプリのシステムにより、攻略者の所持スキルや霊力の動きなどから判断する。
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最後に上手く嵌まれば、一番派手でエンタメ的な試合になるだろう熟練対戦ルール。
このルールでも、スペルカード発動の消費をCOMP側で負担する点は同じだけど、他の攻撃や防御なども可能となっており、スペルカードを攻撃用や防御用、或いは回復用にしたり、どのタイミングで発動するのかなどの駆け引きを見れる様になるのでは?と期待していたりする。
「当面の運用ルールはコレで行くとして、蓬莱島内だけでも普及はさせたいところですし、
製造するだけなら、ブルーウォーターを創り出した時に構築した〝光子回路結晶構築技術〟が有るため、素材さえ有れば私以外でも量産可能なのだけども、忘れがちだけどオリハルコンなんてそう大量に確保出来る物でも無いわけで、そうなると一般に普及させるつもりなら、より安価な大量に集められる素材でも必要スペックを満たし、大量生産も可能にする必要がある。
「素材の見直しとなると、問題になるのはCOMP側で負担する戦闘フィールドの展開、それとスペルカードを発動する際に必要となるマグネタイトですね。プログラム化した太極炉術式がありますから、光量子コンピューターで有れば供給自体に問題は無いんですが……」
一番の問題は、ハード側で保持出来るマグネタイト量がボトルネックになる事。
飛行石や蒼水勾玉はオリハルコン結晶を素材にしているだけあって、通常のCOMPとしてサマナーが使用した場合、契約した悪魔を同時に二十体でも三十体でも出して維持出来るぐらいには、保有可能なマグネタイト量が多く潤沢に使える代物だったりする。
まあ戦闘用フィールドを展開・維持するためにそれなりのマグネタイトが必要で、スペルカードの発動も負担するとは言え、展開自体に消費する瞬間的なマグネタイト量と、維持に使う分にスペルカード一回分の消費量が賄えれば良いため、SDアプリ専用COMPとして蒼水勾玉を作りはしたけど、レベル50以下が使う場合だと、正直オーバースペックだったりする話。
そんな訳で、素材変更によるマグネタイト保有量には注意が必要だけど、メイン購買層になるだろうレベル帯を考えると、そこまで難しい問題というわけでも無いかな?
最も、スペルカード一回分の消費量は使用者毎に異なるため、ハード側のマグネタイト保有量は、一応出来る限り多くなる様にするつもりだけども。
「となると……、結晶仙人掌に手を加えて、専用素材を栽培出来る様にするのが楽ですかねぇ」
良い素材が無いかと記憶を探り思い浮かんで来たのは、ガイア連合が出来た初期頃*1に創り出したマグネタイトを蓄える性質を持つ
結晶仙人掌自体は、柱の様に真っ直ぐ伸びる柱サボテンと呼ばれる形態をしていて、表皮の下に水晶質の体組織があり、MAGバッテリーには表皮を剥がした内側部分を使用する感じになる。
まあ手を加えるにしても、栽培の難易度には気を付ける必要があるけど、それ自体が結晶質で在ることを考えれば、要求される加工技術の難易度は下げられるだろうし、何なら機械的な量産の可能性も考えられるところ。
「元々水晶の樹*2から派生して創り出した植物ですから、材質が水晶で透明度が高いのも素材としては良い感じですが、光子回路を作るのも考えると無色透明過ぎるのも問題なんですよねぇ…………あ、光子回路の制御が出来てれば良いわけですし、別に他の素材を混ぜ込まなくても、表面的な加工でも行けそうですね?」
品種改良を続けていただけあって、現在の結晶仙人掌は表皮を剥けば、反対側を透かして見える程の透明度になっているため、光量子コンピューターにするなら、外の光が光子回路へ干渉しない様にする必要がある訳で、最初は回路構築の補助にもなる様、内部に他の素材を含む結晶仙人掌を創ろうかと考えていたけど、干渉を防ぐだけなら別の方法でも良いことに思い至る。
思い付いたのはオーラクリスタル、或いはコーティングクリスタルとも呼ばれる、水晶に金属を蒸着して作られる人工宝石で、使用する金属の配合や蒸着時の温度などで様々な色を出すことが可能な技術。
早速試作と言う事で、取り出した結晶仙人掌の内部に光子回路を構築しながら圧縮成形し、最後に表面加工の再構築と合わせて、金属粒子を蒸着状態でコーティングして仕上げる。
「ふむふむ、マグネタイトの保有量は蒼水勾玉よりだいぶ落ちますが、レベル30前後ぐらいの霊力量なら十分に余裕もって対応出来そうですね」
コーティングした金属で外部光の干渉を減らしつつ、宝飾品としても見栄えする様にしたオーラクリスタルの勾玉を調べ、マグネタイト保有量や光量子コンピューターとしての動作などに問題が無いことを確認する。
一先ず目的に適う物が出来た所で、いくつかコーティングする金属を変えたり、再構築の際に再現してる蒸着温度部分を変更したりして、発色の変化による機能への影響が無いかも調べ、SDアプリ用の量産型COMP筐体の完成――と思ったところで、量産する前提なのに、製造時に形状や色を好きに変えられても余り意味が無いのでは?と思い直す。
まあ製造者毎に形状や色味などで、特徴を出すって方法も有りとは思うのだけど、個々の工夫をしていれば生産量はどうしても落ちるし、当面は普及が目的で十分な生産量の確保が必須となると、製造時は統一規格で大量生産して、形状や色味などは後から変更可能とする事に。
「流石に光量子コンピューターとしての処理能力もブルーウォーターより落ちますが、それでも現在のスパコン並の性能は有りますし、使用素材と技術料などを考えても、一つ当たりの値段は2,000マッカぐらいには抑えられますか。商品登録名はどうしますかねぇ」
デフォルトの形状はシンプルに立方体、色はシアン・マゼンタ・イエローの物体色の原色を合わせた黒にして、基本アプリの一つとして搭載した、色彩形状変更ツールで自由に変更可能としており、造形データや色調データのやり取りも可能にしてるため、将来的にデザイン方面での商売なんてのが興ったら楽しいかもしれない。
「形状や色は専用ツールで好きに変更可能にしましたし、
途中変更もあったりしたけど、
まあ量産品を新しく作った事で、テストで使った蒼水勾玉の量産は取りやめになった訳だけど、レベル51を超える様な黒札ならオリハルコンぐらい集めるのも簡単な話だし、ハイエンド品が欲しいなら素材集めて依頼すれば良い話かな?
「ま、とりあえず仕上げ終わったデータはいつもの様に技術部へ送るとして、既に製造した光量子コンピューターへ、Cキューブを作る過程で思い付いた、対メシア教徒用のセキュリティを追加するパッチ作成に取りかかりますかねぇ」
それにしても、今のところ生産数が少なく黒札でも一部しか購入していないとは言え、万一にでもメシア教過激派に渡ると面倒な事になるってのを、見落としていたのは失敗だった。
今回、全量管理など無理と分かるぐらいに量産する予定となったところで、問題となる状況を想定して対策を考える中、メシア教徒に利用される場合の危険性に思い至れたのがまだ救いだろう。
一応は同盟していると言う事になっているため、穏健派を名乗ってる連中にも使えない様な仕様には出来ないけど、メシアン度の高い連中だったり、洗脳や魅了などを受けてる時には、実行中の物以外を新しく起動出来なくするなどの対策を追加する事に。
「今回は、本当に一般のガイア連合員へテスター募集の依頼を出して正解でしたねぇ……。大量生産向けの光量子コンピューターを作ろうと思ったのも、セキュリティ関連の見直しをする事になったのも、黒札以外にも広めて楽しんで貰おうと思う切っ掛けがあったからですし」
本当に、この世界は何が幸いするのか分からない。
製造時は立方体の黒色水晶だが、内蔵してある専用ツールにより、全体的な形状の変更や表面加工での色彩変更が可能な事から、
なお、ガイア連合製のCOMPでも有るため、基幹システムには十戒プログラムを流用した、対メシア教徒用の対策が施されており、内蔵しているメシアン度測定プログラムと合わせて、過激派メシア教徒には使用出来ないロックが付いている。