MUV-LUV大戦   作:土井中32

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ごめんなさい、回想まで届きませんでした。

もう一話上げるから許してね!



22話 東ドイツ最後の準備

 

 

ベーバーゼー基地周辺に潜伏すること数時間。

いい加減に焦れてきたころ、ようやくその報告が入った。

 

『ヴェアヴォルフ6へ、接近する反応を探知しました』

『ふん、ようやく帰ってきたか。予定通り、奴らが戦術機から降りたころを見計らって襲撃する。対人制圧部隊は』

『いつでも大丈夫です』

『よし、もう少しの辛ぼ――』

 

閃光。

 

目の前を光が通過する。

 

『何だ!?』

『ヴェアヴォルフ6、ヴェアヴォルフ8が!』

 

僚機の叫びに慌ててそちらを見れば、そこにあったのは。

 

胴体に風穴を開けられた、チボラシュカの姿。

直後、燃料に引火したのか爆散する。

 

『ばれていたのか!?総員偽装解除!実力で黙らせろ!』

『りょうか――』

 

再びの閃光、しかも先ほどより多い。

そして一発も外すことなく味方に吸い込まれていく。

 

『ヒッ!?』

『そ、そんな――』

『い、いやだ、死にたくな――』

 

「ふ、ふざけるなあ!?」

 

わずか一掃射で味方はほぼ全滅。

しかも、センサーの得た情報を信じるならば、今の攻撃は。

 

「レーザーだと!?そんなもの装備した兵器などあるはずが――」

 

――いや、ある。

西ドイツに持ち込まれたという、極東製の新型機。

海王星作戦にて圧倒的な性能を見せつけたという、あれならば。

 

「いかん!このことを報告――」

 

慌てて無線機のチャンネルをいじるが、反応しない。

全て砂嵐が返されるのみだ。

 

「…通信、妨害?」

 

呆然とする私の目に飛び込んできたのは。

 

光の爪を振りかざして迫る、黒い亡霊の姿だった。

 

-----------------------------

 

『撤収準備、あと10分ほどで終了します』

 

チボラシュカを排除すれば、あとは捕まっていた基地の連中が残りの歩兵を叩いてくれて。

基地機能を取り戻すまで、30分もかからなかった。

連中が行うはずだった定時連絡はアッシュが誤魔化している。

サンプリングした音声でそれっぽい言葉を自動で送らせてるとか。

…やっぱり例の怪通信、こいつの仕業なんじゃ…?

ともかく奪還したベーバーゼー基地を引き払い、持てるだけの物資をもってハイム少将と合流する事になり。

その準備中、移動を始めるまでの隙間時間。

気を抜いたわけではないが多少の時間があれば、おしゃべりが始まるのは当然の帰結だった。

 

『いやー、それにしてもすごいね、これ。あたしら機械の言う通り引き金引いただけだよ?』

『棒立ちで撃っただけなのに国家保安省全滅まで十数秒。今までの苦労は何だったのかしらね』

『海王星作戦で見たときも驚きましたが、実際に乗ってみるとさらにびっくりですね。しかもまだ上があるんでしょう?』

「ぶっつけ本番なんだ。性能引き出すなら慣熟訓練どっかで挟まなきゃならねえよ。超絶詰込みコース用意してやる」

 

アネットとシルヴィア、イングヒルトのおしゃべりに後ろの席に座るアッシュが混ざる。

俺の乗るこの機体だけ、最初から複座になっていた。

 

『そうだな。エルザム中佐に比べれば今の我らはよちよち歩きの赤ん坊だ。圧倒的な性能差があるとはいえ、よちよち歩きのままでは足元をすくわれかねん』

『確かに。かろうじて動かせてはいますが、我々はこの機体についてほとんど知らないも同然です』

『そうですね。てすら・どらいぶとか、あーくすらすたーとか、聞いただけではなんのことやら』

 

咎める気はないのか、アイリスディーナとヴァルター中尉、ファム中尉も話に乗っかってきた。

 

『分かる範囲でも理解を投げ出したくなるけどね。連続2000時間戦闘可能とか嘘でしょ?』

「嘘偽りなく事実だよ。そのぐらいじゃなきゃ暫定第6世代機だなんて胸張って言えないだろ。まあ、偉いさんたちは何世代にするのかで未だに揉めてるけど」

 

多分第3世代に落ち着くんだろうに馬鹿らしい、

などとシルヴィアに言いながら、アッシュはコンソールをせわしなく操作し続けている。

 

「何やってるんだ?」

「TC-OSにそれぞれの癖を覚えさせてるんだよ。本来なら機種転換訓練しながら時間かけてやることだが、そんな暇ないからな」

 

また知らない単語が出てきた。

 

「通信盗聴で奴らの警戒範囲とシフトが分かってるから、移動中に襲撃を受ける可能性は低い。だからその間に必要最低限のことは教えてやる。何度も教えてる暇ないからな、一発で頭に叩き込め」

『うえー、あたし頭使うの得意じゃないんだよねぇ』

 

アネットのボヤキを無視して、アッシュは俺に話しかける。

 

「エーベルバッハ。お前は特に覚えること多いぞ。休んでる暇ないと思え」

「何か違うのか?この黒い奴」

 

エルザム中佐たちの機体もそうだったが、ほとんどの機体は青く塗られている。

中佐の機体はブランシュタイン家の伝統的なカラーリングらしいが、なぜか俺の乗ってるこの機体はどす黒いほど真っ黒だ。

 

「当たり前だ。本来なら国外に持ち出してるのばれただけで物理的に首が飛びかねない代物なんだぞ?」

『見た目そんなに違わないのに、そこまでして秘密にしなきゃいけない機体なの?』

「ハイヴ攻略用の特別仕様機、通称タイプS。規格こそベルンハルトたちが乗ってる量産仕様のタイプRとほぼ一緒だが、フレーム素材から何から性能だけを突き詰めた狂気の機体だよ」

 

操縦桿に触ってるのが怖くなった。

エルザム中佐達が乗っていた機体もタイプRだとこいつは言っていた。

今俺が乗っているのは、それ以上の化け物だっていうのか?

 

「もっとも、性能だけを求めすぎて衛士に高い技量を要求するじゃじゃ馬と化したがな。今はリミッターかけて性能落としてるが、それでも全力の一割も引き出せてない。エーベルバッハには俺の命も守ってもらわにゃならないんだ、時間の許す限り慣熟訓練してもらう」

「守るって、一緒に来るつもりか?」

「ここ以上に安全なところがあるか?さっきの通り頑丈さは折り紙付きだぞ?」

 

反論できない。

 

『そうだな。チボラシュカを轢いても傷すらつかなかったぐらいだからな』

 

アイリスディーナが呆れた様子で言った。

そう。

さっきのシュタージを排除するための戦闘。俺は近接戦闘を仕掛けたのだが、想像以上の加速力に反応がついていかず、そのまま体当たりしてしまったのだ。

結果はこちらは無傷。相手は粉砕されてバラバラである。

見ていた全員が引いていた。俺も引いた。

 

「タイプRじゃああはならないからな。へこみぐらいは覚悟しろよ」

『へこみで済むんだ……』

 

話せば話すほどこいつのことがわからなくなる。

言われるがままにこいつに乗り込んで廃坑を飛び出したから、あの場では何も聞けなかった。

時間はないが、やはり聞くべきか。

 

「聞いてもいいか、いろいろと。どこからこいつを調達したのかとか、なんでこいつについて詳しいのかとか、そもそもお前は何者なんだ、とか」

「調達については簡単だ。こいつらはもともと西ドイツに納入される予定だった機体だよ。タイプSだけは違うけど」

『あーー!盗まれたって言ってたやつ!』

 

アネットの叫びで思い出す。確かにエルザム中佐はそんなことを言っていた。

 

「タイプSについては俺を護衛するため秘密裏に積まれてた機体だよ。乗り手は盗まれたときいなかったから意味なかったけど」

「護衛って、そんなのが付くほど重要人物なのか?」

 

「こいつの親」

 

『『「ゑ?」』』

 

「エルザム中佐が言ってただろ?こいつの設計者が行方不明だって。それが俺」

 

一拍。

 

『『「エエエエエエエエエェェェェ――――!?」』』

 

『…あの、撤収準備、完了しました…』

 

-----------------------------

 

『よし、我々はこれよりベルリンに向かい、西方総軍のフランツ・ハイム少将と合流する。目的は現政権と国家保安省の排除だ。この国に未来という光をもたらすため、今少しだけ皆の力を貸してほしい』

『『『了解!』』』

 

みんな、何事もなかったかのようにふるまう。

 

「引きつってんなぁ、顔」

 

誰のせいだよ!?

道すがら全部聞かせてもらうからな!!

 

 

 





予備機という扱いで偽装してこっそり持ち込まれていました。何かあったらこれで一切合切何もかも粉砕しながら帝国まで飛ぶつもりで。
もう一機の方にはほんとに予備機のタイプRが載せられていましたが、何もなければどちらも生産ラインの機材を乗せてくる輸送機で九郎ごと帝国に帰る予定でした。
見事にご破算になりましたが。

レイディバードですが、地球一周できる積載量が6機というだけで、航続距離とぎゅうぎゅう詰めで中での整備ができないことを許容すれば8機載せられます。飛行速度に影響出ますが。
今回は上記の理由で一機ずつ余分に載せていました。

2分の一でタイプSの方引き当てるとか運がいいのか悪いのか…。

あの日一体何があったのか、今度こそ詳細は次の話にて!
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