MUV-LUV大戦   作:土井中32

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6000字近いとか詰め込みすぎか…?



23話 戦えゲシュペンスト!東ドイツ最後の日!その1

 

 

――ゲシュペンスト強奪事件当日――

 

……クモ……

 

……ヨクモ……

 

……ヨクモオレタチヲコロシタナ……

 

 

「……いってぇ、くそぉ……」

 

体のあちこちが痛むが、我慢して体を起こす。

どうやら目論見通り、墜落させることに成功したらしい。

 

強奪されたレイディバードがどこに向かっているかは分からなかったが、お代も払わず、隣人と(うわべだけでも)仲良くする気のない連中にゲシュペンストを渡すのはノーセンキューである。

 

なので、操縦系を破壊して墜落させた。

奪い返すことも考えたが、航空機の操縦経験はないし、俺一人で大人二人と戦うのはリスクが高かったので、次善の策として墜落させることにした。

死ぬ可能性が高かったが、ゲシュペンスト渡して泥沼第3次大戦とか勘弁である。

墜落の衝撃で気絶していたようだが、とりあえず五体満足なようだ。

 

「連中は、どうなった…?」

 

シートベルトを外して立ち上がり、待機室から出る。

体を引きずるようにして機内を確認すれば、頭から地面に突っ込んだのか操縦席はぺしゃんこになっていた。

確認できないが、これでは生きていないだろう。

共産圏では神はいないそうだが、ならば彼らの魂はどこに還るのだろうか。

俺のように来世があるのなら、もっと平和な世界で誰も傷つけることなく暮らしてほしいものである。

それにしても。

 

「ミスったな」

 

比較的善人が周囲に多かったから忘れていたらしい。

この世界がどれ程悪意に満ちているか。

…護衛を撒いたのは俺のミスだが、厳重警戒しているはずの輸送機の待機室に鍵かけて閉じ籠ってたら、その輸送機が盗まれるとは。

しかも運んできた当日に、である。

普通はありえないだろう。

 

「…いや、当事者意識が足りなかっただけか」

 

偉そうな面で、俺はこの世界を知ったつもりでいたのだ。

まさか、そんなことするはずがない、と。

結果として、俺は二人殺した。護衛がいれば死なせずに済んだかもしれないのに。

帝国にも西ドイツにも、ずいぶんと迷惑をかけたはずだ。いや、現在進行形でかけている。

 

前世があっても、技術チートがあっても、この世界の未来の一つを知っていても。

本質的には、俺はただのガキ。

世界を救える気でいた、世間知らずの只のガキだ。

これは物語を好き勝手に書いている書き手のつもりでいた、他人事でいたツケだ。

 

 

「…いいか。それでも」

 

 

元々他人事(●●●●●)だ。

俺に、戦闘のセンスはない。政治的なセンスも。

じいちゃんや叔父さん、将軍様に見てもらって、明確に言われたことだ。

人類に武器を提供することはできても、一緒に戦うことはできない。

意見を言うことはできても、決定を覆すような政治力は、俺にはない。最終的にどうするかはこの世界の人類自身が決めることだ。

 

最初から、この世界を救えるかどうかは彼ら次第なのだ。

俺はそこに、可能性をもたらすだけ。俺が世界を救うヒーローになれるわけじゃない。

 

結局、変える力がこの手にないなら、それは他人事なのだ。

 

…だが、一応でも今の俺は、この世界の住人だ。

人を殺して生き延びたからには、何から何まで他人事でいるわけにもいかない。

”この世界を、物語のようにはさせない”ために、俺にできることをしなければならない。

 

最期の瞬間までは足掻こう。それは人を殺して生き延びた責任、そして生かしてくれた今世の両親への義理だ。

必要なものを作り、口が酸っぱくなっても説得し続ける。

それでもなお、運命が変えられなかったら。

 

 

その時こそすっぱり諦めて、この世界から去るだけだ。

 

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頭から突っ込むなんて状況でありながら、積み荷のほうは無事だった。

…頑丈に作り過ぎた。死んでたら廃棄処理もできなかったし。

タイプSを起動させ、他の機体を遠隔操作で動かす。

自動操縦ではほとんどでくの坊と言っていい動きしかできないが、ついてこさせるぐらいのことはできる。

歪んで開かなくなったハッチを破壊して外に出れば、そこは一面の銀世界だった。

 

「こっそり打ち上げた衛星が役に立ったが、もう国境を越えていたのか」

 

西側の人工衛星は盗聴・監視の可能性があるから使えず。

秘密裏に打ち上げた人工衛星を使って現在地を割り出せば、そこはすでに東ドイツ領内。

 

国境越えをすれば、国家保安省と戦闘になるのは必至。

いくらゲシュペンストとはいえ、戦闘の素人と自動操縦だけで何とかできるとは思えない。

ましてやその場合、自動操縦機は囮にせざるを得ない。

国家保安省にゲシュペンストをくれてやるのは我慢ならなかった。

…まあ、性能のごり押しで何とか出来る可能性はある。政治的にどうなるかは知らんが。

普通に考えたら何としても西ドイツに戻るべきなのだが、国境を越えても西ドイツ含めた各国の皆様に気を付けて移動しなければならない。今の俺はネギを背負ったカモだ。

 

一方、東ドイツに来れるチャンスもそうそうない。

時期的にも”シュヴァルツェスマーケン”が近いはず。

さて、どうするか。

 

「…よし、666中隊に合流しよう」

 

外伝”シュヴァルツェスマーケン”通りになれば、666中隊は国家保安省を打倒し東西ドイツを統一させるはず。

彼らが革命を成功できるように手を貸してやるのだ。

そうなれば大手を振って向こうに帰れる。

ついでにドイツに大きな恩を売れる。

説教もちょっとは軽くなる…といいなあ。

 

…それに、これは試金石にもなる。

MUV-LUV本編であるオルタネイティヴにおいて、ドイツは統一できずBETAに飲み込まれた。

主人公たちが活動する2001年時点でもドイツは西と東に分かれているのだ。

つまり、オルタネイティヴとシュヴァルツェスマーケンは別の世界、と言う考え方が成り立つ。

 

意図的に、望んだ未来に変えられるのか。

ずっと気になっていたその疑問に、答えを出せるかもしれない。

…最悪、テロドールになる可能性を排除できれば成功、か?他の人間が成り代わるだけかもしれんが。

 

戻らないことで帝国と西ドイツにでっかい迷惑かけることになるが、生きて戻れたら俺にできる範囲で賠償しよう。

 

行き先を決めたならば、あとは行動するのみ。

レイディバードの残骸を跡形もなく破壊し、ゲシュペンストを隠す場所を探して出発。

通信盗聴で国家保安省を避け移動。廃坑に隠した後、避難し損ねた孤児、と言う体でベーバーゼー基地に行くつもりだった。

そこから先は出たとこ勝負の行き当たりばったりだったが、例え後方に送られることになっても、技術チートがあれば潜伏して情報支援ぐらいはできるだろう、と踏んでいた。

 

……途中で調達した車の運転をミスった以外は、まあうまくいったほうだろう。

 

-----------------------------

 

「――とまあ、そういうわけだ」

 

ベルリンへの道すがら、ここまでの経緯をエーデルバッハたちに話した。

もちろん原作だの俺の心情だのは話していない。

事前に帝国の諜報部から話を聞いていた、という風に誤魔化してある。

 

『では、記憶喪失というのは嘘だったのか』

「そのほうが都合がよかったからな。東ドイツに俺の戸籍はないし、身元がばれればどうなるかわかったもんじゃない。俺がゲシュペンストの設計者だとわかれば、国家保安省だけじゃなく人民軍も動くからな」

『……だろうな』

 

ここに関してはその場のアドリブだったが、外人であるとばれるとは思ってなかった。

叔父さんに教わったからドイツ語の発音はほぼネイティブだし、母さん似の顔つきだから言われなければ日本人とは思われないだろう。ラン中尉のようにハーフやクォーターもいないわけではないし。

 

『国家保安省の通信を盗聴したり、私を思考誘導したりしたのは身の安全と666中隊の革命を成功させるためだったんだ』

「この先のことも大体は予測してたからな。革命の邪魔になる要素はできるだけ取り除いておきたかった。おかげでさしたる被害なく革命に臨めそうだろ?」

『テオドールさんにあんなの渡したくせに……』

 

ヴァルトハイムが不満げな顔してる。

 

「マニュアル読み込まずにいきなり全開でぶっぱなしたエーベルバッハが悪い。テストこそしてないがあれでも衛士の安全面には気を使ってたんだぜ?こっそりコックピット回りの装甲を増やしたり、砲身の破片がコックピットに飛んでいかないよう気をつけて設計したり」

 

まあ、死んだら死んだでテロドールになる可能性が確実に消せるな、なんて頭の片隅で考えちゃいたが。

 

『そもそも壊れないものを作るという選択肢はなかったのか』

「出力限界無視しなけりゃ4,5発は撃てる設計だったんだよ。まず廃材からのリサイクル品に色々求めすぎ。形にするだけでも大変だったんだぞ?オットー中尉達が手伝ってくれたから間に合ったけど」

「廃材から作ったのかよ……」

『オットーたちもグルなのか……』

『整備班も説教ですね♪』

 

エーベルバッハとベルンハルトがげんなりしている。

ラン中尉がにこやかに笑ってるが、あれはキレてるな。

まあ、冥途の道連れが増えただけでも良しとしよう。

 

「俺の身の上話はそんなところだな。他に聞きたいことはあるか?無ければ機体の慣熟訓練に入るが」

『え、移動中なのにできるの?』

「歩かせるだけなら外部からの遠隔操作でも可能なんだよ。合流地点につくまでシミュレーターモードでゲシュペンストの動かし方をみっちり叩き込んでやる。地獄の中の地獄を見せてやるよ」

『うわあ。すごくいい笑顔……』

『機数の関係でバラライカになっちゃいましたけど、かえって良かったかも』

 

東ドイツ国内に持ち込まれたゲシュペンストはタイプS含めて7機。対して666中隊の現在の隊員数はベルリンにいるイェッケルン中尉除いて9人。

あぶれたホーエンシュタインとヴァルトハイムは基地にあったバラライカに乗ってついてきていた。

ぶー垂れていたがホーエンシュタインは元国家保安省と言うことで信用に問題アリ。

ヴァルトハイムは合流後は隊と別行動になることが決まっているのでこの配置になった。

 

『では私から質問がある。現在のベルリンの状況と各勢力の今後の推移の予想が聞きたい』

 

大尉からの質問。まあ当然だな。

 

「最初にクーデターを起こしたハインツ・アクスマン中佐率いるベルリン派は敗退。戦術機部隊ベルリンはモスクワ派でアリゲートルを受領したベアトリクス・ブレーメ少佐率いるヴェアヴォルフ大隊によって壊滅した。実働戦力はほぼ失ったとみていい」

『アクスマンは実質勢力争いから敗退、か』

「議会やら党の政治本部やらの国家中枢部はモスクワ派が掌握。現在この国の最高権力者は国家保安省長官にしてモスクワ派のエーリヒ・シュミットになるわけだ」

『じゃあ、あたしたちの相手はシュミットとモスクワ派なんだ』

 

ホーゼンフェルトの言葉を俺は否定する。

 

「いや?もうすぐシュミットは死ぬと思うよ?」

『ハア!?なんで!』

「ブレーメ少佐に粛清されるからだよ。だから俺たちが戦うのは正確にはブレーメ少佐率いる国家保安省、だな」

『なぜだ?同じモスクワ派のはずだろう?』

「シュミットがKGBのスパイ、つまりソ連の人間だからだよ。奴の目的は東ドイツをソ連の傀儡にすること。そのためにソ連から核を譲り受ける確約までしてた」

『……それ、本当?』

 

ラン中尉は信じ難いという顔をしているが、事実だ。

 

「ソ連との秘密通信傍受して聞いた話だから間違いない。ブレーメ少佐も独自に調べてほぼ掴んでいるから、今頃シュミットとブレーメ少佐で殺し合いしてるはずだ。実働部隊はほぼブレーメ少佐についているはずだから、シュミットに勝ち目はないな」

『……呆れるしかないな。一体いつまで身内で殺しあえばいいのか』

「これで最後にするために戦いに行くんだろう?気を落としている暇なんかねえぞ」

 

頭抱えるのは後だ、あと。

 

『……そうだな。では、私たちが対処するのはベアトリクスとヴェアヴォルフだけでいいんだな?』

「いや、できればアクスマンも抑えたい。実働部隊を失った以上、ここから巻き返すためにシュタージ・ファイルを手に入れようとするはずだ」

『シュタージ・ファイル?なにそれ?』

「国家保安省がスパイと密告者使って集めた、東西あらゆる勢力の後ろ暗い情報だよ。一般市民の恥ずかしい秘密から大物政治家のスキャンダルまでより取り見取り。脅しの材料としてこれ以上のものはないだろうな」

『噂だけのものだと思っていたけど、実在するのね?』

「あるのは間違いない。流石にトップシークレットで通信の類じゃ場所までは分からなかったが。ホーエンシュタインの恥ずかしい写真なんかも保存されてるんじゃないか?」

 

『やっぱ殺そう』

『アッシュ君、説教追加ね♪』

「アッシュ、今のは庇えねえぞ」

 

「今更気にすることか?まあそういう理由で、アクスマンをどうにかして捕まえたいところだな。どうせほっといても弱い者いじめしかできない権力の腰巾着だ。隙あらば寝首掻きにくるから生かしとく理由ないし」

『褐色の獣が腰巾着か。お前にかかると何もかもが怖くなくなってくるよ』

『しかし、ブレーメ少佐とヴェアヴォルフ大隊は強敵です。いたずらに戦力を分けるのは危険では?ハイム少将と合流するのですから、そちらにお願いするべきでは』

「知らない誰かに託すには物がやばすぎる。確実に始末した、て確認してくれる見届け人がいたほうがいい。乗機がなくて暇してるのがベルリンにいるだろ?ついでに怪しい男もいるはずだしな」

「やっぱりあの男、帝国の人間なのか?」

 

エーベルバッハは顔知ってるし、多少ばらしても問題ないか。

 

「帝国情報省の人間だよ。主な目的は俺の捜索だな。丸め込む方法は考えてあるから、協力を得られるはずだ。怪人とまで呼ばれた手腕、存分に発揮してもらうさ」

 

ついでに説教も後回しにできる、はずだ。多分。

 

『では最後に、BETAの動きはどうなると思う?』

「戦術戦略は門外漢だが、ゼーロウの戦力じゃ撃退は無理だろう。どれだけ稼げたとしてもせいぜい2,3日ってところじゃないか?」

『スピード勝負というわけか』

「せいぜい頑張るこったな。帰るか死ぬまでは手ェ貸してやるよ」

『感謝する。質問は以上だ』

 

その言葉を合図に、俺は組んでいたプログラムを起動する。

 

「ではシミュレーター起動。諸君、地獄の一丁目へようこそ

 

 

 

ハイム少将と合流した時。

エーベルバッハたちの顔はげっそりとやつれていた。

おかげである程度は乗りこなせるようになったんだから、恨みがましい目を向けてくるんじゃねえよ。

 

 

 




超絶詰込みコース(ベースはタイプS搭乗資格テスト)
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