シャニマスをバトルものだと勘違いしている転生者の話   作:リィンP

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そうだ、ボク自身がアイドルになればいいんだ

 

 光陰矢の如し。

 あっという間に月日は経ち、ボクはこの春から高校生になった。

 ちなみに柔道であるが、やはり実践的な技を教えてもらえなかったので1年で辞めてしまった。

 

 背負い投げや大外刈では流石に人外生命体は倒せないよ…。

 せめて力0:技10までボクの技術が至ることができれば圧倒的な力を持つ敵にも通用したかもしれないが、そのような武の極致に辿り着いたものは今までいないと柔道の師に言われてしまった。

 

 終わりだ…(絶望)

 

 ただ絶望している時間はないため、柔道の師に頼んでまた新たな武の指導者を教えてもらった。

 柔道の次は合気道、その次はボクシング、その次はムエタイと様々な武術を学んでいったが、残念なことにどの武術も必殺技的なものは存在しなかった。

 

 そして16歳になった現在、ボクはようやく真理に気付いた。

 そう、この世界はバトルアイドル育成ゲームだ。

 つまり、アイドルになることで超常的な力を獲得することができるはずだ。

 

 魔法少女のようにスピリチュアル的な存在から不思議パワーを授かるのか、アイドル事務所で特別な鍛錬を受けて身体能力が覚醒するのかまでは分からない。

 

 しかし、アイドルになることで敵を倒す力を手に入れることは間違いないだろう。

 

 ということでボクは、アイドルになるためにオーディションを受けることにした。

 もちろん受ける事務所は原作キャラが所属する283プロダクションだ。

 

 前世の知識の中に事務所の名前がなくて焦ったが、アイドルの顔と名前は覚えていたため、彼女たちが所属しているその事務所のオーディションを受けることができた。

 

 よし、書類選考に合格したし、今日は面接だな。

 今までの修行の成果を出し切るぞ!

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 

「それでは、次の方どうぞ」

 

「はい、失礼します!」

 

 勢い良くドアを開けて入室してきた少女(・・)の元気の良さに、俺は思わず圧倒された。

 いや、圧倒されたのは元気の良さではなく、少女自身にあったからだ。

 

 七色(なないろ)(つばめ)

 春なのに半袖半ズボンとラフな格好である少女はまだ16歳のはずだが、圧倒的な存在感を放っていた。

 

 顔立ちは他のアイドルに負けないくらい整っており、ベリーショートの黒髪は彼女に似合っていた。

 スタイルは引き締まっており、剝き出しになった腕や足を見ればうちに所属する夏葉に劣らないくらい鍛えられているのが分かる。

 そして何より、目にひくのは彼女の瞳だ。

 

 ヘーゼル色の珍しい瞳からは生命力が溢れており、俺が今まで見てきたアイドルの中でも最もキラキラした目をしているのは間違いない。

 

「七色燕です!本日はよろしくお願いします!」

 

「はは、よろしく七色さん。今日はよろしくお願いします」

 

「はい、よろしくお願いします!」

 

 彼女が席に座るのを確認し、手元にある書類に改めて目を通す。

 

「七色さんは幼少期から空手、剣道、柔道、ボクシング、ムエタイなど多くの武術を習っているようだね。しかもボクシングやムエタイに至ってはジュニアの世界大会で優勝を果たすなんて本当に凄いな」

 

「いえ!こう言っては失礼ですが、出場者は常識的な強さでしたから。スタープラチナやジャジャン拳を出されたら優勝は厳しかったと思います」

 

「スタープラチナ…?ジャジャン拳…?」

 

「知りませんか?スタンドや念で繰り出す有名な技ですよ!」

 

「そ、そうなのか」

 

 彼女が何を言っているか全ては理解できなかったが、これは俺の知識不足のせいだろう。

 

「すまない、後でよく調べておくよ。こほん、話は変わるけどそんな君がどうしてアイドルに応募したのかを教えてほしい」

 

「応募した理由はもちろん、強くなりたいからです!」

 

 それは知っている。

 いや、そもそも強さを求めてアイドル志望してきた子は初めてなのだが。 

 強くなりたいという理由でアイドルを目指すのもどうかと思うが、七色さんから提出された書類にはアイドルを目指す理由について『強くなりたいから』と迷いない字で記載があった。

 

 実際に七色さんの様子を見て、その言葉が冗談ではないことが分かった。

 

 しかし不思議なのが経歴を見れば分かる通り、彼女はもう十分に強いはずだ。

 それなのに、どうしてこれ以上強くなろうとするのだろうか。

 

「ボクは力を求めて、様々な武術を学びました。ですが、残念ながら結果は芳しくありませんでした」

 

「え、世界大会で優勝したのに…?」

 

「はい、世界大会で優勝するレベルではダメなんです!ボクはもっと強くならないといけないんです」

 

「何がそこまで君を突き動かすんだい…?」

 

「───自由のため」

 

 それはつまり、今の彼女は自由ではないということ?

 

 分からない。七色燕という少女が何を求めているのか理解できない。

 

 だけど、これだけは理解できた。

 彼女は間違いなくアイドルの原石だ。

 

「あの、この理由でアイドルを目指すのはやっぱりダメなんでしょうか?」

 

「…正直な話、奇抜な理由だ。その理由でアイドルになった人を俺は聞いたことがない」

 

「そうですよね…」

 

「だけど、君が本気でアイドルを目指したいのは伝わった。だから、少しずつでいいから君のことを教えてほしい」

 

「それって…!」

 

「合格だ!283プロへようこそ、七色燕さん」

 

「や、やったっ!これで今日からボクも283のアイドルになれるんですね!?」

 

「あぁ、もちろんだ。そして俺が君のプロデューサーだ。よろしく、七色さん」

 

「よろしく、プロデューサー!あっ、しまった…よろしくお願いします、プロデューサーさん」

 

「はは、七色さんが話しやすい方で大丈夫だよ」

 

「そ、そう?それならボクのことも燕って下の名前で呼んで大丈夫だよ!」

 

「それじゃあ改めて、今日からよろしくな、燕」

 

「うんっ、よろしくねプロデューサー!」

 

 こうして、283プロに新しいアイドルが所属した。

 

 このときの俺は知る由もなかった。

 七色燕。異色の経歴と動機を持つ彼女がアイドルになった本当の理由を。

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 よし、283プロに着いたぞ!

 入室は元気よく、挨拶は声が大きいのが大切だからね。

 

「はは、よろしく七色さん。今日はよろしくお願いします」

 

 目の前にいるスーツをビシッと着こなした青年は、この事務所のプロデューサーだろう。

 うーむ、イケメンだね。しかもバリバリ仕事ができそうなオーラを持っている、

 さてはコイツ、強化系か?

 

「七色さんは幼少期から空手、剣道、柔道、ボクシング、ムエタイなど多くの武術を習っているようだね。しかもボクシングやムエタイに至ってはジュニアの世界大会で優勝を果たすなんて本当に凄いな」

 

 あぁ、確か経歴を書く欄にそのことも書いたっけ。

 正直、大会に出るつもりはなかったけど、監督の強い希望もあって出場してみたのだ。

 ワンチャン特別な技を持っている相手と対戦することを期待したが、そんなことはなく普通に優勝して肩透かしをくらったけど。

 スタープラチナみたいな必殺技を相手が出したら、対戦後に教えを乞おうと思ったのに。

 

「スタープラチナ…?ジャジャン拳…?」

 

 え、まさか知らない…?

 あ、そうか。前世の記憶にある漫画やアニメはこの世界になかったんだ。

 似たようなものはあるが、まったく同じものはないため技名を言っても悲しいことに通じないのだ。

 まぁでもスタンドや念的なものは他の漫画にもあるし、分かってくれるだろう。

 

「そ、そうなのか」

 

 はっ?分かりやすく説明したのに、どうやら目の前の青年は理解できていないようだ(激怒)

 解せぬ。この世界にも面白い漫画がたくさんあるのに読んでいないのかよ、ミスター・オールドタイプ!

 

「すまない、後でよく調べておくよ。こほん、話は変わるけどそんな君がどうしてアイドルに応募したのかを教えてほしい」

 

 そんなの決まっている。強くなりたいからだ。

 この理由は一貫して変わらない。

 バトルもの世界で必須な強さを求めるために、ボクはここに来たのだ。

 

「え、世界大会で優勝したのに…?」

 

 その大会が天下一武道会だったら話は別だったけど、残念なことに一般人しか参加していなかった。

 もう、どうして魔族が乱入して来たりしなかったんだよ!

 いやそうなった場合、まだ必殺技を持っていないボクだと「し…死んでる。な…七色が…殺された…!!」状態になってしまうため、それも困るけど。

 

「何がそこまで君を突き動かすんだい…?」

 

 そんなの決まっている。

 ボクは好きに生きたいのだ。

 

 大会の途中で魔族が乱入しても、問題なく返り討ちにできる程度の実力は欲しい。

 悠々自適に過ごせる程度には力が欲しいのだ。

 そのためにボクはアイドルになる。

 まさかダメとは言わないよね、ミスター・好青年!

 

「…正直な話、奇抜な理由だ。その理由でアイドルになった人を俺は聞いたことがない」

 

 うるせぇ、『今日から君はアイドルだ』と言えェ!!

 

「だけど、君が本気でアイドルを目指したいのは伝わった。だから、少しずつでいいから君のことを教えてほしい」

 

 そ、それってつまり…。

 

「合格だ!283プロへようこそ、七色燕さん」

 

 よっしゃー!これで勝ち確定ですね。ありがとうございました。

 

「あぁ、もちろんだ。そして俺が君のプロデューサーだ。よろしく、七色さん」

 

 よろしくな、白コートが似合いそうなプロデューサーよ!

 嬉しくてタメ口になってしまったけど、許してくれよね。

 

「はは、七色さんが話しやすい方で大丈夫だよ」

 

 流石はプロデューサーだ、話が分かる!

 この調子で必殺技の1つや2つを授けてくれると嬉しいぜ!

 

 

 

 




一体いつから主人公が男性だと錯覚していた?
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