MUV-LUV大戦   作:土井中32

1 / 107
生まれて初めてこんなことやってます。
多々おかしな点が出るかと思いますが何とか完結させたいと思います。

よろしくお願いします。


1話 覚醒

 

 

今世の俺の名は稲郷九郎。3歳のガキだ。

今世、とつくのは俺には生まれ変わる前の記憶があるからだ。いわゆる転生というやつらしい。

前世を思い出したのはつい最近、事故にあったためだ。

両親とともに車で移動中、酔っ払いの起こした事故に巻き込まれたのだ。

とっさに両親がかばってくれたから俺は重傷だけど生き残った。その代償は両親との永遠の別れだったけど。

事故を起こした奴はいっしょに死んじまったから恨む相手もいないという始末。

 

両親の死と思い出した前世の記憶というダブルパンチで呆然としていた俺を引き取ってくれたのは親父のおやじ、つまり俺のじいちゃんだった。

”帝都”で小さな剣術道場を営んでいたじいちゃんは事故の知らせを聞いてすぐに駆け付け、呆然とする俺の代わりに葬式やら引き取りの手続きやら全部片づけてくれた。

心がどっか行っちまってた俺を見捨てることなく、かいがいしく世話を焼いてくれたのには感謝しかない。

 

ようやく心が戻ってきた俺はじいちゃんに感謝の言葉を告げた後、すぐに今の世界について調べ始めた。

”帝都”、”征夷大将軍”、”日本帝国”、極めつけは”BETA”。

 

「MUV-LUVの世界かよ、畜生が」

 

思わず悪態が出る。

 

地球外生命体”BETA”の侵略を受ける地球に転移してきてしまった主人公が、あらゆるものを失いながら人類を存続させるために戦う物語。

外伝もいくつか発表され、アニメ化も果たしているそれなりに有名なノベルゲームを発祥とする物語だ。

 

俺もファンであったが、自身がその世界にいるとなると悪態も吐きたくなる。

何せこの世界、BETAももちろん強敵なのだが、それ以上に味方である人類が”最凶”の強敵なのだ。

 

おおよそ人間の負の面だけを煮詰めて凝縮したとしか思えないような所業の数々。

 

ただ相手が気に食わないというだけで行われる足の引っ張り合い。

 

あまりにも薄い根拠のもと組み立てられる楽観論と戦略。

 

それをもとにして行われる軍事作戦と大敗による戦線の後退。

 

極めつけが”地球に破滅級の爆弾投げ込んでほんの少しの人類を宇宙に逃がす”である。

”宇宙から来た侵略者”相手に。

 

あまりのひどさにファンの間では「あれは地球人ではなくMUV-LUV星人だ」などという人間が出る始末。

実際、この世界はBETAに負ける結末が非常に多いのだ。主に人類のせいで。

そんな世界に生まれてしまったとなれば悪態の一つも出ようというものだ。

 

夜。

一通り調べ終わった俺はじいちゃんの家の縁側に座り込み、まあるいお月様を見上げながらこれからどうするか考える。

 

普通に考えて、このまま何もしなければこの世界もBETAに負けるだろう。

調べた限りではこの世界も負けた歴史と同じ道をたどっている。

 

主人公たる”白銀武”が現れれば兆にひとつの勝機もあるかもしれないが、もはやそれは博打の類だし、彼が勝てた世界もすさまじいほどの人的・資材的リソースを消費することになった。

そこまでやって得られたのは”たった30年の猶予”だけだ。

これで勝った、というやつはよほどの阿呆だろう。

となれば、選択肢は多くない。

 

一つ目、全てをあきらめて死ぬ。

死に方は何だっていい。兵士になってBETAに食われるか、人間に殺されるか、はたまた自殺するか。

このまま真綿で絞めるように死んでいくこの世界を見ているぐらいなら、さっさと死んだほうが楽かもしれない。

……せっかく生かしてくれた両親に唾を吐きかける行為だが。

 

二つ目、逃げる。

BETAは泳げない。水底を歩くことはできても泳いで水面に顔を出すことはない。必要となればそういった機能を獲得するかもしれないが、人間を”障害物”としか見ていない連中が人殺しのために泳ぐ機能を手にする可能性は低いだろう。

だから人が生活するために必要なだけのスペースを持った浮島を用意して、そこで死ぬまでひきこもる。

いずれ人類が起こす終末戦争までは運が良ければ生きられるだろう。

用意できるなら一人用のスペースコロニーという手もある。こちらならおそらく死ぬまで生きられるはずだ。

 

最後、戦う。

人類の一人としてBETAと戦う。正直最も徒労に終わる可能性が高い。だが成功すれば得る物も大きいハイリスク・ハイリターンな選択だ。

戦う方法は一兵士として、というのは却下だ。”絶対に”無能な上層部に使いつぶされて終わる。

幸い戦う方法は俺の前世の知識にあった。

必要なものをそろえることができれば、成功する可能性はそれなりに高い、はずだ。

 

「調べ物は終わったかの?」

 

どうするか、と月を見ながら考える俺に、じいちゃんが声をかけてきた。

そのまま俺の隣に座る。

惚けていたと思ったら、突然家中ひっくり返して色々調べだした俺に何か言ったり止めたりもせず、気が済むまでやらせてくれた様だ。

 

やっぱりじいちゃんには頭が上がらない。

そして、ちゃんと話すべきだ。

 

「……じいちゃんはさ、生まれ変わりって信じる?」

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。