シャニマスをバトルものだと勘違いしている転生者の話 作:リィンP
晴れて283プロのアイドルになれたボクであるが、まだ所属するユニットは未定らしい。
現在283プロで活躍しているユニットは7つあり、ソロで活動しているアイドルはいないようだ。
どうしてなのかプロデューサーに聞いてみたが、それがこの事務所の方針らしい。
ユニットで切磋琢磨し、支え合いながら成長してほしいとプロデューサーは言っていたが、おそらくそれが全てではないはずだ。
ボクの勘が言っている。ユニットを組ませるのはそれだけが目的ではないと。
戦隊ヒーローが単独よりもチームで戦った方が強いのは有名だと思うが、シャニマスもそのシステムを採用していると思われる。
つまり今のボクがまだユニットを組めていない理由は、自分の実力が足りていないか、ユニットを組んでくれる相手がいないかの2択だろう。
後者なら問題ない。いずれあの有能そうなプロデューサーが見つけてくれるはずだ。
しかし前者だった場合、早急に実力を上げる必要が出てくる。
アイドルになって専属トレーナーの下でボーカル、ダンス、ビジュアルレッスンを行うようになったが、必殺技的なものは何一つ教えてもらっていない。
せめて攻撃力や防御力を鍛えられればよかったのだが、ここ1ヶ月で伸びたのは歌やダンスの実力だけだ。
何やってんだプロデューサー!!
いつ敵が現れてくるか分からないのに、何でアイドルの技術しか教えようとしないんだ、お前は!
もういい、アイドルに直接会って教えてもらうから!
事務所に突撃すると、ちょうど事務所にいたほんわかとした柔らかいオーラを持つアイドル──
お願い真乃ちゃん、何でもいいからボクに技を教えてくれ!
◇◆◇◆◇
私が所属する283プロダクションに、新しいアイドルが加わりました。
名前は七色燕さん。年齢は私と同じ16歳で、高校1年生です。
めぐるちゃんのように元気で明るくて、初対面な人とコミュニケーションが苦手な私でもすぐに仲良くなれました。
「真乃ちゃん、お疲れ~!」
「ほわ、お疲れ様、燕ちゃん」
事務所の休憩室で資料を読んでいると、勢いよくドアを開けて彼女はやってきました。
燕ちゃんは笑顔で挨拶すると、私の傍に来てポンポンとソファを叩いて言います。
「ねぇ真乃ちゃん、隣に座っていい?」
「うんっ、もちろん」
「ありがとっ!そうだ、ボクもピーちゃん撫でてもいい?」
「うん、大丈夫だよ。ピーちゃん、おいで」
立ち上がって休憩室の窓を開けて名前を呼ぶと、真っ白なギンバトが私の肩にふわりと留まりました。
この子が私の飼っている大切な家族のピーちゃんです。
「おぉー、流石真乃ちゃん」
「ううん、凄いのはピーちゃんだよ。ピーちゃん、燕ちゃんが撫でたいって」
私が話しかけると、ピーちゃんは燕ちゃんの膝に飛んでいって丸くなりました。
その姿は相変わらず可愛いです。
「いやー、ピーちゃんは賢いな。これってやっぱり真乃ちゃんの力のおかげ?」
私の力…?という言葉の意味はよく分かりませんが、燕ちゃんの質問に答えます。
「えっと、ピーちゃんは雛のときから頭が良かったの」
「そうなの?でも真乃ちゃん、他の鳥たちともお話しして手懐けていなかった?人の食べ物を狙うカラスにも、真乃ちゃんが注意したら二度と盗まなくなったって聞いたけど」
「えっと、カラスさんは知能が高いからしっかり話せば分かってくれるよ。でも、警戒心が高いから日頃から鳥さんたちに触れていないと難しいかも」
「流石だね、真乃ちゃん…いや真乃先輩」
どうしてか燕ちゃんは私のことをキラキラした目で見つめてくる。
アイドルとして活動していると、子どもからこのような目で見つめられたこともあるけど、今の燕ちゃんの瞳は見たことがないくらいキラキラと輝いています。
「せ、先輩なんて恥ずかしいよ、燕ちゃん」
「そう?じゃあ真乃先生がいいかな?」
同い年の子に先生呼びされるのは正直恥ずかしいです。
「えっと、今まで通りの呼び方がいいな」
「わかった!実はね、真乃ちゃんにお願いがあるんだ」
お願い…?燕ちゃんからお願いされるのは珍しい…たぶん初めてだと思います。
一体何だろう…?真剣な表情をしているから、よっぽど大切なことなのかな…?
「鳥類と仲良くなる方法をボクにも教えてほしんだ」
「ほわ、鳥さんたちと…?」
「うん、ダメかな?」
燕ちゃんの提案は意外でした。
このような提案をされたのは生まれて初めてです。
今まで私と同じくらい鳥さんたちを好きになってくれる人はいませんでした。
もちろん動物園の飼育員さんは別ですが、同年代でそこまで鳥さんを愛している子は残念ながらいませんでした。
もちろん、それは仕方ないことだと思います。
だから、燕ちゃんのその提案はとても嬉しかったです。
「う、うん。私なんかでよければいつでも教えるよっ」
「本当!?ありがとう真乃ちゃんっ!」
燕ちゃんは心の底から嬉しそうに笑っています。
前々からピーちゃんに興味を示していた燕ちゃんですが、私は今日まで深く踏み込むことができませんでした。
でも、友達の燕ちゃんが鳥さん好きだとわかり、今の私はとても幸せな気持ちです。
「ううん、こちらこそありがとうね、燕ちゃん」
「それじゃあ早速今日とか時間空いてる?もし課題とかあれば言ってね、ボクも協力して終わらせるから!」
「う、うん。じゃあ今日から少しずつ教えていくねっ」
燕ちゃんから熱い鳥さん愛を感じます。
まさか燕ちゃんがここまで鳥さんたちのことを好きだったなんて知りませんでした。
そういえば、さっき言っていた私の力ってどういう意味だったのかな…?
◇◆◇◆◇
櫻木真乃。283プロに所属するアイドルの1人であるが、前世の知識で覚えている彼女の情報は以下の3つ。
1つ、初期から実装されているアイドル。
2つ、鳥使い。
3つ、二千メートル級の高山を踏破するフィジカルの持ち主。
以上である。
1つ目はいいとして、問題は2つ目以降だ。
真乃は鳥使いとして有名で、彼女の指示に従って全ての鳥たちは動くようなのだ。
バトルもので鳥使いは強いか…?と疑問に感じるが、斥候として欠かせないポジションである。
鳥たちがいれば監視や追跡はお手の物で、情報戦で一歩先へリードできるのが間違いない。
283プロに入って真乃と出会い、彼女が鳥たちと会話している姿を見て、ボクは自分の考えが正しかったことを確信した。
「うん、大丈夫だよ。ピーちゃん、おいで」
見よ、あの頭が悪いで有名な鳩*1が真乃の一声でやってきた。
「ううん、凄いのはピーちゃんだよ。ピーちゃん、燕ちゃんが撫でたいって」
真乃の指示を受けて、鳩はボクの膝に飛んでいって丸くなった。
実際に撫でてみても、特に暴れることなくピーちゃんは大人しくしていた。
おそらく真乃の隠された力で、鳥たちを操作しているに違いない。
そう、真乃は操作系能力者だったのだ。
しかし彼女に鎌をかけてみたが、戸惑った表情を浮かべるだけだった。
「えっと、ピーちゃんは雛のときから頭が良かったの」
これは…真乃は自分の力について知らないパターンなのかもしれない。
おそらく、鳥類限定の眷属強化的なものを真乃は持っているのだが、彼女自身は何となくで力を行使している可能性が出てきた。
しかも、この能力の真価はそれだけではないのかもしれない。
真乃の身体は華奢であり、二千メートル級の高山を踏破できるとは到底思えない。
そこから導き出されるのは、眷属強化の副産物で自身も強化しているという疑惑である。
真乃の能力を知るためにも、詳しく話を聞いてみないとな。
「えっと、カラスさんは知能が高いからしっかり話せば分かってくれるよ。でも、警戒心が高いから日頃から鳥さんたちに触れていないと難しいかも」
真乃は簡単そうに言うが、野生のカラスは人に懐かないはず。
これもきっと彼女の能力なのだろう。
しかし、16年目でようやくバトルもの世界の一端に触れることができた。
初めて見る能力者に思わず興奮してしまうのが仕方がないことだろう。
彼女に教わることで能力を獲得できるかまだ分からないけど、頼んでみる価値がある。
しかし、そう簡単に人に教えてくれるだろうか…。
「うん、私なんかでよければいつでも教えるよ」
えっ、本当っ!?
真乃ちゃん、なんていい子なんだ…(号泣)
教えてくれて……ありがとう!!!
「う、うん。じゃあ今日から少しずつ教えていくねっ」
ふふふ、さらばだ、無能力者の
ボクは無能力者をやめるぞ!プロデューサーーッ!!
感想よろしく!