MUV-LUV大戦   作:土井中32

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少しだけ書式を変えました。


17話 撃ち抜け、奴より速く

 

 

「化け物だな、あれは」

 

光線級吶喊の最中、”彼ら”を見てテオドールはつぶやく。

普段に比べれば弾薬は2割も減っていない。

 

合流したエルザム中佐率いる小隊が、まとめて薙ぎ払っているからだ。

 

ゲシュペンストMk‐Ⅱと言うらしい中佐達の乗機は、驚いたことに光学兵器を搭載していた。

近づいてくるBETA共を種別関係なく片っ端からそれで撃ち抜いていく。

メガ・ビームライフルと呼んでいたそれはレーザーとは原理が違うらしいが、突撃級の甲殻を正面からぶち抜くその威力を見れば違いなどどうでもよくなる。

特に、中佐の機体が装備した両手持ちの大型砲は長時間の照射が可能で、包囲されかけた際には逆に包囲の一角をぶち抜き、そのままビームを振り回して薙ぎ払っていたぐらいだ。

 

そのうえ、機動性も別次元だ。

先ほどから一瞬たりとも止まっていないが、急発進と急停止まではいいとして、直角ターンまでおこなっているのだ。

自分たちが同じことをやろうとしたら、機体はともかく中身がミンチになるはずだ。

一体どんなからくりなのか、戦闘中だが気になって仕方がなかった。

 

…というか、いったいどうやって動かしているのだろうか。

つい今しがたなど、前方に向かって伸身ひねり宙返りしながら左腕を真下に伸ばし。

ちょうど真下を通り過ぎた突撃級が光の爪で四枚卸しにされていた。

その間も前方に向けられたライフルは遠方のBETAを撃ち抜いていたし。

あんなに上下がぐるぐると変わってなんで中身は何ともないのだろうか?

これが西側の底力?

 

『流石だな、大尉。バラライカでこれほどの進軍速度を維持できるとは』

『中佐たちが先鋒を受け持ってくれているおかげです。でなければ我々はもっと消耗しているはずです』

『まったくだな。極東の島国製だと馬鹿にしてたんだが、こんなもの見せられたら認めるしかねえや。上の連中にはぜひとも採用を認めてもらいたいもんだ』

 

光線級吶喊の真っ最中だというのに、世間話じみた言葉が出る程度には余裕があった。

ジョリーロジャースの隊長はともかく、エルザム中佐など最先鋒で戦っているにもかかわらずだ。

 

『現場からも上申書を上げてもらえれば助かる。アメリカには生産ラインの敷設を打診しているが、難航しているそうでね』

『無駄にプライド高いからなぁ。だがそいつがあれば部下を死なせずに済むんだ。帰還したら百枚でも二百枚でも上に送り付けてやるさ』

 

突入前の悲壮感がどっかに行ってしまっていた。

とはいえ、油断しているかと言えばそうでもない。

 

『捕まえたぞ。2時の方向、距離5000!ジョリーロジャース、準備は!』

『いつでも!よおし野郎ども、ここまで丁寧にエスコートしてもらったんだ、外したマヌケは全員に一杯おごれ!』

『『『了解!』』』

『喰らえクソッタレども!』

 

最後尾、俺たちと中佐たちのおかげで無傷でここまで来た米軍のF-14からフェニックスミサイルが放たれる。

旅団規模のBETAすら薙ぎ払うそれは、光線級の迎撃を受けていくらかは落ちたものの、大半がその役目を全うした。

 

が、まだ終わっていない。

 

『ロジャー3急速降下!逃げろォ!』

 

爆炎の中から突如飛んできたそれを、一瞬早く間に合った警告だよりにF-14が躱す。

地面すれすれで体勢を立て直した彼が見たのは、爆炎をものともせず近づいてくる巨大な影達。

 

『要塞級、それも複数だと!?クソ、あれが盾になったせいでせん滅しきれてねぇ!』

『吼えろトロンべ!!』

 

中佐の大型砲が火を噴き、要塞級が頭から大穴を開けられて崩れ落ちる。

 

『要塞級はこちらで相手をする。666中隊は光線級の掃討を!』

『了解した中佐。全機続けェ!』

 

ゲシュペンストが要塞級に躍りかかる。

中佐たちの腕とゲシュペンストなら、要塞級10体であろうと倒すことは可能だろう。

だが、光線級に狙われながらでは厳しいはずだ。

何より、最優先は光線級のせん滅。

フェニックスミサイルはもうない。だがやることはいつも通り!

 

「うおおおおおおおォォォッ!!」

 

突撃砲を撃ちまくり、光線級を掃討する。

 

残り20…17…13…8…5…2。

 

「あと一体!どこだ!?」

『お兄ちゃん、後ろォ!?』

 

リィズの悲鳴が聞こえる。

カン任せに、機体を前へ投げ出す。

 

衝撃。左腕が肩ごと吹っ飛ぶ。BETAのど真ん中で盾を失った。

だがそれだけだ!

 

「俺たちを、人間を」

 

振り返る。目を光らせる最後の一匹を睨みつける。

 

嘗めるなあああああアアァァァ!!

 

-----------------------------

 

『任務完了。先に帰投させてもらう』

『中佐。この度は部下を救っていただきありがとうございます』

『戦友を助けるのに理由はいるまい。こちらも東最強の力、確かに見させてもらった』

 

あの後。

相打ち覚悟で攻撃を敢行した俺を救ったのは、中佐のゲシュペンストだった。

光線級のレーザーの前に飛び出したゲシュペンストは、信じられないことにそれを弾いてしまったのだ。

流石に我慢できずに聞けば、ビームコートなる対光学障壁を搭載しているとのことで。

単射であれば、重光線級のレーザーすら受け止められる、らしい。

試したのは初めてだ、という中佐に、俺は開いた口で礼を述べることしかできなかった。

 

その後、散々揉めたはずのフッケバインがカティアの説得で退路を確保してくれたおかげで俺たちは無事に離脱に成功。今は仮設基地に帰投する途中だった。

 

『エルザム中佐、こちらからも礼を言わせてもらう。おかげで部下を失わずに済んだ』

 

ジョリーロジャースの隊長が通信に入ってきた。

 

『先ほども言ったとおりだ。戦友を救うのに理由はいるまい?』

『出来れば一杯おごらせてほしいんだが、別で帰投ってことはなんか訳ありなんだろ?この借りは上への上申書って形で返させてもらうよ』

『ああ、それで十分だ。少しでも設計者の願いをかなえてやりたいのでね』

『設計者?どんな願いなんだ?』

『ゲシュペンストの設計図、その隅にこう書いてあったそうだ。これが、一つでも多くの命を救う力になりますように、とね』

『それは……その設計者は、今は?』

『行方不明だ。生死もわからなくてね。私は生きている、と信じているのだが……』

 

あんな化け物を作った人間が、行方不明。

何があったのかはわからないが、国家保安省のせいでどうしても人間の嫌な部分を想像してしまう。

 

『やはり、あの強奪事件がこたえたのかもしれない。彼は人類の業に絶望しつつも、それだけの存在ではないと信じていたからね』

『強奪?穏やかじゃねえな』

『本来なら、ゲシュペンストは我が西ドイツに1個中隊納入される予定だった。だが、乗せていた輸送機ごと何者かによって半分の6機が持ち去られてしまったのだ。彼が姿を消したのは、その直後だよ』

『それは……』

『…すまない、しゃべり過ぎた。今の言葉は忘れてくれ。

 666中隊。君たちが練り上げてきた戦術と技量を称賛する。では、縁があればまた会おう』

 

その言葉を最後に、中佐の小隊は編隊から離れていった。

 

-----------------------------

 

「お疲れさまでした、中佐」

「バルク少佐か。こちらこそ、退路の確保をしてくれて感謝する。おかげで楽に離脱することができた」

 

帰還して報告書を書いていたエルザムに、後詰を終えて帰ってきたバルクが声をかける。

 

「ゲシュペンストの暴れっぷりを見てると、必要なかったんじゃないかと思いますけどね。早くウチにも欲しいもんです」

「苦労をかける。が、それは当分叶えてやれそうにないな」

「例の、強奪の件ですか」

 

沈痛そうな顔のエルザムに、バルクが掛けられる言葉は少ない。

 

「帝国側があの件で態度を硬化させてしまってな。設計者まで行方不明となれば、当然だとは思うが」

 

そのせいで、欧州の生産ラインも一時建設がストップしている有様だった。

 

「現場としては、そういうのはいいからいい機体をよこしてほしい、と言うのが本音ですが」

「だがこれは間違いなく我らの失態だ。この件をどうにかできねば、いずれヨーロッパはBETAに飲み込まれるのかもしれんな」

 

エルザムは懐から一枚の写真を取り出す。

嫌がる彼を無理やり引き込んで、ゲシュペンストの初期開発チームで撮ったものだった。

 

「中佐、それは?」

「ゲシュペンストの開発チームで撮った写真だ」

「へぇ、これが……ん?」

 

バルクが写真を凝視する。

 

「少佐?」

「…知っている。俺は、この子供を見たことがある」

「何?」

 

彼が指さしたのは、行方不明となった、あの冷めた目をした少年だった。

 

 




単射ならば防げると言っていましたが、実際には足を止めて、出力をすべてビームコートに回した場合です。
高機動中は光線級はともかく重光線級は完全には防げません。
タイプSのプラズマジェネレーターと重力障壁ならば話は別ですが。

護衛を自力で撒いたせいで、九郎が失踪なのか誘拐なのか帝国も西ドイツも断定できていません。
そのせいで捜索が広範囲に広がってしまい、手がかりすら得られていません。
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