MUV-LUV大戦   作:土井中32

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たまに日間ランキングに顔出すの見てひとりでニヤニヤしてます。

自分のことながら気色悪いな。
評価していただいた皆様に感謝を!



24話 戦えゲシュペンスト!東ドイツ最後の日!その2

 

「この後の動きを再度確認する」

 

ベルンハルトが口を開いた。

ベルリン郊外に展開していたフランツ・ハイム少将率いる人民軍西方総軍と無事に合流。

現在は戦術機から降りて、最後の確認をしているところだ。

 

当初、革命の旗頭はベルンハルトが請け負う予定だったが、666中隊指揮官として前線を担当。

かわりにカティア・ヴァルトハイム改めウルスラ・シュトラハヴィッツが旗頭を務めることになった。

 

ベルンハルトの指揮能力を最大限に生かす、という判断らしい。

 

ヴァルトハイムは市民からの有志で構成されるレジスタンスと共に国営放送局を占拠。そこから東ドイツの全国民に決起を促す声明を放送するそうだ。

666中隊は国家保安省の戦術機部隊を排除しながら進軍。ヴァルトハイムに注意が向かないよう囮となる。

ベルンハルトがいるからブレーメもこっちに来るだろう。

餌としてはこの上ない極上品、と言うわけだ。

 

「で、マジでついてくんのか?」

「お兄ちゃんの隣が私の居場所だものオマエガマタゲテモノワタサナイヨウニシッカリミハラナクチャ

 

いい感じにこじらせてるなー。こいつのせいで整備班はえらい苦労してるんだが。

バラライカをベースに回収したチボラシュカのパーツを組み込んだ急造のキメラ仕立てる羽目になったのだ。

背面担架潰した上腰部にも跳躍ユニットを増設。合計6機も推進ユニット装備したこれも十分ゲテモノだと思うんだが。

OS周り結構いじったがそれでもかなりピーキーな機体なのは間違いない。

ここまでやってもゲシュペンストの戦闘機動にはついてこられないのでもっぱらロングレンジライフルによる支援射撃が主になるが。

 

「イェッケルン中尉、アクスマンのことはそちらに一任する」

「そっちの怪しいおっさん盾でも何でも好きに使っていいから、ファイルだけは確実に処分してくれ」

「言いたいことは山ほどあるが、了解した。しかし信用できるのか、こいつは?」

「ひどい扱いですなあ。まあ麗しき中尉殿のため、一肌脱ぎますかな」

 

そう言うどう見ても怪しい雰囲気を隠せないおっさん。

予想通り鎧衣課長だった。

海王星作戦で会ったバルク少佐からエルザム中佐に目撃情報が伝わり、そこから帝国に通報されたらしい。

ゲシュペンストに登録されている帝国用の通信域で適当にモールスを打てば、すぐにやってきた。

 

「本来の目的はあなたを無事に連れ帰ることなのですがね」

「乗り掛かった舟だし、ドイツにでかい恩売るチャンスだろ?東西ドイツ統一に助力したとなりゃ、欧州連合にしばらくでかい顔できるわけだし」

「上への釈明には助力いただきたいところですなあ」

「元はと言えば俺の勝手が原因の一つだからな。そのぐらいはやるさ」

 

思いっきり内政干渉だからな。責任その他は俺が取らなきゃならん。

欧州連合にとってこの状況でドイツ統一なんぞ面倒ごとでしかないが、国家保安省に迷惑こうむってんのは連中も同じだ。そこを物理的に潰すってんだから支援くらいは引き受けてくれるだろう。

俺に関しちゃ向こうの不備がそもそもの原因だし。

そんなことを話していたら、ハイム少将がやってきた。

 

「ブリーフィング中すまない。どうしても君たちに会いたいという者がいてね」

「今の状況で優先せねばならない相手ですか?」

「ああ、何せ西からの特使でね」

 

そういう少将の後ろにいたのは。

 

「全方位喧嘩売りマシーンか」

「あんたこそ喧嘩売ってるでしょ!?」

 

一人は海王星作戦で共に戦った西ドイツのフッケバイン大隊所属、キルケ・シュタインホフ。

 

もう一人は……

 

「少将、そちらの方は?」

「ああ、こちらは…」

 

少将からの紹介を無視して、その人はずんずんとこちらに向かってくる。

俺に向かって。

異様な空気を感じ取ったのか中隊のみんなが俺の前に出ようとするが、それを押しとどめて俺も前に出る。

 

俺が見上げなければ相手の顔を見れない所まで互いの距離が近づいた時、相手はこぶしを固めて。

 

 

ズゴォンッ!!

 

 

俺の頭に、思いっきり振り下ろした。

 

「な!?」

「おいあんた、いきなり何を!」

 

エーベルバッハ達が騒ぐが、それを手を振って止める。

俺をぶん殴った相手は、そのあとすぐに俺を抱きしめた。

 

「心配、したのだぞ」

「ごめんなさい」

「二度と、このようなことはするな。何もできず、死に目にも立ち会えず家族を失うのは、もうたくさんだ」

「分かってる。もうしないよ」

 

ひとしきり俺を抱きしめた後、叔父さん――ゼンガー・ゾンボルトは立ち上がって中隊のみんなに向き直った。

 

「ゼンガー・ゾンボルトだ。姉の忘れ形見を今まで守っていただき感謝する」

 

そう言って頭を下げた。

 

「ゾンボルト…あのゾンボルト家か?」

 

ベルンハルトが驚いている。

 

「有名なのか?」

「ドイツ史において、たびたび出てくる名前だ。戦場にて圧倒的不利な状況をその身一つでひっくり返した、という記録がいくつも残っている。その武功に反して一介の騎士であり続けた忠義の家系としても有名だ」

「ドイツ敗戦の折に国から逃げ出した腑抜けの家だ。昔の威光など無視して構わん」

 

そう言って叔父さんは改めて俺に向き直る。

 

「すぐにでも連れ戻したいが、そのつもりはないのだな?」

「うん。どうしても確かめたいんだ、未来は変えられるのかどうか。

大丈夫だよ。俺は生きなきゃならないんだ、最後の瞬間まで」

 

俺の目を見たおじさんは一つため息をつき。

 

「今までご迷惑をおかけしただろうが、恥を忍んでお願いする。もう少しだけ甥のわがままに付き合ってもらえないだろうか」

 

ベルンハルトに再び頭を下げた。

 

「あなたの甥には随分と助けられましたし、構いません。しかしよろしいのですか?鉄火場に飛び込むことになります」

「一度言い出したらてこでも動かない血筋ゆえ。それに、これでいて勝算のないことはしない男です。必ず生き残るでしょう」

「…承知しました。必ず無事にあなたのもとに返します」

 

ベルンハルトの返事を聞いた叔父さんは頭を上げ、鎧衣課長を見た。

 

「白兵戦力が必要だろう。俺はそちらに回る」

「示現流が味方となれば鬼に金棒ですな。よろしくお願いいたします」

 

とんとん拍子に話が進んでいく。

で、ついていけてない奴が一人。

 

「勝手に話を進めるなぁ―――!」

 

シュタインホフが吠えた。

 

-----------------------------

 

「良かったのか、あれで」

 

出撃直前。

後部座席で全機体のシステムチェックをする俺に、エーベルバッハが聞いてきた。

 

「後でまた会えるんだ。今はあれで十分だよ」

 

帝国に帰ったら方々から説教受けるんだし、そこで改めて怒られるんだろうし。

 

「生き残れるって、疑ってないんだな」

「はなから死にに行くやつがどこにいる?誰もかれもが生きるために戦うんだ。それはお前も一緒だろ?」

「じゃあ、一つ聞かせてくれ」

 

真剣な顔をして、エーベルバッハが俺を見る。

 

「なんでそこまで俺たちに肩入れする?国家保安省に比べれば弱小と言っていい俺たちに。

お前なら、もっと確実で効率のいい道もあったんじゃないか?それを選ばず、俺たちに力を貸すのはなんでなんだ?」

 

ジッと、エーベルバッハが俺を見てくる。

一つ息を吐いて、俺は通信を切った。

 

エーベルバッハの言うとおりだ。こいつらと俺の目的は微妙に違う。

国家保安省を倒し、東ドイツの健全化を望むこいつらに対し、俺の最終目的は”BETA恭順派というテロリスト集団のボスにテオドール・エーベルバッハがなることを防ぎ、その勢力を削ぐ”ことだ。

効率だけを求める(●●●●●●●●)なら、666中隊を始末したほうが確実に早い。

後はベアトリクス・ブレーメが東ドイツの全てをBETAの腹に放り込んでくれる。

国民皆兵の戦闘国家?人一人をいっぱしの軍人に育てるのにどれだけの金と時間がかかると思っているのか。

たかが一国家で国家総動員法を敷いた程度で勝てるなら、人類はここまで押されてない。

勝てない東ドイツが必死に足掻いている間に西ドイツを含めた欧州全体の戦力を底上げし、食いつぶされた瞬間を見計らって一気に逆撃に出る。

俺の目的を達しつつ効率だけを求めるなら、そっちのほうが確実だしそこに持ってく障害も少ない。

整備班にいたんだから細工はいくらでもできたしな。

 

 

ではなぜ、そうしなかったのか。

 

 

「頭がいいってのはいいことばかりじゃなくてな、見たくもないものまで見えちまう時がある」

「見たく、ないもの?」

「人類はBETAに負ける。ほぼ間違いなく」

 

俺の断定する言葉に、エーベルバッハは絶句する。

 

「それも真っ向勝負で負けるんじゃない。隣人を疑い、時には害し、ただでさえ少ないリソースを身内で削りあい、その果ての負けだ」

 

いまだ言葉を紡げないエーベルバッハに構わず、俺は言葉を続ける。

 

「それをどうにかしようと力を作り、信用できる人とつながりを作り。

だが人の悪意と業はそれを認めようとしない。良くしようとする者たちの邪魔ばかりしてくる。

 

俺はさ。それを変えられない俺を含む人間が、この世界がどうでもよくなりかけてるんだ。いつ死んでもいいやと思うくらいには」

 

国家保安省の通信を盗聴しまくった弊害だな。人の醜い部分を余計に見る羽目になって、同時に同じ穴の狢である自分に嫌気が差してるのだ。

 

救えるつもりでいたせいで人を殺した自分が、どの面下げて奴らを批判するのか、と。

 

いつでも死ねるよう、毒薬と爆弾を仕込む程度には、何もかもがどうでもよくなってきてるのだ。

…まあ、これは最後の手段だ。生きている間は足掻くと決めちまったし。

 

エーベルバッハは理解が追いつき、しかし声をかけられない。

人の悪意については、彼もよく知っているからだ。

 

「だから、賭けをすることにした」

「賭け?」

「もしも、666中隊がこの国を変えることができたら。未来を変えられたら。

もう少しだけ、人類のために頑張ってみよう、てな」

 

この国は、今の人類の縮図だ。

BETAという共通の敵がいるにもかかわらず。

隣人を、時には家族をも仮想敵と定め、騙し、裏切り、殺しあう。

それゆえにまとまり切れず、BETAに滅ぼされようとしている。

 

だから、ちょうどいいと思った。

この東ドイツを変えることができたとしたら。

この世界の人類も、もしかしたら変わることができるかもしれないと。

 

そう、夢を見られると思ったから。

 

「聞かないほうが気が楽だったぞ?俺が今後も人類のために頑張るかどうかは、お前ら次第なんだからな」

 

そう言った俺にエーベルバッハは真剣な顔で答える。

 

「なら問題ない。この革命は絶対に成功する。いや、してみせる。そして見せてやる。俺たちは悪意と業だけの存在じゃないってな!」

「なら、特等席でそれを見させてもらうよ」

 

そう言って通信を再度繋げる。

 

『エーベルバッハ、アッシュ、トラブルか?通信が切れていたようだが』

「問題ない。システムチェック完了、全機オールグリーン。いつでもいけるぞ」

「シュヴァルツ8、こちらも問題なし」

『よし、時間だ。全機出撃、この国を国家保安省から取り戻すぞ!』

『『『了解!』』』

 

気合十分。666中隊が離陸する。

 

 

「じゃあ、景気づけにミュージックだ」

 

 

そう言って俺はコンソールを操作する。

途端。

 

町中で音楽があふれ出した。

 

『なんだこれは!?』

『歌!?』

『町中のスピーカーから流れてる…』

『国家保安省が何かしたの?』

 

おい、アッシュ……?

 

震える声で聞いてくるエーベルバッハに、答える。

 

「時間だけは腐るほどあったからな。ベルリンの通信システム、ほとんど乗っ取り済みだ」

『『『またお前か!?』』』

「国家保安省の通信も同様だ。これで奴らは短距離通信しかできねえしそれもゲシュペンストのセンサー範囲なら丸聞こえ。流石に有線とかは無理だったけどな」

 

なので国営放送とかはジャックできてない。

できてたらヴァルトハイムにはもっと安全な場所からスピーチさせられたんだがな。

 

『うわあ、国家保安省がかわいそうになってきた……』

『通信を抑えられてるってことは、部隊間連携がほぼできないってことだものね……』

『対してこっちは向こうの通信聞き放題、センサー系もはるかに高性能だから動きが丸見え…』

『孤立した部隊を各個撃破する簡単なお仕事です……?』

 

惚けてる暇があったらさっさとやることやれよ。

 

「連携できないってだけで無力化したわけじゃねえぞ。さっさとやっちまえ」

『誰のせいだと…ええい、行くぞ!』

 

ベルンハルトの号令で666中隊が出撃する。

八つの(ひかり)が、未来へ向けて飛び出した。

 

 





暇な時間(睡眠時間平均3時間)


Mig-21+23 バララシュカ・シュヴェルマー

撃破したチボラシュカから回収したパーツをバラライカに組み込んで戦力化した機体。
撃破された機体は大抵胸部を中心に爆散していたりビームで風穴が開いていたため、バラライカをベースに組み上げることになった。
ゲシュペンストについていくため機動性と速度に重きを置いており、腰部に2機、背面担架の代わりに1機づつ跳躍ユニットが増設されている。
最高速度と機動性は第2世代機を上回るほどに向上したが、パーツの不整合や崩壊したバランスをOSを調整することで奇跡的に解決しているため、全力を発揮するためには常軌を逸した衛士の腕が必要。実戦投入された機体には性能を8割程度に制限するリミッターが付けられていた。
操縦に失敗すればもれなくねずみ花火になるためこの名前が付いた。

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