MUV-LUV大戦   作:土井中32

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失敗してると消されるため戦々恐々です。
東ドイツ編クライマックス、どうぞ。


25話 戦えゲシュペンスト!東ドイツ最後の日!その3

 

 

 

繰り返す絶望に とらわれたまま 逃げ出せないのさ

 

その歌は、突然始まった。

町中のスピーカーから流れる、聞いたことのない歌。

最初は困惑し、何か良くないことの前触れかと身構える市民たち。

だがなぜか、この歌を聞くうちに、胸の奥から何かがこみあげてくるような、そんな気持ちになっていく。

 

そんな彼らに、語りかける者がいた。

 

『突然すみません。私はウルスラ・シュトラハヴィッツ。かつてこの国でクーデターを行おうとして国家保安省に粛清された、アルフレート・シュトラハヴィッツの娘です』

 

じゃあ一つしかないだろう 未来は俺たちの手に 掴みとれ

 

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神様のつもりか 天罰のつもりか いいなりになんてなるか

 

『なんだこの歌は!?』

『どの通信域でも変わりません、すべてこの歌に乗っ取られています!』

『本部と連絡取れません!他の部隊ともです!』

 

「大混乱だな」

「やった奴が言うな」

 

エーベルバッハの突っ込みを無視しつつ、俺はセンサーからの情報をデータリンクで共有する。

 

「10時の方向、距離8000にチボラシュカ4機」

『シュヴァルツ2、10。撃ち落とせ!』

『『了解!』』

 

ゲシュペンストとバラライカの改造機から弾丸が放たれ、チボラシュカの小隊が一瞬で墜落する。

増設したデータリンクはうまく機能してるようだな。

 

『うわあ、この距離で一撃なんだ』

「もっと遠い距離から突撃級をぶち抜くためのものだぞ?チボラシュカ程度撃ち抜けて当然だ」

 

2機が装備しているのはビームライフルではない。

街中でビームは火事のもとだからだ。

ビームライフルが使えない状況を考えて開発したロングライフルを一緒に持ち込んでいたので、使えそうな二人に持たせた。

威力、距離のアドバンテージがあるおかげで、落とす場所まで選ぶ余裕がある。

他の機体も突撃砲などに換装して火力は低下しているが、本体の性能差がでかすぎてあまり問題になっていない。

 

変わりゆく未来と 変わらない仲間と どうにもうまくいかない 交差する思考

 

『それにしても、なんでこの歌なの?』

『いい歌だとは思うけど、通信妨害ならもっと他の方法もあったんじゃ?』

「暇してたからな。手すきの時間使って音声合成ソフト使って歌を歌わせてみたんだが、腐らせるのももったいないと思ってな」

『作詞作曲歌手まで一人でやったのか……』

『何ならできないのこいつ……?』

 

まあ、前世の曲を再現しただけだから俺が作ったわけじゃないんだけど。

それに馬鹿にしたもんじゃないぞ?

どこかの世界では、歌で本当に世界を救ってしまったこともあるのだから。

 

おっと、レーダーに反応。

 

「待ち人来たれり、だ。アリゲートルを含む戦術機中隊が接近中。2時の方向、距離10000」

『来たか、ベアトリクス』

 

遠目に確認できる12の光。まっすぐこちらに突っ込んでくる。

先鋒は赤いアリゲートルだ。

 

『アイリスディーナァァ!』

『お前を止めるぞ、ベアトリクス!』

 

即座に戦闘が開始される。わずか数十秒の。

 

フラッシュバックする絶望 繰り返すままじゃいられない

 

『どこから調達してきた機体か知らないが、チボラシュカと我らに勝てるものか!』

 

勇ましいことを言いながら突っ込んでくるチボラシュカとすれ違う。

向こうは進行方向を変えず振り向き、遠ざかる背中を撃つつもりらしいが。

 

『…え?』

 

振り向いた彼が見たのは、目の前で光の爪を振りかざす、遠ざかっているはずの亡霊だった。

何が起きたのかわからないまま、彼は機体ごと輪切りになる。

 

『ヴェアヴォルフ3!!おのれ…ッ!?』

 

正面から近づいてくるゲシュペンストに正確な照準で36ミリをお見舞いする奴もいたが、一顧だにせずはじき返しながら近づくそれに驚愕する。

立ち直る暇もないまま、そいつは反撃の突撃砲で爆散させられた。

 

ヴェアヴォルフはさすが対人戦闘に長けた精鋭だが、相手が悪すぎた。

平気で亜音速まで加速し、その状態で直角ターンができ、戦術機を一撃で落とせる武装を持つ相手など、彼らは想定していない。

ましてや、苦労して当てた攻撃が全く効いていないのだ。

量産型とは言え、ゲシュペンストの装甲は第一世代機など比較にならない強度を持つ。

突撃砲の120ミリでは貫通させるのに10発は必要な装甲をどうにかする方法を、彼らは有していなかった。

 

一旦距離を置こうとすれば、後方に陣取ったバララシュカに狙撃され。

そっちに気を向ければ亡霊が懐に飛び込んでくる。

 

数の上で優位だったヴェアヴォルフが、次々と落ちていく。

一人は光の爪で切り裂かれ。

一人は機関砲でコックピットを撃ち抜かれ。

一人はかかと落としで地面に叩きつけられ。

 

『何故わからない!?人類は決して一つにはなれない!』

 

一度捨てたものすべて 取り戻すためにここに来た

 

ブレーメが叫ぶ。

戦闘開始して一分足らず。既に飛んでいるヴェアヴォルフは小隊に届くかどうかまで減っていた。

赤いアリゲートルがいい動きをしているが、ベルンハルトに完璧に抑えられている。

対人戦の経験値はともかく、機体性能に開きがあり過ぎた。

 

『BETAという未曽有の危機に対抗するためには、徹底した統制と管理がなされ,全てを対BETA戦に振り分けられる戦闘国家が必要なのだ!東ドイツを生贄とすることで人類はBETAに勝てるというのに、貴様らはなぜその邪魔をする!?』

「人類が一つになれないってのは、まあその通りだな」

『アッシュ!?』

 

どこまで行っても、人は群体ではなく個の生き物だ。

それは多分変えられない。

 

「だからこそ、あんたの論理は破綻している」

『何!?』

「恐怖と洗脳で一国家の全てを戦争に振り分けられたとして、人はそれに耐えられない。機械になりきれるほど、人の我は弱くないからだ」

 

他ならぬこの国がいい例だ。

どれだけ国家保安省が統制しても、我欲で国を食い物にする人間は消えなかった。

統制から外れる人間が後を絶たなかった。

何より、だ。

 

「人の持つ多様性を奪い国民の全てを兵士にしたとして、それはBETAと何が違うんだ?」

『!!』

「そして同じ土俵であれば、生産能力の差でBETAが勝つに決まっている。縁を切ったソ連が散々見せてくれたじゃないか。あんたの理論は始める前から負けが決まってるんだよ」

 

BETAは機械だ。

人間のように眠る必要もなければ戦力生産に何年も必要としない。

エネルギーだって人間よりも効率よく摂取できるはず。

不眠不休な相手が数の暴力を持ち出せば人間は絶対にかなわない。

だから、物量戦では絶対に戦ってはいけない。

人の持つ個の力を最大限に生かさなければならないのだ。

 

あるいは、人間の我がもっと弱ければブレーメの目論見は成功したのかもしれない。それで勝てるかは別問題だが。

だが、現実は見ての通りだ。一つにまとまれないほど人間の我は強い。恐怖で縛ろうとすれば、一時的には成功してもいつか反発する。それは歴史が証明している。

だからこそ、恐怖とは別の、人と人を結ぶものが必要なのだ。

 

「時間切れだな。俺たちの勝ちだ」

『何を!?』

「下を見てみろ」

 

守りたいものばかりだ すべて失ってたまるか

 

ベルリン中が、市民であふれかえっている。

デモ行進する彼らの手にはプラカードがある。

 

俺たちは屈しない

国家保安省を倒せ

疑うのはうんざりだ

 

プラカードは過激なことも書いてあるが、彼らの口からは同じ言葉が紡がれている。

 

この熱が霞に消える前に 希望論は輪廻する

 

歌っているのだ。みんなで、同じ曲を。

 

『すごい…』

『こんなに大きな合唱、初めて見る』

『アッシュ、ここまで貴様の手の内か?』

「買いかぶり過ぎだな。こうなってほしいとは願っちゃいたが」

 

そう。こうなってほしかった。

疑うのではなく、信じる。

 

「ブレーメ。疑念は人の力にはなりはしない。人を前に進めてきたのは、いつだって誰かへの信頼だ」

 

仲間を信じる。

隣人を信じる。

家族を信じる。

部下を、上司を、国民を、指導者を。

人間、を。

ロマンチスト?笑いたければ笑え。

こんな世界、夢でも見なきゃやってられるか。

 

「己を優先しながらも時として一つにまとまり、一人では出来ないことをやってのける。それが人間だ。そして一つにまとまるために必要なのは恐怖じゃない。

もう、言わなくても理解してるだろ?」

 

ベルリン中を埋め尽くす群衆と、彼らが紡ぐ一つの歌。

ここまで来てしまえば、もう止められるものなどない。

 

群衆の心に灯った決意を、恐怖ではもう散らせない。

 

それが理解できてしまったのか、赤いアリゲートルは腕をだらんと下げ、空中で静止したままだ。

共に戦っていたヴェアヴォルフも既にいない。

 

撃墜しようとする中隊をベルンハルトが止めたため、今は様子を見ている状況だ。

大勢が決したところで、俺は気になっていたことを聞いた。

 

「ベアトリクス・ブレーメ。あんたの目的は戦闘国家じゃなく、この国への復讐だったんじゃないか?」

『!?』

 

ベルンハルトが驚いているが無視。

 

「国家保安省を否定した男の理想を、国家保安省を使って叶える。皮肉が効き過ぎているし、戦闘国家ってのはどう考えてもユルゲンの理想から外れすぎている。

大切な人間を奪ったこの国を、そうさせたシステムを過激に推し進めることで間接的に東ドイツを滅ぼし、この国への復讐を果たそうとした。俺にはそう見えるんだがな」

『……随分と想像力がたくましいようね』

 

さっきまでの元気はどこへやら。

すっかり意気消沈した声でブレーメは答えた。

 

『もはや、私の理想は叶わないようね。よくもやってくれたわね』

「ほっといてもいつかこうなっていたさ。俺たちは時計の針を少し早めただけだ」

 

前世でもそうだった。結局、恐怖では人は縛れないのだ。

 

『もはや国家保安省にこれを止めるすべはない。ならば……!』

 

アリゲートルがナイフを抜いた。

戦闘再開か、と中隊も身構えるが。

 

「逃げるのか?」

『……』

「死は贖罪じゃねえ。散々外道を振りまいておいて、その張本人が死んであの世に逃げるってのは筋が通らねえんじゃないか?」

『どのみち、私は処刑される。意味のない話よ』

「死ぬまで贖罪をするのと、諦めて死ぬのとでは天と地ほど違うぞ。復讐が俺の妄想で、本気で東ドイツ救いたかったんだったら、最後の瞬間までこの国のために戦って見せろよ」

 

死ぬのは痛いがそれだけだ。その先には何もない。

生き地獄を与えてこそ贖罪になるというのは、俺の勝手な持論だけど。

…だからこそ、俺は生きなければならないのだし。

 

『……フン。まさかこんなガキに口で負けるなんてね。いいわ、どうせ死ぬなら戦場で死んでやろうじゃない』

 

アリゲートルがナイフをしまい、背を向ける。

方向的に、目的地はゼーロウ要塞だろう。

 

『そう言えば、名を聞いてなかったわね』

 

ブレーメからの誰何に思い出す。

そう言えば、この国に来てから一度も本名名乗ってねえや。

 

「九郎だ。九郎・稲郷」

『そう。では九郎、先に地獄で待ってるわ

 

そう言って、アリゲートルは飛び去った。

 

『大尉、行かせていいんですか!?』

『また戦力を整えて、襲い掛かってくるんじゃ』

『今ならまだ撃ち落とせますが』

『いや、必要ない。どのみちもう革命は止められない。先ほどハイム少将から連絡があった。本部及びベルリン周辺の国家保安省駐屯地の制圧に成功したそうだ』

 

つまりもう国家保安省には何もできないと。

 

「残党共はブレーメについてくつもりだな。孤立してた連中もゼーロウ要塞方面に移動を開始してる」

 

ブレーメが出してる”我に続け”は妨害してないからな。

 

「勝った、のか?俺たちは」

『大勢は、な。革命の成功を盤石なものにする。本隊に合流し議会の警護につくぞ』

 

後ろ髪をひかれるようだが、中隊はその指示に従った。

 

 

 





野生の挑戦者を流したらどうなるんだろう、と一瞬頭をよぎりました。
…BETA巻き込んでハジケて終わるか。空気もこの作品も。

戦闘シーンがいまいち盛り上がらない…でも性能差がひどすぎるうえ連携ぶっ壊したから数頼みもできないし…要精進、ということでご容赦願います。
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