MUV-LUV大戦   作:土井中32

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余談ですがこれとは別で短編を一本投稿しました。
気になる方は作者マイページからか、作者名で検索してみてください。

結構酷い話だと思いますので、閲覧注意ですが。




EX6 リベンジ

 

 

バーンファイト。

 

ゲームセンター向けのアーケードとして登場したこの戦術機操縦シミュレーションゲームは、戦後になり多数の娯楽が普及した後も勢いを衰えることなく、地球圏を席巻していた。

機体アセンブル機能の実装、チーム戦の追加など何度もバージョンアップを繰り返しながら台数を増やしていき、もはやゲームセンターにこれがあるのが当たり前となったころ。

その日、地球史上初の大イベントが開かれようとしていた。

 

 

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「いや~ホント悪いな九郎。無理やり引っ張り出しちまって」

「どーしても人数足りなくてさ。まあ後ろでどっしり構えてるだけでいいから」

「まあ、それでいいならいいけどさ。どうせ暇だし」

 

その日。

俺は武と伊達に頼まれて、ある場所に同行していた。

とあるイベントに参加するのにどうしても人数が足りないそうで、数合わせでいいので参加してほしい、と。

 

「まさかイベントの日と女子会の日がブッキングするとは思わなくてさ」

「女子会ってメンツかあれ?ほぼ全員成人してるし、いつまでも女子って名乗るのはおかしいんじゃないか?」

「伊達、本人たちの前で言うなよ。死ぬぞ

 

月一ぐらいでやってるそれと重なってしまったらしく、あてにしていた武の嫁たちが参加できなくなってしまったんだとか。

何とか方々に声かけて人数集めたが、どーしても1人足りなくて俺のところに来たらしい。

 

「しかし面倒な話だな、12人一グループでしか参加できないとは」

「もうちょっと小分けして4人一組でもよかったと思うんだけどな」

「それだけ高難易度ってことかもしれねぇぞ?なんせ――

 

――バーンファイト初の、レイドイベントなんだからな」

 

レイドイベント。

先日行われた大型アップデートによりバーンファイトが無線通信機能にようやく対応したことを記念して、全員参加型の大規模イベントの開催が決定したのだ。

プレイヤーたちは12人一組、つまり中隊編成でスタートし、他のプレイヤーチームと協力して(なお、プレイヤーからプレイヤーへの攻撃は不可である。もう一度言うが、不可能である)レイドダンジョンの攻略を目指す。

そしてそのレイドダンジョンというのが――

 

「やっぱり見過ごせねぇだろ、攻略した側としてはさ」

「どのぐらい本物に近づけたのか、やっぱり気になっちまってさ」

「それでもう一回甲一号に挑もうってんだから、大分イカレてんぞお前ら」

 

――甲一号目標、すなわちオリジナルハイヴ。

連邦軍から提供されたデータを基に再現されたそれを、攻略せよというのがイベントの内容だ。

オリジナルハイヴに関わる情報はあの最終決戦時の物も含めて重要機密に指定されていたため、長らくベールの向こう側だった。

それが一部でも公開され、あまつさえあの決戦を疑似体験できるとあって。

イベント告知後の反響はすさまじく、イベント当日の今日はどのゲームセンターも参加者とやじ馬で大盛況らしい。

…ちなみに、今俺たちがいるゲームセンターは軍の有志がお金を出し合って貸し切りにしており、一般人はいない。

だからこそ俺もここに何の気兼ねもなく来ることができたのだが。

 

「人数足りないと個人でランダムマッチングになっちゃうからさ。どうしても知り合いでチームを固めたかったんだ」

「やっぱりこういうのはガチでやりたいからな」

「だったら素人の俺じゃなくてもっとマシな人選あっただろ」

 

超戦略~急募。○ソったれな人類を救える人~みたいな戦略シミュレーション系ならともかく、こういったアクションゲーはあまり得意ではない。

正直そこらへんでやじ馬やってる連中の方がまだマシだと思うんだが。

俺のその疑問に、2人は無言で指を差した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フハハハハハハ!あの時は護衛の者どもに止められたが、遊戯であれば誰も文句は言えまい!あの時の鬱憤存分に晴らさせてもらおうか!経盛よ、供をせい!!」

「お任せください!元征夷大将軍として露払いを完遂して見せましょう!」

「馬鹿を言うな、そなたが払ってしまっては朕の出る幕がないではないか!貴様は朕の後詰めをしておればよいのだ!」

「何をおっしゃいますか!主君の後ろに控えるなど武士としてあるまじき醜態、先駆けは譲りませぬぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…ああ、うん。

流石にあの方々と一緒のチームは恐れ多いよなぁ。

道理でチーム集めに苦労したわけだ。

 

「ところで、今日は美沙さんも青空も一緒じゃないんだな。お前が出掛ける時はどっちかが必ず一緒だろうに」

「なんだ武、嫁たちから聞いてないのか?あの二人も女子会メンバーだぞ。だから今日は俺が面倒見てるんだし」

 

そう言って俺は両脇から俺を支えているイングとイルイに目線を落とす。

まあそこまでしなきゃならないほど歩くのが不自由ってわけでもないんだが、俺が一人で移動してると必ずそうしようとするんだよな。

 

「「お母さんから見張りするよう言われてるから、絶対手を離さない」」

「いや見張りって、ただゲームするだけだろ?」

「「この間も変なもの作ってお母さんに怒られてたのに?」」

 

ジト目で詰めてくる息子と娘に我慢ならず、俺は反論する。

 

「失敬な。中古で買った軽トラをちょっと時速500キロまで出せるよう魔改造しただけじゃねェか」

「「…ドラッグマシン?」」

 

軽トラだよ。

ちょっと小型核融合炉ぶち込んだだけの。

武と隆聖にはなぜか引かれたが。

 

戦時中は効率とか補給とか生産性とかコストとかいろんなものを考慮して設計・開発しなきゃいけなかったから、こう言うバカみたいなことほぼできなかったんだよなぁ。

今は予算の範囲内でこういう無駄を極め切ったバカみたいなもの作ってもお小言で済むからいいもんだ。

…あとでじいちゃんに”車検に通らんだろうが!”って怒られて、その辺誤魔化せるようさらに魔改造する羽目になったけど。

 

「と、とにかく、これで全員揃った!行くぞ、目標は当然クリア一番乗りだ!」

「「「おおー!」」」

 

 

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カウントゼロとともに、プレイヤーたちが一斉にイベントエリアに放り出される。

スタート地点はハイヴ外周部。ここから襲ってくるBETAに対処しつつ各所に空いている穴からハイヴに突入し、最深部を目指す。

 

『吹っ飛べ○ソBETA!!』

『モノホンの更に劣化コピー程度なら恐るるに足らんのだよ!』

『本物よりずっと動きが読みやすい…所詮はゲームか…』

 

…通信聞く限り、結構な人数の軍人が参加しているようだ。

まあ、あの決戦は半ば伝説扱いで、特にオリジナルハイヴ戦は軍人でも詳しい情報は出回ってないからな。

この機会に自分で体験してみたいってやつは多いだろう。

 

『軍人になんて負けてたまるか!ここは俺たちの庭だー!』

『僕が一番このゲームをやり込んでるんだ!』

『見えるぞ、私にもBETAの動きが見える!!』

『現実とバーチャルの違いを見せてやるよォ!!』

 

向こうで騒いでんのはバーンファイトのヘビーユーザーか。

まあ実機や軍用シミュレーターとレイアウトは同じだが、ゲーム用にある程度調整はされてるからな。

彼らの方がこの世界での戦い方は熟知してるだろう。

 

「で、うちのチームはどうする?」

『内部に突入するまで弾薬もエネルギーも温存したい。周りのチームに協力を呼び掛けて一番近い入り口を確保する。そこまでは協力しようってな』

『乗ってくるか?どいつも一番乗り目指してんだぜ?』

『乗ってこないような連中はいの一番に突撃してるよ。残ってるのはある程度冷静な判断ができる連中だ。突撃組を囮にしつつ入り口までの最短ルートを図ってるはず。烏合の衆でも数が多ければそこまでたどり着ける可能性は高まるんだ、それなりのチームは釣れるだろう』

 

武の奴冷静だな。

まあこの世界では成人まで予備役の期間挟んだ(義務教育と高校卒業のため。高校で恩師を落としてハーレム拡大させてたが)とはいえ、進学した士官学校で将校向けの教育も受けてるからな。

正規の手順で少佐まで出世したんだ、これぐらいはできるか。

 

『…よし、話がついた。8チームが入り口まで協力してくれる。内部へ突入後は別行動になるが、これでかなり消耗を抑えられる』

『お?お前もいたのか天山。久しぶりだな』

『チッお前もいたのかよ隆聖。いるって知ってたら組んだりしなかったってのによ』

『ヒデエ言い草だな。そんな嫌われるようなことしたか?』

 

『てめぇが現役衛士だって知ってりゃ大会の時遊んだりせず初手から殺しに行ったってのによ…!』

 

『遊んだお前が悪いんじゃねェか。そんなに悔しいんなら軍に入って軍用シミュレーターでケリつけようぜ、何度かスカウト受けてんだろ?』

『断る。俺は殺し合いがしたいんじゃねェ、ゲームがしたいんだ』

 

なーんか知ってる面子もいるが、まああの様子なら原作のようにはなるまい。

…別の人間の行動に気をつけなきゃならんが。もう手遅れだけど。

 

『よっしいくぞ!みんな俺について来い!』

「武、紫の二人がもう突撃してる」

『『フハハハハハハ!!』』

『二人とも、部隊長俺ー!?』

 

慌ててバーサーカー2人を追いかける俺たちと、それを慌てて追いかけてくる他のチーム。

…大丈夫かな、このメンツで。

 

 

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『邪魔だ!』

 

気合一閃、振るわれたブレードが要撃級を斬り倒す。

間髪入れず脇の下から後ろに向けられたブレードの切っ先から光が飛び出し、後方から迫っていた突撃級を正面から撃ち抜く。

両手に持ったブレードレールガンを縦横無尽に振り回しながら、武の操るガーリオン・ハイマニューバは壁どころか天井まで駆使した3次元機動で暴れ回り、道を塞ぐBETAの耐久値を次々と全損させていた。

 

『これであらかた仕留めたか。隆聖、他の状況はどうなってる?』

 

横坑内の敵を一掃した武が、他の突入できたプレイヤーたちの状況を調べていた隆聖に問う。

 

『いくつかのチームが先行してる。こりゃあ即席の連合じゃないな、事前に打ち合わせと練習してなきゃ出せない速度だ』

『同じ部隊に所属している軍人か、誰かの音頭で集まったゲーマー連合って感じか。大広間(メインホール)一番乗りは無理そうだな』

『どうする、速度優先に切り替えるか?』

 

隆聖の言葉に一瞬考え、しかし武は首を振る。

 

『いや、このままBETAの殲滅を優先する。通り道には絶対残さない』

『後ろからの挟み撃ちを警戒するにしても、ちょっとやり過ぎじゃないか?』

『急ぎ過ぎて偽装横坑を見逃すのも怖いし、何より最後尾に負担を押し付けたくない』

『あー、大分離れたもんなぁ…』

 

武たちのチームは機動力優先の構成がされており、武のガーリオン・ハイマニューバを筆頭に進軍速度に秀でた機体ばかりで構成されていた。

一番遅い機体でもゲシュペンストMk-Ⅲ・タイプCというかなり足の速い部隊だったのだが、唯一急な参加となった九郎だけが陸戦機に乗っていて足並みがそろわず、その九郎から――

 

「後からゆっくり追いつくから先に行け」

 

――と言われ、彼を後方に置いてここまで先行してきた、というわけであった。

 

『アクションゲーは得意じゃないって言ってたし、実際戦闘スキルほぼ皆無だからな。群れと出会ったらひとたまりもない。ゲームとはいえ、仲間を死なせたくないんだ』

『実際の所、博士ってどのぐらい戦えるんだ?本人は”そこらのチンピラの方がまだマシ”なんて言ってたけど』

 

隆聖の言葉に武は一瞬悩んだが、知ってる奴は知ってる話だなと思い直して話し始めた。

 

『結論から言うと弱い。近距離も遠距離もFCS頼りで、マニュアルだとほぼ当てられないぐらい命中率が悪い』

 

屋内の射撃場で、動かない的かつある程度時間をかけていいならピンホールショットすらやってのけるのだが。

動く的相手だとまったく狙った場所に当てられないのだ。

 

『頭じゃ動きを予想できるけど、それへの対処を体に反映させるのがド下手くそなんだと。だから一瞬の判断やとっさの反射が要求されるような事は苦手で、クイックドロウ何かやったらそもそも的にすら当たらない』

『近接系は?おじいさん剣術の師範なんだろ』

『”10年修行に集中すれば一端(いっぱし)の剣士になれる”って言われたってさ』

 

つまり、10年剣の修行に捧げても一端止まりでしかない、ということだ。

そんな暇があったらその頭脳を生かして兵器開発に力を入れるべき、となるのは当たり前の話でもあった。

…ちなみに、修行を初めて数年のイングは既に弾丸切りができるらしい。

 

なお、帝都で恭順派に襲われた際にゲシュペンストを操縦して1機撃破しているが、あれは相手が地面に叩きつけられて動きが止まっていたこと、上からのしかかって一時的に相手を拘束できていたことが大きい。

やった本人ですら”ある意味奇跡みたいなもの”というぐらいには例外的なものなのだ。

 

『なるほど。だからあのアセンブルだったのか』

『当てられないからこそあの構成ってわけだ…いた!ようやく追いつきましたよ2人とも!』

 

そう言って走り寄る武の先には、すっかり真っ赤に塗装し直した2機のゲシュペンストの姿が。

 

『おお、白銀か』

『遅かったではないか、ほとんど朕らで喰ってしまったぞ?』

『お二人が速すぎるんですよ!?いくらゲームとはいえパーティ組んでるんですから、もうちょっと周りに合わせてください!』

 

九郎をおいて先行せざるを得なかった理由の一端に説教する武を見て、他のチームメンバーは彼に尊敬のまなざしを向ける。

 

『元征夷大将軍と皇帝に説教してる…』

『あのお二方に説教できる人なんてほぼいないよな』

『年下でできるのは白銀少佐か稲郷博士ぐらいだもんなぁ』

『俺は絶対無理。階級上でも絶対怒ったりとかできないって』

『恐れ多いというか、怖いもの知らずというか…』

『流石は人類最新の英雄たちだよなあ』

 

『と・に・か・く!置いてきてしまった九郎とここで合流を待ちます。進軍はそれからです、いいですね!?』

『むう、致し方あるまい』

『少々羽目を外し過ぎたか』

『『『少々?』』』

 

メインホール一歩手前まで2機だけでたどり着いたのが少々扱い。

ゲームだから現実より甘い部分はあれど、2機でここまで来れる人間が世界にどれだけいるだろうか。

政治的に重要な人物でなければ、間違いなく最前線で屍山血河の山を築いていただろう。

 

『あれで政治もちゃんとできるってんだから、世の中って不公平だよなあ…』

『馬鹿野郎よく考えろ、どっちもできるってことはどっちもやらされる可能性があるってことだぞ。過労死に立ち向かう覚悟あるのか?』

『斑鳩の現将軍を見ろよ、政治やりながら有事に備えて鍛錬も積んでるせいでだんだん目の下の隈酷くなってるんだぞ』

『本人が好きでやってることだから止めづらいって近衛局の奴が愚痴ってたなぁ』

『…あのお二方が現役のころからハッちゃけてるのって、政治的ストレスを発散するためだったり?』

『『『納得』』』

『『聞・こ・え・と・る・ぞ・貴・様・ら』』

 

合流を待つために手持無沙汰となったチームメンバーの通信内容に呆れつつも、機体のチェックを進める武。

このままいけば一番乗りは無理でも全員無事にこのイベントをクリアできそうだ、と考えたところで。

 

『武、まずいぞ』

 

隆聖からの通信に、全員が一瞬でおしゃべりをやめて耳を傾ける。

 

『メインホールに一番乗りしたチームが全滅した。侵入して30秒で、だ』

『…規模は?』

『3チーム合同、36機』

『1個大隊規模が30秒か…』

 

武の脳裏に、いやな想像がちらつく。

そしてそれは、他のメンバーも同様であった。

 

『少佐、もしかしてこのイベントのラスボスって…』

『ありえなくもない、のか?いやでも、アレの情報まで提供したってのか、上層部が?』

『だがアレでなければこんな簡単に1個大隊が消えたりしないだろう』

『もう一回、アレと戦うのか…?』

 

全員の脳裏にちらつくのは、本当にギリギリ勝つことができたあの悪魔。

あの時はDGGシリーズという鬼札があったから何とかなった。だが今回はいない。

通常戦力だけであれと対峙するその意味を、彼らは理解しすぎていた。

そんな浮足立つチームメンバーを現実に引き戻したのは、武の一言であった。

 

『面白れぇじゃねェか』

 

『…少佐、今なんと?』

『あの時からどれだけ腕が上がったのか試す、絶好の機会じゃないか。あの時は人類の全力をぶつけなきゃ勝てなかった。でも今はどうだ、俺たちはあの時と同じままか?』

 

その言葉に、チームメンバーたちは冷静さを取り戻す。

 

『…そうだな、俺たちもあの時のままじゃねぇ。過酷な訓練と実戦を乗り越えてきたんだ』

『今更あいつごときに負けてちゃ、あの決戦で先に逝った連中に笑われちまう』

『通常戦力だけで勝つ方法もずっと模索してたんだ。DGGシリーズなんて特記戦力に頼らなくても勝てると証明するチャンスだ』

『全員、腹は決まったな』

 

再びチームが一つにまとまったことを確認し、武は準備を始める。

 

『隆聖、次にメインホールに近いチームは?』

『あと5分くらいでたどり着くチームがいる。9チーム合同の1個師団相当。…これ多分天山がいるチームじゃないか?』

『なら説得しやすいな、そいつらと同時に突入する。全員2分で機体チェックして報告、その後プランAFに沿って攻撃を行う。…九郎は今どのあたりだ?』

『まだ中層ぐらい。たどり着くまで20分はかかるかな』

『待っていられないか…1機足りないが、そこは腕と連携でカバーしよう。行くぞ野郎ども!!』

『『『応!』』』

 

そして彼らは大広間へと飛び込む。

かつて倒した脅威を、再び打ち倒すために。

 

 

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『クソゲーにもほどがあるだろ!?』

 

天山の愚痴がオープンチャンネルで響き渡る。

それに返す余裕のあるものなど1人もいなかったが、誰もがそれに心の中で同意していた。

武たちの予想通り、大広間で待ち構えていたのは重頭脳級、つまりは移動基地(ハイヴ)級であった。

そのスペックはレイドイベント用にある程度調整されていたとはいえ当時のそれとほぼ変わらず、しかも首無し級の製造能力まで再現されていたため、天山率いる1個師団と武たちを以てしても攻めあぐねていた。

 

『首無し級はともかく、移動基地級のバリアが硬すぎる!』

『大砲持ちの一斉攻撃でも抜けないなんて…!』

『逆にここまで硬いと、抜きさえすれば後は一気に削れると思うが』

『まず抜かなきゃ話にならねぇ!誰かもっと火力のある武器持ってないか!?』

 

首無し級を斬り捨てながら武が叫ぶ。

叫ぶ合間にも胴体のバルカンを移動基地級に叩き込むが全く効かず、しかしその攻撃優先度は武に向かう。

バリア、ラザフォード場で無効化されているとはいえヘイトは溜まるらしく、仕掛けたプレイヤーを優先して攻撃してくるのを利用してある程度コントロールはできているものの。

無尽蔵に出現する首無し級と無敵要塞と化した移動基地級の攻撃に晒されて誰もが消耗しつつあった。

このままではじり貧なことは全員が理解している、しかしこの状況をひっくり返す方法が見つからない。

 

『なんかギミックとかあったりしないか!?どっかにあのバリアを剝がすヒントとか!』

『それっぽいのはどこにもねぇ!』

『敵を一定数倒さないと剥がれないとかじゃないだろうな!?』

『首無し級だけでも3ケタ単位で処理してんだぞ、これ以上とかそれこそここにたどり着いてないやつ含めた全員でローテ組むレベルだ!』

『つまり、純粋に火力が足りてないのか…!』

 

白銀の背を、冷や汗が伝う。

大広間までたどり着くチームが増えれば、いずれは総火力がラザフォード場を上回ってぶち抜くことができるだろう。

しかし現状のような逐次投入に近い状況では、消耗したプレイヤーから狩られて味方の総数が増えない。

そして後続が途切れた時、プレイヤー側の負けとなるだろう。

仕切り直すためにいったん大広間から離脱することも考えたが、一度入ると出られない仕様らしく、大広間の外で味方の数が揃うのを待つといったこともできない。

まだ取り返しが効く今のうちに打開策を見つけなければならない、しかしどうすれば、と誰もが焦っていたその時。

 

 

 

『追いついたぞ』

 

 

 

この場で一番役に立たないはずの男が、大広間に突入してきた。

全体通信を聞いていたはずの九郎が突入してきたのを見て武は一瞬なんで入ってきたと怒鳴りかけ、しかしすぐにその口を閉じる。

九郎の機体のアセンブルを思い出したからだ。

 

『九郎、アレのチャージは!?』

『完了してる、いつでも撃てるぞ。問題は俺に当てる腕がないことだが』

 

そうあってほしかった言葉を聞き、武の顔が凄みのある笑顔になる。

撃てるのなら問題ない、後はこちらで場を整えればいいだけだ。

 

『隆聖、殿下と陛下も!ヤツを九郎の真正面に!!』

『なん、いやそうか!よっしゃ任せろ!』

『『バカモン!元をつけろ元を!!』』

『気にすべきとこそこじゃないでしょ!?』

『何か手があるんだな!?全機連中を掩護しろ、邪魔をさせるな!』

 

首無し級に天山率いるプレイヤーたちが攻撃を集中し、武たちがフリーになる。

その瞬間を逃さず、突っ込んだ4人が移動基地級のヘイトをコントロールして理想的な位置へと誘導していく。

 

『もうちょいもうちょい!』

『九郎!カウント5でぶっ放せ!』

『了解、5、4、3…』

 

本物であれば、ここまで思い通りに誘導はできなかっただろう。

しかし本物よりもより単純なプログラムに従うレイドボスは相手の真意を考えることはない。

予定通りに九郎の機体の真正面へと移動基地級を誘導し、武たちはそのまま九郎の後ろへと駆け抜ける。

大広間に入って来てから1発も撃っていない九郎に移動基地級は目を向けることなく。

それゆえに、失敗した。

 

『2、1。吹っ飛べ

 

その機体、巨大なキャタピラの上に鎮座した上半身だけのランドグリーズ。

”タンクグリーズ・ストーム”は、背中のミサイルポッドから放つクラスターミサイルに両肩両腕それぞれ二門、合計八門の実弾/ビームガトリング、そして胸部に搭載されたヴァルキュリア級の大口径荷電粒子砲を至近距離で叩きつけ。

移動基地級のラザフォード場をぶち抜き、左半身を消し飛ばした。

 

『今だ!畳みかけろォ!』

『荷電粒子砲!?マジかよあんなロマン砲持ってここまで来たのか!?』

『驚いてないで早く攻撃しろー、クールタイム10分かかるしチャージも同じぐらいかかるからなー。あと残弾もエネルギーも使い切ったし』

『急げ!次はねェぞこれ!?』

『雑魚はほっとけ!ボスに攻撃を集中させろ!!』

『『フハハハハハハ!その首よこせー!!』』

『ああ!?元殿下と元陛下が突撃した!』

『バカ野郎砲撃の邪魔だ止めろー!?』

 

混乱に次ぐ混乱が巻き起こったものの、勝機を逃すものはここにはおらず。

ラザフォード場突破から数分も立たず、移動基地級は討ち取られた。

なお、ラストアタックは弾切れになったのでとりあえず体当たりしてみた九郎だった。ついでにMVPも。

 

とあるおっさん二人はぐぬぬ顔になった。

 

 

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後日。

イベントが大成功に終わったことに味をしめて、移動基地級がチーム戦のNPC恒常ボスに追加されたが。

数日も立たず攻略法が確立されてただのカモになったのは全くの余談である。

何だったら凄乃皇・終式(強襲制圧仕様)の方がはるかに理不尽らしい。

 

 






女子会メンバー『誰が女子じゃないって?』
隆聖「」

なお女子会メンバーの大半が既婚者のため、大抵誰かが旦那自慢を始めて全員がそれに乗り、最終的に”誰の夫が最高の旦那か"で毎回喧嘩になる模様。シモの話まで飛び出すので子供を連れていけないんだとか。


○ もう勘弁してください

特許庁職員「長官!博士が、稲郷博士がまたやらかしました!!」
特許庁長官「ええいまたか!?今度は何だ!」
特許庁職員「融合炉です!軽トラに搭載できる小型核融合炉を作ったと報告が!!」
特許庁長官「ぬぅわ~に~!?」

特許庁で定期的に繰り返される一幕。
戦中は軍事機密なども絡むため、九郎の開発した技術は帝国軍および政府によって管理されていた。
しかし戦後、(一応は)一般人へと戻った九郎の開発した技術は特許庁へと直接申請するのが筋であり、当然九郎もそうしている。
が、戦時中というデバフが外れてはっちゃけてしまった九郎が申請する技術が毎回核兵器級の破壊力を秘めたものばかりなため、特許庁は九郎が特許を申請するたびに方々を飛び回り根回しをする羽目になっていた。
そして報告を受けた帝国政府と地球連邦大統領府も同様に飛び回る羽目になる。
その過酷さは胃薬を常備していない者が皆無なほどである。

今日も彼らは九郎から連絡がこないことを祈る。デスマーチ開始のゴングが鳴らないことを。


○ 丸い理由

中島父「うちの息子、どうも現実をゲーム的にとらえているようでちょっと心配で。何とかなりませんか?」
北村「承知しました」

北村「どうしたぁ!コンテニューできるなら楽勝だと言ったのはお前だぞ!!」
天山「も、もう勘弁してください…」

”北村開に勝てるまで帰れま10”をやらされ、実に15時間ぶっ通しで軍用シミュレーターに缶詰となった天山の様子。
リセットやコンテニューができてもどうにもならないことが現実には存在するのだと骨身に叩き込まれた彼は勉強に打ち込み、一流大学を出て真っ当な企業に就職した。
なお会社の選定条件は”どれだけ軍と関わらなくて済む”かが第一条件であったとか。


○ ドン引き

AFMM同盟「え、地球の人たちこれに勝ったの?」
地球連邦「ゲーム用に難易度調整してます。本物はもっと厄介でした」
AFMM同盟「ええ…?」

AFMM同盟の人間がバーンファイトで遊んだ際、移動基地級に蹂躙された際の一幕。
BETA戦闘型との交戦経験を持つ彼らですら、移動基地級の戦闘力は厄介どころの話ではなく。
慌てて連邦からBETA地球固有種のデータをもらい、対策を検討する羽目になった。
なおバーンファイト自体は好評で、(地球製戦術機のコックピットとバーンファイトの匿体は基本的なレイアウトが同じのため)自分の機体に勝手にインストールして待機時間中に遊ぶ不届き者が後を絶たず、しかしシミュレーターの代わりになると抗弁されれば否定はしづらく。上層部はこれの対策に頭を悩ませている。


○ ガーリオン・ハイマニューバ

武のバーンファイトにおける愛機。
装甲を極限まで削った代わりにフレームの強度を向上。機体各所にスラスターが追加されている。
その機動性は初期型ガーリオンがベースであるにもかかわらずガーリオンⅡを圧倒するほどで、特に閉所での戦闘では武の3次元機動適性と相まって壁どころか天井すら駆使した八艘飛びによる”変態”と称されるほどの異次元機動を可能としている。
反面耐久値は最低値ギリギリで、一発でも被弾すれば落ちかねない極めてピーキーなセッティングがされている。

武装は遠近両用のブレードレールガン×2と胴体のバルカンのみ。
一見貧弱に見えるが乗っている人間の技量が隔絶しているため、あらゆる攻撃が装甲の隙間や継ぎ目、関節などの急所に飛んでくるのであまり関係がない。
白銀色に塗られていることもあってバーンファイトでは”白銀の閃光シルバー・ライトニング”の異名を持つ。


○ タンクグリーズ・ストーム

バーンファイトのイベントに参加するため、九郎が組んだ機体。
アクション系のゲームが不得意な九郎がそれでも何とか勝ち筋を得るためにアセンブルした機体で、いわゆる”ガチタン”と呼ばれるセッティングである。
見た目は巨大な戦車に砲塔ではなくランドグリーズの上半身が乗っているという典型的なガチタンそのもので、パラメータも火力と耐久値に全振りされている。

武装は背中のポッドに装填されたクラスターミサイル、両肩の2連装36ミリモーターガトリング、両腕の2連ビームガトリング。
また胸部にはヴァルキュリア級の大口径荷電粒子砲が搭載されている。ゲーム内の設定上は無理やり移植したものでチャージ・クールタイム共に長大な上、スーパーヘビー級に重いいわゆるロマン兵器だが、掠っただけでも大抵の機体は落とせる火力があるので極めて少ないが採用するプレイヤーもいる装備である。
武装が弾幕と面制圧特化であることもあり、閉所では乗り手の技量など関係なくごり押しされかねない脅威の機体である。


○ 凄乃皇・終式(強襲制圧仕様)

バーンファイトにおけるラスボス。
チーム・個人どちらでも挑めるが、勝ったプレイヤーは全プレイヤー人口の0,000000001%しかいないという究極のクソボスである。
単機でマーズゼロ相当のハイヴを強襲・制圧することを想定したとされる機体で、ヴァルキュリア級の試作品(原作の凄乃皇・弐型)をベースに魔改造したものに終式を制御ユニットとして押し込んだものである。
大口径荷電粒子砲を筆頭に36ミリレールガン×多数にVLS(全ミサイルがS−11弾頭)、ビーム砲も複数搭載。さらにラザフォード場まで装備。
フィールドも何もない平地で隠れる場所もなく、戦闘を開始するとひたすら火力差と耐久力に物を言わせた面制圧を受け続ける羽目になる。
そして外装たるヴァルキュリア級を破壊すると満を持して終式が登場、今度は躱せる戦術機型ヴァルキュリア級(しかも外装より強い)という更なる理不尽で蹂躙してくる。
一応本物よりも性能は抑えられているが、元が地球破壊爆弾なため抑えても大陸破壊級の性能をしており。
ヴァルキュリア級からの連戦でこれを倒すには相当に緻密な戦略と隔絶した技量と理不尽をねじ伏せるナニカが必要である。
なお、勝ったプレイヤーはもれなく全員が連邦軍にスカウトされている(受けるかどうかは個人の自由だが、受けると大尉相当官待遇でスタートできる)。

○ 超戦略~急募。○ソみたいな人類を救える人~

家庭用ゲーム機向けに発売された総合戦略シミュレーションゲーム。

キャッチコピーは”選べ、少しでもマシな地獄を”。

プレイヤーは選択した国家の指導者となり、地球に攻め込んできたBETAを追い返すのが最終目標となる。
国家を運営しつつ技術開発をして生産可能なユニットを増やしBETAとの戦闘も指揮、さらにはゲーム内の他国家とも外交をせねばならないなどゲームとしての難易度はかなり高い。
プレイヤーの選択によって世界は刻々と変化していき、場合によっては人類同士での戦争も起こるなど、そのリアルさから一部の学校では政治学の教材として導入されているほどである。
特に最高難易度のREALでは常にシビアな判断を迫られ、キャッチコピーに偽りのない少しでもマシな選択を迫られ続けることになる。
ちなみに選択する国家によっても難易度は変わり、一番楽なのがアメリカ(人材、資源、金など欲しいものが最初から大体揃っている)。
次に日本帝国(金と資源がないが、技術力と人材が突出しており特にネームド衛士が多い)。
罰ゲーム扱いされているのが中国(アメリカ並みに人、物、金があるが政治状況が最悪で、選択を間違えると即座に内ゲバが発生する。しかも汚職や物資の中抜きがしょっちゅう発生して前線の稼働率にもマイナス補正がかかりやすい)だったりする。
この設定に対し中国の民間人から抗議が来たが、開発側は”史実を反映した結果です”と言い切り押し通した。
なお、中国政府はこの件に関してノーコメントを貫いている。

このゲームには隠しパラメータとして”因果”が設定されており、2週目、いわゆる”強くてニューゲーム”をする際、このパラメータが世界に大きく影響を与えるよう設定されている。
例えば1周目で外道な戦略ばかり取っていた場合、2周目ではプレイヤーに不利な出来事ばかり発生し、BETAに有利なイベントばかり起きやすくなる。
REALでの因果最悪状態ともなればあらゆる出来事がプレイヤーにとって不利に働くクソゲー状態となり、開発側が”勝たせる気は全くありません”と豪語するほどの超高難易度と化す。

ちなみにゲーム内には一部実在の人物が登場するが、その中でも特に重要視されるのが九郎である。
ゲシュペンストやスコープドッグといった高性能・高パフォーマンスな兵器の開発に必須な人材であり、彼がいなければ第3世代以降の戦術機開発に必要な技術ツリーが解放されない。
しかし低難易度では比較的簡単に仲間にできるのもあって初心者の味方と称されている。
が、難易度を上げるに従い仲間にするための条件がシビアになり、また”因果”が最悪に近いほど接触すること自体が難しくなっていく。
難易度REALの因果最悪ともなればそもそも日本にすらおらず、プレイヤーは九郎を探すことから始めなくてはならない(しかも九郎自体が世界中をランダムに移動し続ける)。
前線の被害を許容しても九郎を探すか、現有戦力でBETAに対抗するか、プレイヤーは難しい判断を迫られることになる。

…なお、九郎本人が自分を仲間にしたうえでREALの因果値最悪の攻略最速記録を叩き出した話は、一部では有名な話である。
ちなみに何でもありの最速記録はとあるプレイヤーが中国を選んで出したもので、真っ先に軍部を掌握し自分の味方以外を問答無用で処断。
邪魔者を消し、政府機能が一時的な機能不全を起こして軍を止められない間に国内の核を全てカシュガルに叩き込んで、BETA侵攻開始から3日で終わらせたものである。
当然ながら2周目の因果は1発で最悪となった。
記録を見た者の第一声は一様に

「人の心は無いのか」

だったという。


オリ主がマッド化してますが、マブラヴ世界で戦時中というデバフがなければこんなものです。
じゃなければあんなに類友(マッド)が集まったりしませんし制御できたりしません。
両者を分けるのは状況を見て自重できる理性が残っているかいないかです。
そもそもまともな思考ができるならまず既存機の改良から始めるべきで、いきなりゲシュペンスト作ろうとしたりしません。


次話は明日投稿予定です。

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