シャニマスをバトルものだと勘違いしている転生者の話   作:リィンP

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いや、呼吸が使えなくても剣道は普通にできるよ

 

 真乃から鳥類と仲良くなる方法を教わってから、少しずつだけど鳥たちがボクに懐くようになった。

 ただし、ボクが命令してもその通りに動くことはなく、真乃を介さないと難しい。

 なぁに、地道の努力には慣れっこだ!今日も一日がんばるぞい!

 

「燕、初仕事が決まったよ。なんと地上波のテレビ番組から出演オファーだ!」

 

 出鼻を挫くなよ、プロデューサーッ!

 ボクは仕事よりも大切な用事が…ん、待てよ。

 

 彼がここまで喜んでいるのは妙だな。

 タバコを札で買うくらい違和感がある。

 まさか『初仕事からテレビ出演のオファーをもらえるなんて凄い!』と単純に考えているわけではないだろうし、もしや裏があるのか?

 

 ははーん、ピンときた。

 これはあれだな、仕事をこなすことで経験値的なものを獲得し、レベルアップするシステムということだな。

 

 それならそうと説明してくれよ、プロデューサー。

 まったくお前はアイドルについては丁寧に教えてくれるのに、バトル要素について何一つ説明してくれないんだから!

 非常食…じゃなかった、小さなナビゲーターだってもっと説明してくれているぞ!?

 

「その…燕さえよければこの仕事を受けようと思うんだけど、どうかな?」

 

 おいおい、何当たり前なことを聞いているんだよパイモ…じゃなかった、プロデューサー。

 

 そんなの受けるに決まっているだろう(ドン!)

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 収録日当日。

 プロデューサーと共に撮影場所の剣道場に訪れた燕は、最初に挨拶回りを行うことにした。

 

 ちなみに燕が出演するテレビ番組はある程度有名なスポーツバラエティーであり、その中のワンコーナー…男性と女性で別れて戦い、様々なスポーツで勝敗を決めていくものがあり、今回彼女は芸能人女性チームの出場選手の1人として選ばれた。

 もっとも、本来なら別のアイドルが出演する予定であったが、怪我をしてしまって急遽代役を立てることになり、燕に白羽の矢が立ったという事情があった。

 

 今回の競技は剣道。剣道経験者である男性5人、女性5人がチームを組んで戦うことになった。

 5人の中から先鋒、次鋒、中堅、副将、大将を選出し、先に3人が勝てば勝利となるルールだ。

 

「えっと、確か七色さんだったかな」

 

「はい、283プロダクション所属の七色燕です!」

 

「あぁ、そんな名前だったね。知っていると思うけど、僕は文田一郎だよ。今日はよろしく頼むね」

 

 燕が出演者の1人に挨拶をしに行くと、若い男性俳優は椅子に腰掛けたまま応対する。

 

「よろしくお願いします!今日の剣道の試合は、ボクと文田さんが戦うみたいですね?」

 

「そうだね、君の年齢なら初段か二段くらい持っているかな?」

 

「いえ、小学生のときに1年だけ習って止めてしまったので、七級までしか持っていないです」

 

「あぁ、そうだったんだね。でも大丈夫だよ七色さん。剣道の段位は試合に関係ないから」

 

「本当ですか?」

 

「本当さ。だから七級の君でも四段の私に勝てる可能性はあるよ。フフ、勝負に絶対はないからね」

 

 そう言いながら笑う文田の表情には隠しきれぬ侮蔑の感情が浮かんでいた。

 

「わぁ、そう言ってもらえて嬉しいです。いい試合ができるよう頑張ります!」

 

「あぁ、それでは僕も暇ではないので、そろそろ出て行ってもらえるかな?」

 

「わかりました、それでは失礼します」

 

 終始一貫、燕はにこやかな表情を保ちながら部屋を退出した。

 そして部屋の外で待っていたプロデューサーと合流し、自分の控え室へと戻る。

 そして周りに誰もいなくなったところで、プロデューサーは口を開いた。

 

「本当にすまない、彼のマネージャーに複数人で入らないよう言われてしまったせいで、燕1人だけで行かせてしまって」

 

「ううん、ボクは特に気にしていないよプロデューサー」

 

「本当か?文田さんはその…嫌味な言い方をすることで有名だから。何か変なことは言われなかったか?」

 

「全然そんなことなかったよ。段位は関係ないから、七級のボクでも四段の文田さんに勝てる可能性あるって励ましてもらっちゃった」

 

「それは…(燕はその言葉を額面通り受け取ってくれたようだけど、おそらく嫌味で言ったんだろうな)」

 

「プロデューサー、どうしたの?顔色悪いよ」

 

「いや、大丈夫だ。もう一度確認だけど、嫌な思いとかはしなかったか?」

 

「うん、もちろんだよ。それより早く試合がしたくて身体がウズウズしてるよ」

 

「はは、剣道は1年しか経験ないようだけど、やっぱり好きなんだな」

 

「うん。武術系は何でも好きだけど、やっぱり剣はいいよね」

 

 燕とプロデューサーが雑談していると、スタッフが呼びにやってきた。

 

「よし、それじゃあ行ってくるよプロデューサー!」

 

「あぁ、スタッフと一緒に見守っているから、何かあったらすぐに駆け付けるよ」

 

「あはは、プロデューサーは大げさだなぁ。でもありがとう、気持ちだけ受け取っておくよ」

 

 そう言って、燕は剣道場に向かう。

 

(あれ、燕の笑顔ってあんなに迫力あったか…?)

 

 いつも天真爛漫な表情を浮かべている彼女であるが、プロデューサーが最後に見た燕の笑顔はいつもと種類が違うように思えたのであった。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「えっと、確か七色さんだったかな?」

 

 答えておこう、燕だよ。

 

 フルネームが知りたいか?

 七色・燕だよ。

 他に質問は?

 

「あぁ、そんな名前だったね。知っていると思うけど、僕は文田一郎だよ。今日はよろしく頼むね」

 

 断る!

 ちなみに君のことは本当に知らないから、覚えやすいように踏み台くんと呼ぶことにするよ。

 だって顔つきが小物っぽいし(偏見)

 

「そうだね、君の年齢なら初段か二段くらい持っているかな?」

 

 あぁ、先生に無理矢理とらされた記憶があるな。

 経歴書に書くまでずっとその存在を忘れてたけど。

 

「あぁ、そうだったんだね。でも大丈夫だよ七色さん。剣道の段位は試合に関係ないから」

 

 ほう、いいことを言うじゃないか、踏み台くんは。

 確かに段位なんてものは関係ない。

 だって上の段位の人の試合を見たけど、普通の試合だったし。

 ボクが想像してたのは「水面斬り!」「残念、それは残像だよ」「…なん…だと…?」という戦闘だったので、正直がっかりだった記憶がある。

 

「だから七級の君でも四段の私に勝てる可能性はあるよ。フフ、勝負に絶対はないからね」

 

 前言撤回。この男、腹の中で七級であるボクのことを馬鹿にしてやがる。

 取り消せよ、今の嗤い…!

 

 初めてですよ…ここまでボクをコケにしたおバカさんは…次の試合では覚えてろよ、踏み台野郎…!!

 

「あぁ、それでは僕も暇ではないので、そろそろ出て行ってもらえるかな?」

 

 言われてなくても出て行ってやるよ!

 塩まけ、プロデューサー!何ならアイツの顔にぶつけてもいいぞ。

 

「本当にすまない、彼のマネージャーに複数人で入らないよう言われてしまったせいで、燕1人だけで行かせてしまって」

 

 大丈夫、次の試合で奴のプライドをへし折るつもりだから。

 それで今の無礼は許すつもりさ。

 

「本当か?文田さんはその…嫌味な言い方をすることで有名だから。何か変なことは言われなかったか?」

 

 いやだから、次の試合で踏み台野郎をボッコボコにするから大丈夫だって。

 自分より段位が低い少女に負けたことで、悔しがってる姿を見れたらめっ↑ちゃ↓嬉しいかな。

 

「それは…」

 

 おいおいプロデューサー、まさかボクが負けることを心配しているのか。

 安心しろって、水の呼吸は習得できなかったけど、あの程度の相手なら呼吸がなくても楽勝だから。

 

「いや、大丈夫だ。もう一度確認だけど、嫌な思いとかはしなかったか?」

 

 しつこいぞ、プロデューサー!

 そんなことより、早く踏み台野郎をぶっ倒したいんだ!

 

「はは、剣道は1年しか経験ないようだけど、やっぱり好きなんだな」

 

 好きというかバトルもので武術は必須級だからね。

 まぁ確かに剣とはロマンがあって好きだけど。

 竹刀を2本持ってスーターバーストストリームをよく練習してたからな。先生に見つかったときは怒られたけど。

 

 ん、ようやくボクの出番が来たようだ。

 そんじゃ、行ってくるぜプロデューサー。

 

「あぁ、スタッフと一緒に見守っているから、何かあったらすぐに駆け付けるよ」

 

 いや、見守っているんじゃなくて本当は技の1つや2つを早く教えてほしんだけど。

 でもまぁ、久しぶりの剣道か…この仕事を成功させたら経験値をもらえるはずだし、本気を出しますか!

 

 

 

 




顔に感情を出したら戦闘が不利になるため、どんなに激怒しても表に出さない主人公。なお、それにより周りの勘違いを加速させる模様。
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