俺には夢がある   作:衛鈴若葉

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特に鬱エピがなかったので一気に飛びました。



主人公が主人公しますように

5年という月日は長いものである。

高周波加工技術が完成し、サイボーグ技術が完全に完成した。

このふたつができるくらいには長い月日だ。

ホームは未だにあの廃教会だがサラッと隣の空き地に一軒家が建っている。

完全にあの地下室が私の研究所となったわけだ。

何も起こらない平和な5年、おかげで私は研究に没頭できた。

なので今私は気分転換に出ている。

もちろん私一人だ。

あ、もちろん私は原作を知っているのでそろそろ開始時期だなぁとはわかっている。

忘れていた訳ではなく、気分転換だ。

今帰ったらもう主人公がいるなぁと思いながら私は中層を歩いている。

ミーム補正がなくともアームストロングはすごく強い。

肉弾戦だけでなく遠距離でもやれるから当たり前だが。

純度の高いアダマンタイトでも砕けるんだぜ。

散歩で50階層まで行けるくらいにはな。

 

「……ん?」

 

原作開始時期としては合っている。

つまりミノタウロスがなだれ込んできても問題は一切ない。

しかし、しかし。

問題は耳に届いた音の数と熱源探知によって脳に送られた情報の量だ。

50?くらいだろうかそれくらいのミノタウロスが、私の周りの壁に、いる。

否、生まれてきていると言ったところだろうか。

 

「んー……」

 

多すぎんだろ。

まだ増えてるぞ、何匹だこれ。

70、80……どう考えても私が1人で相手は余裕だよ。

簡単だよ、普通に。

それでも多くねー?

しかも私深層の素材をたんまり背負ってるんですよね。

……やばいですねこれ。

勝てますよ?勝てますけどね?

あれですかダンジョンさん。

バロールとかウダイオスとかゴライアスとかを一撃で粉砕したのがダメでしたか。

ジャガーノートを無限に生み出してどんな戦法試せるかなしたのがダメでしたか。

59階層まで行って精霊さんにちょっかいかけたのがダメでしたか。

完全に殲滅対象に選ばれた感じですかこれ。

まーだ増えますよー、3桁超えましたねー。

もしかして原作でこれくらいのミノタウロスの相手を【ロキ・ファミリア】さんしてたんですかね。

それなら逃がして当たり前ですわ五階層までで一匹まで減らせてるのすごい。

 

ただまあ、一つ言える事はある。

スティーヴン・アームストロングに逃走の文字は無い。

アームストロングの四股はそれだけで階層を揺らす。

拳を合わせると、金属音が響く。

天下無双、最凶たる上院議員に敗北はない。

紅い瞳を輝かせて、不敵に笑う。

 

「ヴォォ……」

 

第一陣が生まれ落ちる。

牛頭共の紅い瞳が私を見つめている。

 

「俺に挑むか…?」

 

眼鏡が地に落ちる。

上等な革靴が、踏みにじる。

 

「どうしようとお前たちの自由だ」

 

中央にいるのだ、簡単に獲物は見つかる。

所詮は1人、後ろで仲間はいくらでも生まれる。

…とでも思っているのだろう。

 

「だが……」

 

不可能だ。

この程度の軍勢に、アームストロングが負けるなど。

最早、私が死ぬこと自体が鬱要素になってしまったのだ。

つまり、つまりだ。

 

「自由には責任が伴う」

 

そう言って腕に力を込めて地面に突き刺す。

するとどうだろう。

地面がバキバキと軋みをあげ、割れていく。

異様な光景だろう。

何をしているのか、なぜ地面がひび割れて奥が光っているのか。

しかし意味がわからない行動をしただけ。

何が起こるかわからないが押し包めば勝てる。

故に止まることはありえなかった。

だから割れた地面から上る業火が牛を焼いた。

 

「ヴォォ!?」

 

「情報弱者が」

 

クモの巣状に割れた地面からの業火。

故に視界は完全に塞がれる。

引っかかった牛は燃え尽き、引っかからなかった牛は檻に囚われる。

誰一人逃がさない、そんな技だ。

 

「死にやがれ」

 

冷たく、拳が振り下ろされた。

 

確実に勝てる勝負である。

もはや負ける要素はひとかけらもない。

次々に生まれるミノタウロスも同じことをすれば簡単に屠れる。

てか何もせずとも簡単に屠れる。

余裕である、簡単である。

上院議員の体はすごい強い、だから俺TUEEEEを楽しむとしよう。

……でもさ、ここ十八階層へ降りる階段の前なんだよね。

ゴライアスがいるところなんですよええ。

そして原作開始時期なので【ロキ・ファミリア】が帰還するくらいの時期です。

つまり、分かるな?

 

風が舞い降りちゃった。

首がへし折れちゃった。

つまりね、助けられちゃったわけですね。

半分くらい潰し終わったところでね。

 

「アームストロング」

 

「フィン。やっぱりお前らか」

 

「……なんでここにいるんだい?」

 

「散歩だ」

 

原作に話が戻せそうだ。

すごくラッキー。

考えてみればこのままあっちが絶望的な戦場だと気づきそうで逃げてくれるかもしれない。

そして原作の流れになってー、主人公が主人公してー、最高ですねはい。

よし、適当にやってサボろう!

 

「あ!逃げちゃったァ!」

 

「てめぇらモンスターだろ!?」

 

ヨッシャァ!!

素材も無事ィ!

じゃあな【ロキ・ファミリア】ァ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

力任せの、ただそれだけの一撃。

そんな一撃ですらも避けられたのは奇跡と言っても良かった。

丸太のような腕はたやすく少年の体を捻り潰すだろう。

今の少年では、奇跡を二度も起こすのは不可能であった。

腰が抜け、目から涙を流すだけの少年に、逆転などできるはずもない。

故に少年が生き残るには誰かに助けられることしか方法はない。

少年は必ず生き残る。

この世界で悲劇が起こっていいはずがない。

だから、怯えて縮こまった少年に暖かい何かが降り注いだ。

 

「……え?」

 

いつまでも意識は途切れない。

あるのは生臭い匂いと生暖かい感触。

 

「…ちっ」

 

そして聞こえる舌打ちの音。

 

「うわぁっ!血!?」

 

恐る恐る顔を上げて見るとまず体に飛び散った血に驚く。

 

「おい」

 

「はひ!?」

 

そして話しかけてきた声に驚く。

さらに見上げた先にあった、強面に驚いた。

驚いて……駆け抜けていった。

 

「……はぁ?」

 

残された男は去っていった少年に対して深くため息をついた。

同じ【ファミリア】の後輩が自分を見て逃げ帰っていく、面識はないとはいえそれはありえない話だろう。

 

「アームストロング、さん?」

 

「これで終わりだろう。俺は帰る」

 

「え、あのさっきの子は…」

 

「お前には関係ない。ウチの派閥の話だ」

 

「え?えっと……?」

 

眉間を揉み、深くため息をつき。

男は遠く空を仰ぐように去っていく。

どうしてこうなったと呟いたが、呟きは誰もいない空間に溶けていくだろう。

 

 

 

 

 




アームストロングが死ぬこと自体が鬱になるという最高級の鎧を手に入れたのでさいつよになった上院議員です。
今回から原作に入りますが特に何もないですね。
基本的に好感度は高いですが、ファミリアは零細のままですからね!!
ではまた次回。
またしばらく更新しないかもしれません。
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