MUV-LUV大戦   作:土井中32

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ちょっと早いですが閲覧数15万回記念ということで。
勢い任せで書き上げましたので、いろいろと不整合な部分が多いです。
なので、限りなくIFに近い話となります。


閑話三 趣味に走り過ぎる人たち

 

 

マオ・インダストリー。

九郎がゲシュペンストを組み上げるために起こした会社である。

特許のパテントなどで貯めた金で潰れかけの中小会社や工場を技術者ごと買い取り作られた会社だが、その際九郎は彼らと一つの約束をしていた。

 

すなわち、”他人に迷惑かけない範囲で、教えた技術で何を作ってもいい”という約束を。

 

自分達の知るそれをはるかに超えるオーバーテクノロジーを与えられて、制限付きとはいえそれを使って何でも作ってもいいなどと技術者に言ったら何が起こるか。

九郎はそれを見誤っていたことを後に後悔した。

 

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で?なんだこのゲテモノは?

 

地下研究所内にある試験場、その一角にて。

ひくついた顔で正座させた技術者(マッド)に問い質す九郎。

その後ろではいったいどうしてそうなったのか。

 

壁に上下逆で大の字のままめり込むスコープドッグの姿があった。

コックピットこそかろうじて原形をとどめているが、手足など辛うじて繋がっているだけで完全にぐしゃぐしゃである。

何とか引っ張り出されたパイロットは近くの仲間に縋りついている。

 

「生きてる?俺生きてるよな!?」

「よーしよし大丈夫だ。確かにお前は生きてるよ」

「おい、早く医務室連れてけ。あんな勢いで突っ込んで生きてるとかおかしい。すぐに精密検査にぶち込まねぇと」

「博士が胴体周り頑丈に作ってたのが幸いしましたねぇ。じゃなかったら手足みたいにコックピットもぺしゃんこですよ」

 

そんなことを話している周りを意にも介さず、これを作った技術者(キチガイ)は自慢するように高らかに告げた。

 

「スコープドッグの規格内でどこまで無茶できるか確かめたかったんです!!」

 

人乗せてやる奴があるか馬鹿野郎ッ!!

 

グーで殴った九郎を止める者は、誰もいなかった。

 

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スコープドッグ。

歩兵が乗れる小型・簡易戦術機として開発された兵器である。

民生部品すら組み込まれたその機体は戦術機どころか他の戦闘車両と比べても極めて量産しやすく、また用途が幅広いために現在急ピッチでの生産と戦力化が行われていた。

が、小型で調達しやすいということはちょっと無茶しても替えが効くということで。

九郎の地下研究所に詰める技術者たちは、これを体のいい実験台として使い倒していた。

おかげで背部ハードポイントにロケットランチャーやりゅう弾砲を装備した簡易砲兵ともいうべき機体や、気密処理を行い足にフロートを組み込んだ海兵仕様などが日の目を見ている。

が、好き勝手にやっているせいでたまにこんなことも起こる。

 

「ったく、せめて人の手で何とか出来る範囲の物に乗せろよ」

 

後片付けと暫定の処分を下して自分の研究室に戻ってきた九郎は、それでも愚痴をこぼす。

それから改めて件のキチガイが組み上げた機体の設計図を見た。

 

スコープドッグ・クレイジーダンサー(仮称)

 

スコープドッグにアークスラスターを増設した機体である。

両肩と足にフレキシブルスラスターを搭載し、機動力を高めた機体だ。

それだけなら高機動仕様とでも言えばいいのだが、問題なのが使われているスラスターがゲシュペンスト用の物である、ということである。

4倍も巨大な物を動かすためのスラスターを、出力調整もしないでくっつけたらどうなるか。

ろくな出力同期プログラムもないまま起動実験をした機体は一瞬で時速500キロまで加速。

そのまま地面に足を着くことなく、空中で狂ったように乱回転しながら壁に突っ込んだのだ。

死人が出なかったのが奇跡である。シミュレーターでテストもせずにやったあの技術者には厳しい処分が下されるだろう。

 

…そんなのがすでにダースもいる、というのが九郎にとって最大の頭痛の種だが。

何か新しい技術を見せるたびにこの騒ぎが起きるのだ。

 

とにかく手に入れた技術で何が作れるのか試してみたい。

 

その欲望に抗えず、思いつくままに作っては騒ぎを起こす。

彼らのおかげで意外な使い方や閃きが生まれることもあるので一概に規制もできず。何より最初に約束したことなのでダメとも言い辛い。

あれで仕事はちゃんとこなしているのだ。自由時間をどう使おうが彼らの自由。それは九郎でも止められない。

もっとも、出世や名誉欲、金銭に欠片も興味を示さず。

ひたすらに知りえた技術をものにしてもっとすごいものを、さらに先へと発展させるのだとトライアンドエラーを繰り返すその姿は九郎にとっても好ましいものであるのだが。

 

でもちょっとは節度を持ってほしい。国から金が出ている半官営とはいえ一応は企業なのだから、建前上備品をあんな派手に壊されては困るのだ。

経理の連中が日に日に死んでいく目で報告するのを聞く身にもなってほしい。九郎はそう思わずにいられない。

 

九郎のマオ・インダストリーにおける立ち位置は技術相談役という曖昧なものだが、一応は会社の運営にかかわる経営陣の一人だ。

元々彼の思い付きを形にするための会社なのだから当然ではあるが、それゆえに一種の中間管理職のような目に合っていた。

 

ある時は戦闘ヘリからかっぱらってきた(無許可)ロケットランチャーを載せられるだけ載せた重爆撃仕様の撃震で演習場の一角が火の海になり(配線ミスってて撃震ごと大爆発した。遠隔操作の実験も兼ねていたので死人は出なかった)。

 

ある時は新型の超電導モーターのテスト用に足回りを換装した装甲車を限界性能試験と言い張って帝国基地内でレースを行い(観戦してた軍人から賭ける連中まで出てえらい騒ぎになった)。

 

この間など九郎が東ドイツにいたときに作った電磁投射散弾砲をスコープドッグに装備させて使おうとして。

出力不足を核融合炉を背中に背負った機体と、砲を持つ機体の2機連携で運用するというアイデアで解決していた。

…発射時の反動をどうするかを忘れていて、撃った瞬間に2機ともバラバラになりながら後ろに吹っ飛んでいたが。

シミュレーターで無かったら確実に死人が出ていただろう。

 

その後で解決したと言い張って、備品倉庫から核融合炉持ち出して実機で試そうとしたのはさすがに止められたが。

 

そのたびに方々に頭下げるのは社長と九郎である。自分はともかく、最近は社長の頭髪が心配だった。

 

「博士!馬鹿が自分の息子にジェットエンジン付き3輪車を送るって言って止まらないんです!!助けてください!?」

「会社の備品で何作ろうとしてんだ!?」

 

やっぱりあんなこと言うんじゃなかった。

 

九郎はいかにしてあの言葉を撤回するか、頭を悩ませている。

 

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スコープドッグ・クレイジーダンサー

スコープドッグという規格の内でどこまで無茶ができるか試すために組まれた機体。

肩と足に増設されたゲシュペンスト用のアークスラスターは、一基だけでもスコープドッグを宙に浮かせるだけの出力があり規格外の機動性を本機に与えたが、もはやスコープドッグの操縦システムではそのスピードに追い付けないという欠陥機でもあった。

加えて最大稼働時にはわずか10分で電池切れを起こすなど稼働時間も劣悪。

試作一号機はまともな制御プログラムもないまま起動実験を行ったために壁に突っ込んで全損。危険すぎるとして開発は中止された。

 

 

…はずだった。

 

 

スコープドッグ・イエーガー

クレイジーダンサーの正式量産モデル。

うわさを聞き付けた帝国特戦群から少数でいいので作ってほしいと依頼があり、スコープドッグの高級モデルとして若干数が量産された。

追いついていなかった操縦システムはより戦術機のそれに近づけることで解決された。

稼働時間も背部ハードポイントに専用の高出力バッテリーを装備することで最大稼働時でも最低2時間を確保している。

両腕内側と腰部にはワイヤーアンカーを装備。スラスターと相まって市街地や森林地帯では戦術機の光学センサーすら振り切る機動を可能とした。

通常仕様のスコープドッグどころか下手な戦車に匹敵する高級機であり、パイロットにも並外れた技量を要求するなど本来の目的に逆行する異端児だが、その性能だけは折り紙付きである。

特に塗料には特戦群によって電波探知を誤魔化すための試作ステルス塗料が使用されており、不完全なステルス処理により戦闘時にはレーダー上で幽鬼のようなふるまいを見せる。

 

後に行われた日米合同演習において米国戦術機部隊と交戦。

市街地や森林地帯での戦闘でその高性能をいかんなく発揮し、米国軍人たちを阿鼻叫喚の渦へと叩き込んだ。

特に夜間戦闘においてはホラーさながらの状況に追い込み、彼らに消えないトラウマを刻み込んだ。

米軍からのあだ名は”ニンジャロボ””ヘンタイメガネ”である。

 

 





「気が付いたら僚機の首が飛んでた」
なんてことがイエーガーとの戦闘ではよくあったとか。
スラスターとワイヤーアンカーの併用で瞬間的にカメラの追尾を振り切り、近接装備の逆手持ちブレードで襲い掛かってくるという首狩り兎もびっくりなゲテモノです。
戦闘時には半端なステルス処理もあいまってレーダーに反応したりしなかったりを繰り返してかえって相手を混乱させます。
極まった連中は腕にブレードではなくパイルバンカーを装備してるという噂が…。
欲した連中の任務上、ほぼ対人戦特化な機体のため九郎はいい顔しませんでしたが、歩兵からはスコープドッグの最高級モデルとしてあこがれの的だとか。

九郎の地下研究所に詰めている技術者たちは書類上はマオ・インダストリーからの出向です。
実際には極まりすぎて元居た場所から追い出された技術馬鹿の変態ばかりで、腕はいいですが頭のねじがダースで抜けてそうな奴ばっかりです。

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