息抜きの番外編です。
そんなにいいもんでもないですがつまんでおいて下さると幸いです。
少し昔の話である。
暗黒期真っ只中の【ロキ・ファミリア】の本拠【黄昏の館】にて。
とある小包を運ぶ少年がいる。
名前を【ラウル・ノールド】、駆け出しの頃の【超凡夫】だ。
この時代においては若く、駆け出しであるがゆえに前線にも駆り出されていないため、まだまだだが現代の彼は頼もしいの一言である。
物腰は今と変わらず、好感が持てる少年である。
それはともかくとして、彼が向かう先はフィンのいる執務室だ。
「団長。入ります」
「ん、どうぞ」
ノックをしたのちにラウルは部屋に入る。
「その小包は、アームストロングからかな?」
一瞥したのち、小包が誰からかあたりをつけたようだ。
「はい。保存食だとか」
「分かった。リヴェリアとガレスを食堂に集めてくれ」
「食べるんですか?」
「一応ね。アームストロングのことだから心配は無いけど…万が一がある。あとは、純粋に食べたいからだね」
「確かに美味しいですもんね。行ってきます!」
「頼んだよ」
ラウルは小包を執務机に置いて執務室を出ていく。
そんなラウルを見送った後、フィンも食堂に行こうと小包を取って席を立つ。
「いつものか」
段ボール、というもので包装されたらしい荷物の上に手紙が貼り付けられているのを見つけた。
ラウルが触っていないのはいつも貼り付けられているからだろう。
一度勝手に読んでアームストロングに怒られたらしい。
本来なら食堂ラウルも含めた4人で読むのがいいだろう。
「…」
魔が差した、と言える。
ラウルが2人を呼んで食堂に行くのも時間がかかるだろう。
ここでゆっくり読んでも問題は無い。
そう思って手紙を開いた。
まあ、いつも通りであった。
アームストロングの文章はいつも簡潔だ。
かしこまった文章を使う時もあるが、もうフィンたちに使うことはないだろう。
『うちで作った保存食だ。保存に期限はあるが半年は余裕で持つ。
味にこだわったから少し遅くなったが明日の炊き出しには間に合わせるつもりだ。
お前たちが満足できる味ならば不足はないだろう。
試食を頼む』
短い文章である。
ゆっくり読んでも、すぐに読み終えられた。
「相変わらず…行こうか」
変わらず、美味いのだろう。
そう思うと自然に口角が上がってしまう。
机に寄りかかっていたのを姿勢をただし、手紙を貼り付けられていた封筒に戻す。
そして小包を持つと足取り軽く扉に向かっていった。
食とは、大切なものである。
人間の三大欲求は食欲、睡眠欲、性欲の三つだ。
そして睡眠と食と運動は人の体を作る要であり、故に美味な食事は人の生きる活力や士気を高める。
証拠に正史の暗黒期より、こちらのオラリオの活気は少しだけいい。
少しだけだが、笑顔があるのは良いことだ。
「遅かったな」
「君たちこそ早いね」
【黄昏の館】の食堂はかなり広い。
今では【ロキ・ファミリア】も最高派閥として恥じないくらいには大所帯になっているのだ。
食堂と同じくらいキッチンも広いが、今はフィンを含めた4人だけ。
仕込みをした食材などは見受けられるが、まだ作る時間帯ではないのが理由だろう。
「アームストロングからの小包じゃろう?それならすぐ来るわい」
「美味いからかい?」
「美味いからだな」
美味いからに限らないだろう。
アームストロングからの贈り物は少なからず首脳陣の興味を引いてきた。
その中でも美味いを選んだのは既に中身を見たから。
テーブルには既に箱が積まれていた。
「【ボンカレー】か」
「【神聖文字】でおいしいや良いって意味らしい。あとカレーというのは…」
「スパイスを使った東の方のスープ料理、だったね」
「そうだな。だが同封されていたものがある」
「これじゃ。【サトウのごはん】」
「カレーと一緒に食べるんだそっす」
「へぇ?」
極東で栽培されている農作物の一つであるコメ。
炭水化物であり、オラリオではあまり流通していないレア食材だ。
食材としてはとんでもなく万能、主食としてパンに並ぶ。
実際、単体だと美味しいものは美味しいがおかずと合わせるとその強さは倍増。
まるで【ファミリア】のようだ。
そんなコメを手軽に温めてたべられるようにしたのが【サトウのごはん】である。
「ということは、カレーはコメと一緒に食べるものなのかな?」
「元々は極東の料理じゃない、があいつが送ってくるということは美味いんだろうな」
「そうじゃな。早速封を…」
「待て」
「なんじゃ、さっさと」
「それも温めて真価を発揮する。そのままでも食べられるが3分、お湯で温めるんだ」
「生殺しじゃのう…」
「じっと、我慢の子ってやつだね」
「その方が美味くもなる。それとも…野蛮なドワーフは忍耐力もないのか?」
「顔がニヤケとるぞリヴェリア」
「フッ…」
「あの…あっためていいっスか?」
「ああ、頼むよ」
わちゃわちゃとじゃれ合いながら、3分の時を待つ。
泡が浮いては消えていく、湯気も出てふつふつと煮立っている。
沸騰したお湯にパウチを4人分、4袋入れて3分だ。
煮ている間にごはんを温めてしまって皿に盛り付け。
一緒に入っていたタッパーに入っていた福神漬けを隅に置く。
「漬物は酒に合うから好きじゃな」
「発酵食品は保存が効くし栄養もある。だから酒のつまみばかりに使うなガレス」
「ケチケチするなリヴェリア。大量に漬けてあったじゃろ」
「今は食糧が大切な時期だろう」
「ま、それはそうじゃな」
闇派閥のせいで補給がしづらく、治安は2大派閥の壊滅を機に悪くなる一方だ。
期待の新人はいるが、それでジリ貧なのは間違いない。
だが、漬物やレトルト製品。
このようなものが生まれて食料面はマシになってきた。
「おお……」
「開けただけで匂いが、これは」
「いいね。独特の匂いだ」
「うむ、ええのう」
「まあカロリーはありそうだ」
封を切ると一気に中から湯気と共にカレーの匂いが四人を包む。
中にあるのはもちろんカレー。
カロリーは高く、最悪温めずとも食える。
糧食としてはかなりいいもの、にアームストロングはした。
もちろん温めて、共にパンやコメなどの炭水化物があれば素晴らしいものとなる。
そんなカレーを平皿に盛られたご飯に注ぐ。
絶妙に量が多いそれは皿から溢れかけている。
ゴロゴロとした具材はホクホクと存在感を示している。
カレーは普通にルゥで作ったものよりスープカレーに少し近くなっている。
「こっわ」
「溢れかけてるな…もっと大きいのに乗せた方がよかったか」
「そうっスね。伝えておきます」
真ん中の白い白米の周りを茶色のカレーが包む。
これは良いものだ。
カレーとごはんは、不思議と親和性がある。
「とりあえず冷めないうちに食べよう」
「そうだな。いただこう」
4人が同時に、待っていたと言わんばかりにスプーンでカレーをよそう。
温かいカレーライスを一息に口に運ぶ。
よほど楽しみにしていたのだろう。
「「「「あづ!?」」」」
こうなるのは明白である。
しかしながら、幸せそうな顔だ。
「美味い。スパイスの辛味か?これ」
「程よいね。これは中辛だから…甘口もあるんだろう。子供にも優しい」
「辛口なら酒にも合いそうじゃのう。純粋に美味い」
「炊き出しでこれは喜ばれそうっスね!」
「ああ、量もあるから満足感もひとしおだろう」
試食会はつつがなく。
立食形式に目の前の美味い飯をつっつく。
「しっかし感想か…」
フィンは食べながら、顎に手をついて考える仕草をする。
今回、これを送ってこられた上での依頼は食べた評価である。
今の環境でこのレベルは文句が出ようはずもない。
いつも、この問題には頭を悩まされている。
「保存食でこのレベルはな」
「下手な店より美味いからのう」
「文句のつけ所がね……。しかも毎回海外の料理だし」
「食べたことないやつばかりだからな」
「まあ美味かったでええじゃろ。あいつのことじゃ、より上を目指すのは間違いない」
「それもそうだね」
最終的にこの結論にいつも至る。
まあ、そういうことになった、というやつだ。
PWネタをやりたかっただけの話。
やりたかった本人はプレイをしていない模様。
ボチボチ書いていきとうございます。