君たちが幸せでさえいれば   作:fgoすき

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こんな短文を書くのに3ヶ月もかける投稿者がいるらしい…




幕間

「うー、バカバカバカー」

 

ベットに寝て足をバタバタと動かす。足が当たる度にベットの軋む音がギシギシと部屋に響き、私の声と耳障りの悪いセッションを奏でる。

 

「夢中にさせようとは思ったけど、あんな近くであんなこと言っちゃうなんて」

 

少し、ほんの少し私のことを見て欲しかっただけなんだ。

新。私とリョウの幼なじみで私たちをとても大切にしてくれる男の子。自分よりも私たちをずっと優先してくれて、バンドを始める前も、始めてからもずっと支えてくれている。

ぼっちちゃんや喜多ちゃんにも優しいのは嬉しいけどちょっと寂しい。

 

そんな彼が私たちから少しずつ離れていっている。これは多分リョウも感じていることで、それがなぜだか全く想像がつかなかった。嫌われているとは思わない、彼は心から私達を大切にしてくれていると実感を持っているからだ。

たとえ彼氏が出来たとしても、彼以上に大切にしてくれる人はいないだろうと断言出来る。

 

理由がわからないなら、私に釘付けにしようと思った。どんな理由があろうとも離れられないくらい夢中にさせれば、そばに居てくれるんじゃないかって淡い期待を抱いた。

 

「大人っぽくできたかな」

 

さっきの自分を思い出す。精一杯背伸びをしてまるで誘惑するように彼を誘う自分が思い浮かび、枕に顔を埋めながら声にならない音を口から漏らす。

 

「っっっ」

 

わかっている。あんなのは自分に似合わないと。ちんちくりんな私に大人なんて言葉は当てはまらない。でもいいもん、新君はいつもの私をよく褒めてくれるし。

 

今日の私にだって顔を赤くしてたし。可愛かったなー、耳元で囁いた時に魂を吸われたように口を開けてこっちを見てる新君。

 

「うんうん、やっぱ私だってやれるんだよ」

 

やっぱり新君も男の子なんだなあ、ちょっと色気を出して迫っただけであんなに真っ赤になるなんて。

あれ、てことはタイプは年上のお姉さん…?

そ、それはだめだよ!!

 

新君はただでさえ年上受けが良いんだから、捕まったら即食べられちゃうよ。エッチなのはいけません!やっぱり私が守らなくちゃ。

そうだよ、そのためにどうするかを考えないとなんだ。

 

暴れ回っている思考を元に戻す。今回みたいなことはあんまり出来ない。私自身が恥ずかしいのもあるし、やっぱり新君にはいつもの私にハマってもらいたい。二度と離れるなんて考えが浮かばないくらいに。

 

彼のことを考えると自分でも分からない感情が体の奥底から沸いてくる。この感情をなんて呼ぶのだろう

 

「私のこの気持ちはなんなんだろうね」

 

ねー、と目の前にいるぬいぐるみの額を押し問いかける。クマを模したぬいぐるみの毛がふわふわと気持ちいい。この子は確か新君がくれたぬいぐるみだ。

 

そのままぬいぐるみの体に指で「好き」となぞってみる。なぞる度に滴が水溜まりに落ちたように心が揺らぐ。親愛、恋愛、独占欲、嫉妬心、寂寥、

色々な感情が混ざり合いどの色が正しいのかが分からない。

 

分かることはそばに居て欲しい、私を見てほしいという願いだけだった。

 

「うん、やっぱり今回みたいなのはダメだ」

 

今日みたいな背伸びした私じゃなく、普段通りの私を見てほしい。新君がいつも褒めてくれてるように魅力はきっとある。

慌ててる新君が見たいからたまにはいいかもしれないけど

 

なんで離れようとしてるのかは分からないけどまだ近くにいてくれるってことは、離れる時はなにかがあるんだ。それがくるまでに夢中にさせてみせる。

 

私自身の感情の答えはまだ分からなかった。ただ、色気なんかに頼るんじゃなく、私自身をもっと好きになってもらおうと、夢中になってもらおうと思った。

まずはバンド活動だね、私自身でも、私の音でも。

 

バイトで疲れていた体で考え事をしていたせいか

心地よい倦怠感に体が包まれ、瞼の重みに抵抗することができない。

 

虚ろな意識で目の前のぬいぐるみを抱き寄せる。昔からなにかあった日はこういう風にぬいぐるみを抱いて寝てたな…。

そういえばこのぬいぐるみはいつ貰ったんだっけ。

 

意識が落ちる瞬間にそんなことを考え眠りにつく。瞼の奥で小さな私が泣いていた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自宅に戻り、暑くなった体を静めるように練習に没頭していた。

いつもならそろそろ汗で冷える体は、私の心情を表すようにその熱を芯に灯し続ける。

 

ふと空腹で我に返り、時計を確認すると短針は12の数字を追い越している。どうやら夢中になりすぎていたと気づくのに数秒の時間を要した。

 

「急いでご飯とお風呂をすませないと」

 

用意されていたご飯を早急に消費し、シャワーで汗を流した後に浴槽に浸かる。

暖かいお風呂が溜まっている疲れをお湯に溶かしていき、とても心地いい。

 

この疲れは新のせいだ。あんなこと言うつもりはなかったのに、虹夏と何かあったと聞いた時に顔を赤くするから。

 

「ばか…」

 

自分の呟きがお風呂内に木霊する。耳に届くその声には、明らかな嫉妬の色が滲んでいる。

 

昔から三人一緒だった。大人になっても何も変わらずこの心地よい空間に浸っていられると勘違いしていた。結局私は何も知らない子供だったんだ。

 

いつまでも同じままではいられないことも、新を虹夏に取られるかもしれないという恐怖が自分をこんなに縛り付けることも。

 

この気持ちが恋なのかなんて分からない。小さい子供が友達を取られるのを怖がるような、そんな幼稚な理由かもしれない。だけど、虹夏だけにあんな顔をする新を見たくなかった。

 

新への執着が私より強かったから虹夏が何をしたのかは想像がつく。ただ、何をしたとしても私は負けるつもりは無い。私が新を夢中にさせて

離れられないようにする。

 

もちろん虹夏のことも大切だ。新とのことでは勝負するけど、普段やバンドでは普段通りだ。

 

「勝負だよ、虹夏」

 

私の人知れず呟いた宣言は、浴室に反射したまま消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日と昨日で色々なことがありすぎて思考が追いつかない。ベットに横になりながら二人の幼馴染のことを考える。

 

私だけを見てくれと、彼女らの魅力の1部を発揮し、俺の視線を釘付けにした幼馴染。

彼女達から離れようと思っている俺を、黄蘗色と茜色の瞳が縛り付けた。

 

誰よりも綺麗で、これから先バンド活動を通してスターへの道を登っていく二人がその瞳に俺だけを映している。その事実にどうしようもなく気持ちが昂り、そう感じている自分に強く落胆した。

 

離れる離れると言いながらも、彼女らに焦がれ甘えてしまっている事実。

自分でも薄々気づいている。俺があの二人との関係を断ち切るには、もう修復できないくらい壊すしかないのだと。

ただあの二人を傷つけてしまうことも、彼女らの心から俺が居なくなってしまうことも怖くて仕方がない。

 

その気持ちに縛られ、まだ自分にはできることがあるからと、まだ自分には価値があるんだと思い続けている。

だけどそれも近いうちに終わるのだろう。バンド活動が始動し、彼女らを支えるものができた。できてしまった。

 

そのことを心から嬉しく思っている気持ちも決して嘘ではない。バンド活動はずっと二人が望んでいたことだし、本当に嬉しそうな顔をしていた。

ただ、喜びの奥で心が軋んでいる音が聞こえた。

 

離れる心構えをしよう。日課のようになってしまった考えを抱きながら、目を閉じた。

 

 

 

 




まだ見てくれる人はいるのか分からないけど、最新話です。
いや、ストーリーは進んでないんですけど…

今年から社会人なんですけど、仕事しながら週1投稿とかできてる人凄すぎません?

短文ですけど感想や高評価、ココスキなどいただければモチベーションなど上がるので!!!どうか!!!

次皆さんに会えるのがいつになるやら分かりませんが
次もお願いします!
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