MUV-LUV大戦   作:土井中32

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急いで上げたのでいろいろ不備があるかもしれません。
誤字脱字の指摘いつも助かっています。皆さんに感謝を!


29話 ライバル

 

 

「初めましてだね」

 

部屋に入ってきたのは、想像通りの人物だった。

眼鏡をかけた、白髪で初老の人物。

しかしその目は轟轟と炎を猛らせて言っている。

”もっとすごいものを作りたい”と。

 

「こちらこそあなたに会えて光栄です。フランク・ハイネマン技師」

 

F-14の主任設計士。

のちに戦術機の鬼、と呼ばれる人物だ。

戦術機で彼の影響を受けていない機体などほぼない、とまで言われるほど多大な影響を残した人が、俺に会いに来ていた。

 

「おや、私のことを知っていたのか」

「F-14の設計士ですから。よくぞあのバランスで実用化できたものだと感心したものです」

「ゲシュペンストを作った君に言われると立つ瀬がないがね」

 

苦笑するハイネマン技師。

席に座るよう促し、改めて話をする。

 

「それにしても意外です。私はあなたに恨まれていると思っていましたので」

「ほう、なぜかね?」

「ゲシュペンストにパッチアーマー。これらを世に出したせいで、F-14は一気にその価値を落としてしまった。あなたと愛弟子が魂を込めて作った機体が」

 

ハイネマン技師から笑顔が消える。

 

「知っていたのかい」

「男のクズに吐かせました。護衛の一人だったので」

「彼か、なるほど。今どこに?」

「男としてけじめをつけさせに行かせました」

 

篁少佐は今ここにはいない。ミラ・ブリッジスのもとに行かせたからだ。

どうせそっちのことが気になって護衛に集中できないだろうから、鎧衣課長をつけて会いに行かせた。

どんな結果になるか知らないが、きっちりけじめをつけてきてほしい。

 

「そうか。まあ、そちらは本人たちで決めることだね。私としては嫉妬する気持ちはもちろんあるが、F-14を上回られたことに関して特に君を恨む気持ちはないよ」

「丹精込めて作ったのに、ですか?」

「人の作り出すものだ。いつかは上をいくものが出てくる。今回はそれがとても早かったというだけのことさ」

 

それにね、と技師は続け。

 

「私はむしろ感謝しているんだ。人はここまでの物を作り出せるんだと、証明してくれたのだから。

 そして君に誓おう。私は必ず君を超えて見せる。今日君に会いに来たのはそれを伝えるためさ」

 

面食らった。まさか堂々とライバル宣言されるとは。

今まであった自称科学者や技術者は、俺から何かを得ることしか考えてなかったというのに。

 

「……分かりました。待っていますよ、あなたと鎬を削る日が来ることを」

 

そう言って、俺は横に置いていたカバンからいくつか書類を取り出す。

 

「とは言え、今のままでは何年かかるかわかりませんから。帝国の言葉で敵に塩を送る、です」

 

渡された書類を流し読みしたハイネマン技師の顔が、驚愕に染まる。

 

「……いいのかね。これはまだ私たちがものにできてない、ゲシュペンストに使用した技術の情報だろう?」

「さっきの連中にくれるぐらいなら、堂々と喧嘩を売りに来たあなたにこそ使ってほしい。そう思いましたので」

「フフフ、なるほど。確かにさっきの君の啖呵には笑わせてもらったよ。”乞食にくれてやるものなど一つもねえ!”だったかな?」

 

俺そんなこと言ったの?まあ本心だけど。

 

「では失礼するよ。待っていたまえ。そんなには待たせないつもりだ」

「ええ。ですがあくまで、BETAを追い出すために、ですよ?対人戦で勝負をつけるのはごめんです」

「ああ、もちろんだとも。技術者としては使い方に文句をつけるつもりはないが、君がそう望むのならそれに合わせよう」

 

そう言って、ハイネマン技師は控室を去っていった。

 

「良かったのかい?協力すれば今よりいいものを作れる可能性もあったはずだが」

「切磋琢磨することでもいいものはできるはずだよ。あの人はそれを選んだんだ。ならそれを尊重するべきだよ」

 

巌谷少佐にはそう答えた。

さて、いい出会いもあったがいつまでもいたってしょうがない。さっさと帰るか、と支度を始めたところで。

 

「失礼します。九郎君に会いたいという方が」

「誰?自称科学者?それとも技術者?」

「いえ、それが……」

 

護衛の人が言いよどんでいる間に、その人が無理やり入ってきた。

 

「勝手なことをして済まない。私はジェームズ・マーシャル。この国で上院議員を務めている」

 

今度は政治屋かよ。

 

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今のままでいいのか。

 

最近の私が考えることは、そればかりだ。

私はジェームズ・マーシャル。アメリカ合衆国上院議員の一人だ。

 

BETAとの戦争が勃発して以降、我が国は有形無形、様々な形で戦っている他国を支援してきた。

しかしその裏で、自国の利益のため様々な邪魔をしてもいる。

それが直接の原因とまでは言えないが、足を引っ張っているのは間違いない。結果、海外派兵した我が国の軍人たちに余計な被害が出ている。

私自身、月の対BETA戦線に参加したことのある身だ。BETAの脅威についてはよく知っている。

それだけに、いたずらに戦争を長期化させる遠因である我が国の策謀に、思うところもある。

ではこの国をどこに導くのかと問われれば、私は答えを返すことができない。そのビジョンがないからだ。

このままではいけない。しかしどうすればいいのかわからない。ずっと私はその迷いの中にいる。

 

そんな時、ある話を聞いた。

ゲシュペンストの開発者が、ニューヨークの学会に出席するというのだ。

かの戦術機に関しては私もよく知っていた。

軍にいたころの友人たちからそのすごさについて聞かされたからだ。

 

数十年先をいく、オーパーツのような機体。

量産できれば、BETAなど敵ではない。

 

友人たちは決まってそう言った。

同時に、これの採用を後押ししてほしいと頼まれた。

資料を取り寄せればなるほど、彼らの言うとおりだ。

悔しいが、我が国の戦術機では足元にも及ばない。

 

同時に、我が国に失望することにもなった。

開発元の日本帝国から、量産のため生産ラインを作ってほしいと依頼されたにもかかわらず、いまだにそれに着手していないのだ。

解析用に、ブラックボックス化されてないゲシュペンストをもらいながら、である。

 

これほどの見返りをもらいながらなぜ無視しているのか調べてみれば、アメリカ製戦術機の価値がこれ以上下がるのを防ぐためだという。

現場の人間が求めているのは、ちっぽけなプライドではない。自分と仲間の命を守れる良い装備なのだ。

そして帝国とゲシュペンストの開発者に仕掛けられている有形無形の策謀。

 

これのどこが、世界の警察だというのか。

マフィアのほうがまだましではないのか。

 

すぐにでもこんなことをしている現政権に怒鳴り込みたかったが、今の私は一人の上院議員でしかない。彼らとの力の差は明白で、怒鳴り込んでも握りつぶされるのがオチだった。

 

そんな祖国と自分自身について悩んでいた時に聞いたのが先刻の話だ。

私が謝る義理はないかもしれないが、それでも謝りたかった。

BETAと戦うために奮闘している彼らの足を引っ張っている国の一員であることが恥ずかしく、同時にそれぐらいしかできない自分自身が歯がゆかった。

 

学会を見学させてもらったが、またしても驚かされた。

まさか開発者が12歳の少年だとは。

疑う者もいたが、質問に対して完璧に答えて見せる様子を見れば、もはや疑う余地はないだろう。

同時に、そんな彼に群がる科学者たちの醜悪さには辟易せざるを得ない。

意見交換ですらない、あれではただの物乞いだ。

最後に彼が怒って言った言葉がまだ耳に残っている。

 

「てめえらそれでも科学者か!未知に挑む冒険者か!?乞食にくれてやるものなど一つもねえ!」

 

彼の心情はいかばかりだろう。

物乞いたちは謝ることはしないだろうが、せめて彼らに迷惑をかけ続けるこの国に住む一人として謝りたかった。

 

無理を言って彼の控室に入らせてもらえば、不機嫌そうながらも彼は私を迎え入れてくれた。

 

「まずは、謝らせてもらう。すまなかった」

 

私が頭を下げれば周りの護衛たちは驚いた。しかし彼は座った眼で、一切変わらぬ声で聴いてきた。

 

「それは何に対しての謝罪ですか?」

 

「控室に勝手に押し入ったこと。学会などとのたまいながら実質唯の物乞いに君を付き合わせてしまったこと。我が祖国が君と帝国にかけている迷惑。それらすべてへの謝罪だ。私にそれらをどうにかする力はないが、せめて謝りたかった」

「頭を上げてください。あなたが謝っても、なにも好転しない。現状を憂いているのなら、あなたがやるべきことは一つのはずだ」

 

私は頭を上げ、彼の目を見ながら話す。

ずっと抱えている悩みを。

 

「その通りだ。だが、私にはビジョンがない。この国をどこへ導いていくかのビジョンが。混迷する世界情勢の中でどこへ導いていけばいいのか、私にはわからないんだ」

 

ジッと、私の目を見ながら彼は考えている。

やがて、彼は口を開いた。

 

「あと20年かからず、人類は負けます」

 

 





ジェームズ・マーシャル氏の元ネタが分かった人は土居中と握手!
…戦うアメリカ大統領っていうと真っ先にこの人が浮かぶんですよね。
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