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1985年、12歳になった。
東西ドイツの統一によって、この先原作はどんどん当てにならなくなっていくことだろう。
だがそれでいい。未来は元々不確定なものだ。
変えられる、と分かっただけでも大きな収穫なのだ。
さておき世界情勢は刻々と変化を続けている。
昨年、BETAはインド亜大陸に侵攻を開始。
対するインド軍はヒマラヤ山脈を盾として東南アジア諸国と連携を取りながら対処できている。
これはインド政府が帝国からゲシュペンストのライセンスを取得し、国内で一定数を生産・戦力化できていたのも大きい。
加えて旧式化したF-4系を片っ端から購入しパッチアーマーをかぶせて戦力化するなど、早い段階で戦力を整えていた政府の先見の明が当たった形だろう。
とはいえ、イラク領内に甲9号目標、アンバールハイヴの建設が開始されるなど、これからインドにかかる圧力は増すばかりだ。原作では10年持ちこたえたらしいが、どうかそれ以上に頑張ってほしいものだ。
中東戦線は先にも言ったとおり、甲9号目標の建設開始により大きな撤退を強いられた。
オイルマネーに任せてゲシュペンストの大量購入を決めていたが、戦力化が間に合わなかった形だ。
それでも現状で数少ない大隊規模でゲシュペンストを保有する戦線だ。建設直後なら攻略できる可能性は高いと、ハイヴ攻略作戦を申請しているらしい。
もっとも押されているのはソ連側の戦線だろう。
何せここにはゲシュペンストが一機もいない。
本当は手に入れたいようなのだが、東ドイツに送り込まれていたエーリヒ・シュミットの件でヨーロッパ側からの信頼は低く、欧州ラインからの購入は断られたらしい。
ライセンス生産についても、アラスカを租借している関係からアメリカの顔を伺わねばならず、取得に二の足を踏んでいる。
帝国からの購入も俺を誘拐しかけたのが社会主義者であったことが偉い人たちの疑念を呼んでしまい、優先順位は低くなってしまっている。
人類全体を見れば仲違いなどしている場合ではないのだが、方々でアメリカ並みに良からぬ企みやっていたことも事実。
そのせいで信用されずに首を絞めているのだから、自業自得というほかない。
とは言えソ連が負けてBETAの支配域が増えると困るのは事実。どこかでテコ入れしないとならないだろう。
中国戦線はどうしようもない。
帝国から海外派兵としてゲシュペンスト一個中隊が向かったのだが、補給物資の中抜き、ハニトラ、果ては強奪未遂騒ぎを起こすなど、あまりにもひどすぎたためにBETA戦所ではない、と帰ってきてしまったのだ。
しかもそれが海外にもばれ、世界中から白い目を向けられている始末。
どうも政府内で派閥同士の争いが激化し、それぞれの派閥が独自に利益とゲシュペンストを手に入れようと画策した結果らしいが、呆れて言葉も出ない。
連中、かつてのやらかしから何も学んでいないらしい。その元気を対BETA戦に注いでいれば、ここまで押されずに済んだものを。
前線国家に対する支援は継続されているが、逆に言えばそれ以上の支援は行われていない。やっても好転するとは思われていないからだ。
遠からず中国大陸から追い出されるかもしれない。何とかしたいが、相手が信用できないのではどうしようもない。
そのせいで九州は要塞化の真っ最中だ。金も資材もそっちに回さなければならなくなってしまった。
大まかなところはこんなところだ。
で、俺が何やっているかというと。
「おお。さすが世界一の大国、ビルもでかいのばっかだな」
アメリカ出張中です。ファック!
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「生産ラインを敷設する代わりに俺をアメリカに寄越せ?」
「要約すればそうなる」
珍しく帝都城に呼ばれたので、登城して将軍様に謁見すれば。
アメリカからの要求を聞かされた。
「ニューヨークで予定されている学会に、そなたを出席させること。それを条件として提示された」
「で、途中で連れ去ってアメリカでこき使うか、消すか。そんなところ?」
「恐らくな。もちろん突っぱねるつもりだが、そうなればアメリカを完全に敵に回さねばならなくなる。対BETA戦にも大きな影響が出るだろう」
解析用にゲシュペンスト送ってやったってのにまだ足りないのかとも思うが、自国の利益に対して驚くほど保守的なのがあの国だ。
それに対して俺は随分と喧嘩を売ってしまった。
ゲシュペンストの開発
TC-OSの完成
パッチアーマーの実用化
軍事技術面で優越していたはずの帝国がいつの間にか自分たちを追い越していたと知れば、そりゃ面白くもない。
しかもそれを世界中に売りさばき、アメリカ製戦術機を一気に旧式に追いやってしまったのだ。
値段下げて売りさばこうにも、先方が欲しがるのはゲシュペンストばかり。次いでパッチアーマーが使えるF-4系だ。
逆に第2世代機はまったく売れてない。安いのが欲しければF-4買ってパッチアーマー着ければいいし、余裕があるなら圧倒的に高性能なゲシュペンストを購入するに決まってる。
最前線のトレンドはゲシュペンストをエースないし指揮官に与えて、他はパッチアーマー付けたF-4というものだ。
高性能なセンサーを備えたゲシュペンストが取得した情報をデータリンクで共有しそれをもとに隊長が指揮を執り、隊員がその指揮のもと戦う。
一種のハイローミックスだな。
結果として第2世代機の在庫がだぶつき、開発費用も全く回収できてない。
センサー系こそF-4よりも高性能だが、肝心の運動性ではゲシュペンストどころかパッチアーマー型にすら劣り、それでいて総費用はパッチアーマー込みの新品F-4と比べてさほど変わらない。中古のF-4を買えばむしろ安くなる。
だったら既にある機体にパッチアーマー被せたほうが安上がりだし全体の戦力も向上する。
ゲシュペンストもパッチアーマーも手に入らない東陣営ならばともかく、西側で第2世代機を買う・買い換える理由がないのだ。
兵器の売買による外貨獲得において、今一番売れるはずの戦術機がむしろ重荷となってしまった。
しかも近々F-5系用のパッチアーマーも完成すると欧州から連絡を受けた。今の流れがさらに加速するはずだ。
結果としてF-15の採用に待ったがかかり、米軍ですらまだ装備していない。
アメリカの国益を損なった張本人としていつナニカされてもおかしくない。というかすでに何人かそれっぽい連中が捕まっている。
どうやら裏から手を回すのはあきらめて、しゃにむに何とかするつもりらしい。
「で、それを俺に教えてどうするつもり?」
「一応の確認だ。出るか?」
「行く」
「……よいのか?絶対に罠だぞ?」
「ほんとにそうなったらそうなったで、アメリカに言うこと聞かせるための手札として使えるでしょ。国内で他国の重要人物暗殺なり誘拐なりされるなんて、醜聞以外の何物でもない。そこまで馬鹿だってんなら、それはそれで諦めるさ」
将軍様はため息をつく。
「働かせている余が言うことではないが、なぜそこまで自分の命を軽視する?お前の代わりはいないのだぞ?」
「逆に言えば、俺が人類の結束を邪魔してるともいえる。出る杭は打たれる、でしょ?打った結果家が完成するならそれはそれで構わないよ」
「それで人類がまとまるならば、己が命に未練などない、ということか」
痛ましいものを見る目で、将軍様は俺を見てくる。
現状でも勝てる可能性は十分あるのだ。今すぐ俺がどうなっても人類が間違わなければ勝てるだろう。
もともと何とかできそうだからやってみてるだけだ。人類がそれをいらないというならばそれ以上手を貸す義理もない。
ましてや一国家の利益のためだけに頑張るなど御免こうむるので、さっさとこの世界からおさらばするだけだ。電極ぶっ刺しとかも勘弁だし。
…生きてる限りは、どんなに面倒でも足掻かねばなるまいが。
「あい分かった。そなたには指一本触れさせぬよう手配しよう。人はまだ捨てたものではないとそなたに証明するためにもな」
「まあ、進んで奴隷になりたいとは思ってないし。がんばってね、てところか」
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と、いうわけでやってきましたニューヨーク。
周りは斯衛の精鋭さんたちでいっぱいで観光もくそもない。ビルしか見えない。
「完全に籠の鳥だな」
「頼むからそういうこと口に出さないでくれ。君のためなんだから」
護衛の一人である巌谷少佐に窘められる。
分かってはいるしやったことがやったことなので自業自得と諦めてもいるが、こうも何も見えないと外国に来た気がしない。
こうなったのも、俺の身分が変わったからだ。
ドイツでの一件を受けて警備が強化されたのだが、どうも将軍様方はそれでも足りないと思ったらしい。
五摂家の当主全員で話し合った結果、俺を斎御司家の養子に入れる、ということが勝手に決められてしまった。
名前も苗字もそのままだが、書類上は五摂家の人間、というわけだ。
うわべだけとはいえ、五摂家の人間だからこそこの警備態勢が敷けた、ということらしい。
……偉い人に振り回されてる皆さんには同情を禁じえないが、やらかした件もあるし彼らはむしろ使命感を持って護衛についているらしいので何も言わない。
「さて、あそこが会場か。入った途端爆弾で倒壊したりするのかね?」
「お願いだから想像を口に出すのやめてくれ。君が言うと本当になりそうで怖いんだ」
それを何とかするのが少佐たちの仕事でしょ?他ならぬアメリカが俺をどうこうする気満々なんだし。
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「あ”ーー。来た意味ねえなほんとに」
控室に帰ってきて最初の言葉がこれである。
学会?言ったとおりだよ。
こっちからは対光学障壁に関する各種理論を発表したってのに、ほかの参加者から出てきたのは俺に対する質問ばかり。
なんか俺の知らない新しい理論を誰か発表してくれねえかな、と思ってたのに。
どいつもこいつも俺から何か得ようとするだけで自分から何か提供するそぶりも見せない。
目に映るのは欲望にたぎった顔、顔、顔。
最後ブチ切れてなんか言った気がするが、何言ったのか覚えてないぐらいだ。
「まあ、これでアメリカに対する義理は果たしたんだし、これでもごねるようなら切り捨てるまでだ」
アメリカの生産力は喉から手が出るほど欲しいが、ダメならダメで別の手を考えるまでだ。
なんて考えていたんだが。
「失礼します。九郎君に会いたい、という方が見えてまして」
「誰?さっき見た連中ならお断りだけど」
ぶっきらぼうに返してしまうが大目に見てほしい。
そのぐらいさっきの連中はひどかったのだ。
「いや、君も知っている人だよ」
俺の質問に答えたのは巌谷少佐だった。
俺と巌谷少佐が知っていて、アメリカの人間。フム。
「分かった、お通しして」
想像通りなら会う価値はあるだろう。
何せ、戦術機の鬼なのだから。
F-15採用見送り
現場、それも海外派兵経験者から特に強硬に反対されました。
ゲシュペンストへのスペック負けはもちろん、戦術機にとって一番重要な機動性においてもパッチアーマーに劣る機体に乗り換えるなど俺たちを殺す気か、と。
アメリカはパッチアーマーを直接は買っていませんが、ヨーロッパ派遣組などは現場の交流の一環で乗せてもらったりしてるので性能差を実感しています。
財布を握っている連中からもパッチアーマーを導入したほうが安上がりだし性能も上がると噛みつかれていて、米軍内は各派閥に分かれて大騒ぎです。