俺には夢がある   作:衛鈴若葉

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ギャグに振り切ろうと思ったけれど中途半端になりそう。だが走る。


逆行もあるなんて聞いてない

急に【疾風】に深々と頭を下げられた。

もう彼女らを助けたのは幾年も前の話だ。

今も義手や義眼などのメンテナンスも請け負っているため、感謝の言葉は1ヶ月おきに送られてはいる。

 

「本当に、ありがとうございます…!」

 

重かった。

ヘビーもヘビー、万年が籠っているかのような言葉が私に送られた。

そんな感謝の言葉を送られるようなことはしていないはずだ。

記憶から探ろうとするが、そんなものは存在しない。

 

「意味が分からん」

 

「……あ」

 

「詳細を話せ。…ここでは都合が悪いな」

 

「はい。お店でお願いできますか?」

 

「…ああ」

 

まあ、内緒話ならウチの店が一番だろう。

しかしごくごく自然に来ようとするのはどうかと思う。

何故か目に計画通りとか書かれていたような気がする。

気がするが何もかも話を聞かなければ分からないことである。

あ、そうだ。

 

「【疾風】」

 

「なんでしょう?」

 

「クラネルなら多分ギルドにいるぞ」

 

「……!?いえ、あなたとの対談のほうが優先すべきことです」

 

「そうか」

 

ベル・クラネルの話を振ったら明らかに動揺した。

彼のことを知っているらしい。

…いやぁ?それはないだろう。

時間逆行なんてそんなわけない。

ベル君のことを知っているならそれ以外可能性はないがあるわけないだろう。

 

「早く行きましょう。早く」

 

「そう急かすな」

 

ベル君のこと大好きかコイツ。

一目惚れかー?

時間逆行だろうなーどうせなー。

なんでこうなるんだ聞いてないぞー。

 

「あ、おかえりなさい。あら【疾風】様もご一緒ですか」

 

「ああ。店に行く」

 

「りょーかいです。報告事項がありますが後で?」

 

「それでいい」

 

「分かりました。荷物預かりまーす」

 

「助かる」

 

廃教会の隣のただの小屋。

今では素材の倉庫兼作業場となっている場所で仕事をしていたらしいリリルカに素材の詰まったバックパックを渡す。

 

「変わらず陰気ですね」

 

「で、何の話だ」

 

店に着き、リューを座らせる。

そしたらなんか失礼な発言が飛び出した。

少しため息をつきながら話を催促する。

 

「信じてくれるかは分かりませんが…」

 

「時間でも遡行したか?クラネルのことを知っていたな」

 

「…分かりますか」

 

「未来を知る者、としてはお前と同じだ。どこから来た?」

 

マジかよ。

すごい困惑顔を期待していたのになんだその顔は。

仲間を見つけたような輝きを得た目で私を見ないでくれます?

多分あなた原作にはいない私を警戒して話しかけてきましたよね。

なんで!頼れる人を見つけたような目を!私を向けるんですか!

 

「【人造迷宮】の第二侵攻、でしょうか」

 

「なるほど」

 

ベル君に惚れた段階じゃねぇか。

絶対自覚してるじゃねぇか。

確実に取りにいく気ですねこの金髪エルフ。

確かベル君の好みも金髪エルフだったなそういえばな。

 

「あなたは?」

 

「この世界の住人ではない。だからこそだな、だいたい知っている」

 

「……普通なら信じられませんが信じましょう」

 

「説明はできんからな。助かる」

 

本当に助かる。

まあ、未来を知っている人が増えたのは良いことだ。

闇派閥絡みの事件は必ず起こってしまう。

【二十七階層の悪夢】という私一人では解決できなかった例もあるのだ。

人員は欲しい。

 

「改めまして、ありがとうございます。我々のみならず、オラリオの方々の命を助けてくださり」

 

「礼を言われるほどのことはない。それは俺の存在意義だからな」

 

「それでもです。あなたのおかげでアリーゼたちは生きている。すべてはあなたのおかげだ」

 

「そうか。受け取ろう」

 

記憶はあるのだろうが、しなければ気が済まない。

彼女はそういう気質なのであろう。

本来ならば無力さを見せつけられ、あまつさえ仇を取り逃がし、復讐に手を染めた。

私に【疾風】の気持ちなど、分からない。

 

「ならば、これからどうする?」

 

「残党は動き出しているのであれば……」

 

「動き出している。新種を発見した。精霊も見つけてある」

 

「……そうですか」

 

「策はこれからだがな、我々がいるのだ。それにお前の時より戦力は充実している。少しは楽になるだろう」

 

【アストレア・ファミリア】の首脳の面々は軒並みLv6にランクアップ済み。

【ガネーシャ・ファミリア】も【アーディ・ヴァルマ】が生存、彼女もLv5にランクアップしている。

これだけでもかなりの戦力アップと言えるだろう。

それに私が助けた人々、サイボーグ、細々とした戦力も確実に高くなっている。

 

「あとはお前自身の問題だな」

 

「へ?なっなにを言っているのです?」

 

「クラネルに惚れているだろう。手伝ってやろうか?」

 

「えっ!?えっと、それはありがたいですが…!」

 

「よし決めた。アレには強くなってもらわねば困る。口実も用意できる。よって【アストレア・ファミリア】にクラネルを預けて育ててもらう。それでいいな?」

 

「……!?」

 

「決定だな」

 

「えっあっはい」

 

「頼んだぞ。少し待ってろ」

 

私はペンと羊皮紙を用意してササッとペンを走らせる。

脳筋とはいえこういうのは書けるのである。

上院議員だからね、資料は沢山書いてきたのだ。

これは簡易的な契約書だが。

 

「確認しろ」

 

「これは…?」

 

「契約書だ。さっさと読め」

 

内容は【ヘスティア・ファミリア】の新人冒険者【ベル・クラネル】の訓練を【アストレア・ファミリア】に委託する。

その代わり【アストレア・ファミリア】からの発注を大幅に値下げ、または無料にする。

そんな内容である。

 

「いいんですか?」

 

「クラネルが強くならなければ俺が困る」

 

あの子が強くならなければ多分どっかで詰む。

順調に行ったとしても黒竜を倒すのは確実にベル君だ。

そこで詰むとー、なんかめんどくさいことになるんでしょうね多分。

そもそも彼、トラブルに巻き込まれやすい性質を持ってたりするので簡単に死ぬと思うのだな。

フレイヤ様とかいう特級地雷もいるので、ホントに強くなってもらわねば困る。

 

「仕事があるなら気軽に来い。その方が話もしやすいだろう」

 

「至れり尽くせりですね。ありがとうございます」

 

「境遇は違うが仲間だからな」

 

仲間には上院議員は優しいのだ。

敵には容赦しなかったりするが同志にはすごく優しい。

雷電にも駆け寄って埃を払いながら握手してたからね、いいことだね。

 

「……ああ、最後に言っておく」

 

「なんでしょう?」

 

「俺は一生弱いままの【ベル・クラネル】に興味などない。俺が好きなのは【個人の闘争】だ。分かるな?」

 

「あなたとの契約は違えません。ご心配なく」

 

「期待している」

 

「期待していてください」

 

リューであれば問題はないだろう。

問題は受け入れられるかだがそこも問題ないと思う。

我が工房の装備は唯一無二で、故に割高にならざるを得なくなっている。

なので安くできるのでWin-Winというやつだ。

 

「帰られましたね。何のお話だったんです?」

 

息をついたらリリルカが降りてきた。

素材はもうリストアップできたようだ。

 

「変な話だ。あと新入団員がいるな?」

 

「知ってましたか」

 

「ああ。【アストレア・ファミリア】に預けることにした」

 

「何を勝手に決めてるんですか?」

 

「喜ぶだろ。美女しかいないぞ」

 

「まあ、そりゃそうですが…」

 

会ったことはない。

まあいけるやろの精神である。

 

「決定事項ではない。本人が了承すればの話だ」

 

「強引ですね…まあいいです。本人帰ってきましたよ」

 

「そうか。顔合わせしておこう」

 

感想は、ベル君って生意気可愛いですね。

 




もうこの上院議員ビームとか撃っても違和感ねぇんじゃねぇか?
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