VRMMOって聞いてたんすけどなんなんすかねこれ   作:なみん

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前回のあらすじ

瞬間、拳、吹き飛んで。


漫才なんかしてねーよ

 

 

「「「……」」」

 

 

 想像を絶する速さで吹っ飛んでいくフィーエ。その先には、少し小さめの山があった。山と言うよりは丘っぽいけど

 フィーエの姿がどんどん小さくなっていき、遂にフィーエが山へと激突、遠くからでも分かるくらいの砂埃が舞うのが見えた

 数拍置いて、衝撃と音が一緒にやって来た

 この惨劇を引き起こしたのは誰か──。そう、俺である。ヤダ、私強すぎ……?

 

 

「ふぃ、フィーエさああああん!!!!」

 

 

 衝撃と音が通り過ぎた後、煮付けが叫ぶ。ぶっ飛んで行ったフィーエを追いかけるが、飛ばされた距離が距離なので、辿り着くのはいつになるやらだ

 

 

「あ、あああ……私のせいで……フィーエさんが……!!」

 

 

 膝から崩れ落ちて、頭を抱えながら呟くもにょ。誰のせいかと言われれば、犯人は間違いなく俺かヤスだと思う。とりあえず、憔悴した様子のもにょを落ち着かせますか

 

 

「落ち着けもにょさん、これはVRだから死にはしないよ」

 

「そうでした!!」

 

 

 もにょがハッとして、こちらに顔を向けながら元気いっぱいに叫ぶ。切り替え早いよ

 

 

「ほら、山が吹き飛ぶほどの威力だったので、思わずお亡くなりになられたかと思いまして」

 

 

 もにょがそう言いながら差した指の先を見ると、山の六合目辺りにクレーターが出来ていた。こんな遠くから見ても分かるそれは、どれだけの衝撃だったのかと思うと同時に、これをやったのが俺と言う事実を思い出す

 

「いや強いな俺!?」

 

 

 と言うか、こんな所でボーッとしてる暇は無い。煮付けが向かってはいるものの、距離が遠すぎる。ここで、一つの考えが俺の頭に浮かんだ

 

 

「もしかして俺、足も速いんじゃない?」

 

 

 山に向かって走ってみる。すると、一瞬で煮付けに追い付いた

 

 

「ウェッ、セック〇マシーンさん!? 速っ、風ヤバッ!?」

 

 

 とんでもない下ネタを言いながら驚く煮付け。いや、俺の名前だったわ

 

 

「俺もビックリしてるよ。フィーエさんは俺が運んでくるから、もにょさんと一緒に待ってて。後、流石に俺の名前ヤバいから、セクマって呼ぶといいかも」

 

 

 返事を待たずにフィーエの下へ走り出す。とんでもない速さだと分かるんだが、何故か地面に転がる石や岩、木とその根っこでさえも見えるし、見てからでも躱せる。気分はまるでスーパーなマンだ。見た目女だけど

 

 

     *

 

 

 目的地に辿り着くと、爆心地(グラウンド・ゼロ)で腕を組んだフィーエがいた。しかもこっちを睨んでた。クールな見た目も相まって強キャラ感が半端ない

 

 

「あれ、フィーエさん。ログアウト出来なかったんだ」

 

「その前に、僕が話してる途中でぶん殴るなーー!!」

 

 

 爆心地(グラウンド・ゼロ)で叫ぶフィーエ。ドシドシ、とこちらに向かってくるが、クレーターで出来た傾斜のせいで、登りきれないようだ

 仕方ないから俺が降りるか……

 

 

「話? なんか言ってたっけ」

 

「僕がログアウト出来た時の為に、住所教えて欲しいって言うつもりだったんだ!! それなのに途中で殴った!! お前が!!」

 

「いや、ごめん。せめて一思いにやった方が良いのかなって。そんな事考えてたら話聞いてなかった」

 

 

 だって、フィーエにとっては嫌な事なんだから、変に焦らすよりはそっちの方が良いじゃん? と思ったのだが、どうやらフィーエはそうは思わないらしく

 

 

「もしログアウトしてたら、僕だけが助かって、お前達は助けられなかったかもしれないんだぞ……。結局ログアウトは出来なかったんだが」

 

「困ったねぇ」

 

 

 とりあえず、ログアウト出来なかったことは皆に共有した方が良いと思ったので、フィーエを背負って走り抜ける事にした。その旨を伝えたら了承してくれたので、背負って来た道を戻った

 

 

     *

 

 

 帰ってくると、煮付けが恐る恐ると言った感じで聞いてきた

 

 

「セクマさん……フィーエは……」

 

「……残念だが、力及ばず……」

 

 

 首を横に振り、煮付けに伝える。煮付けの隣にいたもにょが、両手で顔を覆い泣きながら言う

 

「そんな、フィーエさん……!! やっぱり私のせいで!!」

 

「畜生……!! なんでっすか!! なんで世界はこんなに残酷なんすか……!!」

 

 

 フィーエの死を嘆く二人。背負っていたフィーエの亡骸を、優しく地面に降ろす

 

 

「ごめん……。俺にもっと力があれば、こんな事には……っ!!」

 

 

 全て、俺のせいだ。俺に力がなかったから。俺が弱かったから……!!

 

 

「殺すなーー!!」

 

 

 横たわっていたフィーエが、突然叫び出した

 

「っ! フィーエ!! 無事か!?」

 

「無事なのはさっき確認しただろ!! 確かに、喋ってる途中だから危うく舌を噛んで死ぬところだったけど!!」

 

「俺にもっと力があれば……」

 

「その場合は本当に死んでいただろうな!!」

 

 

 とまあ、ちょっとした冗談だったんだけど、思いの外ノッてくれたフィーエだった。実はツッコミを楽しんでるんじゃないの?

 

 

「とにかく、無事で良かったです!!」

 

「提案したお前も主犯だからな……」

 

「てか、生きてるって事は、ログアウト出来なかった感じっすか?」

 

「ああ。色々と揺さぶられたが、警告すら出なかった」

 

「それじゃあ……」

 

「当分このままだろうよ」

 

 

 フィーエがため息をついた

 これはふざけてる場合では無いかもしれない。何か、ログアウト出来る手段は無いかと皆で話すが、良い案は出なかった。これ、詰みなのでは?

 

 

「参りましたね……」

 

「これからどうするっすか?」

 

「さっき吹き飛ばされてる時に見えたんだが、あっちに……、多分西の方だな。城が見えたんだ。とりあえずそこを目指そうぜ」

 

「そうなんだ」

 

「さっき教えただろうが!? お前も、そうなんだ。とか言ってただろ!! 同じ事言うのやめろ!!」

 

「すみません、よく分かりません」

 

「それは〇iri!!」

 

 

 小気味いいような悪いような漫才をしていると、ある事に気付いた

 

 

「じゃあ、お城の方に行こうよ。お腹空いたしさ」

 

「はぁ? お腹空いた?」

 

 

 VR上でお腹が空くっ事はありえないのだが、実際お腹が空いているのでしょうがない。それを知っているのか、フィーエが目を丸くしてこちらを見ていた。

 

 

「お腹空いたんだよね」

 

「……それ、本当か?」

 

「うん、本当」

 

「セクマさん、冗談上手いっすね。異世界転移のノリっすか?」

 

「いや、冗談じゃなくて本当なんだけど」

 

「でも、VRってお腹空いたーってならないんじゃ?」

 

 

 皆冗談だと思っているようだ。信じられないみたいだが、どう考えてもお腹が空いている時の感覚がする

 

 

「次から次へと変な事が起こるな……。これもバグか? それとも本当に転移でもしたって言うのか? 有り得ない話だが……」

 

「だからさ、早く行こうよ。ご飯食べてから色々考えた方が絶対良いって」

 

 

 古来より、人は腹が減っては戦ができぬみたいな感じで生きてるのだ。つまり、ご飯食えばなんとかなる。

 皆を先導するように、西へと歩き出す

 

 

「おい、城に行くのは賛成だが、そっちは東だ」

 

 

 俺を引き止めたフィーエがそんな事を言い出したので、俺は、フィーエに疑問をぶつけた

 

 

「そもそも、なんで方角が分かるのさ」

 

「太陽を見ろ。あっちから登ってきているだろ。その逆が西だ」

 

 

 そうなんだ。

 

 

     *

 

 

 太陽が真上まで登った頃、城に着いた。いかにも異世界って感じのデカい門。そこを通る大勢の人。いかにもだ

 

 

「やっとオンラインゲームっぽくなってきましたね!!」

 

「やっとっすね〜」

 

「そうだな」

 

「ところで、これからどうするの?」

 

「ああ、どうやら、救オンラインには冒険者ギルドなる機能があるらしくて、そこでお金を稼げるらしい。稼いだお金でご飯を食べるのが良いんじゃないかと思ってな」

 

 

 このゲームをやる前に色々調べたらしいフィーエ。それならちゃちゃっと稼いで早く食事にありつきたいな

 

 

「それとお前達二人、名前がヤバすぎるから偽名でも考えておくんだな。人前で呼べない名前だぞ」

 

 

 それはね、俺もそう思うから大丈夫。とりあえず冒険者ギルドとやらを目指して行きますか

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