MUV-LUV大戦   作:土井中32

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諸事情により来週の更新はできそうにありません。
閑話入れるのでどうかお許しを!


36話 どんな装甲だろうと

ミンスクハイヴ近郊。

 

BETAがひしめく戦場を、スコープドッグが駆ける。

BETAの荒海をマシンガンやロケットで切り開きながら、彼らは一路目的地を目指していた。

 

『まだ見つからないか!?』

「最後に確認されたポイントはこの辺りのはずだが…!いた、2時の方向!!」

 

彼らが見た先で、戦術機の小隊がBETAの海に負けまいと必死に抗っていた。

しかしその抵抗は弱い。飛ぶこともなく地面に足を踏ん張り、突撃砲による攻撃も最低限だ。

1機など両手にナイフを持って必死に振り回している。

 

『だいぶやばいぞ、急げ急げ!』

『ジャマすんじゃねえよこの虫共!』

 

火力を集中させ、戦術機たちへの道を切り開く。

しかし目の前まで近づいた時、1機のF-4の突撃砲から光が消える。

そこへ迫る突撃級。

他の戦術機の援護は間に合わず、スコープドッグの火力では倒す前にF-4が轢かれる。

見ていた誰もが諦めかけた刹那、1機のスコープドッグが、腰に装着したラックからマガジンを取り出す。

 

「受け取れェッ!!」

 

投げつけられたそれを、F-4は突撃砲のマガジン装着口で受け止めた。

間髪入れず放たれた光によって突撃級は蜂の巣になり、F-4にぶつかるギリギリで停止した。

 

『すまん、助かった!』

『ようやく来たか、どいつもこいつも腹が空きすぎてうるさいんだ、早く何か食わせてくれ!』

「慌てなさんな、まずは戦線復帰の早い奴からだ!」

 

即座に即席の防衛線を構築し、動くために必要な何もかもを使い果たした彼らに補給が行われる。

 

武装補給隊、通称デリバリーズ。

物資不足に陥った戦術機に燃料弾薬を届けるのが彼らの仕事だ。

物資を確実に届けるため、ともすれば遊撃部隊よりも重装備で駆け回る彼らは、衛士たちにとっては地獄のような最前線に現れたオアシス、か細いが確実に生還に繋がる蜘蛛の糸のような存在だ。

 

『状況はどうなってる?重金属雲のせいか後方と通信が繋がらないんだ』

どん詰まり(ボトムズ)はいまだ健在、だが砲弾が足りなくなりつつある。米軍が前に出始めてるが、このままだとこっちがすり潰されるかもな』

 

補給中の雑談、というよりは状況確認。

重金属雲の濃度によっては通信が著しく制限される場合もあり、そういった状況では後方と前線を行き来する彼らが伝令の代わりを務めることも多かった。

 

『引きずり出したクソッタレどもは10万を超えてからは計測できなくなっちまったらしいからな。陽動の仕事は果たしてるが、いつまでもとはいかねェ』

『俺たちが生き延びられるかは突入部隊次第、か』

 

話しながらも補給はよどみなく進められ、すっからかんになっていた跳躍ユニットの推進剤や使い果たされた弾薬、捨てた突撃砲などがぶち込まれ戦術機の腹が満たされる。

 

『よし、腹いっぱいだ!これでまだしばらくは暴れられるぜ』

『補給終了を確認。こっちは今ので物資を使い果たした、いったん後ろへ下がる。…死ぬんじゃねぇぞ』

『ああ、世話になった礼だ。後で一杯おごらせてくれ』

 

戦術機たちは前へ飛び出し、スコープドッグは後方へと駆ける。

約束通りに酒を酌み交わすため、己にできることを精一杯果たすために。

 

 

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ミンスクハイヴ最深部。

そこは、ありていに言って地獄だった。

 

『ぎちぎちに詰まってる、気色悪い…』

『だが、そうしてでも守りたいものがあれ、というわけだな』

 

今まで見た中でも特に広い大広間、とでもいうべき空間。

その中央でBETAの大群が群がっているものが、目標。

 

「あれがハイヴの中枢……」

『恐らくはBETAにエネルギーを供給するエネルギー生産プラントだろう。あれを破壊ないし確保すれば作戦成功だな』

 

ドリフト内から様子をうかがっていた俺たちは段取りを決める。

 

『ひと固まりなら都合がいい。シュヴァルツ8と私で先制し、その後包囲陣形を形成しながらせん滅する。シュヴァルツ1は右、私は左に広がる。各隊はそれに続け』

『『「了解」』』

 

『タイミングを合わせろ。3,2,1、GO!』

 

合図とともにエルザム中佐と俺が飛び出し、特大の一撃を叩き込む。

 

『撃ち抜け、トロンべ!』

「吹き飛べ!」

 

メガバスターキャノン(両手持ちの大型ビーム砲。名前が付いた)とメガ・ブラスターキャノンがこちらに気づいて動き出していたBETAを薙ぎ払う。

その間にドリフトから後続が一気に飛び出し、広間中央に向けて攻撃を加えながら包囲していく。

ものの1分足らずで包囲が完了すれば、あとは全力攻撃でせん滅するだけだ。

ビームや実弾の雨の前に、多数いたBETAも瞬く間に全滅した。

 

『殲滅完了。生き残りはいないな?』

『こちらシュヴァルツ1、確認できません』

『こちらもだ、だが……』

 

エルザム中佐の機体が、それを見る。

 

広間中央に鎮座し、あれだけの攻撃に晒されたはずなのに傷もなくそこにあるものに。

 

『誰か見ていたか?あれだけ激しい攻撃に晒されて無傷というのはおかしい』

『申し訳ありません、BETAの対処に精いっぱいで目を向けられず…』

『こちらもです』

『撃ってみればわかるんじゃないですか?中佐、攻撃の許可を――』

 

アネットが、そう言って近づこうとした途端、

 

「避けろアネットォ!!」

『!?』

 

”それ”から飛び出した触手が、アネットに襲い掛かった。

とっさにライフルを盾にすることでアネットは難を逃れたが、異常はそのあとに起こった。

 

『ちょ、何あれ!?』

『ライフルを、触手が取り込んだ…?』

『いかん、すぐに破壊しろ!』

 

中佐が叫ぶが、一歩遅く。

取り込まれたビームライフルが、俺たちに牙をむいた。

 

『撃ってきた!?』

『どうやってエネルギーを、いやそれは後だ!全機触手に捕まるな!最悪機体を奪われるぞ!』

『攻撃を集中!これ以上何かされる前に破壊しろ!』

 

触手による攻撃が始まる中、すぐに全火力が向けられる。

 

しかし。

 

『効いてない!?』

『ビームも実弾も弾いてる!どんなインチキだ!?』

『まさか、ラザフォード場か!?』

「中佐、何か知ってるんですか!」

『G元素を使って発生させる重力場だ、なるほどBETAなら使えてもおかしくないか!』

『ちょ、ちょっと待ってください中佐、それじゃあ、こいつは』

 

触手をさらに増やし攻撃を激化させる、俺たちがエネルギープラントだと思っていたこいつは。

 

『何のことはない、これ自体が一種のBETAであった、ということだ…!』

 

ここに来ての、新種のBETAの発見。

しかしそれは、未知の相手と戦わねばならないことを意味する。

戦慄が走る部隊の中で、しかしエルザム中佐は冷静だった。

 

『構わん、このまま攻撃を続けろ!奴を休ませるな!』

『弾かれてますよ!?』

『ラザフォード場の発生にはG元素を消費する!無限ではない、奴を干上がらせろ!』

『『『りょ、了解!』』』

 

しかし、BETAはそれを許さない。

 

『振動センサーに感アリ!ここに近づいてきています!』

『陽動したBETAが戻ってきたのか!?上の連中は何をやっている!』

『ち、違います!震源はさらに下、地下からです!』

『何だと!?』

『こちらでも確認した、これは、震源は一つではないぞ!?』

『何がどうなって…一つ目の震源、来ます!北北東、上下誤差なし!』

 

広間の壁をぶち抜いて、それは現れた。

今まで見たどんなBETAよりもでかいそれ。

見た目は巨大な円筒形。正面には大量の歯、らしきものが見えた。

 

「地下を移動する超巨大BETA?」

『ここに来てまた新種!?』

 

が、こいつの脅威はここからだった。

正面の口にも見えた場所が広がって――

 

『嘘…』

『流石に冗談、だろ…?』

 

――BETAが、溢れだした。

 

『報告!』

『も、目視で確認できるだけでも旅団はいます!』

『クッソ、要塞級まで混じってるぞ!?』

『シュヴァルツ3!中隊を率いて対処しろ!足を止めるんだ!』

『25から36は私に続いて!』

『『『りょ、了解!』』』

 

ラン中尉が対処に動いたが、不味い。

 

「中佐、これは」

『分かっている、他の震源も同じだろう…!』

 

そう。

向かってきている震源は、まだある。

 

『こ、これぜんぶ、あのでかいの…?』

『さしずめ母艦級(キャリアー)といったところか、早急に対処せねば我々が逆包囲されるぞ!』

『内側にこいつを抱え込んだまま、ね!』

 

エネルギープラント型BETAはいまだ健在。

包囲攻撃しているというのに、奴はいささかも衰えない。

 

『認めねばならんか、我々は罠にかけられたのだ……!』

 

中佐が血を吐くように言った言葉がすべてだ。

知らず俺たちは慢心していたのだ。

”BETAは戦術的行動などとらない”そう思い込まされていた。

だが実際はこれだ。俺たちは誘い込まれ、包囲殲滅されようとしている。

 

”俺たちがBETAにやってきたように”

 

(どうする、どうすれば状況を変えられる!?)

 

必死に考える。この状況を打破できるだけの突破力があるのは、中佐のタイプRカスタムか、俺のタイプSだけだ。

 

考え、考えて、閃いた。

馬鹿なことを。

 

「エルザム中佐、ラザフォード場ってのは、重力場なんですよね?」

『そうだが、それがどうした!?』

 

いけるかもしれない。

 

「各機、30秒だけ耐えてくれ!」

『シュヴァルツ8、何をする気だ!?』

『お兄ちゃん!?』

「プラズマジェネレーター、フルドライブ!!」

 

動力炉を全開起動。

得られたエネルギーを、すべて”グラビコンシステム”に叩き込む。

 

そう、タイプSもまた、重力制御が可能なのだ。

廉価型であるテスラ・ドライブでは無理な重力場展開能力を、タイプSは持っている。

それを一点に集中してぶつければ。

 

(ひょっとして、あいつはここまでわかっていたんだろうか?)

 

一瞬の思考を振り払い、機体を跳躍させる。

天井ギリギリまで飛びあがり、後は突撃するだけ。

 

網膜ディスプレイには、達筆で一言。

 

 SHOUT NOW !! 

 

 

 

「究ッ極ッ!!ゲシュペンストォォ!!」

 

 

 

メインスラスター全開。

地の底で、今、流星が闇を切り裂く。

 

 

 

「キィィィィィックッ!!」

 

 

 

足先にすべてのエネルギーを込めた飛び蹴りは、過たずプラントに直撃し。

 

 

「ブチ抜けェっ!!」

 

 

ラザフォード場も、触手による物理防御もすべてを貫き、プラントを粉砕した。

 

『やった!?』

『活動停止を確認、プラント破壊しました!』

『気を抜くな、まだ母艦級が残っている!』

 

破壊されたプラントから、向かってきているBETAに目を向ければ。

 

『え?』

『止まって、る?』

『どうし、プラントが破壊されたから?』

 

停止していたのはわずかな時間、すぐに奴らは動き出した。

外に向かって。

 

『撤退する!?』

『戦略的価値を失った、てこと?』

『移動震源、進路変更!遠ざかっていきます』

『助かった、のか?』

 

気を抜いたのもつかの間、中佐から指示が飛ぶ。

 

『機体、弾薬に余裕のあるものは追撃に加われ。ここで一匹でも多く倒しておくんだ、指揮は私がとる。ベルンハルト少佐、損傷、消耗した機体を連れて脱出を。シュヴァルツ8、貴官もだ』

 

「いえ、俺たちはまだ」

『あんな無茶をして、いくらタイプSといえど何の問題もないとは思えん。下がって精密チェックを受けろ。これは命令だ』

「…了解、しました」

 

『諸君。作戦目標は達成できたが、もうひと働きお願いする。勝利を確実なものとするため、今少し力を貸してくれ』

『『『了解!』』』

 

-----------------------------

 

その後、俺たちは無事に脱出に成功した。

地上でもBETAの撤退は起こっていたらしく、欧州連合と国連軍、そして後詰めとして控えていた米軍がこれを追撃。撤退を優先していたためろくな反撃もなく、相当数の討伐に成功したらしい。

 

世界初の、ハイヴ攻略成功。

 

基地は連日お祭り騒ぎで、突入したメンバーは誰もが英雄扱いだ。

PXに行けばもみくちゃにされ、酒を飲まされ、話をせがまれる。

当分こんな感じになりそうだ。

 

そんな中、俺はというと。

 

「あの、リィズさん?」

「なぁに、お兄ちゃん

 

 

 

なんで俺は、裸でベッドに縛り付けられているんでしょうか?

 

 

 

確か、部屋にやってきたリィズにコーヒーをもらって、そこから記憶が曖昧なんだが。

 

「それはもちろん、これから子作りするからだよ?」

「子作り!?」

 

急になんで!俺の心を射止めるまではお預けじゃなかったのか!?

 

「お兄ちゃんが悪いんだよ?

いつもいつもいつもいつも無茶ばっかりして、やめてって言ってもちっとも聞いてくれない。

今回だって、一歩間違えば自分がぺしゃんこになるような、危険な方法だったってオットー中尉が言ってたよ?

だからね、私考えたんだ。

 

 

 

マモルモノガタクサンアレバ、オニイチャンモカンタンニハムチャシテシネナクナルヨネ?

 

 

 

だから、子作りしよ?答えは聞かないけど」

 

光のない濁った眼で迫るリィズを、俺は必死に説得する。

 

「待て、待ってくれリィズ、お前は今冷静じゃない、一度落ち着いて話を」

「当たり前じゃん、私はまだ壊れたままなんだよ?」

「お、俺たちは兄妹だ、こんなこと」

「義理の、だよ。血の問題なんてないよ」

「お、俺はアイリスディーナのことが」

「大丈夫、知ってるよ。一番手は私にくれるって」

 

は?一番手?

 

リィズと噛みあってるようで嚙み合ってない問答を繰り返していたら、部屋の扉を開けて誰かが入ってきた。

 

「何をやっている、ホーエンシュタイン」

「アイリスディーナ、助かった!リィズを何とかして……」

 

あの、アイリスディーナ、さん?

なんであなたも裸なんですか?

 

「早く済ませてくれなければ、私の番が回ってこないではないか」

「ごめんなさい。でも、お兄ちゃんがなかなか頷いてくれなくて」

「何を抵抗している、テオドール。天井のシミを数えている間に終わることだろう?」

「頼むからツッコませろ!?どういうことだ!」

「どういうも何も、ホーエンシュタインが話した通りだ。お前は自分の命を軽視しがちだからな、矯正するためにはこれが一番早いと皆で話し合った結果だ」

 

みんな、だと?

 

「お、お邪魔しまーす…」

「な、なんだ、まだ始まっていないのか」

「うわ、男の人のあれってあんな形なんだ…」

「あらあら、意外といいもの持ってるのねテオドール君は」

 

アネットにグレーテル、イングヒルトにファム中尉まで!?

 

「安心しろ、もうすぐヴァルトハイムも着く」

「何を安心しろと!?というか不味いだろ!こんな大勢と関係持って、挙句子作りだなんて!世間がなんていうか」

「問題ない。お前が全員娶ればいい」

 

意味が分からない。

 

「お前はハイヴ攻略の立役者だからな。優秀な人材の血筋はたくさん残すべきだ、といったら偉い連中も了承してくれたよ。なに、全員お前のことを憎からず思っているからこそのこの措置だ。男冥利に尽きるだろう?」

 

外堀が、すでに埋められている。

 

「アッシュに相談したら諦め顔で精力剤を用意してくれた。伝言で”だから言ったろ”と伝えてくれと言われたがな。全ての問題はクリアされている」

 

クリアされていない、大問題だ。

 

「というか、お前が飲んだコーヒーにはすでに一服盛っていたからな。既に体が熱くて仕方ないんじゃないか?早く出し切らないと理性がちぎれ飛んでサルになるらしいぞ?」

 

逃げ道が、もうない。

 

「というわけだ。ホーエンシュタイン、始めろ」

「大丈夫だよ、お兄ちゃん」

 

 

 

天国に、連れてってあげる♥

 

 

ソノアトノコトハ、ヨクオボエテイナイ……

 

 

 





出所
「武家御用達の代物、ということしか知らんからな。用法容量は守れよ」
「了解した」コーヒーに薬ザバー

特オタ疑惑
「しかし気合の入った声で蹴っていたが、なんであんなに叫んだんだ?」
「前に試した時叫ばなかったら不発になったんだよ。アッシュに聞いたら”文句はモーション登録した奴に言え”だとさ」

「ふえっくしっ!!」
「北村少佐、風邪ですか?」
「むう、体調管理は万全のつもりなんだが。…よし、次はこれを再現してみるか」


見せ場とタイミングを計ってたらずいぶんと遠いところまで来てしまった……
でも出したからいいよね!




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