VRMMOって聞いてたんすけどなんなんすかねこれ 作:なみん
ロシア語はさっぱりなんだ
*フィーエside*
赤い猪に飛ばされたかと思えば、いきなり空を飛び、剣を非常識な速度で投げて猪を殺し、そのまま空の彼方に消える
「……は?」
怒涛の展開に、僕は完全に放心していた
「……はぁ」
気を取り直す。まず目の前の二人の安否を確認しないと
「マリア、エッダ。大丈夫か?」
「は、はい! バリアのおかげで無事です!」
「私も大丈夫です……でもセクマさんが……」
二人とも無事でよかった。私は空を見上げる。セクマの姿はもう見えない
「あいつはどうやったら、この一瞬で理解の追いつかない状況を作り出せるんだ……」
ある意味、感心するしかない。呆れと感心が半々だ
「しかし、あいつはどこまで飛んだんだ……? ああもう、またこんなしょうもないことではぐれるのかよ!! 探しに行くこっちの身にもなってくれよ、なあ!!」
空に向かって叫ぶが、当然返事はない。でも良いんだ、少し気は晴れたから
エッダが悲痛そうな表情で僕を見ながら話しかけてきた
「あの、フィーエさん。あの高さだと、セクマさんは恐らく……」
「ん? ああ、死なないよあいつは」
冷静にエッダに伝えると、変な目で見てきた。多分信じていないんだろう。気持ちは分かる
上を見ても姿が確認出来ない=死が確定する高度まで飛んだという事だ
「あいつは気持ち悪いくらいに頑丈だから。なんなら探す方が面倒だから。あいつの場合」
「ぜ、絶対的な信頼を寄せているのですね……」
何故か僕を見る目が更に悪化して、理解できないものを見る目になっていた
「いや、エッダさんその目はおかしい!! 僕が変なんじゃなくてあいつが変なんだよ!! でも事実だから!! 嘘つく意味なんて無いでしょ!?」
何故僕が変な人みたいな扱いを受けなきゃいけないんだ!?
変な目で見られる原因となった空飛ぶアホ……もとい、セクマを恨んでいたら
ドォォォン!!
私の少し横に、轟音を響かせながら何かが落ちてきた
「ひゃあああああっ!?」
情けない声が、自分の口から出た
*セクマside*
これはもうダメかも分からんね。そう思っていたのだが、案外すぐ失速した
風が止んで、重力が戻ってくる。下を見ると、フィーエ達がいた
跳躍時の角度的に、しばらく会えないかもと思っていたが、案外遠くまでは飛ばなかったみたいだ。もしや大剣を投げた反動で横方向の飛距離がマイルドになったか
「頑張ればフィーエの隣に落ちることが出来そうだ」
私思うんです。声も上げずに真横に落ちたら、さぞ面白いだろうと
このまま落ちたら流石に痛いか? 関係ないね。面白さが勝ってる。首が折れても私は一向に構わんッッ!!
ドォォォン!!
「ひゃあああああっ!?」
着地時(墜落とも言うかもしれない)の衝撃と音に驚いたフィーエが、可愛らしい悲鳴をあげる。えぇっなんですかその可愛い声!?
「脅かすな!!」
着地と同時に、ほぼノータイムですくっと立ち上がってフィーエに言う。フィーエはと言うと、尻もちをついた状態で俺を見上げながら、口をぱくぱくさせていた。うーん、可愛い
「こ……」
「こ?」
「こっちのセリフだっ!! 脅かすなっ!!」
「つい」
「何がついなんだよっ!!」
フィーエが本気でキレてる。可愛い。なんでこんなあざとい?
隣でマリアちゃんとエッダが、完全にバケモノを見る目で俺を見ている。何故
「ったく……ほら、言っただろ? こいつは気持ち悪いくらいに頑丈なんだ」
何故か俺を罵倒するフィーエ。とりあえずありがとうございます
「とりあえず、牙を取ろうか」
デカい猪の牙を二本抜く。おおグロい、なんか歯と一緒に諸々抜けてヴエエエエエエエッッ
「グロいのが苦手なら少しは躊躇しろよ……」
フィーエが咎めてくるが、全くその通りだと思います
次に、地面に深々と刺さった大剣を抜こうとする
が、駄目っ……!! 柄頭が見えない。どこまで刺さったのこれ
「てか死体邪魔だな」
蹴っ飛ばして猪の死体をどける。それを見たマリアとエッダがドン引きしてるような気もする。邪魔だから仕方ないじゃん!!
仕方ないついでに、剣が刺さって出来た地面の割れ目を両手で掴んで、ちょっと広げてみる
ゴゴゴと音を立てながら少し広がる割れ目。うーん、何かこう、良くないな
少し興奮してると後頭部を殴られる。イッテェ!! 俺の灰色の脳細胞が死滅するでしょ!?
叩いたのはフィーエか。だからバリアは防御用でしょうが!! 当たり前みたいな顔で攻撃に使っちゃってさ!!
「冗談みたいな事するな!!」
「ええい、冗談ではない!!」
変なキレ方をしてしまった。これが若さか
広げたら剣の柄が見えたので、少し地面を掘って潜り、無事回収
「はあ……一旦報告に戻ろう」
目頭を抑えながらフィーエが提案する。マリアちゃんとエッダも賛成
なんとなく無言の俺に、フィーエがツッコミを入れてくる。
「お前もちゃんと返事しろ」
「はひ」
「ちゃんと返事しろ!!」
いつぞやの脛キック〜バリアを添えて〜が来た。本当に痛くて泣きそう
*
ギルドに戻ると、受付嬢が目を丸くした。あ、表情変わるんですねあなた
「……これは突然変異の『レイジングボア』ですね。倒せないことはありませんが、銀等級以上でないと受注すら出来ない相手です」
どうやら強いやつだったらしい。これは報酬が期待できますな
「等級って何?」
「お前、話を聞いてなさすぎていっそ清々しいな……」
「聞いてたよ? なんか等級とかがあるらしいね」
「今聞いたからだろ? あまり適当な事言ってないで少しは覚えろよ」
そんなこと言われても困ります。大体覚える事が多いんだよ。それにフィーエが覚えてくれるからいいと思ってる
「覚えなくてもフィーエがいるから大丈夫」
「私がいる前提で生きるな」
「だって頼りになるし」
「……は?」
素っ頓狂な声をあげるフィーエ。今だ畳み掛けろっ!!
「かわいいし」
「はあっ!? 今なんて!?」
「何も言ってないよ」
「……いや無理があるだろ!!」
いい感じに乗ってきたフィーエ。そうだ、そのまま話を逸らすのだ
「気のせいだよ。ほら、報酬の話に戻ろう?」
「逃げるな!! ちゃんと今の言葉説明しろ!!」
「説明って、事実を言っただけだよ?」
「事実ってなんだよ事実って!!」
隣でマリアとエッダが、完全に「この二人いつもこうなの?」みたいな顔で見てる。ほんといつもうちのフィーエたんがすみませぬ
結局「後日改めてギルドに来てください」とのこと。報酬は5万ゴールド。昨日の10倍ときた
この戦果を持って今日は煮付けともにょに報酬バトルを仕掛ける。昨日の雪辱を晴らすのだ……
*
宿で煮付けともにょの帰りを待つ。あいつら遅いな……もしかして思ったより稼げてないから頑張ってたりしてるんじゃないのォ〜?
とか思ってると帰ってきた。ただいまも言わせねえ、目が合ったら報酬バトル。これ基本でしょ
え、挨拶くらいはしろ? そんなの人の勝手
「おい煮付け、今日の稼ぎ勝負だ! 俺達はレイジングボア倒して5万ゴールドだ!! 勝てんぜ、お前は……」
驚いている煮付け。そうだろう……なんせあのレイジングボアだ。あれ、レイジングボアってなんだっけ
「フッフッフ……」
煮付けが不敵に笑う。何が面白いんだテメェ。喧嘩する?
「アタシら、地竜倒したっす」
「なにそれ」
詳細を聞くと、予想通りイージーボアが見つからず、稼げていないからと少し遠くまで行き、そこで地竜とか言うクソ強いモンスターに他の冒険者が襲われていたので、煮付けがワンパンで殺したとか
しかもその地竜、捨てる所が無いくらい使える素材が多いモンスターらしいのだが、なんと地竜の死体の損傷がほぼ無かったので50万ゴールドも貰えたということだった。なんだその金額。俺らの10倍だぞ10倍
「てかおかしくない? どうやってほぼ無傷で倒したのさ」
「そこはアタシがこう……神経だけ壊したっす」
「神経だけ壊したっすか」
ノッキングマスターかお前は
それもうバフとか関係なくない? モノの壊し方が本能で分かるタイプ?
ともかく、暫くは金に困らなさそうで良い
今日も疲れた。明日は休みにしませんか。ダメですか、そうですか