MUV-LUV大戦   作:土井中32

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もっとこう、かっこいい作戦名にしたかったんですが、土井中の頭ではこれが限界でした。
ともかく反撃開始です。


35話 オペレーション・リベンジ

 

 

欧州、ミンスクハイヴ近郊。

少なくない犠牲と消耗の果て。ようやく確保した橋頭保にて、人類の反撃の狼煙があげられようとしていた。

 

「突入部隊、準備完了しました」

「了解した。別命あるまで待機せよ」

 

ゲシュペンスト2個大隊、しめて72機。

欧州連合が血を吐く思いでかき集めた最精鋭の衛士と最新鋭機たちである。

陽動によって内部のBETAを引きずり出したのち、彼らが突入して最奥部、そこにある「何か」を目指す。

実に10年ぶりとなる、ミンスクハイヴ攻略作戦が行われようとしていた。

 

「ようやく、ここまで来たんだな」

 

居並ぶゲシュペンストの列に、テオドールが感慨深げにつぶやく。

国家保安省が倒れ、東西ドイツが統一されて5年。

一時はベルリン間近まで迫られたものの、西側と手を取り合うことで押し返し、とうとう逆撃を食らわせられるところまで来たのだ。

 

あの日、自分たちに賭けて力を貸してくれた小さな戦友に、今こそ証明して見せる。

俺たちは、人類はただ滅ぼされるだけの存在ではないと。

 

『時間だ。オペレーション・リベンジを開始する!』

 

戦いが、始まる。

 

-----------------------------

 

初手は定石通り遠距離砲戦部隊による飽和攻撃。

ハイヴ周辺に残る光線級から迎撃を受けるが、これは予定通り。

 

『光線級の位置、マークしました!』

『すぐに狙撃部隊に送れ!一秒でも早く排除するのだ!』

 

伏せていた機体がその姿を現す。

F-4ながらパッチアーマーを装備していないその機体は、代わりに自身に匹敵するほど長大なライフルと大量のセンサー、通信機器を備えていた。

 

「座標確認。照準修正……ロックした」

『初弾装填』

「装填完了。射撃準備良し」

『撃て』

 

電磁投射狙撃砲。日本帝国から持ち込まれた試作兵器はその性能を存分に発揮し、マッハ20という重力を振り切るギリギリの速度で光線級を襲った。

ハイヴ周辺に展開していた光線級は狙撃部隊によって排除され、砲撃がハイヴに直接降りかかる。

展開していた連中が叩かれれば当然、BETAも増援を出してこちらを迎撃せざるを得ない。

 

『BETAの噴出を確認。予定通りB-04方面に向けて進軍中』

『よし、このまま引き付けろ。少しでも遠くまで引き離すんだ』

 

BETAはより高性能な電子機械に興味を示す。有人か無人かであれば、有人の方に。

それを利用して陽動を行うために用意されたのが、F-4狙撃仕様機”パイドパイパー”である。

機体容量の許す限り高性能且つ大量の電子機器を搭載。背中には組み立てが間に合わなかったゲシュペンストの核融合炉が溶接されており、大電力を必要とする電磁投射狙撃砲にエネルギーを供給する。

帝国から提供された新素材(軌道降下戦術用大気圏突入カプセルに使う予定の物)製のレーザー防盾の後ろから攻撃を行い、BETAを引き付けるのが彼らの役割である。

大量の電子機器搭載による恩恵で精密砲撃を可能としており、それゆえの開幕光線級狙撃であった。

その仕様故移動能力はないに等しいが、問題はない。迫るBETAの津波を押しとどめるのは彼らの役割ではないからだ。

 

『来たぞ、一匹たりとも通すな!』

『この星が誰のものか、あのクソッタレどもに思い知らせてやれ!』

『了解!』

 

F-4/MIG-21パッチアーマー3個連隊、実に324機。

あらゆる手を尽くして集められた、欧州連合の全力。これ以上は逆さに振っても何も出ず、失敗すればもはや挽回のすべがない文字通り一か八かの賭けである。

橋頭保を確保し続けるためにすでに大国の国家予算が5年は吹っ飛ぶ程の資金・資材・人材が消費されている。戦力の充実(ゲシュペンストの配備)を待つためにこれ以上ダラダラと防衛戦を続けているわけにはいかなかった。

 

TC-OSとパッチアーマーによって得た改修前とは別次元の機動性を発揮し、周囲を、あるいは群れの中を飛び回りながら彼らは手に持った突撃砲から放たれる”光”を浴びせ、次々とBETAを討ち取っていく。

突撃級が、要塞級が。正面からでは120ミリでも単発ではほぼ貫通しないはずの甲殻が殺到する光に叩き割られ、次々と物言わぬ骸に変えられていく。

 

『ヒュー、すげえなこれ。今まで苦労してたやつらが一瞬でミンチだ!』

『帝国には感謝しねえとな、物資に装備と大盤振る舞いだ』

『はしゃぐのはいいが、やることやれよ。特に大型種は絶対に通すな』

『『了解!』』

 

TAM-90・アサルトマシンガン。

36ミリ弾を使う戦術機用の試作レールガンである。

本来F-4では関節強度と電力供給の関係から使えない装備だが、パッチアーマー装備時に腕の関節を強化。マシンガン本体に大容量バッテリーを組み込むことで半ば強引に解決した代物だ。

今回の作戦において欧州連合のゲシュペンストはほぼすべてハイヴ突入部隊に配属されたため、陽動部隊の火力不足を不安視した帝国から急遽提供されたものだ。

アメリカの協力(運用データ提供が見返り)で陽動部隊全機に装備できるほど量産され、試作ゆえの問題をはらみながら大きな戦果を挙げていた。

 

『クッソ、やっぱ全部はつぶしきれねえ!撃ち漏らしがソッチ行ったぞ!』

『任せろ、伊達や酔狂で”赤肩”に塗ってるわけじゃないって見せてやるよ』

 

レールガンの雨を潜り抜けたBETAを待ち受けるのは、同じく地上を埋め尽くすように展開するスコープドッグの群れだ。

歩兵が操縦できる簡易戦術機として、どこの戦線でも重宝されている。

特に戦車級対策として大量投入され、白兵戦になると脆い砲兵部隊の護衛から戦場を走り回っての遊撃、大量の物資を背負って弾薬・燃料不足に陥った戦術機部隊へのデリバリーなど、幅広い活躍をしていた。

その中でも右肩を血のように赤黒く塗った機体は戦術機部隊からも畏敬の念を送られる。

単独撃破のキルカウントが明確に1000を超える者だけが許されるエースの証。

いつのころからか彼らは”レッドショルダー”と呼ばれるようになった。

 

『オラオラ、鉛玉のプレゼントだ!たっぷり喰らいやがれ!』

『ここがお前らのどん詰まり(ボトムズ)よぉ!』

『隊列を崩すな!死骸が溜まったら砲兵部隊が吹っ飛ばせ!』

『任せろ、光のシャワーをお見舞いしてやるよ!』

『おい、要塞級が来てるぞ!?何やってんだ衛士共は!』

 

『問題ない』

 

直後、パイドパイパーから放たれた弾が要塞級を正面から貫通した。

 

『排除完了。次の獲物はどれだ?』

『頼もしいな、おい。2時の方向。見えるか?』

『捉えた』

 

時折戦術機部隊が倒しきれない大型種が迫るものの、パイドパイパーによってすべて排除されていた。

とは言え、脅威はそれだけではない。

 

『ぐあっ!?』

 

突如放たれた光が、戦術機を撃ち抜く。

 

『レーザー警報!目玉共のお出ましだ!』

『高度を下げろ、狙い撃ちにされるぞ!』

 

事前に重金属雲を展開していても、F-4の装甲はレーザーに耐えられるものではない。

高度を下げれば目標への射線は通り辛くなり、撃ち漏らしも増える。

 

「F-4はそのまま鶴翼に展開、ホバー移動で動き回りつつ大型種を優先的に仕留めろ。ゲシュペンストは私に続け。上から光線級を抑える」

『『『了解!』』』

 

数少ないゲシュペンストに乗るテンペスト・ホーカー大尉が前線を指揮、釣り出したBETAを叩くが最初ほどの効率では行えない。

砲兵部隊の盾となるスコープドッグ隊の負担が増えるが、彼らは一歩も下がらない。

 

『ようやく戦えるんだ、俺が、俺たちが!』

『もう足手まといじゃねえ、俺たちも人類の盾になれたんだ!』

『引いてたまるか、逃げてたまるか、もうそんなのはうんざりなんだよォ!!』

 

 

戦術機が人類の刃なら、我らは人類の盾

 

我らの後ろに、譲る道はなし

 

ゆえに、我らは侵略を阻む行き止まり(ボトムズ)

 

 

いつのころからか誰かが言い出したその言葉を胸に、スコープドッグたちは一歩たりとも譲らない。

 

彼らの士気は、高い。

 

-----------------------------

 

『最後尾との距離、1000を越えました』

『頃合いだな。全機起動。ハイヴに突入する!』

 

機能を停止し、文字通り亡霊と化していたゲシュペンストが立ち上がる。

陽動部隊とはハイヴを挟んで逆側に伏せ、突入の機会を窺っていたのだ。

 

『目標は最奥部にあると思われるエネルギー生産プラント。本来ならば命に代えても破壊しろ、と命じるところだが。諸君らの命の賭け場所はここではない。ゆえに全員、必ず帰還しろ!』

『『『了解!!』』』

 

72人の勇者が、悪魔の巣に挑む。

 

-----------------------------

 

突入から数時間。

ヴォールク連隊をはるかに超える深さまで侵入するも、未だ最奥部まで到達できていない。

予想はされていたが、留守居のBETAに進撃を阻まれていたからだ。

 

『クソ、まだこんなにいやがるのか!』

『きりがない、死骸が邪魔で奥までビームが届かないぞ!?』

 

死骸を盾に迫るBETA。

狭いドリフト内では数の強みを生かしきれないが、それは突入部隊も同じだ。

一度に集中できる射線は限られ、ゆえに駆逐しきれない分が徐々に迫ってきていた。

 

ならば、規格外の力をもって押しとおるまで。

 

『そこをどけぇッ!!』

 

気合の乗った声に前衛が振り向けば。

胸の大砲を晒した、自分たちと同じ形をしながら全くの規格外の姿が。

 

『うえぇ!?』

『どくってどこに!?』

『上だ、上に飛べ!』

 

前衛が退避した瞬間、迫るBETAにそれは放たれた。

 

『メガ・ブラスターキャノンッ!!』

 

ドリフトを削るほど巨大な光はBETAと一瞬拮抗。直後消し飛ばしながら押し返していき、最後は次の広間まで届いて爆発した。

 

『今だ、次の広間を確保しろ!』

『りょ、了解!』

 

面食らいながらも後続の部隊が進み、広間を確保する。

 

『シュヴァルツ8、機体コンディションは?』

『問題なし、オールグリーンだ』

 

問いかけてきたアイリスディーナにテオドールは答える。

 

『ほんと、つくづく規格外だよね。タイプSって』

『流石はハイヴ攻略用、といったところね。もっとくれればいいのに』

「文句はアッシュに言えよ。というか乗るための条件はみんな知ってるだろ」

『あれか……』

 

話していた全員の顔が引きつる。

 

タイプSに乗るための条件を、九郎は明確に定めていた。

彼が設定したシミュレーションをクリアすること。

テオドールは彼から渡されたそれを1ヶ月かけてようやくクリアし、タイプSに乗る資格を得ていた。

その難易度は彼以外にクリア者がいないことから推して知るべし、である。

テオドールは訓練以外の時間をそれこそ寝る間もほぼシミュレーションに費やして、ようやく勝ち取ったのだ。直後にぶっ倒れて、3日も寝続けるほどには厳しい難行だった。

アネットなど興味本位でやったところ、一日部屋に閉じこもる、という事件を起こしたほどだ。

 

ちなみに。エルザムも搭乗資格を得ているが、接近戦仕様のタイプSとは相性が良くないとして専用の改修が施されたタイプRに搭乗している。

 

『BETA怖いBETA怖いBETA怖いBETA怖いBETA怖い』

『いかん、アネットが壊れた』

『ほーら、大丈夫だよアネット。ここには死んだBETAしかいないからね』

『ええ……一体何があったの?』

 

『諸君、雑談はそこまでだ』

 

指揮官であるエルザムの言葉におしゃべりが止む。

 

『反響音センサーの情報から見て次が最下層、つまり目的地のようだ。全機、改めて状態を確認しろ』

 

各機体がコンディションを報告する中、テオドールは不審顔だ。

 

『シュヴァルツ8、どうした?何かトラブルか?』

「ああ、いや、問題ありません。順調すぎるのが気になって」

『順調すぎる?』

「ここまで弾薬や燃料は消費していますが消費量は軽微。脱落した機体もいません。あまりに順調すぎるのが逆に不気味だな、て」

『いいことなんじゃないの?』

「ヴォールク連隊の結果を考えると、BETAの圧力が弱すぎやしないか?兵器の性能を考慮に入れても、もっと苦戦してしかるべきだと思うんだ」

『うーん、そう言われれば、そうかもしれないけど……』

 

悩むアネットとの通信に、エルザムが割り込む。

 

『シュヴァルツ8、貴官の懸念はもっともだ。しかしここまで来れる機会はそうそうない。日本帝国の言葉で”虎穴に入らずんば虎子を得ず”だ。

総員、何が起ころうと冷静に対処しろ。我々にはどんな状況にも対応できるだけの装備と練度があるはずだ』

『『『了解』』』

 

警戒を促し、直後個別通信をテオドールに繋ぐ。

 

『シュヴァルツ8。何か気づいたらすぐに言え。現状では個々の勘に任せるしかない』

「了解しました、中佐」

 

悪魔の巣。その最奥部が、暴かれる。

 

 

 





ト  ラ  ウ  マ

アネット「ちょっとやってみようかな。内容はランダムだって言ってたけど、まあ何とかなるでしょ!」

ミッション! ハイヴ内で6時間生き延びろ!
注意!味方がハイヴ内でBETAに襲われています。できるだけ助けてあげましょう。失敗すると食われた味方からの恨み節が聞けるよ!
なお、トータル生存時間が3時間を超えるまでリタイヤ不可。シミュレーターから出られません。

アネット「( ゚Д゚)」

コード991とかがあったら出られたでしょうが、残念ながら脱出するまで警報の類はありませんでした。

試作装備祭り
技術廠の人間「例の技術者さんに触発されていろいろ作ってみたが、やっぱり実戦で試してみないことには有効性の評価ができないか」
「ドイツ、というか欧州連合には貸しがありますし、あちらに実戦テストを頼んでみては?ちょうどスコープドッグが遠征に行きますし、それに合わせて戦術機部隊も実戦経験を得るために中隊が派遣されるという話もありますし」

九郎「スコープドッグと帝国戦術機部隊がドイツに遠征?ちょうどいいや、実戦テストしたかった装備色々あるから送り付けちゃえ」
「ヒャッハー!技術相談役の許可が出たぞォ!」
「あれもこれもそれもどれも送って使ってもらおうああ楽しみだなあいまから奴らの悲鳴が聞こえてくるぜェ」
「ウフフいい声で鳴いてくれるわよねこれ食らって豚みたいに悲鳴上げてくれるわよね!?」
「いやそもそも発声器官ないだろ。それより俺のワイヤーソーでどれだけ切り刻めるか楽しみだなぁどれだけ血を吸って帰ってくるかなぁ」
「はい!はい!俺の設計した核バズ」
「「「そ れ は や め ろ」」」

欧州連合の担当者「なんだこのよくわからん装備の山は」
「帝国から援助の代わりに実戦データを取ってほしいと送られてきまして。データさえ取れたなら現場の判断で廃棄してもいいそうですが…」
「…できるだけ安全な状況を作って試すしかないか」

結果として評判の良かった装備が後方国家の助力で量産されて運用されています。

欧州連合がクローズアップされてますが帝国派遣部隊や米軍、国連軍もきちんと参加しています。
帝国軍は補給や損傷で下がった部隊の穴埋めに入ったりしながら実戦経験や試作装備のデータを取ったりしています。
ソ連?シュミットの件がまだ尾を引いていて……

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