さっき見かけたギタリストを探すために全力で走ると、いつも運動をしない体が悲鳴を上げている
体力もつけないといけないなと笑いながら脳内で体力増強の計画を立てていると
横に自分よりも辛そうにしている虹夏がいた
「大丈夫か?」
「はぁ...はぁ...ごめん余裕ないかも」
「俺先に行って事情を話しておくから少し息を整えてから来たほうがいいぞ」
「私のバンドの問題なのに、
「そんなへとへとになっている人に説明されたら相手も困っちゃうし、俺が一人で向かった方が到着は早い。だから少し休んでからきてくれ、わかったな!」
「ち、ちょっと新君!」
虹夏の返事を待たずに速度を上げる
これだけ言えば休んでからくるだろ
公園についたがさっきの人は...いたっ!
「すみません、そこのギターを持っている人!すこしいいですか!」
「ひ、ひゃい!!」
ひゃい?
とにかくいてくれてよかった
「すみません急に
俺は下北沢高校二年の沖田新って言います。
ギタリストの方ですよね、実は今ギター弾ける人を探してて...
今当事者が来るのでお話聞いてもらってもいいですか?」
「…」
「あの、どうかしましたか?」
「あ、だだだ大丈夫です!!、すみません」
「本当ですか!ありがとうございます!」
ひとまず話を聞いてくれるようでよかった
少し挙動不審にも感じるけど急にギタリストを探してたと言われたらそうなるよな
後は虹夏が来るのを待つだけだ
「おーい」
お、来たか
息も上がってないしちゃんと整えてから来たな、良かった
「ごめんね、待たせちゃって
この人が言ってたギタリストの人だよね」
「全然大丈夫
うん、話も聞いてくれるらしい」
「本当!?良かった、ありがとう!」
ぶんぶんと頭を振ってお礼を言う虹夏
相当嬉しかったんだな
「ぜ、全然大丈夫です」
「私、下北沢高校二年の伊地知虹夏って言うんだ!」
「あっ、後藤ひとりです」
「ひとりちゃんだね、よろしく!
私バンド組んでドラムやってて
今日ライブなんだけど、ギターの子がこれなくなっちゃって...」
いきなり名前呼びか
「だからお願い!今日だけサポートギターお願いできないかな!
ある程度弾けるならすぐできる曲だから!!」
「俺からもお願いします」
「むっ、む...」
「ありがとう!早速ライブハウスに行こう!」
押し切ってね?
いや、女子同士だけがわかるシンパシーで通じ合ったんだろう
そうに違いない
軽く雑談を交えながらSTARRYへ向かう
雑談というか虹夏が一方的に話してるだけだなあれ
「今向かってるライブハウスはSTARRYっていう私のお姉ちゃんが店長やってるライブハウスで~」
「あっはい」
さっきから全然目が合わないけど
少しコミュニケーションが苦手な子なのかな
「ひとりちゃんは運動できるタイプ?」
「いえ...、でもドッチボールは何故か最後まで残ってました」
「そ、そうなんだ
でも最後になるまで手を出せないくらい相手からしたら強者だったんじゃないかな
ほら、後藤さんオーラあるし」
嘘は言っていない
ただ物じゃないオーラは漂いまくってる
「えへっえへっ、そうかもしれないですね
私は武道館をも埋めた女ですし」
さてはちょろい人だな
しかも武道館ってなんだろう
背に腹は代えられないとはいえ、この人で大丈夫だったのだろうか...
あ、虹夏も同じような顔をしてる
「ついたー、ここがSTARRYだよ!
ほら、ひとりちゃん入って入って」
「あ、はい
お邪魔します」
「やっと帰ってきた」
先ほどと何も変わらない様子のリョウが出迎えた
心臓に毛でも生えてるのか?
「リョウ~」
「ただいま、リョウ
当事者なのに何の焦りもないのかリョウは」
「二人なら大丈夫という私の信頼の証」
「それなら俺もリョウを信頼して迎えに行くのは控えるか」
「そんな殺生な」
「ひとりちゃん、紹介するね
この子はベースの山田リョウ」
「リョウ、臨時ギターの後藤ひとりちゃん」
「よろしく」
「あっどうも後藤ひとりです」
リョウは基本無表情だから初見では怖いかもしれないし
一応フォローしておいたほうが良さそうだな
「後藤さん、リョウは基本無表情なだけで怒ったりしてるわけではないよ
変人って呼ぶと喜ぶから良かったら呼んであげて」
「ぶいぶい」
ほら変人だ
「まだ時間あるしスタジオ入って練習しよ
あ、抜け出したから店長怒ってたよ」
「え゛、弁解しておいてよー」
「虹夏、仕方ないよ
ほら、気持ち切り替えて練習してきな
店長に会ったら俺が説明しておくから」
「新君ありがとう!
ひとりちゃん、いこいこ」
「は、はい!」
「いってら~、頑張ってな」
さて、とりあえず何とかなりそうで良かった
やることもないし準備でも手伝うか
「PAさん、何か手伝うことありますか?」
「手伝ってくれるんですか?ありがとうございます~
この荷物をあっちに運ぶのをお願いします」
「わかりました」
いつ見てもPAさんって大人のお姉さんって感じですごい美人だな
きっと家でもおしゃれな食べ物とか作って食べてるんだろうな
「新来てたのか、虹夏たちはどうした?」
手伝いを終え休憩していると店長が話しかけてきた
少し眉間にしわが寄っている
「店長、こんにちは
虹夏たちなら今スタジオで練習してますよ」
「そうか」
「抜けたのはギターが来れなくなったから探しに行っただけなので許してあげてください
仕方ないことだと思うので」
「わかってるよ、別に怒ってもない」
「あ、ただ心配だっただけなんですか
シスコンですねえ」
「新、お前今月時給半額な」
「なんで!?」
「店長命令だ」
そんなコントじみた会話をしていると客も徐々に増えていた
どうやらライブがそろそろ始まるらしい
うまく練習は進んだだろうか
自分がライブをするわけでもないのに鼓動がどんどん早くなっていく
虹夏とリョウなら大丈夫だ、不安になる心配はない
そう自分に言い聞かせているうちに結束バンドの出番が来たらしい
後藤さんの変わりに段ボールが置いてあるように見えるが幻覚だろう
「初めまして!結束バンドでーす」
演奏が始まった
リョウも虹夏もとても生き生きとした表情で演奏ができていることに胸をなでおろす
虹夏の力強いドラム、リョウの学生離れしたベース、段ボールから聞こえてくる走り気味のギター音
うん、カオスだ
「いや~、全然うまくいかなかったね」
「MCが滑ってた」
「虹夏もリョウもお疲れ様!
後藤さんもお疲れ様、即興なのにすごかったよ」
「あ、ありがとうございます」
オリンピックいけるくらい目が泳ぎまくってるな
あれ、まだ一回も目が合ってない気がする
徐々に慣れてくれるといいなあ
「新くんありがとう!ごめんね、かっこ悪いライブで」
「かっこ悪いとこなんていつも見てるから大丈夫だよ」
「そんなに見せてないよ!?」
「きっと冗談だよ」
「言った本人が言うセリフじゃないよ!」
「私はかっこ悪いところなんてなかった」
「はいはい、どうせ私だけかっこ悪かったよ」
全力で演奏してたしかっこよかったけど、それを言うとリョウが調子乗るからな
そんなことを考えていると後藤さんが意を決したような顔でこちらを見る
「あ、あの!
つつつ次のライブまでにはクラスメイトに挨拶できるくらいになっておきます!!」
「何の宣言!?」
「後藤さん、結束バンドに入ってくれるの?」
「ぼっちちゃん。ほんと!?」
「え、今日あった人にいじめ?」
いつの間にかいじめっ子に育っていたなんて
これがグループ内格差というものなのか…
「違うよ、あだ名!
本人も喜んでくれてるから!」
「いじめっ子ってみんなそういうよね」
「リョウが言ったんじゃん!
それよりも、ぼっちちゃんが加入してくれるなら歓迎会しなきゃ!」
「ごめん眠い」
「あっ、今日は人と話しすぎて疲れたので帰ります」
「これが結束バンドの絆か」
「新くん!」
その後疲れた後藤さんを入り口まで見送り、リョウは当然のように帰った
俺と虹夏は片付けを済ませ二人で夜の散歩に繰り出す。
三人がSTARRYに集まった日には虹夏と散歩をすることが日課になっていた。
リョウが一緒に行く時は家に送ってからSTARRYに戻る。
リョウが一人で帰る時は二人で散歩に繰り出す。
「一人で帰っちゃうなんでリョウのバカ」
「それがリョウだから仕方ないよ」
月の光に照らされた道を歩きながら横の虹夏を見る
その顔は充実感、達成感、後悔など色々な感情が混ざり合ったようだった
「ライブ、良かったよ」
「ほんと?」
「うん、今まで聞いた中で一番の演奏だった」
「えへへっ、それならよかった」
「うん、胸を張っていいと思う
後藤さんも良いと思ったから結束バンドに入ってくれただろうしね」
「そうかな…実はちょっと不安だったんだよね
私がうまく合わせられたらもっといい演奏ができたんじゃないかって」
心に秘めていた暗い感情を吐露する虹夏
責任感が強い分ずっと縛られてしまったのだろう
「そんなことない、今できるベストな演奏だった
それにここから新生結束バンドのみんなでうまくなっていけばいいよ」
「うん、そうだね!ありがとう新くん」
「そうだよ、頑張り屋で常に上を向いてる虹夏だから応援してるけど
たまには休まなきゃだめだよ。抱え込まないで頼ってくれると嬉しい」
「そっ、そんなこと面と向かって言われると照れるね…
うん、いっぱい頼らせてもらうね」
「いっぱいは勘弁だなー」
「えー、自分から言ったのにー」
元気が戻ったようで良かった
初めてのライブが終わり、バンドが本格始動していく中で様々な障害物があると思う
それを少しでもどかす手伝いをしよう
そんな宣言を自分の中でしながら元気を取り戻した幼馴染の横顔を見ていた
相変わらず書くのが難しすぎて涙でパソコンを濡らしながら執筆しました。
頭の中ではきれいな文章が書けているんですが、自分のスキルが追い付きませんでした。でも頑張っていきます。
頑張る上での励みになるのでよろしければ感想、お気に入り、高評価などよろしくお願いします!