君たちが幸せでさえいれば   作:fgoすき

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卒論はしすべし


5話

俺の知らない虹夏を知ってから数日がたった。

学校で先生に呼ばれて遅れてしまったので早歩きでスターリーに向かう。

その途中どうしてもあの日のことを考える。

俺はあの日以降思考の海に溺れていた。

自慢ではないが俺はリョウと虹夏とは幼馴染でずっと一緒にいる。

だからお互いを良く知っている。そのつもりだった。

しかし、あの日見た虹夏に俺の考えは打ち砕かれた。

そこにいたのは俺の良く知る天真爛漫で世話焼きな虹夏ではなく、妖艶な雰囲気を持ちこちらを酔わせてしまうような色気を持つ女性だった。

俺は何をわかった気になっていたのだろうか。完璧に知ることが不可能なことはあの時に痛感したはずなのに、少しうまくいった途端に驕りが生まれる。そんな自分への自嘲や後悔と同時に、なぜ虹夏があんなことを言ったのかという疑問が心の中を支配する。

バイト中やみんなといる時には考えないようにしているが、そんなことは関係ないと言わんばかりに抑えつけた隙間から力ずくであふれ出して思考に割り込む。

しかし、何度考えたところで答えが生まれることはない。

このままではどうしようもないと一念発起した俺は、あの出来事の後も態度が変わらない虹夏に直接聞いてみることにした。

虹夏の新しい面を知れたということは喜ばしいことだが、このままでは俺のことが好きなのではないかと勘違いが生まれそうだ。そんな自意識過剰なモンスターにはなりたくない。

 

聞くことに多少緊張しつつSTARRYの扉を開ける。

 

「遅れましたー、すみません。」

 

「ローンがあと30回残ってるのに…あひゅう…」

「喜多ちゃああああん」

 

人が死んでいる…!?

 

そのあと蘇生に成功した喜多ちゃんから話を聞くと紆余曲折あったが結束バンドに加入することになったらしい。

なぜかメイド服を着た話が途中に混ざっていたが多分気のせいだろう。

 

「新先輩、逃げてしまいすみませんでした!」

 

体が少し震えながらもしっかりとこちらに頭を下げる喜多ちゃん。

無断で逃げてしまったことは悪いのかもしれないがその裏には果てしない葛藤があったはずだ。

 

「気にしないでいいよっていうのは難しいかもしれないけど

俺は気にしてないよ」

 

威圧感を与えないようになるべく笑顔で謝罪に答える。

俺の言葉に驚いたのかぽかんと口を開けてこちらを見つめる喜多ちゃんに再度言葉を投げかける。

 

「俺も虹夏やリョウとずっといるから楽器のことは少しはわかる。後藤さんの言う通り相当練習していないと指の先の皮は固くならないと思う。結果が思うように出ない中一人でずっと練習してたんだよね。」

 

それは暗闇の中を手探りで進むように途方もないことだったはずだ。いつうまくいくかわからない中、ライブに間に合わない恐怖や逃げてしまった罪悪感を抱えながらも一人で突き進んできたんだ。

 

「それができる喜多ちゃんはすごい努力家だし、きっとこれからどんどんうまくなれる。

そんな喜多ちゃんだからこそ結束バンドに入ってくれたことは本当に嬉しい。だから下を向いたりせず自分に胸を張って頑張ってね」

 

うまく言葉をまとめられない中、必死に自分の思ったことを喜多ちゃんに伝える。

うまく伝わってくれるといいんだけど。

後ろから聞きなれた声で口説いてると聞こえてくるけど幻聴だろう。

 

「…」

 

放心したままずっとこちらを見つめる喜多ちゃん。

その瞳はかすかにふるえている。

なんだろう、分かりづらかったかな…。

 

「あ、ありがとうございます!!新先輩の言ってくれたように頑張ります!

頑張ってギターうまくなってリョウ先輩に貢ぎます!!」

 

なんだって?

やる気がみなぎっているのか笑顔で目を輝かせながら俺の手を取りブンブンと振り下ろす喜多ちゃん。

 

「聞き捨てならないことが聞こえた気がするけど、やる気が出たならよかった。

でもそろそろ手が取れそうだから速度を緩めてくれると助かるな」

「はい!やる気出ました!」キターン

 

うわっまぶしい!!

手のスピードが上がったし相当興奮してるな。

あ、光に巻き込まれた後藤さんが爆散してる。

後で治してあげないと。

 

「喜多ちゃん、手がとれちゃうって

あ、取れた」

「取れないよ!?」

 

そんなコントじみたことをしているとやっと喜多ちゃんも落ち着いてきたみたいだ。

俺は後藤さんを修復しながら今後のことを聞いてみる。

 

「やる気が出たのはいいことだけど、ギターはどうしようね

リョウ、貸してあげたら?

あ、後藤さん復活した?」

「あっはい、ありがとうございます…」

「いいけど、そのかわりこのベースは私が頂く」

 

追剥かな?

 

「え、私のベースがリョウ先輩のもとに…これは実質リョウ先輩に貢げるってこと!?」

 

変態かな?

どうやら結束バンドに来るメンバーは個性が強い面々が集まるらしい。

キラキラと輝く双眸でリョウを見つめる喜多ちゃんをみる限り、リョウに貢げることが最上の喜びのようだ。

その姿は俺の言葉を聞いたとき以上に嬉しそうで、少し悔しさを感じているとリョウがこちらを見て鼻で笑っている。

明日は起こしに行くのやめよう。そう心に誓い、結束バンドの面々を眺める。

これからが楽しみだなと素直に思い、心が躍った。

 




めっちゃ遅れたうえに短くてすみません。
今書ける限界でした…。
よろしければ感想、お気に入り、高評価、ここすきなどよろしくお願いします!
モチベに繋がりまくります
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