MUV-LUV大戦   作:土井中32

29 / 107
今更ですが、この小説のタグはスパロボOGではありません。

でも最初の頃みたいに色々言われないかと戦々恐々です。


27話 帰還と新装備

 

 

 

 

人がいる。

一寸先も分からない真っ暗闇なのに、そこに誰かいるのが分かる。

誰なのか考えている間に、”それ”がどんどん増えていく。

 

「……」

 

何か、言っている。

 

…して

 

見えなかったはずの彼らの先頭にいたのは。

 

どうして、お前だけが生きている

 

 

 

 

チダラケデオレヲニラム、トウサントカアサンダッタ。

 

 

-----------------------------

 

「――ゴッホッゲフッゲフ!!」

 

ベッドから飛び起きる。

呼吸も止まっていたらしい。慌てて深呼吸し、跳ねる心臓を押さえつける。

 

「…クソ」

 

余計なものを見た。だから寝るのは嫌だったんだ。

父さんと母さんが、あんなこと言うはずがないのに。

 

「…仕事しよ」

 

覚えとく必要なんてない。

所詮、いつもの悪夢(●●●●●●)だ。

 

-----------------------------

 

起きたら二日も経ってた。

叔父さんに睡眠薬を撃ち込まれ、グーすか寝てたらしい。

慌てて仕事の進捗確認したらTC-OSの調整、ほとんど終わっていた。

どうやら寝てる間にエルザム中佐が各チームに発破をかけ、発奮した連中が頑張って終わらせたらしい。

 

「子供が身を削るほど頑張っているのに、大人がこんなざまでいいのか」

 

思いのほか、この言葉が連中の自尊心(大人のプライド)を刺激したようだ。

ちなみに、俺の扱いはゲシュペンストの生みの親として認知されている。

東ドイツの革命にがっつり関わってしまったし、パッチアーマー計画に俺を突っ込む以上、嘗められないためにも実績があることを証明する必要がある、ということで将軍様の許可が出たらしい。

最初こそ計画参加者には懐疑的な視線を向けられたが、そこは実力で黙らせた。

TC-OSに関わる質問を片っ端から答えていけば向こうも張りぼてではないことを理解したし、自分たちの何倍もの速さで仕事をこなされていては認めざるを得ないだろう。

が、そんな俺が”倒れるほど仕事をしていた”ということを突きつけられれば、子供に負けてたまるか、となるのがまともな大人の考えだろう。

おかげで残った俺の仕事は少々のバグ取り程度、というところまで進んでいた。

……代わりに死屍累々になっていたが。

 

「……うっし、チェック完了。あとは実際に使って不備がないか見るだけだな」

 

そんなわけでF-4・パッチアーマー用の調整が施されたTC-OSが完成。

テストは必要だが、F-4系であればどの機種に搭載しても自動で機体特性に合わせたモーション調整が行われ、最適な機動が行われるはずだ。

また、このモーション調整は機体損傷時のバランス変化にも対応しており、例えば片腕を失ったとしてもそれに合わせたバランサー調整を自動で行ってくれる。

衛士は自分で重量変化を想定した操縦をしなくてよくなるわけだ。

ここまでくれば、あとは衛士たちの仕事だ。モーション・パターンの蓄積も勝手に進めてくれるだろう。

 

 

それはつまり、俺が帝国に帰る時が来た、ということでもある。

 

「最初から最後まで世話になった。お前がいなければ革命はもっと困難だっただろう。最大限の感謝を」

「俺には俺の目的があってやったことだ。たまたま向いている方向が同じだったってだけのこと、そこまで感謝する必要はねえよ」

 

頭を下げるベルンハルト少佐(昇進した)にグーパンと張り手の跡が残る顔でそう返す。

今後、東ドイツは西ドイツに編入され、ドイツ連邦として再出発することでほぼ決まりらしい。

666中隊は名前をそのままに大隊規模に拡大。古株を中隊長、小隊長に据えて光線級吶喊専門の部隊として新生するそうだ。

 

しばらくは新入りを鍛えるのに忙しいだろうな。

 

装備は西側の支援を受けてゲシュペンスト一個中隊に加えバラライカ・パッチアーマーで統一するらしい。

性能にかなり差があるはずだが、最終的にはゲシュペンストで統一するらしい。それまでの暫定措置だとか。

海王星作戦で光線級吶喊の重要性を西側も認識したから、欧州向けラインが完成したら最優先で回されるんだと。

ゆくゆくは光線級吶喊の教導部隊を目指す、ということで西側とも意見が一致したそうだ。

 

今はモーションパターン蓄積作業の合間を縫って、中隊全員で帝国に帰る俺の見送りに来てくれていた。

再編委員会で忙しいはずのヴァルトハイムまで来ている。

 

「ああ、忘れてた。エーベルバッハ、これ」

「シミュレーションデータ?なんだこれ?」

「それクリアできなきゃ物理的に首飛ぶからな」

「はぁ!?」

「そういう条件で”あれ”の輸出と機密保持の処分をしないことを納得させたんだ。意味わかるよな?」

 

あれ、とはタイプSのことだ。

実際にハイヴ攻略に役立つのか、テストは必要だったからな。部品精度の問題で現状純正パーツはうちでしか作れないし、じゃあ代わりに誰か現地に派遣できる?と聞いたら返事帰ってこなかったからな。

オットー中尉たちならパーツさえあれば整備は何とか出来るだろうし。

そんなこと考えていたら、”あれ”がなんなのか分かったエーベルバッハの顔が引き締まる。

 

「いいのか、だってあれは」

「いずれ必要になるものだし、お前さんは666の要だ。死ねば中隊が瓦解するぞ」

「そんなこと」

「「あります!」」

「そうだな。私の代わりが十分務まるだろうし」

「いなくなると引きずっちゃいそうかな」

「ま、まあ確かに、貴様にはもっと働いてもらわないとな」

「だそうだ。とは言え、任せるからにはそれだけの腕があることを証明してもらわなきゃならんからな。できるだけ早くそれクリアして見せろよ」

「……ああ、任せろ」

 

返事を聞いて、俺は姿勢を正す。

 

「貴官らのおかげで、俺は人類にまだ夢を見ていられる。人の心の光を見せてくれたこと、感謝する。

666中隊の武運長久、遠方から祈らせてもらう」

 

互いに敬礼を返し、俺は輸送機に乗り込む。

離陸を待つ間、手持無沙汰だったのでラジオをつけてみた。

そこから流れ出すのは、あの歌。

 

俺があの日ベルリン中に流した歌だった。

 

-----------------------------

 

「……疲れた」

 

帝国に戻ってきた俺の最初の仕事は謝罪行脚だった。

俺が行方不明になったせいで帝国内で進めていた仕事がずいぶんと滞っていたらしい。

偉い人たちに頭を下げ、時にケンカし、撒いた護衛の人たちに土下座し、技術者たちのケツを蹴とばすこと三日。

ようやく自分のしたいことに取り掛かれる。

進捗を確認したら74式戦車改は既に配備が始まってるし、フュルギアの開発も順調だ。恐らく90式戦車の代わりに配備されることになるだろう。

…個人的には、あれは戦車じゃなく自走砲な気がするが。ホバーだから山の多い内陸部での運用には向かないし。

87式高射砲?空飛ぶBETAいたっけ?つったら開発計画白紙になった。現状必要かと聞かれれば疑問符付くからな。

 

ちなみに、じいちゃんの説教はそんなに長くなかった。

ただ、心配したことをこんこんと説かれていたたまれなかったが。

 

それはさておいて、新兵器の開発だ。

実際のBETA戦線を見たことで、現在足りていないものがいくつか目についたのでそれを開発しようと思う。

まず真っ先に作るのが”対戦車級歩兵用装備”だ。

 

戦車級。

BETAの一種で、もっとも衛士の血を吸ったともいわれる種だ。

それを示すように体表は真っ赤で、2対の足と上に飛び出た1対の長い腕。胴体に直接ついた口であらゆるものに噛みつき食いちぎってしまう。

最高速度80キロ。壁や天井も走り回る最も機動性に長けたBETAだが、最大の特徴がその数だ。

単体で現れることはほぼなく、最低でも数百体規模で襲いかかってくる。

逃げ遅れて取り付かれ、数に任せてバラバラに食いちぎられるというのがこいつにやられる戦術機の基本パターンだ。

 

単体では大したことないのに、群れるとうざい敵。

戦場での評価はそんなところだ。

実戦においてはこいつを専門に狩るポジションや専用機があるくらいだが、戦術機でこれと戦うのは俺からすると無駄が多い、と言わざるを得ない。

戦車級に対して使われるのはもっぱら36ミリ弾だ。戦術機が装備する火器の中ではポピュラー且つもっとも小火力だが、これでも戦車級に対しては過剰威力なのだ。

戦車が装備する12,7ミリ機銃でも充分倒せる相手に、その3倍近い直径の弾を使えばどうなるか。

水平射撃すれば、相対距離にもよるが最低でも3,4体は貫通してまとめて倒せるだけの威力はある。

だが実際には一弾一殺がせいぜいだ。なぜか。

 

戦術機の全高は大体16~18メートル。対して戦車級は一律で全長4,4メートル。体高は2,8メートル。

10分の一に縮めれば大体人間の身長との対比になる。この場合の戦車級の体長は40センチほど。

……足元にじゃれつく子犬の群れに対して、ライフルやナイフで一匹一匹殺すのがどれだけ不毛かわかるだろう。

こういった場合、効率が良いのはショットガンや榴弾、ミサイルなどの面制圧だ。一定範囲をまとめてハチの巣なり吹っ飛ばすなりすればいいのだが、威力がばらける分今度は大型種に対する決定力が減る。

戦車級専門のポジションにだけ装備すればいい、というものでもない。面制圧するということは味方を巻き込む可能性も上がる、ということだからだ。

何より、ゲシュペンストの登場で突撃級や要塞級といった厄介な敵に対する攻撃力を大きく向上させた戦術機を、言っては何だが雑魚である戦車級の対処に向けるのはもったいない。

そこまで考えたとき、一つ思い出した。

対BETA戦における歩兵の扱いである。

 

ぶっちゃけた話、捨て駒以下だ。

 

パワードスーツである強化外骨格を着た機械化歩兵装甲部隊ならばともかく、歩兵の持てる装備では戦車級を一人一匹倒せればいいほうで、大抵はほとんど役に立たずBETAの津波に飲まれる。

闘士級のような戦術機の敵にもならない超小型種を掃討するときだけ声がかかり、それでさえ命懸けだ。

正直言って、対BETA戦では役に立たないあぶれた戦力、と言わざるを得ない。

 

もしも、彼らを戦力化できれば。

機甲戦力の随伴歩兵として充分な火力と機動力を持たせられれば。

戦車級以下の対処を任せられれば、戦術機をもっと自由な遊撃戦力として使えるのではないか。

 

ということで、目的は”歩兵でも扱えて、戦車級を効率よく倒せる”兵器の開発だ。

全高は大きくても5メートルまで。強化外骨格よりも大型でより重武装、でも戦術機よりは小さい隙間を埋める兵器だ。

主武装は36ミリ弾を採用。マガジンも共用したい。

機甲戦力に随伴でき、戦車級に追い付く・追いつかれないために最低でも時速100キロは欲しい。

戦車などの車両とは違い自力でのリロード・武装変更・接近戦も考慮する。

 

で、考えた果てにできたのが。

 

「なんでさ」

 

俺の前に鎮座する小さな巨人。

戦術機の約4分の1の大きさ。

ほとんど操縦席で占められた胴体。

丸い頭に設けられたレールの上に取り付けられた、三角形に配された回転式のターレットレンズ。

 

「スコープドッグじゃん」

 

ATM-09-ST スコープドッグ

”装甲騎兵ボトムズ”というアニメに登場する人型兵器だ。

生産性と汎用性に優れ、劇中では一億機も製造されたとされる傑作機。

しかし、兵器としての性能を優先させた結果乗り手への安全性は極めて低く。

胴体はただの鉄板、関節駆動機構は極めて発火しやすい物質が使用されているなど、生存性は低い。

誰が呼んだか通称は”鉄の棺桶”。

 

まあ、似ているのは見た目だけだが。

歩兵用装備を目指すということは大量配備できるよう高い生産性と低コストを目指さねばならないということだ。

で、求める性能をクリアできるなら軍用だろうが民間用だろうが構わず部品を組み込んだ。

そしたらなぜかこの形になっていた。なんで?

 

と、とりあえず求める能力は得たのだから良しとしよう。

原作では棺桶とどっこいな生存性だったが、そのあたりは徹底的に直した。

胴体正面装甲はゲシュペンストにも使われているものを採用。

重量の観点から薄くせざるを得なかったが、36ミリまでなら20発程度は耐えられる強度となった。

加えて74式戦車改用に開発したスターライト樹脂を主原料とした対光学塗料を塗りたくった。一発だけならば光線級のレーザーが直撃しても中身は無事だ。機体はほぼ中破するだろうが、最低限撤退ぐらいはできるはずだ。

関節駆動機構も油圧シリンダーに変更。動作の確実性と頑丈さ、シンプルな壊れにくさを優先した。もちろん必要な反応速度などは満たしている。

両足裏にはタイヤとモーターを装備。前進・後退速度共に荒れ地でも100キロを確保したし、民生品にいい感じのパイルバンカーがあったのでそれを足に装備した。こいつを走行中に地面にたたき込むことで急ブレーキにしたり突然方向転換することが可能だ。

腰回りと背中にはハードポイントを設置。ここにマガジンやサブの武装などを装備する。

 

メイン装備はヘビィマシンガン。原作では30ミリだったが戦術機用のそれに合わせて36ミリに変更した。マシンガン自体は新造だがマガジンは戦術機用のものと共通だ。単発だがグレネードも装備してある。

本体の高さも原作同様約3.8メートルに抑えたため、平地で腰だめならほぼ水平射撃で戦車級を薙ぎ払えるはずだ。

近接戦については悩んだが左肩にスパイクシールドを装備した。必要時にはこれを手に持って殴り掛かる、といった運用を想定している。

爆圧式のアームパンチ?装弾数少なすぎるし整備が手間すぎる。

何より使うとなったら無手で相手に密着する必要がある。

やろうと思えば65式近接短刀も装備可能だが、よっぽど慣れた人間じゃないと振り回されるだろう。

まあ、殴り合うくらいなら素直に下がって補給を受けろ、という話ではあるのだが。

 

操縦系はできるだけ電子機器を排除した形にした。高性能なコンピュータを積むと光線級に狙われやすくなるし、製造コストの高騰を招く。複雑になり過ぎないように、それでいてある程度の自由度を残せるように作るのは苦労した。

網膜投影装置とか、戦術機から流用できる部分は流用したけど。

 

とりあえず形にはなった。あとはこれを技術廠に投げてプロの目線で改良してもらう。

実戦テストが必要になったらヨーロッパに送ってみるのもいいだろう。中身はほぼ枯れた技術だし、やはり戦車級に苦慮しているはずだ。

 

さて、次は何を作ろうか。

 

「ごめんください」

 

縁側で茶をすすりながら考えていたら、お客さんが来た。

 

「護衛に加わることとなりました、篁 裕唯といいます」

「妻の栴納です」

 

ああ、ご近所さんだからって護衛に加わることになったんだっけ。

譜代武家で衛士としても有名なはずなんだけどな、この人。

 

……裕唯?

 

「ああ。出張先で女胎ませた挙句、責任取らなかった男のクズか」

「「「ブフゥっ!?」」」

 

聞いてた全員が吹いた。

 

「……その話、詳しく聞いてもいいかしら?」

 

栴納さんに肩をがっちりつかまれた。

怒ってる時の笑顔だな、これ。

 

 

 





グーパンと張り手の痕

「今を逃すともうグーパンの機会がなさそうなので」
「殺したかったけどお兄ちゃんに止められたから、せめてビンタを」
「もっと安全性とか女心について説教したかったんだけどなー」
「整備班ともども6時間も正座させてまだ足りないのか」


74式戦車改
旧式化、及び対BETA戦能力の不足が指摘された74式を次期主力戦車配備まで延命させるために行われた近代化改修を受けた車両。
”新規設計した砲塔に丸ごと取り換える”ことにより、短期間で不足していた能力を強化している。

戦域データリンク能力の獲得
120ミリ滑腔砲の搭載
遠隔操作式12,7ミリ機銃への変更・増設
(砲塔のみだが)耐熱装甲の採用
車体全体への対レーザー蒸散塗膜の塗布

などが主な改良点になる。
重要部分が砲塔部に集中する、エンジン含む足回りが元のままなど問題もあったが、既に配備されていて経験の蓄積がある74式ベースであったため現場からは好評で、後にエンジンを新型に交換した改二が登場。新型として採用されたフュルギアがホバータンクであったことも相まってその後も内陸部中心に第一線で運用され続けた。

これ(スコープドッグ)のせいでタグをスパロボOGにできませんでした。
オリ主は作品としてはボトムズを知っていますが、この形になったのは本人も意図したものではありません。見た目そっくりなだけで中身はほぼ別物です。メタ的に言うとオリジナル機よりは解像度が高いかな、と。敵に回すと死ぬ人がこの世界にいるかは土居中にもわかりません。

描写があまりないですがオリ主はかなりの時間を基礎技術の研究などに当てています。頭の中でOG世界産技術の検証・応用・発展の可能性の模索をしたりしていて、寝不足の原因も半分くらいはこれのせいです。OG世界の技術に胡坐をかいてると足元掬われかねない、と本人は思ってるので。今後もたまに開発に成功してOG以外からの技術も飛び出すかも。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。