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ご、ご期待に応えられるか分かりませんが続きをどうぞ。
1982年、俺は9歳になった。
この年ようやく俺のやったことが一つ、形となって世に出る。
ゲシュペンストMk‐Ⅱ、斯衛軍への配備開始。
配備開始まではいろいろあった。
タイプSの存在を知った斯衛軍上層部がこっちが欲しい、とか抜かしてきたので寝言は寝て言え、って言ったら殴り合いになりかけたり。
帝国陸軍にも採用するとなってやっぱりタイプSを斯衛に、とまた言ってきたので”機体の性能差がないと将軍一人守れないほど弱いの?それでよく偉そうな面してられるな”と思わず言ってしまって刀傷沙汰になりかけたり。
それでもあきらめきれずグチグチ言ってきたので
”これをクリアできた奴にタイプSくれてやる”
つって地獄難易度のシミュレーターにぶち込んだり。
……クリア者が出たと聞いて見に行ったら紅蓮大将(昇進した)と神野志虞摩大将で、約束通りタイプS作ったらついでに将軍用にも、とか言ってきた偉そうなのに思わず金的したり。
とにかくいろいろあったが、ようやく一歩目を踏み出せた。
生産ラインも国内に一つ確保できたので、帝国陸軍にも徐々に回される予定だ。
国外のほうはちょっと難航している。
特に問題なのがアメリカだ。
今年、アメリカ海軍は世界初の新世代戦術機としてF-14トムキャットを実戦配備している。
専用の長距離クラスターミサイルの運用能力と新技術により大幅に高められた高い機動性はまさしく第2世代戦術機と呼ぶにふさわしい性能を示してみせた。
当然アメリカ内で必要数が満たされれば国外にも、と考えていたはずだ。
そこに現れたのがゲシュペンストである。
F-14など歯牙にもかけない圧倒的な性能を持った機体がいきなり登場し、しかもそれが
「世界中で配備したいけど生産しきれないからそっちの生産力貸して」
とか言ってきたらそりゃ揉めるだろう。
最初はそのバカげたカタログスペックに何のジョークだ、と冷ややかな反応だったが、実機が存在すると分かれば途端にあらゆる方法で圧力をかけてきた。
ブラックボックス化されていない機体を渡したら途端に黙ったが。
今頃解析に大わらわだろうが、同時に”貸してもらえないなら他に基礎研究データごと売りつける”とも言ってあるのでそのうち通るだろう。
使われているテクノロジーが先を行き過ぎて、コピーはできても改良や応用は全くめどが立っていないはずだ。
そこに至るまでの基礎研究データが自国以外にわたるかもしれないとなれば、アメリカも首を横にはふらないだろう。
……後ろ暗い方法で手に入れる可能性については怪しいおっさんとその部下の皆さんに過労死するまで頑張ってもらう。
俺の身柄については今のところ問題はない。
将軍直属の技術相談役、なる役職に就いたのだ。
プライベートにかかわる情報は完全に秘匿され、知ってるのは護衛を出す斯衛の上層部数人や将軍様、直接会ったことのある人ぐらい。仕事内容は俺が書いた設計図を技術廠やメーカーに投げたり、逆に行き詰っている技術的なネックに対する助言を求められたり。
打ち出の小槌的な扱いは勘弁なので、アドバイスについてもそれそのものではなくヒントを投げたり程度だが。
同時に斯衛でも精鋭の人たちが密かに俺の護衛についている。
ご近所に一時期引っ越す人が多かったが、そういうことだ。
傍に常にいるのは相変わらず叔父さんだけだし。
俺が投げた既存兵器類を更新するための設計図についても、既に試作機によるデータ取りが始まっている。
量産化まではまだかかるだろうし、あれもこれもと一斉に更新できるわけもないのである程度時期をずらして更新を始めるはずだ。
「出来ればこちらも売ってほしいぐらいなのだがな」
試作機の試験レポートを見ていた俺に、男が声をかけてきた。
金髪で年は30ぐらい。やや無表情気味だが、嫁と娘の自慢を始めるとこれ以上ないほど崩れるのを絡まれた人間はみな知っている。
「設計図は書いたけど、持ち主は国元だからね。欲しかったら国と交渉してくれ、ホーカー中尉」
テンペスト・ホーカー中尉。
エルザム少佐がツテを頼って連れてきたイタリア軍の士官だ。
特に戦術機部隊の指揮能力に優れ、彼の構築した連携戦術はヨーロッパ全体で共有され、衛士の損耗率を2割も下げたといわれるほどだ。
「そちらは国元、というかヨーロッパ全体で共同して交渉中だ。設計図を見た限りでは性能は申し分ないからな、ぜひ欲しいところだ」
「まだ試作品によくやるよ。まあ、中尉のおかげでゲシュペンストは高度な連携ができるようになったんだから、量産化されたら輸出先の優先度は高めに、程度には言えると思うけど」
「それでも十分すぎるほどだ。何せこちらは既に色々貰っている身だからな」
「正当な報酬だろ?ゲシュペンストMk‐Ⅱを一個中隊とオプション一式、それと新型の輸送機2機。そしてゲシュペンスト用の生産ライン機材。あんたたちが己の力を示してつかみ取った物だ」
テンペスト中尉はゲシュペンストの高度な連携戦術の構築を、エルザム少佐は射撃のモーション・パターンデータの蓄積を。
どちらも俺が満足するレベルの物をやってくれたので、俺は気前よくこれだけのものを用意することにしたのだ。
……ただ、生産能力の関係から、全部がそろうのは来年になるが。
ホーカー中尉用にもう一個中隊、という話もあったが国内装備の更新が優先された。代わりに欧州に新設されるラインの初期ロットはイタリアに回される予定だ。
「個人的には、こちらの出したものともらうものが釣り合っているとは思えなくてな」
「なに、未来への投資みたいなものさ。これから中尉達は否応なしにBETAと戦うことになるんだ。そうなりゃゲシュペンストの実戦データに沿っての改修なんかをしなきゃいけなくなる」
「そのデータは当然製作元にも届く、と。ならばよりよいデータ収集のためにできるだけ良い環境を整えたいというわけか」
「そっちはいい武器で戦える。こっちは貴重な実戦データが手に入る。俺によし、お前によし、でしょ?」
「フ、違いないな」
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明けて1983年。
ようやく渡すものがそろったので、エルザム少佐とホーカー中尉とはここでお別れだ。
ヨーロッパにもどれば、ゲシュペンストへの機種転換訓練の後、最前線に派遣されるだろう。
自信をもって作り上げた機体だが、戦場に絶対はない。
また、生きて会いたいものだ。
……まあ、俺もヨーロッパいくんだけど。
ちなみにタイプS搭乗資格を得るためにはランダム生成されるシミュレーションを5回連続でクリアする必要があります。
ミッション内容も毎回ランダム生成され、例として「撃震でBETA一万体切り」とか「単機でフェイズ2ハイヴ最深部到達」とかかなりの無茶をやらされます。
タイプSは単なる高性能機ではなく戦場での精神的支柱になりうる機体なので、乗り手にも高い技量と逆境を撥ね退ける強い精神力が必要だと九郎は考えているからです。