【カオ転三次】終末を約束された世界で心のままに生きていく 作:緋咲虚徹
私ことマリッサ・ドリズルの転機となった二月頭の依頼から少し経ち、報酬としての授業一回目は基礎の見直しと鍛練方法について、二回目は前回に引き続きの基礎関連として戦闘技術――体術から適性のある武器種の確認などを行い、三回目は私の気になってた陰陽五行や八卦などについてを習ったところで、今日四回目の授業の日となったんだが――
「ふむ、強くなる方法について、ですか……」
「前二回で教わった内容も身に付いてない状態で次ぎ行くのもアレだし、今週中に復習が終わるかわからんからな」
「なので続きは来週にお願いするとして、今週分は基礎鍛練以外で強くなるための方法に、どの様な手段があるのかお聞き出来れば、と」
「前にレベル限界関係の話とか、式神パーツの移植だったり、神の試練的なので限界を引き上げ出来るってのは聞いたけどさ、わかり易く強化出来る方法とか有ったりしねーかな?ってとこだ。後は前回座学だったし、武術系の指導の続きをして欲しい感じだな」
前回の授業が終わった後、ペリーヌと理解度合いの確認をした結果、教わった内容を元に調べたり、復習したりする時間が欲しいと意見が一致した事もあって、今週分の残り一回については、座学よりも鍛練の時間に充てる事になった。
とは言え、ただ鍛練だけと言うのも勿体ないため、何か序でに相談したい事でも無いかと考えて、出てきたのが霊能関係で最重要な、強くなる方法について。
まあガイア連合で言うレベルを上げたり、装備を揃えたりするのは前提の話だし、ペリーヌの方はそろそろレベル20に届きそうって所だが、私のレベルはようやく17になったぐらいで、下手しなくてもペリーヌより早く限界を迎えるだろうしな。
一回目の授業で限界を引き上げる方法も有るってのは聞いてるし、本格的に限界へ到達する前に方法ぐらいは調べて置くつもりだが、それはそれとして、黒札の探求ネキなら当面の補強になる様な、強化方法とかも知ってるんじゃ無いか?って事で、とりあえず聞いてみた感じだが……。
「現在の二人が可能な物で、わかり易い強化となると……、三つ程ですかね。まあ一通り説明を終えたら武術の指導に移りましょうか」
「ダメ元で聞いたんだが、三つもあるのか……」
「瑞樹様の事ですし、外法的な物では無いと思いますが……」
「立場上、メシアンが行ってきた外法関連も知ってますが、外道的な方法は一時的に強くなってもデメリットが大きすぎて、まともに修行した場合と比べると、結果的に弱くなる事が大半ですからねぇ」
「ああ、メシアン関連のも、わかり易い強化と言えばそうなるのか。アレらを強くなったとは言いたくねぇがな」
「あんな無駄な事しなくても、多少の手間で強化する方法は有りますよ」
「どの様な方法ですの?」
「一つ目は武器を用いて戦う場合の小ネタみたいな物ですが、同じ武器を長く使っていると手に馴染むって話は聞いた事ありません?」
「私はあいにくと、聞き覚えは有りませんわね」
「あー、近接メインの奴とかが言ってるのは聞いた事あるぜ?まあ普通に使い慣れたってだけだと思ってたんだが、違うのか?」
「使い慣れると言う側面も有るとは思いますが、武器自体としても実は多少強化されているんですよ。武器熟練度と呼んでますが、悪魔を攻撃する事で概念を蓄積させて、最終的に元の二割増しぐらいには武器が強化されるのを確認してます。大体悪魔を240回程度攻撃すれば上限になりますね*1」
「二割増しは多少と言って良いのか?」
「強化されてる事を知っていれば大きいですが、少しずつ強化される関係で、知らなければ慣れの範囲で終わるぐらいの話ですからね。攻撃対象のレベルや耐性などが常に同じ訳でもないですし」
軽く出てきた1発目から、デメリット無く十分な効果のある方法が出てきたもんだが、これでも小ネタと前置きされてる当たり、次はどんな情報が出てくるのだろうか。
「二つ目は、悪魔やシャドウを倒した時に落とす力持つ宝石による能力強化です*2」
「悪魔が落とす宝石なら、私もいくつか持っておりますが、その強化が行われる宝石の種類は限定されてますの?」
「12種の宝石で強化がされるのを確認してますね。1種につき9個まとめて所持している必要がありますので、意図して集めないと、なかなか恩恵を受ける機会も無いですが」
そう言って送られて来たデータを開くと、宝石の種類と強化される能力についての詳細が表示されていた。
| 力 | 知力 | 魔力 | 体力 | 速度 | 運 | |
| アメジスト | +1 | +1 | +3 | |||
| アクアマリン | +1 | +1 | +3 | |||
| エメラルド | +3 | |||||
| オニキス | +1 | +1 | +3 | +1 | ||
| オパール | +1 | +3 | +3 | +1 | +1 | |
| ガーネット | +3 | |||||
| サファイア | +2 | +1 | +1 | +1 | ||
| ダイヤモンド | +2 | +2 | ||||
| ターコイズ | +1 | +1 | +1 | +1 | +2 | +1 |
| トパーズ | +2 | +2 | +2 | +2 | +1 | +1 |
| パール | +1 | +2 | +1 | +2 | +2 | +1 |
| ルビー | +3 | |||||
| 合計 | +10 | +12 | +13 | +14 | +9 | +11 |
「見た感じ、全部集まればそれぞれ10ぐらい上がるみたいだが、この数値って実際どれぐらい変わるんだ?」
「ステータスの上昇傾向や合計の上がり幅に個人差はありますが、レベルが一つ上がると合計で5点前後ぐらい、上昇する感じですね。明確にきっちり算出するのが難しいため、数値としては結構曖昧ですので参考程度ですが、全部集めた状態だと、概ね10から15レベル分ぐらいの強化になるのが確認されてます」
「10?!」
「ガイア連合基準でのって事だよな?それでレベルが10から15も違うのはかなりデカいだろ……」
「まあ無視出来ない程度に変わるのは事実ですね。ただ、能力値として強化はされても、霊格自体が上がってる訳では無いので、宝石持ちのレベル20台と宝石無しのレベル30超えだと、能力値自体はさほど差が無くても、レベル30超えの方が明確に強いですけどね」
「能力値より自身のレベルが重要なのはそれとしても、メインで使う武器を新調して、熟練度を上げながら宝石を集めるだけでも、だいぶ強化出来ますわね……」
「だなー、少なくとも当面の活動方針にはなったな。既に腹一杯な気分だが、私らに教えられる三つ目ってのはどんなのなんだ?」
「三つ目は、ある意味先の二つを合わせた様な物ですが、宝石を使用した武器や防具の精練が可能なんですよ。*3ゲームとかで言う段階強化みたいな感じで、最大の10段階目まで強化すると、武器熟練度で上がった状態から更に、倍ぐらいまで能力が上がりますね」
「いや、更に宝石使うのかよ」
つい真顔でツッコミ入れてしまったが、12種の宝石を9個ずつ集めるだけでもだいぶ掛かりそうなのに、その上武器強化素材としても使うとか、どんだけ必要になるのか……。
「宝石を使用した精練に関しては、宝石の種類に多少の融通が利きますし、ある程度技術があれば悪魔からドロップした物ではない、普通の宝石を代用する事も可能ですからね。何なら錬金術で宝石を作り出して、精練に使う事も出来る分楽な方かと。まあ防具含めて全身を最大精練するなら結構な数がいりますから、長く使える装備を選ぶなりした方が良い強化方法ですが」
「力ある宝石に限定されないのでしたら……いえ、ソレが出来る技術者って、瑞樹様以外だとどれぐらいおりますの?」
「そうですね。宝石での装備精練自体、概念的な強化技法ですから、レベル30の壁は超えてる必要がありますし、ただの宝石に概念を込めながら精練する事になりますので、適性があるならレベル40前後、無ければレベル50以上は欲しい所です。黒札以外だと、メシアンの異教徒狩りから逃れられた一部ぐらいじゃないですかね?」
「つまり出来るのはほぼ居ないって事だろ、それ」
「そうとも言いますが、二人に関しては私が受けても良いですし、覚える気が有るなら教えますよ。さて、一通りの説明は終わりましたし、武術の指導に移りましょうか」
今の私らで可能な物と言ってた事を考えると、教えて貰った三つ以外にも方法は有るみたいだが、正直今回の内容だけでも十分過ぎる話だし、これ以上の情報を渡されても確実に持て余すだろう。
そう思えば、今の段階で聞いたのはある意味丁度良かったのかもな……。
そうして強くなる方法に関しての話を聞いた後は、武術の指導って事で基礎となる体術と、私が棒術、ペリーヌが剣術をそれぞれ鍛練し、序でに新調する予定のメイン武器の相談もして、四回目の授業が終了となった。
で、充実した授業の翌日、教わって日課とする事にした朝の鍛練を終わらせて、
「ん、ペリーヌからメールか。――ガイア連合名義で変な依頼が出てる?」
届いたメールを見たところ、何やら今朝新しく張り出された依頼の一つに、依頼者がガイア連合となってる物が含まれていたらしい。
まあ、ガイア連合からの依頼自体も珍しいんだが、これまでにも無かった訳でもないため、それだけなら態々連絡してこないだろうと、メールに張られたリンクからその依頼画面へと移動してみる。
――――――――――――――――――――
【探索依頼】
この度、蓬莱島の外部解放区画にて、各種セキュリティの実地試験を行う事となりました。
そのため、区画内○○○○に試験会場を設営し、依頼告知の三日後より、実地試験を二週間執り行います。
依頼報酬は試験会場内に設置してある物の中から、挑戦者が会場外まで持ち出す事に成功した物。
※会場内の物資は、都度補充する物も有れば、初期配置のみの物も有ります。
期間中、一人一回まで挑戦可能
※試験会場内での死亡、及び部位欠損などの後遺症は、探索ギルドにて蘇生並びに治療します。
依頼者:ガイア連合技術開発班他、有志一同
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「確かに何だこれ……。いや、何をさせたいのかは分かるが、試験会場とやらに盗みに入れって事か?」
とりあえず、セキュリティの実地試験と言う名目の依頼ってのは理解したが、何で実際に泥棒させようとしてるのかって疑問が浮かぶ内容から、ペリーヌが態々メールしてきた事にも納得するし、そりゃこんな物が出てきたら、私だって連絡するだろう。
兎も角、メールには一旦集まって相談したいとの記載もあったため、普段からよく行く探索ギルド近くの喫茶店へと向かう旨を返信し、出かける準備に取りかかる。
手早く仕度を済ませ、足早に喫茶店へと向かうが、どうやらペリーヌの方が先に到着していたらしい。
「おっすペリーヌ、確かに奇妙な依頼内容だったな」
「おはようございます、マリッサ。メールした後の事ですけど、依頼内容について詳しく聞く事が出来ましたわ」
「あ、流石に詳細は聞けば答えてくれるか――」
「いえ、偶然お会いした綴様からですわ。探索ギルドにはその辺の詳細までは降りてない様です」
「綴さんから?……って事は、場所貸しだけじゃ無く、探求ネキもメインで関わってんのか?」
ペリーヌが話を聞いたと言う綴さん――秋山 綴と言えば、探求ネキが弟子と公言している人物であり、東京の各支部や蓬莱島でも、色々と有名*4な金札の一人。
私達が探求ネキの授業を受けている関係から、何度か話す機会があったし、綴さんからもアドバイスを貰ったりする程度には、良好な付き合いをさせて貰っている人物。
なお、探求ネキやもう一人の黒札とただならぬ関係との噂については、吹聴してはいないが別段隠してもいないらしく、三人で恋人の様な夫婦の様な関係を結んでおり、それぞれとの間の子供もいると笑顔で返された時には、どう反応すれば良いのか分からなくなったが……。
ちなみに、女同士でどうやって子供が出来たのか、興味本位で聞いてみたところ、ガイア連合には一時的に
その日はペリーヌと二人して、綴さんに色々と聞いてしまったのだが、まあ余談という事にしておこう、うん。
兎も角、これだけ探求ネキと近しい人物からの話と言う訳で、信憑性は高いと考えられる。
「技術者側はセキュリティ関連の技術向上、探索者側はトラップ解除や隠密などの技術向上を狙ったイベントとして、企画したらしいですわね。今回はガイア連合主体ですけれど、いずれは外部解放区画の技術者主体で、開催出来る様にするのが目標との事ですわ」
「そう言う企画イベントって事なら、確かに一石二鳥って奴なんだろうがな。盗みの技量が報酬に直結するってのも、可笑しな話だぜ」
綴さんの話からすると、奇妙な依頼だとしても――いや、奇妙な依頼だからこそ、報酬内容には期待が持てるし、難易度も狙う報酬に見合った物になってるだろうと予想出来る。
問題は、私らの技術が何処まで通用するのか、って所だろう。
「この依頼については、異界のギミック解除か、TRPGの遺跡探索ぐらいのつもりで挑めば良い、とも言われましたし、色々と想定して準備を整えて置きたいですわね」
「だなー。つっても、今の私らがどれだけ出来るのか?ってのも良く分かってないし、来週頭に潜入や隠密、罠解除とかの技術を探求ネキに聞いて、準備してから挑むってのも良いかもな」
「…………それもそうですわね?私、盗みに入る何て事、今までしたことも無いですし、どの様な準備が必要なのかも、改めて考えたらどうすれば良いのか分かりませんわね」
「私は日本への避難船に乗るまで、少しの間だがストリート暮らししてたし、
「では、来週に瑞樹様の授業を受けて準備も整え、再来週に挑戦する事に致しましょう」
そう言う事になった。