俺はじいちゃんに全部話した。
事故がきっかけで前世を思い出したこと。
前世で読んだ物語の一つが、今の世界によく似ているということ。
その物語の通りなら、この世界に未来はないということ。
何より、その原因の一つが愚かしい人類同士の足の引っ張り合いであるということ。
「……そうか」
全部聞いた後、じいちゃんが発した言葉はそれだけだった。
悲しそうな表情をしているが、多分、孫がおかしくなったことに対してではないと思う。
「信じる?」
「年の功じゃ。少なくとも九郎がそれを信じていることはわかる。こう見えてそこそこ偉い人間とも付き合いがあるでな、お前さんの言うことに矛盾がないのも分かる」
それにな、とじいちゃんは続け、
「人の愚かしさは、わしのほうが長く見てきたでな」
多分、その愚かしい人間の所業を思い出したのだろう。
苦々しそうな、でも悲しそうな顔でそう言った。
「それで九郎よ、これからどうするつもりじゃ?」
じいちゃんの言葉に、俺は隠すことなく答えた。
「迷ってる。死ぬことも考えたけど、親父とおふくろが守ってくれた命だ、投げ捨てるなんてできない。なら逃げるか、戦うか」
「戦うなら、具体的な方法はあるのか?話を聞くに、BETAと和平は不可能なのじゃろう?」
「有機物ベースとはいえ、あれはただの作業機械、重機だから。滅ぼすか、滅ぼされるか二つに一つしかない。今の地球の科学力では難しいけど、俺の頭の中には可能にする方法がある」
「どんな方法じゃ?」
「また別の世界の技術情報。宇宙に進出して、BETAとは違う人型宇宙人と戦争した世界で培われた兵器の設計図が俺の頭の中にはある。それを作り出す」
スーパーロボット大戦。
様々なアニメ、漫画に登場するロボットたちが一堂に会して共闘し、地球を狙う敵と戦うというゲームだ。
このゲームには登場する各作品をつなぐ接着剤としてゲームオリジナルの主人公とロボットが用意されているのだが、それらオリジナルキャラクターとロボットだけで作られたタイトルも存在する。
その名も”スーパーロボット大戦OG(オリジナルジェネレーション)”
アニメ化もされたこの作品内に登場する各種技術の情報と兵器の設計図が、前世の記憶と共に俺の頭の中に現れたのだ。
資材の用意と加工さえできれば、すぐにでもこれらを作り出すことができる。
今の人類が主力とする人型戦闘機”戦術機”など束になってもかなわない超兵器たちだ。これを量産できれば勝ちの目を大幅に増やすことができる。
……その分足の引っ張り合いが激化する可能性が高いが。
どうしてこんなものを知っていたのか、前世には思い当たる記憶がなかった。
もしかしたら転生特典、というものなのかもしれないが、詳細は不明だ。
とりあえず、ありがたく使わせてもらう。戦うにしろ逃げるにしろ、これは大きなアドバンテージになる。
「どっちの道筋も大まかにはできてる。あとはどっちを選ぶか」
「……九郎は、人間が嫌いか?」
じいちゃんの言葉に、すぐには答えられない。
「……多分、嫌い。前世で見た物語のひどさもあるけど、親父とお袋を殺したのも人間だから」
もう会うことができない。恨む相手もいない。宙ぶらりんになってしまったこの感情を俺は今人類に向けている。
八つ当たりだというのは理解しているが、前世も含めて俺は人間の負の面を見すぎた。ゆえに他人をいまいち信じられない。
「わしは九郎の選択に肯定も否定もせん。九郎の選ぶ道じゃからな。だがどんな道を行こうと、人道を踏み外さぬ限りお前はわしの孫じゃ」
じいちゃんはそう言ってくれた。どっちを選んでも俺の味方だ、と。
「……戦ってみる。本当に見限る日まで」
そういった俺に、じいちゃんは一つ頷いた。