俺には夢がある   作:衛鈴若葉

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そんなに何も無いただの説明回です。



万能にはなれないけど

鬱シーンに何故か現れる上院議員といえど救えなかった者はいる。

その筆頭にいるのが【ディオニュソス・ファミリア】に存在するエルフの【フィルヴィス・シャリア】である。

彼女は【二十七階層の悪夢】により死亡、現在は【怪人】となり、主神と共に暗躍しているはずだ。

その事実を受け止めると既に死亡しているために救済は不可能か、となる。

不可能では無いが無理である可能性も確実に存在する。

彼女の胸にある魔石、あれが心臓の役割を果たすか脳など全ての中枢神経の役割を果たすものか。

前者であれば脳を移植しサイボーグ手術を施せばそれで二度目の死は防げる。

後者であれば不可能だ。

しかし今のところ、モンスターの魔石の動きはほぼ心臓である。

臓器も血液もある。

つまり、希望はあるわけだ。

 

されどミームは万能であるがここにいるのは一人の人間。

ミームの【スティーヴン・アームストロング】とはまったく、一緒にはなれない。

 

さて、壮大な自分語りをしたわけだが。

フィルヴィス救済の下準備はどうしようかと悩んでいるところではあるが、まあ今はどうしようもない。

というか当日までどうしようもない。

だって【27階層の悪夢】は阻止できなかったもの。

単独じゃ無理だよあんなもの。

精霊もどこにいたんでしょうね、探したんですけどねぇ!

今考えるべきことは……深夜テンションで作ったサムの【高周波ムラサマブレード】の鞘である。

なんか銃のトリガーがくっついたアレだ。

刀本体?私に鍛治ができるはずもない。

なので目の前にあるのは鞘オンリーである。

ということで今考えることは、これを誰に使ってもらうかだ。

そしていいところに先日助けた【アストレア・ファミリア】からの依頼の品がある。

アームストロング工房はアフターサービスも満点なのだ。

依頼は【ディアンケヒト・ファミリア】か【ミアハ・ファミリア】にお届けだ。

安いのは【ミアハ・ファミリア】なのでこっちがオススメ。

 

「行きませんよ」

 

縋るような目線をソファで寝転んでいる2人目の団員に向けると即答で断られた。

その方向に目を向けただけなのに。

何も言っていないのに。

あとお前今日ソファから動いてないのに。

 

「今日休みなので」

 

ソファの上で寝転がっている。

欠伸をしながら肩肘ついて私を眺めている。

そんな彼女は【リリルカ・アーデ】。

茶髪で小人族で数年前に【ソーマ・ファミリア】から引きずってウチに改宗させた。

サポーター向きの性能すぎるからしかたない。

実質無限にアイテム持たせられるのはぶっ壊れだと思います。

銃とか持たせてアタッカーにもなれるし依頼の品をありったけ持たせて配達もできる。

最高の人材なアーデさんである。

問題点はウチに来て自己肯定感が高まりすぎたのと、週2の休みには絶対に働かないことくらいだ。

昨日は明日は一日中ソファから動かないですとか言っていたのでその言葉はその通り実行されるだろう。

そんなリリルカを見て私はため息をつく。

 

私はアームストロングのキャラを崩したくない。

故にあまり喋りたくない。

喋りたくないというかミーム以外喋りたくない。

ミームのあれが頭に残りすぎて普段の喋り方が想像つかなくなってきているのが理由である。

喋りたくないのであんまり自分から外に出たくない。

大体リリルカとか他のサイボーグの人とかに行ってもらうのが通例だ。

しかし現在はリリルカ以外出かけてしまっている。

元々厚意で手伝ってもらっているため当たり前だが。

 

「アームストロング様が行けばいいじゃないですかー」

 

「行きたくないから悩んでるんだが?」

 

「別にいけますよ。キャラとか気にしてももう無駄ですよ無駄」

 

「あ?私は冷酷で残虐なスティーヴン・アームストロング上院議員だ。目的のためなら手段を選ばず、殺しすらも組織すらも利用して…」

 

「手当り次第助けて格安で義手やら義足やら義体やら作ってあげて?殺しは闇派閥くらいで?組織にも格安、手伝ってくれる人材には十二分の報酬を約束、派閥としても資産も相応に。この世の中を西部開拓時代に戻す!とか言ってますけどあなた完全に秩序側ですし底なしのお人好しですよ」

 

「寝覚めが悪い」

 

「それだけの理由でリスク度外視の社会奉仕はとんでもなくお人好しですが?」

 

「私は私が満足できりゃそれでいい。どうだ?自己中心的だろう」

 

「思想がどうであれ出力される行動が善ならば善なんですよアホ上院議員」

 

「上院議員は頭良くないとなれない職業なんだがな?」

 

「そーなんですねー、頭いいんですねー、上院議員はすごいなー」

 

「棒読みだなお前……」

 

ソファの上で雑誌を読んでいる彼女は私をからかって遊んでいる。

そうに違いない、そのはずだ。

証拠にずっと彼女は薄ら笑いを浮かべている。

 

仕方がない。

【戦場の聖女】に連絡して取りに来てもらおう。

彼女らはまだ治療院にて入院中のはずだ。

彼女でなくとも【ディアンケヒト・ファミリア】の人に取りに来てもらおうそうしよう。

いつも納品時は取りに来てもらっているから問題は無いのだ。

今思えばなぜ今回は自分で届けようと思っていたのか謎である。

ということで伝令係をリリルカに任せよう。

 

「それならリリが届けた方が早いでしょ」

 

確かにこの世界に通信機の類がひとつしか無かった。

眼晶(オクルス)】持ってるから忘れました。

マジで通信機は作りたいがこれはこれで難しいのである。

作るくらいなら他に傾倒した方が楽だし、どうせもう一種類あるし、という判断であった。

 

それはそれとしてどうするか。

正社員は休日出勤絶対拒否で私はコミュ障で。

そして納期はまだ先で。

……納期はまだ先で?

 

「おや、安心した顔ですね」

 

「納期は先だった」

 

「お、なら安心ですね」

 

「天下の上院議員がこんなものに苦しめられるとは…」

 

深く、ため息をついて天井を見る。

私のエミュ力が低いのが原因だ。

ホントにミームの印象が強すぎるのがすごく悪い。

そのおかげで誰かを助ける際にはほぼ無敵になれるのは良い点ではあるが。

 

「もうお仕事はないんですよね」

 

「今のところはな。やりたいことはある」

 

「ですが根を詰めすぎですね」

 

「もう時間がない。高周波加工はまだ改良……」

 

「はいはいそれはもう何回も聞きました。ですがそろそろ休んでください」

 

「私の体はもう疲れん」

 

「だとしてもです。ヘスティア様も心配してましたよ」

 

「……」

 

「シャクティ様もアスフィ様もみーんな、です。このままだと過剰に心配されて身動きが取れなくなります」

 

「休んだと言っておけ」

 

「神様には見透かされます」

 

事実として私は全く疲れない。

アルコールで酔うこともなく毒も効かない。

ある意味サイボーグよりもサイボーグをしている、そんな体だ。

そのため、休憩は意味をなさないが仕方ないだろう。

 

「寝る」

 

「おやすみなさい。お客様が来たら対応しておきます」

 

「頼む」

 

私の部屋、だが何もない。

寝るためだけの部屋のはずだったが今となってはもうその必要も無くなった。

使ってないし中に入ってもなかったのにホコリひとつない綺麗な姿を保っているのはリリルカのおかげだろう。

休日出勤は絶対に拒否する彼女だが、実に働き者だ。

平日はオラリオを走り回ってくれるし手伝いもしてくれる。

このオラリオにおいて私の工房を任せることができるのは彼女1人だろう。

口からは毒が出てくるが私を気遣ってもくれる。

今も大嫌いな休日の労働をきっとやってくれている。

そんな彼女に任せると、安心して眠ることができる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、やっと行きましたね」

 

放っておけば永遠に働き続けるのがアームストロングという人間、人間だろうか、多分人間だろう。

嘘はついていない。

オラリオに来て恩恵も受けずにダンジョンに潜り無作為に人を救い、義手や義足を開発して【ミアハ・ファミリア】や【ディアンケヒト・ファミリア】に売り込み、暗黒期にも都市に貢献した。

そしてファミリアに加入したのは最近。

それも【ヘスティア・ファミリア】という零細派閥。

本人曰く零細が一番動きやすい、ヘファイストスに頼まれた、らしい。

そんな善性の塊な彼を当然都市の人間は注目している。

実力を頼りにも脅威にも、ファミリアにも入らず恩恵も受けずに上級冒険者を蹴散らしていたのはそりゃ脅威に思うだろう。

技術力もまた、脅威にも思われている。

これまでたどり着けなかった領域の義手や義足を簡単に開発し、義体すらも作ってみせる。

今は心臓の代わりになるものを開発中と、既に血液に変わるものは開発完了。

とんでもないものである。

ちなみに人気は低い。

一重に見た目の問題だ。

 

「…寝ますか」

 

どうせ客が店に来ることはないだろうとソファに寝転び直そうとする。

寝転び直そうとしたが入口の錆び加工のドアが開く音が耳に聞こえてきた。

身体を傾けたところなのが幸いですごい勢いで立ち上がる。

 

「たのもー!」

 

元気な声が工房に響き渡る。

元気な声と共に工房に入ってくる人影は一人だ。

紅い髪を後ろに束ねた女性。

 

「いらっしゃいませ」

 

「あら?かわいい女の子ね。あの人はいないのかしら!あの大きい筋肉ムキムキの人!」

 

「アームストロング様なら奥でお休みになっています。本日の御用はなんでしょうか【アリーゼ・ローヴェル】様」

 

奥の依頼の品を【ディアンケヒト・ファミリア】を仲介として発注したファミリアの団長。

紅の正花(スカーレット・ハーネル)】の二つ名をとる、Lv4の冒険者にして正義の執行者。

今やオラリオの注目の的にして今は治療院に療養中のはずだ。

 

「依頼のものを取りに来たわ!ちょっと早いけど、あるかしら!」

 

「問題なく。ウチのアームストロングの仕事は爆速ですので」

 

「そうなの?ありがたいわね!」

 

「オプションもございますがご入用ですか?もちろん無料(タダ)です」

 

完成されたものは既に専用のアタッシュケースに入っている。

それぞれの団員用にケースは分けられているため、数は数十に登っている。

 

「貰えるの?なら貰えるものは貰おうかしら!」

 

「かしこまりました。まずは商品のご確認をお願い致します」

 

一つ一つの重さはそんなに重くはない。

アタッシュケースに名前が刻まれ、その中にはもちろんアリーゼの名前もある。

 

「お、多いわね…」

 

「これが依頼の品ですので。この中にあなた用のものもございますが確認されますか?」

 

「私のも?私は何も異常はないのだけれど」

 

「はい。ですがご用意してあります」

 

「うーん……必要ないわ!だってあなたたちのこれまでのこと聞いたもの。信じてるわ!」

 

「では持ち帰りを……お願いしたいのですができますか?」

 

なにぶん数が多い。

重さは簡単にクリアできるだろうが持ちきれないだろう。

 

「【ディアンケヒト・ファミリア】の人についてきてもらってるから大丈夫よ!私はただのお手伝い!」

 

「ならなぜあなたのみがここにいるのか不思議ですが、持ち帰れるのであればいいでしょう。このままお持ち帰りでよろしいですか?」

 

「ええ!問題ないわ!」

 

「かしこまりました」

 

5人くらいの人が入ってきて、ケースを持って出ていく。

本当にいたようで、アリーゼは手を振って5個のケースを持って出ていく。

乱雑に使うのはやめて欲しい、中身は頑丈とはいえケースは割と精密機器だから。

 

「……寝よ」

 

ビジネスモードは疲れるものである。

休日の労働というのも乗ってかなりの疲労だ。

そのため、ソファに寝転がるとすぐに意識が落ちた。

 

 




アリーゼのキャラが迷子です。全くわかんねぇです。
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