3話でやろうとしてたことを実際にやっていたら、です。
急いで書き上げたので粗が多いかもしれませんが、そこは一つご容赦を。
1994年、2月。
日本帝国にとって、重要な式典が行われていた。
94式 不知火。
そのお披露目である。
世界初の第3世代型戦術機として完成したその機体は前評判にたがわぬ性能を持ち。祖国に近づく悪鬼たちを打ち払う防人としてその力を発揮してくれる。式典に出席している者たちは確信していた。
そう、そのはずだった。
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帝都外苑。
精強で鳴らす帝都守備隊の前に、突然そいつはやってきた。
『レーダー手何をやっていた!?ここまで近づかれて気づかないなど職務怠慢にもほどがあるぞ!!』
『レーダーには何も映っていません!!各種センサーにも反応なし、光学カメラ以外全てそれを探知できていません!?』
「じゃあ目の前にいるこいつはいったい何なんだ!?」
帝都を守る守備隊の前に突然現れた者を睨みながら、守備隊長は叫ぶ。
黒い外套を纏った、おそらくは戦術機と思われるそれ。
光学カメラに捉えるまで、誰一人として接近に気づかなかった。
敵であったならば、とっくに自分たちはあの世に行っている。
その恐怖を必死で抑えつつ、自分たちの前で止まったそいつに呼び掛ける。
無駄だろうと、あれは敵だと叫ぶ本能を必死に押さえつけながら。
「こちらは帝都守備隊である!そこの戦術機に告ぐ、直ちに所属と官姓名及び目的を明らかにし、武装を解除せよ!従わない場合は敵性として排除する!」
回答は、極めてシンプル。
上に向けた手を、自分に向けて軽く数回スナップ。
”かかってこい”と、誰が見てもそう言っていた。
『じ、上等だぁ!!』
『馬鹿西崎、まてェッ!?』
アンノウンを前にしての緊張感に耐えられなかったのか、若い衛士が飛び出す。
帝都内の式典会場でお披露目中の新型には劣るが、きちんと整備された撃震はその性能を発揮し、74式長刀を大上段に振りかぶってアンノウンに切り込んだ。
動きを見せない相手に、見ていた誰もが決まった、と思った。
気づけば、撃震が地面にめり込んでいた。
『…は?』
何が起こったのかわからない。
いや、確かに彼らは何が起こったのか見ていた。だがそれを信じることができなかった。
アンノウンがしたことはひどく単純だ。
長刀が振り下ろされるよりも前に真正面から突っ込んで撃震の頭を掴み、同時に踏み出していた足で撃震の足を払い。そのまま後頭部から地面に叩きつけたのだ。
前に向かっていた慣性を腕の力だけで強引に止め、どころかそのまま地面にめり込むほどの勢いを出せる腕部出力とそれに耐える機体剛性。
そんなでたらめな戦術機など、守備隊長は見たことも聞いたこともない。
明らかに普通ではない機体を前に、しかし彼らは引かない。
『総員鶴翼の陣!何としてもここで止めるぞ、帝都守備隊の意地を見せろッ!!』
『『『り、了解!』』』
帝都を、この国の中枢を守る最後の砦が、敵を前にして逃げるなど許されない。
何より己が許さない。
命を投げ出すことも辞さず、彼らは敵に挑んだ。
彼らは立派に戦い、1分という貴重な時間を稼いでみせた。
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式典会場は蜂の巣をつついた騒ぎとなっていた。
突如現れた所属不明の戦術機が帝都守備隊を破って帝都内に侵入。ここを目指して真っ直ぐ向かってきているというのだ。
斯衛を含めた守備隊が止めるため果敢に攻撃を仕掛けているが、その一切をあしらい、まったく足を止めることができていないと言う。
当然式典は中止、お偉方は安全な場所へと我先にと移動を始めていた。
「裕唯、どうなってる!?」
「榮二か。ダメだ、まったく止められないらしい」
警備として駆り出されていた巌谷大尉と篁大尉は避難誘導の傍ら、件の戦術機の情報を集めていた。が、好転するような話は聞こえてこない。
「16大隊が立ちふさがったが、相手にされてないらしい。やっこさんここまで素手か、奪った長刀だけで戦ってるそうだ。それもコックピットだけは外して」
「嘗められてるな…!いや、ここまでやられては当然か」
斯衛でも精鋭の16大隊と瑞鶴ですら止められないのでは、帝国で止められる機体など――
「…裕唯、確かあいつはこの後、デモンストレーションをする予定だったよな」
「いきなり何を言って…!おいまて榮二、お前まさか」
「緊急時に備えて強化服着てて正解だったな、ちょっと行ってくる」
「ばっ、やめろ榮二!?」
本来乗るはずの衛士はどこに行ったのか、それは無人のまま放置されていた。
これ幸いと巌谷はそれに乗り込み起動させる。
自身も何度か乗ったことのある機体だ、動かし方は心得ていた。
デモンストレーションのため電池も燃料も満タン。流石に火器はペイント弾だが、幸いにも長刀は実戦用が近くに置いてあった。
立ち上がらせた機体で、彼は迎撃に出る。
帝国最強の機体、不知火で。
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「まるで相手にならんな」
「軽く4世代も差があるんじゃどうしようもないさ」
アンノウン、コックピット内。
これだけの大騒ぎを起こしながら、それを起こした当人たちはむしろ冷め切っていた。
「戦えば戦うほど憤りが酷くなる。”これ”を採用していればこんなことにはなって無かったろうに」
「今更だけど良かったの?ここまでやったら帝国にはいられないよ?」
後部座席に座る青年の言葉に、この機体を操る衛士は軽く笑って答える。
「時には荒療治も必要だろう。九郎とてやった後のことはあまり考えていまい?」
「あー、まぁ。宇宙にこっそりコロニー作ったから、そこで死ぬまでひきこもる予定だけど」
「残念だ。いや、そこまでお前に失望させた俺たちの自業自得か」
「まあまあ、置き土産でこれ残してくから、後はそっちで何とかしてよ。気が向いたら何か送ってよこすかもしれないし」
「ああ、正しく人類のために使ってみせよう、と…」
軽い雑談をしている間に取り囲んでいた瑞鶴は全滅、式典会場は目と鼻の先だった。
「情けない。これだけの戦力を出してまったく止められんとは」
「流石にそれは理不尽すぎるでしょ、と…?」
式典会場から、一機の戦術機が飛び出してくる。
それが目的の機体だと気づいて、青年は嗤った。
「向こうから来てくれるとは好都合。やっちゃって叔父さん!」
「完膚なきまでにぶっ飛ばせ、だったな。どれ、どの程度食い下がれるのか試させてもらおう!!」
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「ぐ、うぉぉぉぉ…!」
体が軋む。
無理な態勢で行ったハイGターンに、パイロット保護機能がついてこなかったのだ。
そこまでやって取った背中が、一瞬にして消える。
「ぐうっ!」
またも無理やりに振り回して躱せば、一瞬前まで頭があった場所を”ペイント弾”が飛んでいく。
「こいつをもってしても、遊ばれるのかっ!!」
そう、不知火と巌谷はアンノウンに遊ばれていた。
会敵そうそうに奴は不知火が装備していた突撃砲を奪い、それだけでこちらと戦っているのだ。
世界初の第3世代機が、帝国有数の衛士である巌谷榮二が、手も足も出ていない。
「あっちがその気なら、会敵した瞬間に死んでるなっ!」
ビルの陰に飛び込んで、何とか射線から逃れる。
アンノウンは身を隠すことなく、ゆっくり歩いてこちらに近づいてきている。
こちらの性能を調べるためか、本当に遊んでいるのか。
どちらにしろ、本気でないうちに何とかするすべを見つけないと、帝国の威信は消し飛ぶだろう。
「しかしなんなんだ、あの戦術機は。米国…にしては性能が異常すぎる」
外套を纏っているため、細かい形は分からない。
だがあのシルエット、どこかで見たことがあるような…?
『榮二!』
「っ裕唯か、悪いが今取り込みちゅ」
『合わせろ!』
直後、ビルの陰から戦術機が飛び出す。
予備機として用意されていた、もう一機の不知火だった。
アンノウンの後ろを取り、蜻蛉の構えで突っ込む。
「っ!!」
突然のことにもかかわらず、巌谷はそれに合わせてみせた。
長刀を脇構えに前から突っ込む。
ちょうどビル街のど真ん中、左右は塞がれていて大きく動けない。
縦に躱せば篁の、横に躱せば巌谷の一撃が決まる。
逃げ場のないそのコンビネーションに。
『フン、少しはやるな』
アンノウンは、迎撃という選択肢を取った。
両手にいつの間にか収まっていた棒から、光が伸びる。
2機の不知火に向かって振るわれたそれは――
――長刀ごと、不知火を溶断して見せた。
『ばっーー』
「なんーー」
きっちりコックピットを外して振るわれたそれは、しかし不知火を動作不能にするには十分で。
力なく倒れ伏すその姿が、どちらが勝者なのか雄弁に語っていた。
しかし、彼らは一矢報いていた。
切り捨てられた長刀の切っ先が、外套の留め金に当たっていたのだ。
滑り落ちた外套の下を見て、巌谷は驚愕する。
既存の戦術機とは全く違う、力強いフォルム。
横に突き出した、一対のショルダースラスター。
そしてバイザーの下に隠されたツインアイ。
ああそうだ、見たことがあるはずだ。あれはまさしく…!
「…亡…霊…!」
かつて技術廠に送り付けられた、オーパーツの設計図。
その実物が、今彼らの前にいた。
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その後。
外套を拾った亡霊は、用は済んだとばかりに引き返し。
止めようとした相手をことごとくぶちのめしながら帝都を脱出。
そのまま行方を晦ました。
後に残ったのは、蹂躙された帝都と帝国軍。
弄ばれた果てに大破した不知火。
ずたずたに切り裂かれた、帝国の威信だけだった。
翌日、全ての官公庁社とマスコミに怪文書が届いた。
『金のために黙殺した20年も前の機体にご自慢の不知火ボコボコにされてどんな気持ち?ねぇどんな気持ち?』
ちなみに襲撃してきたのはタイプSです。容赦ねえなこいつら。
じいちゃんが亡くなったり色々あって諦めた九郎が最後のうっぷん晴らしに不知火ボコりました。
本人はこの後宇宙に作ったコロニーに引きこもり、ゼンガーはタイプSと共に友を頼ってヨーロッパに向かう、というところまでは考えました。