そりゃそうですよね。
当たり前ですね。
でもまあシンプルな理由です。
見上げると星の輝く空が見える。
現代の都会より、星が良く見えた。
【豊饒の女主人】の裏庭で私は葉巻を吸う。
もちろんミアには許可を貰っている。
何故かは、簡単だ。
そろそろ【ロキ・ファミリア】が来るからである。
外で頭を冷やし、静かに夢想する。
酒場からの賑やかな声や音は作業中に聞く音楽のようなものとして楽しむ。
「落ち着いたか」
壁にもたれかかり、片手で資料をもてあそんでいた。
そこに、扉からウェイトレス姿のリューさんが現れる。
「嵐の前の静けさでしょう」
「そうだな」
何故か、リューさんはここでも酒場を手伝っている。
不思議な縁とも言うべきか、私にはそこは分からない。
「で、どうした」
「賛成だそうです」
「そうか。安心だな」
「みんなにはからかわれましたが」
「安いものだろう。求めたものではなかったか?」
「……ええ、幸せです」
「ならいい」
救った人の笑顔が見える。
感謝の言葉がもらえる。
彼女らを救ったのは自分のためだ。
死ぬのがわかっているのに放っておくのは寝覚めが悪い。
力は持ってしまったがために、放っておけなかった。
すべて、自分のためだったはずだ。
利己的に動いてきたはずなのに英雄だが正義の味方だとか、持ち上げられている。
「むず痒い」
「どうしました?」
思わずつぶやいた言葉にリューさんが反応した。
「正義の味方なんて持ち上げられてるだろ」
「事実では?」
「やりたいことやってただけだ」
「それでも都市を救ったことに変わりはありません。【アストレア・ファミリア】が正義の派閥と称されているのであればあなたもそう言われていてもおかしくはないでしょう」
「めんどくせぇな」
ファンレターだか感謝状だか、そんなものがかなりの数送られてくる。
結果的には大派閥には信頼を置かれているのはいいことだ。
ガネーシャやヘファイストス、ロキにフレイヤ。
そんな派閥からもかなりの量の手紙が積み重なっている。
だから、面倒くさい。
今更、関わりを無視することもできない。
「頑張ってください」
「頑張らせていただきますよっと。そろそろか」
「そうですか。そろそろ戻ります」
「ん、勤労ご苦労」
義眼型のユニットにより、マップは常に把握している。
何処に、何が、どれだけ、いるかなどは容易にわかる。
故に【ロキ・ファミリア】が近づいてくるのがわかった。
機能としては今だと型落ちだ。
ライラやフィンに渡している眼帯型、義眼型、バイザー型、のユニットはもう更新済みだ。
私のものだけ、更新していないだけである。
やろうと思えばすぐにできる。
「さて」
いつ戻ろうかと夜空を見上げながら葉巻をふかし続ける。
周りで冒険者が騒いでいる中、いくつかのテーブルには誰も座っていない。
テーブルの上には予約席、と共通語で書かれた札が置かれている。
そんな席を流し見ながらリリルカはヘスティアの頭をぶっ叩いた。
「いだぁ!?」
「ほら水飲んでください」
「えー!もう少し…」
「ダメです。明日もバイトでしょうが」
「それはそうだけどさぁ」
「二日酔いで接客するんですか?酒の匂い漂わせてじゃが丸くん揚げますか?そんなもん許しませんよもう飲むなアホ」
「むむむ……」
「ほら飲め飲め」
「ごぼぼ」
ヘスティアの口に無理やり水を流し込む。
少し溺れているようだが気にしない。
先程から酒を飲みまくっていたのだ。
「まったく……。ベルは?なにかいりますか?」
「あ、僕はもういいです。食べすぎまして…」
「そうですか。ならこの人の面倒見ててください。私はもう少し食べます」
水を飲んでリラックスしていたベルの隣にヘスティアを放り込む。
「ベルくーん。リリくんが厳しいよぉ」
「リリも神様を思ってのことなんですから。ほらお水飲んで」
「はぁい」
「シル様!追加で注文したいんですけどー!」
介護モードに入ったのを確認後、リリルカは近くのシルに呼びかけて追加の注文を行う。
「少し…?」
「少しですよ」
「いや、さっきの2倍くらい頼んでたような…」
「食べられますので」
「その体のどこに入ってるの……?」
「胃袋ですね。ベルもこれくらい食べないと冒険者なんて持ちませんよ?」
「いや僕は十分食べてるからね?」
「そうですか。少食ですね」
「リリ君が大食いなんだと思うなボクは」
ヘスティアの言葉にリリルカが首を傾げつつ。
料理が到着するのを待っていると入口が開く音と大所帯が入ってくる音が聞こえた。
猫人の店員、アーニャが先導して入ってくる団体の素性は見て分かる。
種族の統一感はまるでないが、【ヘスティア・ファミリア】では太刀打ちなど到底できない高みの派閥。
主神である赤髪の神ロキを初めとした【ロキ・ファミリア】だ。
「げ」
「…マジですか」
リリルカとヘスティアが団体を見て微妙な顔をし、ベルは目を輝かせる。
【ロキ・ファミリア】は周りを気にしていないように見えるがしっかり見えているようでロキの目が止まった。
「ドチビやんけぇ!」
リリルカはロキとヘスティアの不仲を知っている。
巨乳と虚乳の無慈悲な争いなのはまだ幸いといえるだろう。
その場で突発的にロキがヘスティアに絡み、そして揺れる胸に大ダメージを食らって逃げていく、というのが様式美だ。
という訳で。
目の前でロキとヘスティアの喧嘩が勃発している。
なんだかもうこれも様式美だ。
アームストロングのおかげか【ヘスティア・ファミリア】と【ロキ・ファミリア】は友好的な関係を築いている。
ここまで喧嘩するのは仲がいいのではないか、と思うほどに会う度喧嘩するのだ。
なので。
「ロキ」
「ヘスティア」
ヘスティアはリリルカが。
ロキはリヴェリアが。
両ファミリアのオカン的存在がゲンコツを落として解決させる。
これもまた、様式美だ。
「本当に毎度申し訳ない」
「いえこちらこそです。絡ませませんのでお楽しみください」
「助かるよ…じゃあまた会おう」
本当によく会うため、簡素な挨拶だけを済ませてどちらもテーブルに戻る。
ちなみにリリルカは【ロキ・ファミリア】の団長であるフィン・ディムナが苦手である。
「さて、ヘスティア様?」
「だってあっちが絡んできて」
「毎度やめろって言ってますよね?」
「はい……」
「ほんとにもう。あ、シル様」
「大変でしたね」
「ホントにそうですよ。ありがとうございます」
「はい。これからもご贔屓にしてくださいね」
「よろしくお願いします」
頼んだ料理がテーブルに並べられる。
魚の素揚げ、ナポリタンや丼などなど。
それらを目の前にして僅かながらに目を輝かせながら、リリルカは両手を合わせていただきますとつぶやいた。
「ベル。ヘスティア様をしっかり見ててください」
「イエスマム!」
「誰から教わりましたそれ。まあいいです」
誰かに毒されている気配を覚えため息をつきつつ、食事を始める。
多いことには多いが、リリルカにとっては問題ない。
正史とは違い、健やかに育った彼女は非常によく食べる。
その食べっぷりたるや、気持ち良いものだ。
リリはおかん(確信)
必要があれば関節キメてキン肉バスターもするそんなリリが大好き。
原作と違ってとんでもない冷遇に苦しむことも無く健やかに育っているのでからだもつよぉい。
そんなリリです。