君たちが幸せでさえいれば   作:fgoすき

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3話

 

「今日はぼっちちゃんとライブハウスで話し合いなんだ」

 

昼休み中に虹夏が朗々な声でそう呟いた

 

「どうすれば結束力が上がるか?」

「違うよ!バンドのこれからについて!

それに仲良くなりたいからそういう話もしたいな」

 

要はバンドの話は口実で仲良くなりたいってことか

男の俺がいると後藤さん困るだろうし、今日は別行動だな

バンド活動の手伝いはするけど元々メンバーではない

そんな俺がバンド間の話し合いにいるのも変だ

そんなことを話すと虹夏の笑顔が驚愕の表情に変わる

 

「どうした、ハトにマシンガンで撃たれたような顔になって」

「ハトに打たれてどうするの!

って違う!え、新くんこないの??」

「今日は予定があるんだ、それに結束バンドの応援はするけどメンバーではないからな

部外者がいるのはおかしい」

「そんなことないよ!私一人でどうやってリョウをお世話するの!」

 

俺の存在理由リョウかよ、うける

 

「虹夏、大きな声でどうしたの?

ご飯なら今食べてるでしょ」

「ボケたんじゃないよ!

リョウ、新くんが今日来ないっていうの」

「新、それはおかしい

新なしじゃ生きていけない体にしたくせに」

 

そんな体に改造した覚えはないぞ

二人が大切だからって今まで手伝いすぎたのかもな

いや、かわいい幼馴染を放ってはおけないだろ?なあ!

しかしここだけは譲れない

 

「ほんとにごめん、今日は行けないんだ」

「そっかあ、残念だな…

どんな予定があるの?」

「ちょっと言えない予定だから内緒な」

 

(何もなくて)言えないから間違ってはないな

 

「そ、そうなんだ…、わかった、仕方ないね」

「新こないのか…」

「次は行くよ」

 

捨てられた子犬のような表情をしている二人を見たら我慢ができなかったよ…

一回いないことによって前提を作ることができるから徐々に減らしていこう、うん

 

その後少し機嫌が直った二人をSTARRYまで送り、存在しない予定を消化するために街をぶらぶらしていた

 

「せっかくだしいつも行かない場所にでも行ってみるか」

 

新宿の街に向かう途中に今日の自分の行動を顧みる

虹夏とリョウに頼まれると断れないのは悪い癖だ

俺はいつまでもこのポジションにいられるわけではない

虹夏にはいつか彼氏ができるだろうし、リョウにも彼氏ができる可能性が天動説と同じくらい存在する

そんな時に彼氏からすると俺の存在は邪魔だろう

俺だって邪魔だと思うし

あくまで俺は大切な人ができるまでの繋ぎに過ぎない

二人が真の意味で幸せにしてくれる人と出会ったとき

今まで傍にいたことを許される理由が生まれる気がした

二人を決して幸せにできないであろう自分に

 

「はぁ…」

 

そんなことを考えていると自然とため息が漏れる

断った分際で一端に罪悪感があるらしい

断った時の二人の表情を思い出すと胸の中がじくじくと痛む

 

そんな暗い自分の心と反比例するように新宿は雲一つない晴天だった

こうも晴れていると自分を馬鹿にされているようにも感じる

そんな考えを振り切るように新宿を歩き始めた

 

「歩き疲れたな、少し休憩でもするか」

 

散策途中にあった公園で一休みすることにした

公園と言っても少し探しづらい場所にあるせいか人がいなく、寂しい印象を覚える

あるものといえばさびている遊具、誰も手入れをしないのか自由に生えている雑草

そして、倒れている女性くらいだ。

 

「倒れている女性!?

大丈夫ですか!?」

 

急いで駆け寄り声をかける

 

「お、お水ください…」

「水ですね!今買ってきます、少し待っててください!!」

 

急いで自販機で水を買い女性に渡す

 

「ありがとう~

あと酔い止めとシジミのお味噌汁持ってたりしないかな」

 

なんだ、酒カスか

帰ろう

 

「どこ行くの、お姉さんの話し相手になってよ~」

「すみません、知らない生物に関わるなと言われているので」

「同じ人間だよ!?

君面白いねー、名前はなんていうの?」

「立花(あきら)です」

「明くんかー

私は天才ベーシストの廣井(ひろい)で~す」

 

ベーシストだったのか

ベース持ってないから気づかなかった

 

「そうなんですか、ベース持ってないから気づきませんでした」

「え、私の大切なベースならここに…

あ、飲み屋に忘れてきちゃった、あはは、どこの飲み屋だろう」

「ほんとに大切なんですか…

はあ、手伝いますから探しに行きましょう、廣井さん」

「ほんと~?ありがとう!そんな他人行儀な呼び方しないできくりちゃんって呼んでもいいんだよ?」

「いや、名前初めて知りました」

 

なぜこんな人の手伝いをしようとしたのかはあまりわからない

ただ、ベーシストならいつか結束バンドと関わりを持つかもしれない

その時共通の話題があったら少しでも結束バンドにプラスになると思った

そして、この行動で今日誘いを断った罪悪感を少しでも消したかったのかもしれない

 

その後飲み屋をはしごしてベースを探し出した

帰りに近いうち、自分の本拠地である新宿FOLTに遊びにおいでと誘いをもらった

あ、怪しいと思って俺本名教えてないや

 

 

次の日のバイトへ向かう途中に虹夏から衝撃的なお知らせがあった

 

「後藤さんがバイトすることになった?」

「うん、チケットノルマもあるしSTARRYでバイトしてもらうことにしたんだ。

今日もシフト入ってるよ。」

 

失礼かもしれないが大丈夫だろうか…

変な失敗で落ち込まないようちゃんとフォローしてあげよう

 

「お、てことは被るな

教育係でもするか」

「うん、私もずっと教えられるわけではないからよろしく。」

「承った」

 

後藤さん筋金入りの人見知りっぽいし、言い方に気を付けないとな

 

そんなこんなでバイトの時間

STARRYに入ったら店長にマンゴー仮面と呼ばれている後藤さんがいた

喜んでるなあれ

 

「後藤さん、久しぶりですね、おはようございます。」

「お、おはようございますううう」

「そんなに焦らなくても大丈夫ですよ、今日からよろしくお願いしますね」

 

このくらいの距離間の方が多分いいよな、男だし

 

「久しぶりで覚えてないかもだけど、沖田新です

今日はよろしくお願いしますね」

「よ、よろしくお願いします!

あ、私なんかに敬語は使わなくて大丈夫です…」

 

ネガティブすぎるだろ

 

「後藤さんなんかとは思わないけど

これからもっと仲良くなれるようにタメ口にしようかな」

「私と仲良くなりたいんですか、えへへ、サインあげましょうか?」

「せっかくだし貰っておきたいけど

色紙がないから、また今度の機会にお願いするよ」

「色紙がないなら仕方ないですね…」

 

段々後藤さんがわかってきたぞ

人とのコミュニケーションが苦手だけど承認欲求が強いタイプだな

色紙がないことに心底残念そうな顔をした後藤さん

その後ろでは鬼の形相でこちらを見ている店長がいた

はい、仕事します!

 

「じゃあ俺が準備とか掃除を教えるよ

その後は虹夏がドリンクを教えるから、わからないところがあったら聞いてね…っていうのが難しかったらわかりませんってオーラを発してくれると助かる」

「良かった…それなら得意です」

 

聞いてと言った瞬間絶望した様子だったから

急遽変更したが正解だったらしい

 

掃除が進みそろそろ終わろうかと思ったが

後藤さんの姿が見えない

 

「あれ、後藤さん?」

 

慌てて周辺を捜索するが見当たらない

何となくテーブルの下をのぞくと

安住の地にいるような顔で休憩している後藤さんがいた

 

「住み心地はどう?」

「落ち着きます…あ゛すすすすみません!」

「人がいない時なら少しはいいよ

店長には内緒ね?」

「あ、ありがとうございます」

「どういたしまして

じゃあ次は虹夏のところでドリンクを教えてもらってね」

「は、はい!」

 

慌てて虹夏の方へ向かう後藤さん

次の仕事に緊張しているのかナンバ歩き*1になっている

うーむ、見事なナンバ歩き

まあ、虹夏なら緊張してる後藤さんでもうまくやってくれるだろう

 

脳内で虹夏にすべてを託し、チケット販売をしているリョウの手伝いに向かった

 

 

*1
右手と右足、左手と左足を同時に出す歩き方




前の投稿より少し遅くなりました
書く側になって思いますが、一話で一万字書ける人って本当にすごいですね…
今のところ三千文字が限界です
そういう人達を見習って頑張ろうと思います
よろしければ感想、お気に入り、高評価などよろしくお願いします!
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