僕は
さて、中学校卒業も近いし、せっかくだから決闘者育成機関たるデュエルアカデミアに入りたいと一念発起しました。
……それだけです、ハイ。
海馬ランド。数年前海馬コーポレーション現社長で当時高校生の海馬瀬人がある少年を打ち負かすためだけに築いた死のテーマパークがあったといわれる場所。
デュエルアカデミア高等部の入学試験実技部門がここで行われる。かなり緊張しいの僕ではあるが、あるデッキを見るとなぜか冷汗がサッ、と引いていくのを感じられる。
今回の入学試験のために組んだデッキで、実は結構前から慣らしていたんだけど、なにせモンスターカードのデザインがいちいち他の悪魔族より悪魔しているものだからかなり敬遠されているという、それはまあご近所に不評のデッキなので仕方ない。
「次、黒野遊史君だね。試験番号6番」
ん、僕の番ですか。試験番号は筆記試験の結果順なのです、エヘン。まあ上には上がいるということで。
試験官は元プロデュエリストとか教員さんばかりだからな、肩が結構重くなる。
「はい、お願いしますね」
「うん、よろしく。さてと……」
と、試験官が丸っこいデュエルディスクを展開して待ち構えていた。あのディスク、デッキを入れたら後は左の2面が伸びて出てくる仕組みなんだ。
試験官がこちらに準備を促している。指示通り見るからに痛々しい街的なディスクを展開した。こっ恥ずかしい気がしないでもない。
「なんだい、そんな顔を赤らめて。まあごらんの通りいっぱいフィールドがあるから気にしないでほしい」
「はあ」
確かに10面デュエルフィールドがある。全部ディスクのソリッドビジョンと連動しているのだとか。さすが海馬コーポレーション、太っ腹。
「筆記試験の成績から順番にということだからね。さ、その実力見せてくれ」
「はーい」
「「デュエル!!」」
遊史 LP4000 VS 試験官 LP4000
先攻は、僕か!ディスクの能力により自動で決まる仕組みかな?
「先攻もらいます、ドロー!」
違う、そうじゃない。このデュラハン野郎じゃない。
「スタンバイ、メインフェイズ。【ドル・ドラ】通常召喚!」
ドル・ドラ
風属性・ドラゴン族
ATK:1500
最初に僕のフィールドに現れたのは、ヒトでいう首が角で、腕がドラゴンの頭部というドラゴン。
「さてと、カードを3枚伏せてターンを終了します。どうぞ」
「ふむ、では私のターン、ドロー」
「では念のためスタンバイフェイズ時に罠カード【覇者の一括】を発動。試験官さんはこれでバトルフェイズを行えなくなります」
別にこのターンダメージを受けたっていいけど、まあ、ね?先んずればなんとやらとも言うし。
「んでもって効果処理後【強欲な瓶】も発動して1枚ドローします」
今度は【地縛霊の誘い】ねえ、ふーん……。
「さらにトラップモンスター【死霊ゾーマ】発動!そのまま守備表示で特殊召喚します!」
魔法・罠ゾーンから濃いモヤモヤが一気に噴き出したかと思うと、
死霊ゾーマ
闇属性・アンデッド族
DEF:500
骨の翼を広げたようなバケモノの形になった。一部からは気味悪げな顔をされているけど気にしない。僕のデッキなんてこんなものだから。
「何が目的かはさっぱりわからんが、メインフェイズ。相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールドにモンスターが存在しないので、手札から【サイバー・ドラゴン】を特殊召喚する」
「「「!!!」」」
「!…ふーん」
サイバー・ドラゴンのワードに皆一様に驚いている。確かにサイバー流は世界でなかなか珍しい『サイバー』カテゴリーカードによる、いわば“奥義積み込み”のデッキだけど、サイバー・ドラゴン自体はスタンダードデッキで見たことがある
サイバー・ドラゴン
光属性・機械族
ATK:2100
その竜型のメカニックボディの輝きに皆圧倒されているようだ。そりゃあねぇ。僕だってこんな市場で大人気でありながら手に入らないレア中のレアカードを拝める機会はめったにないんだから。
「ってことは『サイカリバー』?」
「そうだ。通常召喚【死霊騎士デスカリバー・ナイト】!」
死霊騎士デスカリバー・ナイト
闇属性・悪魔族
ATK:1900
そのサイバー・ドラゴンの隣に黒い騎士が実体化した。そんなに怖い印象はない。
『サイカリバー』とは、このサイバー・ドラゴンと死霊騎士デスカリバー・ナイトによる中火力でのビートダウンデッキだ。何か効果モンスターが動こうものならデスカリバー・ナイトを生け贄にして道連れにするがいい、そういうデッキだ。
「しかし覇者の一括ではな。私は魔法カード【封印の黄金櫃】を発動」
黄金櫃が実体化し、試験官さんがデッキからカードをその方に投げつけた。その投げつけたカードが櫃の中に封じられていく。
「デッキからカードを1枚、2回目の自分のスタンバイフェイズまでゲームから除外する。【リミッター解除】を選んだ。私はカードを1枚セットしてターンエンド」
伏せカードはどうせ【リビングデッドの呼び声】だろう。しかしデスカリバー・ナイトが墓地に行った後のリカバリーまで充実とはまこと恐れ入った。
「僕のターン、ドロー。スタンバイ、メインフェイズ」
思案に暮れる。あの伏せカードといいデスカリバー・ナイトといい、よほどデッキが事故を起こしていないかデュエルへの理解がないとかでなければ勝てるはず。
「【天使の施し】発動!3枚ドローし、【首なし騎士】と【死霊伯爵】を捨てます。ドル・ドラを守備表示にし、カードを3枚伏せてターン終了です」
ドル・ドラ
DEF:1200
ドル・ドラが翼で前を覆い、身を守る体勢に移る。
「なに?。私のターン、ドロー。先ほどのスタンバイフェイズであと1ターンだな。バトル、サイバー・ドラゴンでまずドル・ドラを攻撃する!」
「攻撃宣言時罠カード地縛霊の誘いを発動。攻撃対象を死霊ゾーマに変更します。チェーンありますか?」
「なんだと!?」
地面からニョキニョキと黒い腕が何本もサイバー・ドラゴンに巻き付き、その口が無理やりバケモノに向けられていく。その時点ですでにエネルギーが溜まっていた。
「これで死霊ゾーマ撃破ですね」
そのままエネルギー弾として放たれ、死霊は光の中で完全に消滅したかに見えた。
「死霊ゾーマの効果はエクトプラズマーとほぼ同じなんです。戦闘によってゾーマを破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与えます」
しかし噴煙が消えたそこには、サイバー・ドラゴンの形をした火の玉があり、その火の玉が試験官さんに襲い掛かる。デスカリバー・ナイトもまさか破壊された後の死霊ゾーマには対応できまい。
試験官 LP4000→1900
腹に直撃したようで、しばし蹲った。そんなに痛いのね、ダイレクトアタック時はそんなでもないのに。
「ぐうぅぅぅッ!ケホッケホッ……。デスカリバー・ナイトでドル・ドラを攻撃」
槍に突かれ両腕ドラゴンの体が鏡のように破裂した。まだ大体の破壊時エフェクトこれなんだ。
「私はカードを一枚セットしてターンエンドだ(一応あれが次のターンに戻ってくるからまだしも……)」
「破壊された時のエンドフェイズに発動、ドル・ドラは攻撃力と守備力が1000となって復活します」
「甘いぞ!デスカリバー・ナイトは相手のモンスターが効果を発動したとき、このカードを生け贄に捧げて効果を無効にする!」
あらら……。まあいいや、邪魔が減ったし。
「僕のターン、ドロー!」
……来た!これならこのターンでまくれる!
「メインフェイズ、【強欲な壺】発動!2枚ドロー!」
このカードは、まさに切り札!
「伏せカードオープン。速攻魔法【サイクロン】!その伏せカード破壊します」
カードから竜巻が起こり、巻き込まれたカードが吹き飛ばされ消滅。思ったのとは違ったが攻撃無効系のカードだったか。危なかった。
「……」
「魔法カード【死者蘇生】で首なし騎士を特殊召喚!」
首なし騎士
地属性・悪魔族
ATK:1450
先に言った通りの首のない西洋の騎士風の亡霊モンスターが、首を求めてさまよっており、また悲鳴が一部から起こった。
試験官さんが眉をひそめている。不満でもあったんだろうか。
「一体なんなのだ?何のためにこのようなことを?」
「このときのためです。首なし騎士を生け贄にし、」
首なし騎士のカードをディスクから外すと、突如モンスターの周囲から黒い霧状の細長い蛇が噴き出してきた。それはそのままデュラハン野郎を包み込み、一瞬にして大きな闇と化した。
「なんだこれは!?」
「召喚、【ディアバウンド・カーネル】!!」
ディアバウンド・カーネル
レベル5・闇属性・悪魔族
ATK:1800
闇はやがて白くなって翼を生やし、人型の半身のごとき体に変化。さらに下半身が蛇と化す。
デュエルモンスターズの起源は古代エジプト史の学者も知る人ぞ知る、人間の内なる感情から現れし精霊獣なるバケモノだとお父さんから聞いたことがある。お父さんも実際に
試験官さんはあっけにとられ、しかしすぐに落ち着くと、少しだけ安心して言い捨てた。
「ああ、し、しかし!攻撃力が1800とは、まだまだサイバー・ドラゴンには届かない!」
「まだまだ、最後の伏せカードリビングデッドの呼び声を発動して死霊伯爵を墓地より特殊召喚します」
死霊伯爵
闇属性・悪魔族
ATK:2000
右目が少し飛び出ている、ゾンビの如く痩せ細っている貴族が今にもサーベルを振りかざして斬りかからんとしている。
「バトルフェイズ、ディアバウンド・カーネルでサイバー・ドラゴンに攻撃!攻撃宣言時、ディアバウンド・カーネルの攻撃力を600ポイントアップさせる第一の効果を発動!」
ディアバウンド・カーネル
ATK:1800→2400
にやついているところ申し訳ないけど、これで試験官さんは終わりだね。
(しかし伏せカードはリビングデッドの呼び声。例えあのモンスターに破壊されようがまたサイバー・ドラゴンを……)
「このターンで終わりですからご心配なく」
「……なに!?」
さらにディアバウンド・カーネルが黒蛇に戻り、それがサイバー・ドラゴンの口に入りきると、そのまま取り憑いてみせた。見たところ取り憑かれたほうは目が赤くなり苦しそうにもがいている。
「なっ、攻撃力が!」
サイバー・ドラゴン
ATK:2100→0
「第二の効果。ディアバウンド・カーネルの攻撃力分、対象モンスターの攻撃力を下げる効果を発動しました」
「そんなバカな!?」
「この後ディアバウンド・カーネルは次のターンのスタンバイフェイズまで除外されますが関係ないですね」
この攻撃は間違いなく通る。驚きでもはや物も言えない試験官さん。
「死霊伯爵で弱ったサイバー・ドラゴンに攻撃」
死霊伯爵が腕を振り上げ、
「怨念の剣-ナイト・レイド-!!!」
一直線に振り切りサイバー・ドラゴンを真っ二つに斬り裂いた!
「ぐううっ!!!」
試験官 LP:1900→0
ーーーーー
「しかし引き運良すぎましたねぇ」
「運も実力の内、という。しかし驚いた。まさかディアバウンド・カーネルみたいなカードがあるとは思いもしなかった…」
でしょうね。【ブラック・マジシャン】が攻撃力100のただのKA☆KA☆SHIになるんだから。それで次のターンに戻る確約付き、相手は自分のターンの攻撃時にこんなんされたらやってられんでしょうな。
しかしあんなに悶えてたのに切り替えが早い。
「うん、まあラー・イエローは確実だろう、多分。一週間後に結果が公表されると思うから、郵送されるまで待ってもらえると幸いだ」
「はーい」
とりあえず自分の番が終わったので、適当な席について観戦しようと思う。
入れ違いで遅刻ギリギリと思しき少年がデュエルコートに向かったのを覚えた。なんか目がキラキラしていてちょっと可愛かった。
……あと背中に羽の生えた【クリボー】も見えた気がしたが気のせいかな。