俺には夢がある   作:衛鈴若葉

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多分またしばらく不定期です。

【謎の手紙】

誰かから誰かに宛てられて書かれた手紙。
差出人も宛名も書かれていないが、読んだからきっと誰からの手紙か分かるのだろう。
文体から見て素直になれず、ツンを大きく超えた態度しか取れないそんな男からの手紙なのだとわかる。
誰に届けるべきかは、きっと分かるはずだ。


鬼神

廊下に、人が倒れている。

象の仮面を被った彼らはオラリオ有数の大派閥である【ガネーシャ・ファミリア】の更に上層。

強いはずの彼らが傷もなく、廊下に何も跡が残らず倒れ伏している。

そして顔には恍惚とした表情が浮かんでいた。

その原因は桁外れた【魅了】の力。

その力の出処は言わずと知れた美の女神。

都市最高派閥の片割れである【フレイヤ・ファミリア】の主神。

広い廊下をその耽美な顔を晒して歩くは二人の眷属を従えたその人である。

レベル7の猪人とレベル6の猫人、この二人に敵はいない。

そんな彼女たちはずんずんと進んでいき、何故か檻を吟味していく。

中のモンスターを見てボソッと何かを呟いてはほかの檻に目を移して、また目を移す。

 

「……間に合ったか」

 

オラリオでも有数の実力者の前に何も物怖じすることなく出ていける人材はごく少数だろう。

傍若無人の女神に余程のことがなければ女神に従う第1級冒険者二人、彼ら彼女らを前に間に合ったかを心配する豪傑はいない。

 

「あら、いたのね」

 

「何をするかは知らんが確実に面倒なことだろう。だから、失せろ」

 

「嫌って言ったら?」

 

「しばらくお前の供回りしかしていない鈍石と身内すら守れないからと切り捨てる塵芥……。問題はない」

 

眉を顰めて表情を一切変えずに切り捨てる。

実力行使でも問題は皆無だと、そう言ったのだ。

 

「…あ?」

 

「安い挑発に乗る短慮さも追加か」

 

青年を止める枷はなかった。

女神の戦車(ヴァナ・フレイヤ)】と呼ばれる彼はオラリオ最速。

誰にも彼のスピードを見ることすら叶わないだろう。

しかし、彼が相手にしているのは上院議員。

超人ひしめくメタルギア世界でも最強と噂されるレベルのスポーツマンである。

 

身体に魔力を滾らせ、電力が必要であった原作の弱点を脱したナノマシンを起動させる。

即時発動可能、燃費も改善してある。

なればこそ、なればこそだ。

猛者(おうじゃ)】と呼ばれるオッタルでさえ為せなかった単独でのバロールを成し遂げた私である。

 

「何かしたか?」

 

「がっ…」

 

故にねじふせることくらいであれば簡単。

頭を掴んで地面にねじ込んでやった。

アレンはスピード型であるが故にパワーが足りない。

パワーが足りていたとしてもナノマシンの装甲は易々とは貫けるものでは無い。

技巧を極めたサムか、しぶとさでナノマシンを削り殺した雷電か、どちらにしてもアレンは不可能に近い。

オッタルはどちらかと言うと雷電タイプだろう。

だからこそ、猫とかずらっている余裕など皆無なのだ。

 

「てめっ」

 

「鬱陶しい」

 

さすがは第1級冒険者だ。

切り返しは実に見事、反撃も流麗であった。

激昂状態でさえこれができるのは素晴らしいことだ。

本当に素晴らしいことなのだろう。

 

「で?何をしに来た。うちの新人にちょっかいでも出しに来たか」

 

「それが?」

 

「どうせ気づいてんだろう?お前が絡むと面倒なんだよ」

 

「それが私を阻む理由になるの?」

 

「質問文を質問文で返してんじゃねぇよアバズレ」

 

オッタルの眉間に青筋が浮かぶ。

それでも口は止まらなかった。

個人的にこの女神には鬱憤が溜まっているのだ。

こいつに主義があるとしても、スティーヴン・アームストロングにとってこの女神は嫌いな部類に存在するだろう。

生理的に受け付けない。

その感情が正しいと思う。

 

「テメェ……」

 

「ふん、お前の憎まれ口は叩けないようだな。そこで蹲ってろ。駄猫」

 

「なんだ…とぉっ!!」

 

アレンは確かに強い。

 

「……お前との喧嘩は面白くねぇんだよ」

 

対抗策が単純なのだ。

魔法を使われたとしても余裕で耐えきれる。

 

「少しは強くなれ」

 

「か…は……っ!」

 

「で?こいつが死ぬぞ」

 

「待ちなさい。オッタル」

 

オッタルが一歩踏み出したのをフレイヤが止める。

アレンが鬼の形相で私を睨んでいるが、二人もそうだ。

平静を保ってはいるが殺気をヒシヒシと感じる。

 

「……はぁ。分かったわ。やめる」

 

「ならいい。出口まで案内してやろうか?」

 

無造作にアレンを投げつけてやる。

一応擁護しておくと彼の強さはオラリオトップ層に食い込む。

【フレイヤ・ファミリア】副団長の肩書きは伊達ではない。

ただ致命的に私と相性が悪い上に廊下にしては広いが戦場としては狭いこの場所が悪さをしているためだ。

 

「いらないわ」

 

「そうか。じゃあ鍛えてくるといい。精々な。リベンジはいつでも受けてやるよ、それくらいは強者の務めだ」

 

不思議な程に、冷たい空気が漂う。

フレイヤとアレンが背を向け、出口に向かって歩いていく。

静かにフレイヤはブチギレていただろう。

しかし不用意に神威を解放しようと【魅了】を解放しようと。

私には欠片も意味は無い。

それに闘技場をぶち壊すような趣味も彼女にはなかった。

故にここで全面戦争の火蓋は切らない、という判断を下した。

 

「どうした」

 

オッタルの雰囲気は静かなものであった。

アバズレと言い放った直後の青筋は既に消え、無感情な瞳が私を貫く。

 

「俺が超えるべきはお前では無い」

 

「そうだろうな。当たり前だ」

 

「……あの少年には試練が迫るだろう。許せ」

 

「そうか。奴以外に被害が出なければ許そう」

 

「善処する」

 

そしてオッタルもまた、撤退していく。

張り詰めた雰囲気が瓦解していき、緊張も解けていった。

解けていくにつれて私の安心感も増えていく。

 

「……ふー」

 

口から息が漏れる。

周りには気絶した奴らしかいない。

モンスターはいるがどうせ奴らは何も喋る事は出来ない。

 

「よし!セーフセーフ。アイツら苦手だなぁ…ギリだよギリ」

 

ロールプレイも簡単ではないのだ。

アームストロングに関してはぽっと出ラスボスの部類に入るため、セリフは少ない方だろう。

しかもその全てがミームになっているため、さらに資料は悲惨なことになっている。

感情の制御はある程度できるが苦手なヤツの前でそれができるかというのは不可能に近い。

そこも含めて私はアームストロングになりきれていないようだ。

それはそれとしてだ。

 

「……悲惨だな」

 

アレンがクラウチングスタートした跡は蜘蛛の巣のクレーターに。

壁には穴が開き、クレーターがそこかしこに。

白い内装が見るも無惨に、……檻の移動用のレールも少しぶっ壊れていやがる。

 

「アバズレと言った報いか?それとも…。幸い資材はあるがなぁ。うん、クソが」

 

バレなければ犯罪ではない。

そんな名言があるように、バレなければそれはなかったことなのである。

私はもう既にリリルカに追い越されてはいるがそれでも私の技術は高水準にあることには違いない。

警備は恍惚とした表情で倒れている。

応援は多分おそらくきっと暫くは来ないはずだ。

であれば私であれば、上院議員であるならば、問題ない。

 

「ナメるなッ。俺は!スポーツマンだぞぉッッ!!」

 

工具を手にして向かう私はきっと英雄であったろう。

きっと、誰が見ても工具箱を持っている私は英雄のはずだ。

この時以上に重い身体が俊敏に動かせたことがあっただろうか。

多分10回以上はある。

 

 




ごめん……アレンくんごめん…。
この子クソ強いんですけどね…。
アストレア・レコードとかの描写でそれは身に染みてるんすけどね。
でもね。
でもメタルギアエクセルサスをぶん投げられる雷電に余裕で力勝ちできる化け物に勝てるイメージが湧きますかね。
湧きませんよね。
さすがに強いとは言えどアレンくんだとまだ、ね?
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