俺には夢がある   作:衛鈴若葉

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試験型

瞬間【ヴィリーの宿屋】を包んだのは爆発。

ハシャーナたちが使っていたのは2階の一部屋、それ以外の部屋に爆薬を詰めに詰め込んでいたのだ。

作動のスイッチは特定の時刻と宿屋内の人数が4人を超えたら。

何とか煤に塗れながら逃げ出した店主のヴィリーを含めた4人は爆煙を見つめている。

そして、爆発音に惹かれたであろう野次馬が集まってきていた。

 

「俺の…俺の店がァァァァァ!!!!!!!」

 

「……弁償と工事はこちらで請け負いますので」

 

どうやら無許可のようだ。

秩序側だが根は無法者、そんなデスペラード社はよくこんなことをやる。

無許可での民家や街の破壊や犯罪者の殺害など、ガネーシャ・ファミリアやアストレア・ファミリアとは根本的に違うのだと、よく分かる。

今回も闇派閥の残党の殺害を無許可でやろうとしている。

リヴィラに築かれた拠点にあったありったけの爆発物を使用した、これで死なぬはずがない。

そう、モンスーンは思っていた。

 

「アーディ?」

 

「モンスーン。バイザーを覗いて」

 

「何を言って。敵は完全に沈黙……」

 

後ろからやかましい声が聞こえる。

それはすぐに思考の外へと追いやられた。

 

「…あれで生きてんのか」

 

「そのようです」

 

ハシャーナが歯噛みしながら言い、モンスーンが答える。

バイザーに備わっている機能は実に多彩だ。

その中で今回使っているのはサーモスコープ、暗視スコープなど。

つまりは敵がどこに隠れていようが、暗くて見えづらくても、確実に発見できる機能である。

 

「俺は足でまといだな…。ボールスに説明してくるわ」

 

「任せます」

 

「お願い。ハシャーナさん」

 

ヴィリーを引きずり、ハシャーナが離脱する。

煙と炎と夜の闇で敵の姿は肉眼では見ることは出来ない。

 

「状態は?」

 

「腕が片方消し飛んでいます」

 

「…なら、少しはマシだね」

 

「試作機の準備は」

 

「5分」

 

「了解」

 

銃を懐にしまい、自らの得物である【戦術釵】をモンスーンは取り出す。

無論、高周波加工がされた十手のような武器で、琉球古武術で使われたとされている。

基本的に左右1組で使われるため、モンスーンも同じくである。

磁力…フレミング左手の法則で義体の磁界と武器の磁力で生じるローレンツ力によって自在に操ることが可能である。

証拠に、紫の電流がモンスーンの体に巡っている。

これを活かした戦闘には衣服は邪魔だ。

 

「……」

 

今は出し惜しみをしている場合でもない。

小さい体に、赤と黒を基調とした義体。

少し、体に線が走っている。

黒いローブを脱ぐとそんな体が顕になった。

 

「出し惜しみはなしだ」

 

「うん。お願い」

 

赤髪の女はまだ爆炎の中にいる。

モンスーンの目には少しちぎれた腕が再生しているようにも思えた。

そんなことを気にしている暇はないと、深呼吸する。

 

「…コケにしてくれたな」

 

「服、着たんですね」

 

腰布と胸に申し訳程度の布が巻かれている程度だが。

全裸よりはマシな格好だ。

 

「第一級冒険者に、お前はなんだ」

 

「サイボーグですが」

 

「知らん。とりあえず、死ね」

 

どうやら、腕が再生し始めている。

 

(胸に魔石が…?)

 

片腕でも関係なく、大剣を振りかざす女。

腕が再生しきるのは相当時間がかかるようだ。

目的の品が余程重要らしい。

 

「チビが…」

 

「あなたが遅いだけでは?」

 

表情を変えず挑発し、後ろに回り込むが防がれる。

 

「なるほど、あの男か」

 

「なっ!?」

 

女は嘲笑しながら、逃げたモンスーンに容易に追いつく。

簡単に、剣を投げ捨てて。

 

「それで?どうする?見る限り幹部か?武器と身体…見る限り余程入れこまれてるらしいな」

 

本来ならばハシャーナに向けられた手のひらが、モンスーンの首を締め付ける。

 

「かっ…はっ…」

 

「ここでお前の首を取ってあの男に届けてやろうか?」

 

呻き声をあげながら、足がバタつく。

腕を掴んで抵抗しようとするか女の手は動きそうにない。

 

「……だと思ったか?」

 

「それで?腹に突き刺しただけか?」

 

「そうですよ」

 

モンスーンの特徴とはなにか。

捕縛した程度で捕まえられるはずもない。

故に、モンスーンなのだ。

 

「ローレンツ力だ」

 

「は?」

 

身体の分解。

細かく、細かく、生首となった首も電磁浮遊してガチャンガチャン繋がっていく。

 

「で?」

 

「奇怪だな」

 

「ははは!その顔!面白い!闇派閥のクソがするその顔!私の手でぶち殺してやりたいところですが…」

 

「一緒にされては困るな」

 

「そうですか。では?ただ協力しているだけですか?」

 

怪物祭前のアームストロングの話を思い出す。

モンスターの特徴と人間の特徴を併せ持った敵。

どのように作られたかは分からないが今はそんなことを考える暇はない。

捕縛をする余裕などはない。

であるならば、やることは決まっている。

 

「情報でも引き出すつもりか?」

 

女の周りを走り回り、攻撃して離脱。

やっていることは単純だが、近接攻撃しかできない女には有効な手だ。

攻撃は軽く、脅威には値しないと女にはわかっているだろう。

しかし、モンスーンの身体に流れる紫色の電流がそれを許さない。

リングが如く、女の周囲を囲っている。

 

「喋るはずがないだろう」

 

「そうですか。しかし、もう遅い」

 

体に違和感を感じたのか、顔を歪ませてモンスーンに言葉を放つ。

感情が昂ったのだろう、身体の不調を自覚したのだろう。

そして、モンスーンとアーディを侮っていただろう。

 

「───遅い?遅いだと?私に突き立てたのはこれだけだ。もう再生している」

 

「へぇ。なら好都合」

 

磁力とは偉大なものだ。

特にモンスーンの武器には強いものを仕込んである。

 

「では、チェックメイトを」

 

「ほざくなよ。この程度で──!?」

 

女が痙攣を起こしながら地面に打ち付けられる。

亀裂を作りながら、重力でも強くなったように。

対モンスター用の電磁パルス兵器と釵による磁界操作の合わせ技だ。

深層のモンスターだろうと階層主でもなければ拘束できる。

 

「な、に、を…。きさまぁ」

 

「アーディ」

 

「了解」

 

後ろを見れば巨大な銃のようなものを構えているアーディの姿があった。

既にチャージしきっているのか、銃口から電流が漏れ出している。

これが【試作型】の超兵器。

普段はアーディの義手に押し込められている、小型の兵器。

日頃から魔力を格納し、濃縮して凝縮。

そして圧縮して撃ち出す、そんなシンプルな兵器だ。

 

磁界の生成に対モンスター用の電磁パルス。

それで動きを止めてビームで仕留める。

そんな黄金コンボだ。

 

「グギギ……うぉぉぉぉぉ!!!!」

 

小型化と超威力の融合。

それが示すのは反動をかなぐり捨てるということだ。

 

アーディの身体から聞こえる破裂音と、超圧縮された魔力による破壊の奔流。

真っ暗闇に包まれていた中層に、閃光が満ちた。

そして、

 

「俺の店と土地ィィィィィィィィィィィ!!!!!!」

 

ある男の慟哭が満ちた。

 

 

 

 

 

 




備考 試作型
参考元は型月のブラックバレル
アーディの身体に仕込まれていたのは無理やり小型化されてたもの。
なので撃つと義体はボッコボコになる。
普通にやっても使用者には相当な負荷がかかる。
使用方法は限界まで魔力を貯めて、引き金を引くだけ。
必要は魔力量は1ヶ月間毎日リヴェリア様が全力の魔法を放つだけなのでお手軽ですね。

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