俺には夢がある   作:衛鈴若葉

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今回でロキさんとこのところまで行こうと思ってたんだ。
いい区切りかなぁ!


誰かの隣

アームストロングという男はリリルカ・アーデにとって、英雄である。

路地裏で転がっていたところを拾われた。

【改宗】までさせてくれた。

生きる指針を授けてくれた。

目標を、意味を、技術を、無二のものをリリルカに与えた。

休日出勤はないし、ノルマも緩い。

できることをやらせてくれる、そんな信頼感がアームストロングにはある。

 

いつも、アームストロングは一人で突っ走る。

リリルカに任せるのはいつも地上での仕事だ。

ダンジョンにはいつも一人で潜る。

新技術の開発には常に一人であたり、一切寝ない。

その癖、ヘスティアやリリルカには寝ろ、適切な運動をしろ、食事を摂れ、と栄養たっぷりのご飯を作り、リリルカにCQCを教え、寝具を一から作り直し。

そして一軒家に倉庫、地下の店に繋ぐエレベーターも作り。

手伝わせるのは店の仕事くらいだ。

ねだらなければ手伝わせてすらくれない。

故に、英雄だ。

リリルカをヘスティアを、民衆を無視して自分の善意と善性を押し付ける。

相手の意思なんて関係なく、だからこその英雄。

それらがリリルカたちにハマっていたから、彼は好かれているのだろう。

そんなもの関係なく、リリルカは彼を好いている。

異性として見れるはずもなく、彼と生殖行為をしたくなるはずもなく、単純に好いている。

 

「リリルカ」

 

「はい?」

 

「クラネルのトレーニングメニューを聞いていたんだが」

 

「あ、ああ。すみません。考え事をしていました」

 

「そうか」

 

「トレーニングメニューでしたね。取りあえず私の時と同じにしているのですが」

 

深く、思考の海に潜り込んでいたようだ。

アームストロングと歩くのも久しぶりである。

ダンジョンに行く以外、ほとんど地下に籠っている。

そんな男であるから、外食も久しぶりだ。

 

「ふむ、少しきつくしても良さそうだな。明日、組み直そう」

 

「そうですね。今日はお仕事のことは忘れましょう」

 

「む?まだまだやることはある。忘れ物はないと言っていただろう」

 

「ええ、ありません。ですがこの中にはハンカチとお財布と葉巻しかありませんよ?」

 

「それは、困るな…」

 

アームストロングは食事は楽しむ。

美味い物は美味いと、満喫はできる。

しかし、それに集中はしない。

常に並行して何かをやっている、何かを考えている。

 

「今日くらいは仕事のことは忘れてください。明日は【アストレア・ファミリア】の方々への挨拶もあるでしょう?それにあなたはこれまで息抜きをほとんどやっていない」

 

「趣味はしっかり楽しんでいるが」

 

「それでも仕事の比重が大きすぎます。私やヘスティアと一緒の時くらいしか【げーむ】とやらはしてないでしょう」

 

「いや個人的に楽しんでいるんだがな」

 

「それでも一日20時間労働は頭おかしいです。休む必要がないとはいえダンジョンでも休んでないのでしょう?」

 

「…心配は受け取ろう」

 

「それでいいんです」

 

微妙な顔をしてアームストロングは頭をかく。

それを見て、私は満足気に鼻を鳴らした。

 

「しかし、店内は禁煙だったな」

 

「裏庭でも借りられるでしょう。あなたなら」

 

「過剰な評価だな」

 

「正当な評価です」

 

アームストロングが都市に運んだのは、救い。

彼のおかげでどれだけの人が救われたか。

腕を失った人、足を失った人、身体に致命的なものを抱えている人、そして本来の歴史ならば死んでいた人。

彼は本来ならばいなかったはずの人だ。

そして、彼は一人だった。

救えなかった人は当然いる。

でも、できることはやっている。

証拠に【凶狼】も【大切断】もそして私もみんな、彼が救った人はしっかりと前を向いている。

 

「あなたはすごい人ですよ」

 

「なんだ急に。気持ち悪いな」

 

「あなたは自分のことをわかっていませんね」

 

「スティーヴン・アームストロングだが?」

 

「そうじゃありませんよバカ」

 

「俺は頭いいがな」

 

「そういうところですよバカ」

 

私の矢印はベル・クラネルに向けられている。

永劫としてアームストロングに向けられることはないだろう。

しかしきっと、確信できることはある。

 

「あなたの隣は譲りません」

 

「お前以外無理だろ」

 

ずっと、私はこの男の隣にいるだろう。

そんな確信である。

そんな話をしていたら、見慣れた酒場が見えてきた。

 

「着いたか」

 

「存分に飲み食いしましょうか」

 

「ああ。せっかくだからな」

 

【豊饒の女主人】のご飯は美味い上に量が多い。

高いがそれに見合う量と味だ。

あと治安が良く、つまり良い店である。

 

「いらっしゃいませー!あ、お久しぶりです」

 

「久しぶりだな。連れはいるか?」

 

「お久しぶりですシル様」

 

「もちろんいらっしゃいますよ!【ヘスティア・ファミリア】のご来店でーす!」

 

「おい俺は違──」

 

「別にいいでしょう。ついていきますよ」

 

「む、いや大事だろ」

 

「別にいいでしょうが」

 

【豊饒の女主人】の店員である、シル・フローヴァに案内され、テーブル席に着く。

 

「二人ともー。遅かったねぇ」

 

「あ、お疲れ様です!」

 

「ヘスティアはもう出来上がってるな。お前は酒は飲まないのか?」

 

「一杯で限界でしたね」

 

「酒は飲まない方がいい。それが一番だろうな」

 

2人も椅子に座り、とりあえずと注文していく。

私は酒にサラダやタンパク質、アームストロングもとりあえずお冷に肉。

外食では栄養を考えない食べっぷりだ。

外食でまでそんなもん気にしてられるかばからしい、とのことだ。

 

「乾杯でもするか?」

 

「ベルの歓迎会ですからね一応」

 

「そうか、ならしておこう」

 

「そうだねぇ、乾杯しよ乾杯!」

 

「え、これ僕の歓迎会なんですか?」

 

「ん、そうらしいな」

 

「今決めました」

 

「ええっ!?」

 

「かんぱーい、へへへ」

 

「出来上がりすぎだな……」

 

「この人こんなに早かったでしたっけ」

 

ヘスティアは既にできあがり呂律もあまり回らず。

アームストロングはそんなヘスティアに呆れつつ注文をし。

ベルは動揺の中、並べられた大盛の料理を何とか消化し。

私はその様子を見て微笑む。

 

「ほら、料理来るまでに食い終われ。まだまだ食うぞ」

 

「えっ、ちょっとこれ以上は僕…」

 

「明日からは地獄だからな。今日食えるだけ食っとけ」

 

「はいぃ!?」

 

「そうですよ。ほらほら頑張って」

 

「手伝ってくれません!?」

 

「「断る」」

 

料理や飲み物が来るまで、ベルを存分にいじる。

女将に押し付けられたであろう魚の素揚げにスパゲティ、どちらも相当な量だ。

まあ、彼は成長期だろうし大丈夫だろう。

 

そんな彼が何とか食べ終わった時分、料理や飲み物が運ばれてくる。

何故かいる大派閥のエルフの店員──まあ【疾風】がアームストロングに耳打ちしたのが気になったが気にしないことにする。

今日から妙に距離が近くなったように思える。

 

「さて。ベル・クラネルがファミリアに加入して、何週だ?」

 

「一週間ほどでしょうか」

 

「ふむ、では乾杯だ」

 

そう言ってアームストロングは冷水の入ったグラスを掲げる。

それに合わせて私達も持ってる容器を掲げて、声を合わせる。

 

「「「乾杯!」」」

 

飲んで食べて騒いで。

そんな宴会の始まりである。

 




アームストロングとリリのカプは解釈不一致かなって…。
まあ、みんなくっつきそうでくっつかないですよね。
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