独自解釈注意です。突っ込みどころ多いかなあ…。
表情の変化で質問の答えはすぐに出た。
それでもすぐに顔を引き締め、答えてきたのは俺の知る彼より成長した、ということだろう。
「3周目、だ。それを知っているってことは、あんたも?」
「多少事情が違うが、似たようなもんだ」
そう言って俺は背を向けて歩き出す。
「来いよ。情報交換と行こうぜ?」
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近くの喫茶店に入る。
奥まった席について注文すれば、さっそく白銀は質問してきた。
「こんなところでいいのか?聞かれたら不味いこともあるんじゃ」
「事前に怪しいおっさんが確認してる。店長も買収済みだ、誰もここに近づかない」
確認してもらった後は離れたところから監視してもらっている。
前世がどうとかループがどうとか、ちょっと頭を疑われる内容だからな。目視の監視だけで音声は勘弁してもらった。
読唇術の可能性はまあ、俺が口を隠せば何とかなるだろう。
5歳のガキが変なこと言ったところで、それを信じる大人なんぞまずいない。
…自分のことは棚に上げてるよ?技術でぶん殴って無理やり分からせたようなもんだけど。
白銀は怪しいおっさん、と言っただけで誰かわかったらしい。
「美琴の親父さん?知り合いなのか?」
「こき使ってる仲だよ。お前さんを監視してもらったりな」
それだけである程度こちらのことが分かったようだ。
「……随分と権力を持ってるんだな」
「征夷大将軍相談役だ、当たり前だろ」
面食らっている。予想以上の権力だったらしい。
注文した飲み物が来るのを待って、話を再開する。
「改めて自己紹介から始めようか。稲郷 九郎だ。言った通り征夷大将軍相談役で主に技術開発をしている」
「白銀 武です。知ってるかもしれませんが、この世界をループしています。主観時間では3周目になります」
急にかしこまったな。だがいちいち言葉選びに手間取られても面倒だ。
「敬語はいらん。1周目はオルタネイティブ5発動、2周目は桜花作戦成功で合ってるか?」
「…その通りだ。あんたもループを?」
「いや、違う。俺は観測世界の出だ」
「観測世界?」
俺は俺の事情を話した。
前世の世界で、物語として白銀たちの軌跡が世に知れ渡っていること。それを読んだことがあること。
何かの要因で死に、この世界に生まれ変わったこと。
このままいけば絶望しかない未来を変えるため、様々な手を打ってきたこと。
その中で、物語の主人公たる白銀武の状態を知るため、監視をつけていたこと。
「で、お前が普通じゃないことやったから、もしかしてと思って直接確かめに来たわけだ」
「普通じゃないこと?」
「バーンファイト。5歳の出すスコアじゃねえぞ、あれ」
「あ」
気づいてなかったのか。やっぱりどこか抜けている。
それにしても。
「余り嫌そうな顔をしてないな。自分が物語の登場人物だなんて言われれば、大抵の人間は感情的に否定すると思うんだが」
「そりゃ、ちょっとは思うところもあるけど。並行世界の存在を知ってる身としては、まあそういうこともあるかな、と」
意外と冷静だな。もっと感情的に動くかと思ってたんだが。
まあ、これはこれで話を進めやすい。
「記憶があるのはお前だけか?鑑 純夏は?」
「直接確かめたわけじゃないけど、たぶんないと思う。言動が年相応過ぎる」
「そうか。まあ、よかったと思うべきだな。あんな地獄みたいな記憶、ないほうが幸せだろ」
「やっぱり把握してるんだな、俺たちのこと」
「物語であるがゆえにぼかされたり省かれたりした部分はあったがな。おおよそのことは把握している。では次の質問だ。
3周目に至った原因。何か心当たりはあるか?」
物語の通りなら、こいつにはもうループする理由も原因も存在しない。
だが、こいつは今3周目としてここに存在している。
「分からない。記憶の欠落はあるが、俺は確かに元の世界に帰ったはずなんだ」
「欠落?認識できているのか、何が思い出せない?」
「元の世界にかかわる思い出。向こうの用語なんかは覚えているのに、2周目の時一時的に戻った時のことや、そもそもあっちにいたころのことをほとんど思い出せないんだ。
代わりに、一周目の記憶が複数ある。その、純夏以外と結ばれた記憶とかが」
…なるほど。そういうことか?
「仮説でしかないが、理由は分かった」
「ほんとか!?」
「今お前を構成している大部分は、ループ中に鑑純夏によって不要と判断され、取り除かれた因果なんだろう」
「純夏が、捨てた?」
「ループする中で鑑純夏はお前から都合の悪い情報、因果を取り除いていた。これは知っているな?」
「霞から聞いた。純夏以外の誰かと結ばれたことを忘れさせて、何度もループさせてたって」
「では、そうやって取り除かれた因果はどうなったと思う?そのままただ消滅すると思うか?」
「……消滅せず、寄り集まったのが、俺?」
妙なところで勘がいい。
「ループから解放された時、確かにお前は元の世界に帰った、というかばらけてそれぞれの世界へと離散した。だが全てが帰ったわけではなくほんの少しだけ残った部分を核に、それら取り除かれていた因果がより集まってできたのがお前、というのが俺の仮説だ」
鑑には負けるが、因果に干渉する資質をこいつも持っているはずだ。
でなきゃ因果導体なんて世界に干渉する能力を発現させるわけがない。
原作における白銀は”様々な世界からちょっとずつ集められた白銀武という情報の集積体”であって、特別な能力があるはずがない。原作の鑑純夏が求めたのは”白銀武にもう一度会うこと”で、特別な能力を付与することではないからだ。
ループする中で集めた・近しい世界から引っ張り寄せた因果情報を他者に反映させるなど、ただ会うことを目的としていた鑑純夏が必要とする能力だとは思えない。むしろループさせればさせるほど失敗の因果を引き寄せやすくなるのだから彼女にとっては邪魔な能力だ。結果として彼女は何度も白銀から因果を切り離す羽目になっている。
鑑純夏が”世界に干渉する力”で意図的にそういった能力を付与できるなら、そもそも”自分と白銀武が結ばれた世界”だけを選んで情報を集積させるか、もっと目的に沿った能力を付与する方がよっぽど早い。
わき目も降らずに自分を探し求めるし見つける方法が増えるのだから、試行回数は劇的に少なくなるはずだ。
つまり因果導体としての能力は偶然発現し、それは白銀自身の資質に由来すると考えるほうが自然だ。
俺の考える仮説としてはループが終わり、白銀武を構成する因子がばらけた際、大半は元の世界に帰ったと思われる。
だが、一部の因子が残った。想像だが”この結末に納得できない”と。
それを核にして、ループ中に切り取られた因果が寄り集まったのが今俺の目の前にいる白銀武なのだろう。
鑑と違い、より良い結末を望むこいつには”2001年10月22日”にこだわる必要がない。
鑑に比べればチリみたいな資質でも、寄り集まれば自分を軸にもう一回巻き戻すか並行世界に飛ぶくらいの力は出せるはずだ。
どっちなのかは俺には判断つかんし、そこに俺が関係あるのかもわからんが。
一応、この仮説を補強する材料もある。
5歳といういまだ出来上がっていない体で、現役衛士顔負けの動きなど普通はできない。なのにこいつはできる。なぜか。
取り除かれた因果の中には当然、その世界での戦闘経験も含まれているはず。
それが無意識のうちにこいつに力を貸している。
何十年、ひょっとすると百年に届くかもしれない、圧倒的な戦闘経験。それがこいつの動きを最適化してるのだ。
体にできるだけ負担がかからず、それでいて有効な動作に。
まあ、確かめるすべなんてないから、どこまで行ってもこれは仮説の域を出ない。
一つだけ確かなのは、今俺の前にいるのは人類を救った偉大だがガキ臭い大先輩である、ということだ。
しかもつかみ取った
…俺には絶対に無理だな。
「つくづく主人公だな、お前は」
「え?どういうことだ?」
「何でもない。まあ知りたいことは知れた。俺から聞きたいことはもうないな」
「じゃあ、今度は俺から質問。具体的には何を変えてきたんだ?」
「ゲシュペンスト。あれ作ったのは俺だ」
「!?」
驚いてるなあ。まあ当然か。戦術機に乗ったことあるんだし。
「この世界とは違う、また別の高度な技術が存在する世界。その世界の技術情報が俺の頭の中には詰まってる。それを使っていろいろ作って世界に干渉してきたわけだ」
「歴史に差異があるのは、それが理由か」
「随分と同じ人類に邪魔されたけどな」
白銀が苦笑いしている。こいつもそれなりに思い当たる節あるだろうしな。
まあすぐに顔を引き締めて自分にできることを尋ねてきたが。
「なあ、あんたはそれなりに権力あるんだよな?何か、俺にできることを手伝わせてくれないか。未来を知っているのに、何もしないでいるのは……」
「5歳のガキにできることなんかまずな……」
…まてよ?
「いや、あるか?」
「ほんとか!?」
「さっきの仮説通りなら、お前の中にはどんなベテランも及ばないほどの戦闘経験が蓄積されている。それをTC-OSに反映できれば」
「つまり開発衛士ってことだな!?さっきのゲーセンに戻ってやり込めば」
「阿呆、一体いくら使う気だ。わざわざ行かなくてもできるようにしてやる」
「へ?」
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というわけで、白銀の家にバーンファイトの匿体を設置した。
電気代や設置費用は俺持ち。両親の説得には俺も参加した。
”軍の役に立つデータを多数提出してもらった礼”と言えばこのご時勢、断るやつはほぼいないだろう。
まだ体の小さい白銀に合わせた物で、体の成長に合わせて大きくできる特別製だ。
白銀の動作記録は自動で蓄積されるから、月に一度くらいの頻度でそいつを提出してくれればいい。
……現バージョンのバーンファイトは通信関連の問題で無線通信機能を組み込めず。店内対戦がせいぜいなので、白銀のデータを反映したボスキャラでも放り込んで思いっきり引っ掻き回してゲーマー共のやり込みを促してもらおう。
ついでに裏モードも仕込んだ。
「裏モード?」
「タイトル画面で”REAL”と入力すれば発動する。文字通りのリアルモードだ」
白銀の顔が引き締まる。
「家に誰か呼んで一緒にやる場合もあるだろうからな。パスワード式にした。ばれないよう気をつけろよ」
「ありがとうな。ここまでしてもらって」
「こっちにも利益があるからやってることだ、気にすんな。体壊さない範囲でやり込んでデータ収集してくれ。未来の大英雄にこんなところでつぶれられちゃ困るからな」
俺を知ってるやつがいたらどの口が、て言いそうだな。
……別にいいか。最近は美沙に健康的な生活送らされてるし。
「月一ぐらいでデータ提出のために家に来い。軍用シミュレーター触らせてやる」
ついでに方々の基地に繋いでシミュレーター訓練に乱入させてやる。得る物は多いはずだ、お互いに。
トラウマ?この程度で折れる奴など知ったことではない。
「たーけーるーちゃん!あーそーぼ!」
外から元気な女の子の声が聞こえた。
「鑑純夏か」
「ああ」
白銀の顔が変わる。戦士の顔に。
「その顔で会う気か?今は昔のことなんか置いとけ。今度こそ守りたいんだろ?」
「う…そ、そうだな。不安にさせちゃまずいよな」
「設置も終わったしな、俺は帰るよ」
玄関に向かう途中、足を止める。
「白銀、勝つぞ。これ以上何も奴らには渡さない」
「応」
男のあいさつなんぞ、これで十分だ。
裏ボス
ゲーマー「馬鹿みたいに早くて強くてこっちの思考を先読みしてるとしか思えない動きで襲い掛かってくるんだけど。倒した奴いる?」
ゲーマー2「横浜でそんなプレイヤーと戦った奴がいるらしいけど。まさかそいつのデータを反映したとか?」
アンノウン
衛士「シミュレーション中に馬鹿みたいに強くて早くて先読みされてるとしか思えない動きで襲い掛かってくる乱入者がいるんだけど。あれ一体何だ?」
衛士2「シミュレーションのハイスコアが軒並み更新されてるんだけど。誰だこのプラチナコードって?」
斯衛がアップを始めました。
大将からして強い奴がいたら勝負したくてたまらなくなる人間だからね。しょうがないね。
今のところ戦えた(乱入された)人間はいないようですが。