MUV-LUV大戦   作:土井中32

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誤字報告していただき感謝します。
何度も見返してるのに、やっぱり見逃してしまうものなのか…。


19話 東ドイツ最後の日・前日

 

ベルリンに残るというグレーテルと別れてベーバーゼー基地に戻ったら、中隊内でもめ事が起きていた。

 

リィズが中隊内を嗅ぎまわっていたらしく、事情を知らないメンバーから怪しまれていた。

リィズに聞いてみると、国家保安省からの指令らしい。

派手に動くことで本命から目を逸らさせるのが目的だとか。

事前にアイリスディーナには話してあったそうだが、やはり他のメンバーとの軋轢は避けられない。

 

このままではまずい。

ミンスクハイヴが活性化し、大規模BETA群が目の前に迫りつつあるのだ。

 

その数、推定10万。

 

海王星作戦で戦ったBETA群の、2倍以上だった。

そんな今までにない激戦が近づく中で、この軋轢を抱えていては致命的な事態を引き起こしかねない。

 

だが、今すぐなんとかできるような妙案もない。

頭を悩ませながらも、俺はベルリンで会った男のことを伝えるため、アッシュに会いに来ていた。

 

「いかにも悩んでます、といった顔だな」

 

アッシュはちらりとこちらを見た後、作業する手元に目線を戻した。

顔を合わせた途端にこれである。

そんなにわかりやすいだろうか?

 

「どうせ妹と他の連中の間を取り持てなくて困ってんだろ?はた目から見てる分には面白いけど」

「面白いって」

「浮気相手をかばう夫と奥さん”たち”の修羅場っぽくて」

 

どう見たらそんな風に見えるんだ?

 

「少尉が前に出りゃいいんだよ。”リィズが不利益な行動したら俺ごと撃て”とか言っときゃ、周りもそれ以上は強く出れないんだから」

 

ついでにあの壊れたのも迂闊なことできなくなるから一石二鳥だな、と言うこいつにはため息しか出ない。

やっぱり、こいつは全部把握しているのだ。リィズのことも、俺たちがやろうとしていることも。

 

「どうせその時まで長くないんだ。その間だけ持ちゃそれでいいんだろ?」

「……正確な時間はわかるか?」

「BETA次第だが、まあ、こっちが殴り合っている最中にやらかすのは間違いないな」

 

国家保安省のクーデター。

リィズからの情報も加味すれば、それが近々行われるのは間違いなかった。

通信の盗聴にこいつの地頭を考えれば、奴らの出方をほぼ読み切っていてもおかしくはない。

 

「……どっちが先に動く?」

「ベルリン派だな。数で負けてるから、先手を取り続けるしかない」

「そのまま政権をとれると思うか?」

「無理だな。役者が違う。シュミットはそこまで織り込み済みのはずだ」

 

ならば、俺たちの相手は国家保安省長官シュミット率いるモスクワ派、ということか。

そこにはリィズが所属しているヴェアヴォルフ大隊もいる。

Mig‐23チボラシュカ相手に勝てるのか。性能で劣るバラライカで。

 

「第三者目線で見ると愚かしくてしょうがないんだけどな、この状況。BETAが迫る中で内戦やって、その余力でBETAと戦おうとしてるんだから」

 

否定できない。まさしくその通りだ。

 

「それでも、国家保安省にこの国のかじ取りを任せることはできない。愚かしいとわかっていてもだ」

 

国家保安省指揮下でBETAを撃退することができても、そのあとこの国に待っているのは今以上の地獄だ。それを認められないから、俺たちはこんなことをしようとしている。

 

「アッシュ、前に言ってたよな。”選ばないことを選んだものの手には何も残らない”って」

 

ずっと作業をしていたアッシュが、初めてはっきりと俺を見た。

 

「俺は選ぶよ、欲張りに全部。この国も、リィズもカティアも、アイリスディーナも、中隊の仲間も全部。この手で守って見せる」

「80点」

 

いきなり採点された。

 

「なんで守るものに自分が入ってないんだ。守った女たち全員未亡人にするつもりか?」

「そんなつもりはないが全員って、結婚できるのは一人だけだろ?」

「世の中にはな、好いた相手の傍にいられるなら何でもいいって人間もいるんだぜ?結託されないよう気をつけるんだな」

 

なんか恐ろしいことを言われたが、気を取り直してここに来た目的を果たす。

 

「ベルリンであった男から伝言だぞ。”覚悟しておけ”と伝えてほしい、て言ってたが」

「……怪しいおっさんか?」

 

一瞬、ピシリと動きを止め。その後何事もなかったかのように聞いてきた。

この様子だと知り合いらしい。微妙に口元が引きつっているのは、恐怖からか?

この傍若無人がスパナ持って歩いてるやつが?

 

「トレンチコートにフェルト帽の東洋人。自分で微妙に怪しい男、とかのたまう怪しいおっさんだったよ」

 

この少年を探している、と言って見せられた写真には、間違いなくアッシュが写っていた。

あまりにも怪しすぎたので見たことがあるとだけ答えたら、この伝言だけを託して行ってしまった。

 

「……まあ、当面は気にしなくていいか。何かできるわけじゃないし」

「やっぱり知り合いなのか」

 

前から疑っていたが、記憶喪失と言うのは嘘なんじゃないだろうか?

 

「俺のことより目前のことだろ。ミンスクからの大群、最新情報では倍に膨れ上がっているらしいぞ」

 

話題をそらされたが、その情報にため息しか出ない。

20万ものBETAなどどうやって退ければいいのか。

負けたり死んだりするつもりは毛頭ないが、現実にこれを退ける方法が思い浮かばない。

 

「詳しい作戦はこれから説明されるんだろうが、死闘になるのは必至だな」

「……予言、してもらってもいいか?」

 

海王星作戦の時、こいつは戦況の推移をほとんど読み切っていた。同じように、これからの状況も読み切っているはずだ。

 

「でかいのをどうやって倒すか、だな。現状の火力であれをせん滅するには大型のミサイルが必要だろうけど、たぶん迎撃されるし」

 

でかいの

大型ミサイルが必要

迎撃

 

これらに当てはまるBETAなど、一種しかいない。

 

「重光線級か」

 

光線級よりも大型で、大火力で、タフ。

戦場で出会ったことはほぼないが、防衛戦において厄介な相手には違いなかった。

 

何か、あれを短時間で倒す方法があれば、状況を変えられるか……?

 

「ゲテモノでいいなら、使ってみる?」

「ゲテモノ?」

 

 

 

 

 





アッシュ「(出力)8割までなら命は保証してやる。詳しいことはマニュアル作ったからそっちを読め」←整備で忙しかった

テオドール「(安全性は)8割だな、分かった」
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