今は1976年、俺は3歳。
BETAが地球にやってきた年に生まれた、というのは何か作為を感じるが、とりあえず置いておく。
とにかく戦うと決めた以上、すぐにでも動き出さなければならない。
まず必要なのは戦力強化。
BETAと真っ向からぶつかれるほどの兵器が必要だ。
76年時点では配備されている戦術機はF-4 ファントムとその派生機が数種類だけ。
あとは旧来の戦車や戦闘機といった通常兵器ばかりだ。
しかも戦闘機をはじめとする航空兵器群はすでに無力化されている。
BETAの作り出した光線属種、文字通りレーザーを放射するタイプによる対空砲撃によってだ。
航空爆撃による広範囲殲滅能力を失った人類はBETAの圧倒的な物量に抗しきれず、徐々に戦線を後退させていく。
地球へのBETA侵入から3年。
BETAは5つの拠点、ハイヴを建設しているはずだ。
……侵略ユニットがカシュガルに落ちてきた時点で、中国がなりふり構わず国連軍、せめてソ連軍を受け入れて一気につぶしていればここまで広がることはなかったものを。
たらればを今更言ってもしょうがない。
とりあえず、地球製兵器の全般的な強化が必要だ。
現状の兵器群では戦争にすらならない。
数をそろえれば可能性はあるのかもしれないが、それは物量こそ最大の武器であるBETAと消耗戦をするということだ。
勝てたとしてもそのあとに地球を復興できるだけの人的・資材的リソースは残らないだろう。
なればこそ、狙うは質の向上。
高性能な兵器による首狩りを以て対抗するしかない。
が、BETAの場合構成する戦力のほとんどが雑兵で、首狩りの価値があるのは基地司令たる各ハイヴの反応炉・頭脳級とカシュガルにいる地球方面総司令、重頭脳級しかいない。
そしてこいつらをどうにかしなければ雑兵どもは止まらない。何体死のうが全滅するまで前進をやめないのだ。
雑兵たちを受け止める壁役が時間を稼いでいる間に、切込み役が
ゆえに必要とされるのは二つ。
雑兵どもと戦う量産、整備性に優れたある程度の性能と数をそろえられる兵器。
首狩りを目的とした採算度外視の超高性能なワンオフ兵器。
まずは壁役として数が必要な量産機を作るところから始めねば、ならなかったのだが……。
「……これがマブラヴ星人たるゆえんか」
手にした紙束を熟読し、内容を理解した俺から出た第一声がこれだった。
この年、日本帝国はアメリカ合衆国に技術研修チームを派遣している。
自国だけで戦術機の開発・量産と供給は不可能と悟ったアメリカによる同盟国への開発・生産奨励を受けて、技術及び運用ノウハウを学ぶためだ。
同時に帝国では国産戦術機開発計画”曙計画”が発足。
F-4の調達がアメリカの都合で一方的に遅らされたことを受け、他国の事情に左右されない国内で自給自足できる戦術機を、ということで始まった計画だ。
俺はこの計画担当宛に、とある人型兵器の設計図を送り付けた。
一部どうしても墨入れしなければならない部分はあったが、F-4の部品を流用しても史実の第3世代機を優に超える機体が完成するはずだった。
……が、結果は不採用。
しかも設計図からわかる技術情報を一切研究せず封印、である。
匿名で送り付けたし全部の採用が無理でも、これだけオーバーテクノロジーなものが送り付けられたら研究ぐらいはするだろう、と思っていたのだが。
流石に納得できずじいちゃんのつてで調べてもらったところ、やったのは光菱含む戦術機開発メーカーたち。
自分たちがこれから手にする利権を名も知らぬ誰かにかっさらわれるかもしれない、と危惧した経営陣が帝国上層部に働きかけ、怪文書として封印させたのだ。
曰く。夢物語、フィクションの産物、と。
アホらしくて言葉も出ない。
あいつら、現場の人間の命よりも懐に入る金を選びやがった。
封印措置なのは破棄しようとしたら解析に携わった連中の猛反対にあったから、らしいがこの時点で人類救う気がかなり削がれた。
だが、同時に別の感情も生まれた。
よろしい、それでは実物でその面ぶん殴ってやろうじゃないか、と。
じいちゃんから金を借りていくつか頭の中にある技術を開発。それを公開して特許料をあちこちからふんだくった。
その金でいくつかのつぶれかけの工場や会社を買収。傘下に収めた技術者たちを使って自分で作ることにした。
目標は帝国が94年に採用する第3世代戦術機”不知火”の発表に殴り込んで真正面からボコボコにすること。
自分たちが金のために闇に葬った機体に自信をもって送り出した機体が無残に破壊されるところを見せつけ、そのうえで言ってやるのだ。
”ねぇ、今どんな気持ち?”と。
そのために自重はしない。帝国に送った設計図は墨入れしていたが、傘下に収めた技術者たちには全部見せた。
設計図を凝視する技術者たちに、俺は言ってやる。
「世界にケンカを売る、その手伝いをあんたたちに頼みたい。俺についてくる限り、知っている限りのすべてを見せてやる。そこから何を作ろうがあんたたちの自由だ」
どうする?と聞いた俺に、技術者たちの返事は一つだった。