MUV-LUV大戦   作:土井中32

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なんでこの世界って悪い方向にばっかりバフかかるんですかね。


11話 トラブル

 

 

十歳になった俺、機上の人です。

ただ今エルザム少佐たちとともに、ヨーロッパへ向けて移動中。

 

「不機嫌そうだな」

「そりゃあね。今やってる仕事取り上げられていきなりヨーロッパ行けと言われれば機嫌も悪くなるさ」

 

そう。

いきなり将軍様に休みを取らされたうえ、少佐たちについて行って初期トラブル対応と技術指導をすることになったのだ。

 

「こんなの俺である必要ないだろ。今も俺しかできないこといくらでもあるっていうのに」

「自業自得だな。あんなことをやっていればそうもなるだろう」

 

ホーカー中尉すらこれである。

 

「大したことないだろ。たかが”睡眠時間が2,3時間しかないこと”ぐらい」

 

「自分が何歳か忘れてないか?」

「大人でも普通ではないからな?」

「寝ろ」

 

おじさん含めて三人がかりで言ってくるが知ったことではない。

 

「時間はBETAの味方で俺たちの敵だ。生産能力に圧倒的な差がある以上、最短で戦力を整えてどこかで乾坤一擲の決戦を挑むしかない。そしてそれはできる限り早いほうがいい。ちんたらやってるとそんな余裕すら物量に飲まれるからな」

 

いまだに楽観視しているお偉方の心理が理解できない。

人間一人がいっぱしの戦力になるまでどれだけの時間と金が必要になると思っているのか。

対してBETAは生産完了した時点ですでにいっぱしの戦力である。

しかも人間と違って性能にばらつきなどない。常に一定のパフォーマンスが期待できる。

物量戦になったらどっちに軍配が上がるか言うまでもない。

 

「早期に叩けなければ、それだけ人類はギリギリの決戦に挑まなくてはならなくなる。寝てる暇なんてないんだよ」

「そこまで、君が身を削る必要はなかろう?もっと自分を大事にして、年頃の少年少女のように遊んでもよいのではないか?」

「”それじゃ勝てない”と分かってしまうから、こんなことしてるんだよ。じゃなきゃ寝る間を惜しんだりするもんか」

 

三人は複雑そうな顔になる。

まあ、そうだよな。いっぱしの良識がある三人にとっては、俺の在り方は自分たちの罪の象徴みたいなものだ。

 

自分たち大人がふがいないから、子供にこんな無理をさせている。

 

三人にとっては、そうとしか見えないだろう。

だからって改めるつもりもないが。

 

「ま、今回の件将軍様が認めたのは俺を追い出してる間に大掃除、てのもあるんだろうけど」

 

俺の欧州行きもかなり無理してねじ込まれた話だ。

ねじ込んできたのは俺を疎ましく思ってる連中だが、将軍様はこれ幸いと国内の大掃除をするつもりらしい。

今頃ねじ込みでぼろ出した連中をまとめて豚箱に突っ込んでることだろう。

派遣先で誘拐暗殺というのはまずない、というのが俺と将軍様方の見立てだ。技術指導といったが俺は裏方に回る予定で、見込みのある技術者の卵、という扱いだし。

高々十歳のガキがトンデモ兵器作りました、など一体どんな大人が信じるというのか。

大くそ真面目に報告したスパイの皆さんは今頃えらい目に遭ってると思う。

それでも鎧衣課長の部下とか斯衛がこっそり護衛についてるけど。

 

と、そんなことを話している間に、目的地が近づいてきた。

 

「もう大西洋を越えたのか。わかっていたつもりだったが、やはりこれは速いな」

「すぐにでも量産してほしいが、これもアメリカしだいか」

「帝国でも量産始まってるけど、三号機が飛ぶのは年末だって話だしね。やっぱり生産能力ではアメリカに及ばないよ」

 

そう言ってこの輸送機――レイディバードのスペックを思い出す。

 

レイディバード。

スパロボOGに登場する輸送機だ。

大気圏内専用だが高い積載量を持ち、PTサイズの機体4機と特機と呼ばれる大型機体一機をまとめて輸送できる。

この世界に合わせた設計変更の末、今俺たちが乗ってる試作機はフル装備の戦術機6機を乗せて地球一周が可能な航続距離を得ている。

加えて短距離離着陸機能、STOL能力も付加した。

2機あれば一個中隊を地球上どこへでもデリバリー可能だ。

 

少佐たちへの報酬として、この機体も譲渡予定だ。

こいつがあればゲシュペンストを必要なところに素早く展開できる。

それだけ前線の被害を減らせるはずだ。

 

「さて、ついたらまずは父に報告せねばな」

「少佐の親父さん?マイヤー・V・ブランシュタイン西ドイツ軍総監?」

「今回の件でずいぶんと迷惑をかけたのでね。謝罪の他にそれだけの価値があった、ということを示さねばならないのだよ」

「プレゼン相手はその人か。大変そうだな」

「父も衛士資格を持つ武人だ。実機に乗せればすぐに納得する。だがそれはそれとしてお偉方の前できちんと説明もしなくてはならないのさ」

「その間、君は観光でもしてくるといい」

 

メンドクセエ。そんな暇があるなら研究中のあれとかそれとかの方に時間割きたいのに。

 

「明らかに君は働き過ぎだ。多少羽を伸ばしても誰も文句は言うまい。むしろここで休まないと仕事を取り上げられたままだぞ?」

 

すごーくめんどくさいが仕方ない。

少佐のプレゼンがうまくいけば、欧州での生産が始まる。それはアメリカへの圧力にもなる。そうなりゃ欧州に後れを取ってなるか、と生産が一気に進むかもしれない。

これも未来のため、と思って割り切ろう。

 

……歴史的な建造物とか、そういうの興味ないんだけどなぁ。

 

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「エルザム・V・ブランシュタイン、ただ今帰還いたしました」

「よくぞ戻ってきた、エルザム少佐」

 

会議室で父上に帰還の報告をする。

これが家であればもっと砕けることもあるのだが今は上司と部下で、公的な場だ。

そのあたりの線引きはきっちりしなければならない。

 

「例の代物、形になったそうだな」

「詳細を伏せたままの長期任務、これで持ち帰ったものが駄作であってはお家の名に傷がつきますぞ」

「何でも、帝国製の新型だとか。極東の者が、どれほどのものを作れるのやら」

 

居並ぶお偉方からは嘲りの言葉も飛んでくる。

……やはり彼を連れてこなくて正解だった。

キレた彼がこの場にいる者全員を言葉で殴りかねない。

そうなってはプレゼンどころではないだろう。

冷めているように見えて、沸点が意外と低いのだ、彼は。

 

「では、この場にて説明させていただきます。まずは……」

 

とりあえず、この場にいる人間へカタログスペックの説明から入る。

信じる者など恐らくいまいが、形式というのは大事なのだ。

 

「……少佐、エイプリルフールにはまだ早いですぞ?」

 

案の定、ほとんどの人間は信じていない。

父上だけは表情が動かず、その心中をうかがうことができないが……

 

「無論、言葉だけで納得してもらえるとは思っていません。ですので、デモンストレーションを用意しております」

「内容は?」

 

説明後、初めて父上が口を開いた。

 

「私が乗るゲシュペンスト1機と、トロイエ隊一個中隊による模擬戦です」

 

会議室がどよめく。

 

トロイエ隊は所属員全員が女性であるが、その技量は欧州最精鋭と言って過言ではない部隊だ。

同数で互角の勝負ができる部隊など、欧州にはいないといわれるほど。

その部隊に、単機で挑む。

並の人間なら、正気を疑うだろう。

だが、私は勝てると確信している。

 

「では、この後第2演習場にて……」

 

その時、慌てた様子の下士官が会議室に飛び込んできた。

そして彼の報告に、私は耳を疑った。

 

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「はあ、やる気がしねえ」

 

俺は今、レイディバードの待機室で寝っ転がって天井を見つめていた。

護衛をしてくれていたおじさん達には申し訳ないけど、観光に行ったふりをして撒いた。

とにかく今は、一人でいたかった。

 

なかなか進まない、反抗の準備。

いくら言っても変わらない、偉い連中の脳みそお花畑。

聞いてくれて、このままじゃいけないと動いてくれている人たちもいるが、その数は数えるほどだ。

 

「……あるのかな、救う価値」

 

人類一緒くたにしてはいけない。そんなことは分かっている。

だが、他者が俺に向ける感情はそのほとんどが”俺から絞り出したもので、どんな利益を得られるか”が軸になっているものばかりなのだ。

純粋な心配や感謝を向けてくる人たちだって確かにいるが、その数は少ない。

端的に言って、人間不信をこじらせかけている。

 

「……それでも、始めたのは俺か」

 

本当に救う価値なんかないと見切りをつけるまで。

まだ、俺は人類をどこかで信じている。

ならば、俺は行動しなければ。

 

「……何か、騒がしいな?」

 

外で誰かが騒いでいる。

何が、て!?

 

「動き出した?移動予定はないはずだぞ!?」

 

不味い、なんか面倒ごとが起きている気がする!

目的地は、滑走路!?

 

「離陸する?どこへ……まさか!?」

 

慌てて待機室の無線機を手に取る。チャンネルを合わせれば、コックピットの通信も聞くことができる。

 

『おい、貴様ら何者だ!離陸許可は出していないぞ!』

『待機中の戦術機部隊にスクランブル!最悪撃墜しても構わん!なんとしても止めろ!』

『待機部隊にトラブル発生!発進できません!』

『無線を切れ、邪魔だ』

 

ブツ、と騒がしかった通信が静かになる。管制との通信を切ったらしい。

 

『まもなく離陸します。すごいですね、これ。このパワーなら滑走路の半分もいりませんよ』

『邪悪な資本主義の産物だと思うと業腹だが、乗せている物も含めて連中には過ぎたおもちゃだ。我らのもとでこそあれらも有効に使えるというもの。この力をもってBETAを掃討し、素晴らしき社会主義をあまねく世界すべてに広げようではないか!』

 

「……やべぇ」

 

おじさん撒いちゃったから、中にいるのは俺一人だけ。

つまりこのままだと。

 

「東ドイツ、ひょっとするとソ連へごあんな~い、てか?」

 

ぜってえやべえ!何とかしないと!

 

 





盗んだ連中は九郎が乗ってることを知りません。彼らは東陣営のスパイですが、綿密な計画とか立てていません。なんかすごそうなものが来たから盗んで偉い人の覚えをよくしよう、とかその程度の考えで行き当たりばったりで行動しました。結果として突発的な強奪に現場の人間は対応できませんでした。
馬鹿って怖いですね。
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