【カオ転三次】終末を約束された世界で心のままに生きていく   作:緋咲虚徹

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幕間:蓬莱島らしい依頼 二

 奇妙な依頼を見つけてから約一週間、泥棒と言えば聞こえは悪いが、要するに敵拠点への潜入を目的とした技術であり、半終末と呼ばれている現在だと、異界化した建物だったりを見かける事も割合多いらしい。

 そうした異界化建造物の調査やギミックの看破、解除を行うための技術を磨き、異界で確認されているギミックなどの知識を詰め込み、可能な限りの準備を整えてきた。

 ちなみに、無知であればあっさりと死ぬ事になるし、或いは死ぬより恐ろしく悍ましい事態に陥る事も有るのが、この界隈――と言うか、メシアンや外道や悪魔などに捕まった場合の末路だと、実例込みで教えられたことも有り、私もペリーヌも、出来る限り糧とする様に集中して取り組んで来たつもりだ。

 今回の依頼は、そう言った一発アウトな危険を安全(蘇生補償という意味で)に体験出来ると言う訳で、学び挑戦する事へ積極的な蓬莱島民は当然として、転移装置(ターミナル)が設置されてる大きめの他支部からも、金札や銀札などが挑戦のためにやって来ているらしい*1

 

「一週間程度の詰め込みだから過信は出来んが、思った以上に挑戦者がいるみたいだし、延長無しで予定通り挑戦するか!」

「ええ、それと挑戦が終わったら、瑞樹様への報告も兼ねて反省会は行いますわよ」

 

 探索ギルドでセキュリティ実地試験の依頼に挑戦する事を伝え、挑戦証を受け取ったら、依頼が張り出されてから急速に建築された試験会場へと移動する。

 場所は普段から色々と建てたり解体したりしてる区画の先、今はただの平地となってる所に、会場となる建物群が用意されていた。

 なお日中にも関わらず、会場内からは警報らしき音や爆発音なんかも轟いており、今現在も挑戦者が居て、文字通り爆死なんかもしている様だ。

 

「何度か下見には来てたが、やっぱ昼の潜入は無しだな……」

「昼と夜で置かれている物が違うとの話でしたわね。難易度が高いほど内部に置かれている物も良くなるとかで、昼に挑む方が多いのは知っておりましたが、辿り着いても持ち出せなければ意味がありませんわ」

 

 見えてる建物としては、日本でよく見かける二階建ての一軒家がいくつかと、五階か六階ほど有るビルに、日本アニメの田舎系の描写で見かける木造家屋など、日本で見かける事の有る建物が多いが、教会だったり西洋系の屋敷なども点在している感じ。

 挑戦開始の判定とならない様、遠巻きに会場全体を探ってみた感想としては、計画的に区分けなどもせず、思い付きで手当たり次第に用意した様な印象を受ける。

 後、ちょいちょい爆発音や何かが倒壊する音が聞こえてくるんだが、外から見る分には煙の一つも確認出来ないのを考えると、見た目通りの建物というわけでは無いって事だろうな。

 そんな感じで潜入に向けた最後の下見も終えて、一旦仮眠を取りに戻り、挑戦開始を予定としていた時刻がやって来る。

 

「よしっ、そんじゃいくつか似た形で建てられてるとこから行くか」

「複数有るなら比較的難易度が低いと推測出来ますものね」

 

 まずはCOMPに入れてる奇襲対策の〝百太郎〟や、地図作製用の〝マップナビ〟などのアプリが稼働してるのを確認し、続いて探求ネキに指導して貰いながら作成した【造魔 アガシオン】を喚び出して、【ドロンパ】(透明化)【リフトマ】(浮遊)を使い、一部の罠を無視出来る準備を整える。

 一方でペリーヌの方も、私と同じ様に作成した【造魔 アガシオン】を喚び出し、【エストマ】(隠蔽結界)を使わせた後、〝契約呪法アプリ*2〟で【ライトマ】を調整して構築した【光玉の目(暗視)*3】を掛け、探索し易くする準備を進めていく。

 私もペリーヌもサマナーとしての適性はさほど高くないため、戦闘以外で使えるスキルを詰め込んだ補助道具みたいなもんだが、消耗品を潤沢に使える程の稼ぎが有る訳でも無いのを考えると、COMPのアプリで回復出来る範囲で便利スキルが使えたり、自分の使えない属性などの術式を登録しておけるのは、かなり有り難い話。

 

「接地反応系と動体反応系の一部を無視出来るのは、警戒的に楽ですわね……」

「結界範囲外に音が漏れないのも、遠くから音感知される心配を消せて助かるけどなー。っと、霊力の籠もったアイテム発見、COMPのアナライズ結果は……反魂香か!蘇生アイテムなら当たりの部類だな」

「私たちにとっては結構な貴重品ですわね。ガイアポイントなら結構な高額ですが交換出来ますが」

「島の購買部には置いてないもんな、道返玉は置いてるが400マッカもするし。まあ蘇生アイテムが買えるだけでも恐ろしい話なんだがな」

「それもそうですわね……。良い物も見つけましたし、一先ず此処の探索はこの辺で切り上げましょう」

「おう、そんじゃ次は、少し離れたとこにある平屋建てとか言う家に向かうか」

 

 予想した通りと言うか、似た物件が複数有る建物については、罠や仕掛けに凝った物は余りない様で、家を守る結界をすり抜けたり、あえて南京錠を付けられた扉を開けるのに多少手間取ったりした事以外は、特に問題も無く粗方調べ、次へ移動と言った感じで探索を進めていく。

 まあ途中で見かけた家の一つには、扉を少し開けた時点で、世界各地の御守りやらシンボルなんかが無数に飾り付けられていて、どれか一つでも持ち帰れたら、一財産になりそうな気配がする一軒家なんかも有ったりしたが……。

 

「それにしてもあの家、中を見た瞬間、恐ろしい程の寒気がしたが、何だったんだろうな?」

「軽く見た程度ですので私も良くは分かりませんが、置かれていた物の種類や位置を考えると、下手に動かすだけで何かしらの儀式が起動する感じかと思われますわ」

「ああ、言われりゃそんな感じのヤバさだな。いずれはあんなのも解体出来る様になれりゃ良いんだろうが、先は長いな……」

「ですわね……」

 

 見て、手に負えないなら回避して良い状況だからこそ、こうして笑っていられるが、蓬莱島と転移装置で繋がってるガイア連合の各支部から、探索ギルドにも依頼の一部が回ってきてるし、依頼先によっては手に負えない様な異界に迷い込む可能性が無いとは言えないしな。

 島外の依頼を受ける機会があるかは分からんが、対処出来る範囲を増やす努力は怠れ無いと、改めて感じる所だな。

 まあ現状では手に負えない危険地帯のことは置いといて、平屋で見つけた〝金のクワ*4〟とか言うらしい霊装をCOMPのデジタルストレージアプリ*5に収納し、計画段階での最終目的地と設定した館へと足を踏み入れる。

 

「内部構造も外観と同じく欧州系ですが、建築様式の統一はしていない様子ですわね?」

「まあいくらガイア連合とは言え、何から何まで霊的な意味を込めて作ったりはせんだろ。壁の中とかに仕込まれてたら分からん話だが」

「そのための霊視であり、霊力感知と言う事ですわね。基礎鍛練から見直して鍛えたおかげで、壁の一部などに隠されてるのも辛うじて見えますわ」

「私だと言われないと気付けんな……、やっぱ細かいところはペリーヌの方が得意な感じか」

「直感と出力はマリッサの方が得意ですもの、分野が分かれてるのはコンビとして有り難い所でしょう?」

「まあな。にしても、他の挑戦者が調べた後なんだろうが、荒らされてる感が強いな……。もしかすると態との可能性も有るし、一応調べて見るか」

 

 張り詰めすぎない様に軽口を叩きながら探索を進めていると、これまで廻ってきた建物と違い、試験会場内に一件だけの館だからか、他の挑戦者が探索した後と思われる形跡がいくつか見かけるようになった。

 わかり易いのだと、ドラマなどで空き巣現場として描写される様な、部屋中に物が散乱している状態から、既に仕掛けが解かれた後の場所だったり、仕掛けを解除しても何も置いてない状態を見つけたり、と痕跡の種類はまちまちだったが……。

 そんなこんなで、館内の部屋をいくつか回り、回復薬系の消耗品や霊薬でもある保存食などを見つけつつ、次ぎに入った部屋は、客室か寝室辺りに思える大きなベッドやタンスが置かれている部屋。

 ただ、この部屋も既に探索されたのかあちこちに物が散乱しており、めぼしい物は持ち去れた後の様にも思えるが、偽装の可能性も考えて念のため調べて見ると、どうやら開け放たれていたタンスに隠された仕掛けがあったみたいで、ペリーヌが解除に取りかかる。

 

「やってる事自体は盗みに入っている様な物とは言え、潜入や探索の練習目的と考えると、痕跡を残さない様な努力をするべきですわよね――っと、開きましたわ。中身有り、鑑定結果は――ガイア酒造製の蜂蜜酒みたいですわね」

「中身も残ってるのか。となると、単純に先に調べた奴が見落とした可能性も有るが、元から既に荒らされた様に偽装されてた可能性もあるか。ちょっとこの部屋、もう少し詳しく調べて見るか」

 

 一見だと、価値ある物を探して、手当たり次第にひっくり返した様な部屋って印象だし、実際に散らばっている物も、霊能に関係無い一般の市販品ばかりだが、霊力操作で意識的に霊力を活性化させ、霊感を研ぎ澄ませながら室内を探っていくと、散らばっている物の中に偽装された霊装も混ざっている事に気付く。

 霊装としては、私らが今装備してる物よりは劣る程度だが、COMPの鑑定結果だと防汚だとか、サイズ自動調整なども付いた普段着として有ると便利な物だったり、BusterとかArtsとかQuickとかプリントされているTシャツ*6なんかも有り、一度気付くと何故意識に入らなかったのか不思議なほどに、目立つ物がゴロゴロしていたのを理解する。

 とりあえず使えそうな物は回収して、他に隠された仕掛けなどが無いか調べていると、大きなベッドの下に何かがある事に気付く。

 

「道具類って感じはしないし、何かのギミックか?」

「流石にこの隙間からの確認は無理ですわね。ただ、問題はベッドを退ける事でギミックが発動する可能性ですわ」

「それだよなぁ……。リスクを負う必要も無いし、見なかった事にして次ぎ行くか?」

「偽装されていた霊装だけでも、買えば結構な値段になる量がありましたし、それが良さそうですわね」

 

 感知した場所もあって、あからさまに怪しい反応を突くのもリスクが大きいと言う事で、探索を切り上げる事にしたんだが、どうやらその判断は部屋に入った時点で遅かったらしく、部屋から出ようと扉に近付いた所で、勢いよく扉が閉まり光り出した。

 

「な!この感じは転移か?!」

「ベッド下のギミックは解除用か、警戒させる様の偽装でしたか!」

 

 咄嗟に身構える間もなく、転移による一瞬のブラックアウトが終われば、視界に飛び込んできたのは、先程まで居た部屋よりも大きなベッドが中央に置かれ、壁際にはいくつもの棚や自販機の様な物が並んでいる、一種異様な部屋だった。

 

「うおっ?!追加して来んのか、あのトラップ!」

「わひゃ!?」

「あん?何やってんだあんたら」

「互いに嫌な状況ですわね。まあ()()で無かったのだけは、幸いですが……」

 

 更にはその大きなベッドの上で男女が裸で絡み合い、あれこれ致した後だと一目で分かる有様な上、ストリート時代に何度も嗅いだ匂いまで漂ってるもんだから、なんかの攻撃でもされてるか?とも一瞬思ったが、別段魅了なりの攻撃に曝されてる様子も無く、どうにも気まずい空気が漂う。

 ベッドの上でピロートークでもしてたっぽい二人の内、男の方は茶系の短髪に緑の瞳で、見た目の印象は地味だが、感じる霊力は強く穏やかであり、少なくとも初手で【マリンカリン】(洗脳)などをしてくる心配は無いだろう。

 もう一方の女については黒髪に紅い瞳、豊満な胸に尻と印象に残りやすそうな見た目だが、感じる霊力的には私らとそう変わらないか、少し下ぐらいだろうから、奇襲でもされなければ対処は可能ってとこか。

 まあペリーヌも言った通り、事の真っ最中では無かった辺りは、他人の情事を見せつけられる何て事にならなかっただけ私らとしてもマシな話だし、男の後ろへ隠れようとしてる少女にとっても不幸中の幸いだろうか、たいして救いにもなってないだろうが。

 

「あ~なんだ、とりあえずこっちに敵対する気は無いが?」

「お、おうちょっと待ってくれ、【浄化】に〝装備変更一番〟っと、すまん待たせたな。俺らもセキュリティ試験の依頼で挑戦してるからな、挑戦者同士で獲物の取り合いなんかも有ったりするが、現状敵対するつもりはこっちも無い」

 

 色々と気にしたり確認することも有るが、一先ず直ぐさま敵対するつもりは無い事を伝えてみると、男の方は【浄化】の術式一つで事後のあれこれを片付け、COMPのアプリでも使ってるのか、瞬時に身形を整えると、何事もなかったかのように取り繕って返答してくる。

 一方で女の方は、混乱してるのか羞恥に寄るものか、未だに裸のまま蹲っている上に、こっちへの注意も散漫な様子から、男の方ほど場慣れはしてないってのは確定か。

 男が言う様に、見つけた物によっては取り合いになる可能性は有るが、私らとしては見つけた物よりも過程の経験が目的なため、可能な限り交戦を避けたいってのと、後は男の方から感じる力が、確実に私ら二人より高いと感じ取れる事も、敵対を避けたい理由だな。

 軽くペリーヌと目配せして、事前に決めた方針の変更はしないのを確認し、現状把握へと移る。

 出来れば協力して状況の打開、最悪でも相互不干渉を結びたい所だが……。

 

「それは有り難いな。ガイア連合にはマリッサで登録してる、隣のはペリーヌ」

「俺はカズマでこっちはゆんゆん、後俺の式神と仲魔が向こうの扉の先にあるもう一つの扉を調べてる所だな」

「先の方まで調べてるって事は、さっきの状況も何か関係してたりするのか?」

「あ~、そこの扉を開く条件関連だよ。んで、その先の扉は転送されてきた人数分の、人間のMAGを注がないと解除されないっぽくてな、他の方法が無いか調べるための一環ってとこだ」

 

 歯切れの悪い言い回しだが、話をまとめると、子作りしないと開かない扉に、子作り中に発生したMAGを感知して開く扉の二重構造になっていて、カズマのパーティで人間はゆんゆんとの二人、式神と仲魔も一緒に転送されてきてカウントされているのか、人間二人分のMAGが注がれてないため閉じ込められた、と言う事らしい。

 カズマとゆんゆんの二人が残って子作りしてたのも、同じ室内に居なければ別の反応もするのでは?と言った調査目的を含んだ物で、単純に盛りが付いていたって訳でも無いとの事。

 

「まあ余所のチームだし、こっちに飛び火しなけりゃ気にせんよ。こっちは荒らされた後の様な部屋から飛ばされて来たんだが、そっちも同じトラップに掛かった感じか?」

「あの態とらしく荒らされてた部屋な、まさか入った直後に転移罠食らって飛ばされるとは思わんかったが」

「ん?直後だったのか?こっちは一通り調べた後、ベッド下の反応が怪しいと思って部屋を出ようとしたタイミングだったんだが、何かしら条件が違うって事かね」

「先に掛かった奴がいるのを考えれば、まあ別の条件が絡んでるってのもあるだろうな」

「カズマーやっぱダメね。ズコバコして発生したMAGが流れてる感じも無いし、人間が後二人居ないと開かないってさ」

「代わりに転移機能が再稼働してるみたいですから、条件が合えば脱出の目も出てくるかと……あ」

 

 まずは互いの状況確認って事で、こっちも飛ばされる直前の経緯を話して、この部屋の詳細などの話に移ろうか、と言うタイミングで扉が開き、カズマが言っていた式神と仲魔らしき二人が入ってくる。

 先に入ってきて声を上げた青髪の女が感じからして仲魔、後から入ってきた茶髪の女が式神って所だろう。

 カズマのパーティを見るに、長髪の巨乳好きって所か?自分で考えても悲しくなるが、私もペリーヌも細身だし、そっちの対象にならない可能性が有るのは良いことだな!

 ……うん、学びの園(アカデミー)で見つけた〝建体飽食技典〟の【魂魄精練法】習得、頑張るか。

*1
半終末になって半年以上も過ぎていれば、ターミナルでの移動も可能になっているだろうと言う事で、大きな支部なら転移可能としてます。

*2
悪魔召喚プログラムの同時召喚数を減らす代わりに、予め構築した術式を発動可能にするアプリ。

スペルカード作成補助アプリにも組み込まれているアプリで、削減枠一つにつき十個まで術式を登録可能。

*3
ライトマと類似した効果であるが、物としては暗視や霊視により、無明を見通す視覚を得る術式。

*4
霊力を込めて振り下ろせば、任意範囲を耕し、【豊作の加護】を耕した土に付与する金の装飾が施された鍬。

耕す際、ミミズ以上の大きさの有機物には影響を与えず、無機物であれば石もまとめて耕し、土に変える事が可能。

牧場物語に登場する道具をイメージして作成された農具であり霊装。

*5
COMP内を一つの閉じた電脳異界とする事で、端末自体の容量に関係無く大量の情報を格納可能にし、情報の物質化(マテリアライズ)機能を搭載した物。

*6
FGOのコマンドカードをプリントしたTシャツシリーズ。Busterは力と体、Artsは魔と技、Quickは速と運が二割程上昇する霊装。

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