MUV-LUV大戦   作:土井中32

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私は帰ってきた!!(遅くなりました)
今回は閲覧数20万記念の閑話からです。時系列的にも話の繋がり的にもこの方が読みやすいと思うので。



閑話五 火力万歳

 

「A-10の改修?」

 

その話が持ち込まれたのは、ミンスクハイヴ攻略後だった。

 

A-10 サンダーボルトⅡ

 

戦術歩行攻撃機、要するに機動力よりも攻撃力を優先した空飛ぶ砲台みたいな機体だ。

両肩に搭載されたGAU-8、アベンジャー36ミリガトリングモーターキャノンは本機に破格の攻撃能力を与えたが、反面機動性に難があり、特に最近はパッチアーマーやゲシュペンストの登場で高速化する戦場に追随できずもっぱら拠点防衛に回されるようになっていた。

 

「旧式化しつつある機体を延命するために、ということでね」

フェイアチルド(製造元)に頼むのが筋じゃない?なんでこっち(帝国)に?」

 

俺の疑問に、この話を持ち込んできた巌谷少佐は苦笑いで答えた。

 

「断られたそうだ。それどころじゃないとね」

「…あー、なるほど。俺のせいか」

 

ゲシュペンストショック、あるいはゴーストショック。

 

突然現れたゲシュペンスト(オーパーツ)によってもたらされた、戦術機メーカーへの大影響をそう呼ぶようになった。

余りにも現在の技術水準からかけ離れたその機体をほぼすべての国が求め、結果として各国の戦術機メーカーは突然追い詰められる羽目になった。

何せゲシュペンストと同等か多少劣る程度の機体でなければ自国の軍すら買ってくれないのだ。

ならばコストパフォーマンスに優れた安い機体を、と考える会社もいたが、今度は旧式化しつつあったF-4がその座に収まってしまった。パッチアーマーの利権は欧州連合の物なので他の国が使うためには輸入かライセンス生産するしかなく、それで得られる技術は大電力が必要なアークスラスターのみ。そして本体であるF-4は特に改造の必要性もないため、技術的には旨味はほぼない。しかもどこのメーカーも生産するものだから中古含めて値崩れが起きている始末だ。

ゲシュペンストのライセンス生産による技術習得を急ぐ会社も多いが、オーバーテクノロジー過ぎるのと重要部分がブラックボックス化されているのもあってなかなかものにできず、出来たときには最早新型を開発する体力すら残っていない可能性すらあった。

 

にっちもさっちも行かなくなってしまった彼らの行く先は二つに一つ。

 

諦めて戦術機業界から撤退するか。

 

意地でもゲシュペンストを超える機体を作り出すか、である。

 

前者を選ぶ会社もそれなりにいたが、後者を選ぶ会社もまた多かった。

特にアメリカの戦術機メーカーはほぼすべてが後者を選んだ。

日本帝国からブラックボックスのないゲシュペンストが提供されていたからだ。

リバースエンジニアリングにより得た技術で絶対にゲシュペンストを超える戦術機を開発するのだと、今彼らは燃え上がっていた。

合言葉はゲシュペンストぶっ殺す(ゴーストハント)である。

 

「ゲシュペンストと同等の第三世代機開発が急務で、既に見限った機体に見向きしてる場合じゃないか」

 

言ってしまえば第一世代機を極端に突き詰めたようなものだからな。技術的な発展先があるかと問われればない。

 

「欧州のメーカーは戦力回復のため戦術機の増産で手一杯らしくてね。他に手を出す暇はないそうだ」

 

で、後方国家で技術力があって、縁もあるうちにお鉢が回ってきたと。

 

「試作品のテストで骨を折ったのだから、少しはこっちのお願いも聞いてくれ、と言われるとね」

「向こうにもちゃんと旨味あっただろうに。好評だった装備はそのまま量産されて連中も使ってんだろ?」

 

そもそも、なんで今更A-10を?

 

「こちらの予想以上に戦力の回復に手間取っているようでね。使えるものは親でも使え、ということらしい」

「戦術機の急激な高機動化で足並み揃えられなくなって、半ば固定砲台化してた機体すら最前線に出さなきゃならないほどに、か」

「スコープドッグの登場で必要性が薄れつつあるのも理由の一つだね。何とか復権させたい連中がいるらしい」

 

主目標が被っているのは確かだが、だからと言ってスコープドッグでA-10の代わりが務まる、という話でもないはずなんだが。

 

「パッチアーマーのように既にある機体に極力手を入れないで性能向上させてほしいらしい。設計さえしてくれれば後の面倒事は自分たちでやるそうだ」

「ついでに新技術も得られれば万々歳、てか?」

「そういう下心も多少はあるだろうね。まあその辺のさじ加減はこちらに一任するそうだ」

 

既に改修試験用にと実機が技術廠に届いていて、開発費も向こう持ちで話がついてしまっているとか。

基本的には技術廠で対応する予定だったらしいんだが、向こうからの要望があって。

 

「出来れば君にやってほしい、ということでね。一応の確認に来たわけさ」

「そんな暇ないの少佐も知ってるでしょ」

 

日々の実験・技術開発あるいは再現・建造中のシロガネのチェック・TC-OSの改良・行き詰った連中へのアドバイス等々。

しかも今は徹夜もできないのでいくつか滞り始めてるものもあるぐらいだ。

この上で改良案の設計まで手を出すのは…

 

お困りのようですな!!

 

困り顔をしていたら、うちに詰めているマッドの一人が割り込んできた。

特に頭のねじが多めに抜けている奴の一人だ。

 

「私にいい考えがあります!!」

 

どうしよう。聞く前から不安になってきた。

 

「博士の代わりに我々が設計すればいいのです!!」

 

アカン。失敗する未来しか見えん。

 

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「ということで、オーダーはA-10の改修です」

 

集められたマッドどもの目はらんらんと輝いている。

 

「稲郷博士は多忙で直接設計をしてる暇がありません。そ・こ・で!我々が代わりに設計し、それを博士がブラッシュアップすることで博士の手間を省こう、というのが今回の目的です!」

 

一から考えるよりはたたき台があった方が早い、ということだ。

まあ手間が省けるなら、ということで九郎は許可を出した。

…出さなくても勝手にやるだろうな、と諦めたともいうが。

 

「出来がよければそのまま採用する、と博士はおっしゃりました。皆さんこれはチャンスですよ!!」

 

マッドたちの顔がさらに凶悪になる。

今まで背中を追うのが精一杯だった相手に、自分たちの力を認めさせられるチャンスとなれば気合も入るだろう。

 

「開発費はなんと向こう持ち。博士からも好きにやれと言質ももらっています。皆さん、好きにやりましょう!!」

 

気合の入った返事が響き渡った。

…なお、言質がなくても好きにやったであろうことは想像に難くない。

 

そして(当然のように)魔改造が始まった。

 

「GAU-8はどうする?残すのか?」

「試作品のビームガトリングがあっただろう。あれに乗せ換えよう」

「肩は大容量バッテリーに交換だな」

 

「背中が何にもないのがもったいないんだよなぁ。何か付けない?」

「兵装担架付けられないから固定兵装だな。倉庫にビームキャノン転がってなかったか?試しに付けてみよう」

「せっかくだから腕にハードポイントつけよう。ゲシュペンストの三連機関砲付けれるぞ」

 

「上半身ばっかり物増えてアンバランスだよな。足にロケットランチャーつけようぜ」

「重量増加が著しいな。上半身と下半身のバランスとるために足にホバーでもつけるか」

 

「バッテリーじゃ絶対動かないぞこいつ。核融合炉に乗せ換えよう」

「ああああああああ!配線見直しだああああぁ!?」

「融合炉乗せるんだったらアークスラスター生やそう。これで機動力確保だ」

 

「もう旧OSじゃ無理ですね。マザーボードごとTC-OSに変えますか」

「F-4の奴が流用できるんじゃないか?どっちも重量級だし」

「機体特性全然違うだろうが。ちゃんとエラーチェックしろよ」

「ついでにマルチロックオン乗っけようぜ!フルバーストとか絶対気持ちいいって!!」

 

「爆圧スパイクどうする?必要っちゃ必要だけど弾数制だから使用回数に限界あるぞ」

「博士の試作品に衝撃波発生装置なかったか?あれに変えよう」

 

「光線級対策どうする?対レーザー蒸散塗膜でもいいけどつまんないよなぁ」

「閃いた!蒸散塗料充填した中空装甲貼っ付けよう!対レーザー用のリアクティブアーマーだ!」

 

「足にだったらサブアーム仕込めるんじゃないか?突撃砲の弾倉交換用にマガジンラックと一緒に付けようぜ」

「どうせだから手持ち火器は例の電磁投射突撃砲にしよう。マガジンは共用なんだから問題ない」

 

「「「ああああ楽しくなってきたあああぁぁァァ!!」」」

 

そうして出来上がったマッドたちの血と汗と涙の結晶は、間違いなく原形機から大幅な性能向上を果たしていた。

マッドたちは自信満々で九郎に設計書を提出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

原形ほとんど留めてねぇじゃねぇか。却下

 

 

 

 

 

 

マッドたちはめのまえがまっくらになった!

 

まあ、フレームが辛うじて残っているだけで、後はほぼ新規設計ともなれば却下されて当然である。これなら新造したほうが早いし安い。

生産ラインほぼ作り直しになるが。

新型機を作るならこれでもいいが、向こうが求めているのは既にある機体を極力改造せずに性能を向上させることである。これではだめなのだ。

 

「まあこれでもたたき台にはなるか。肩のアベンジャーは残して、背中のビームキャノンは大出力アークスラスターと兼用、手持ち火器は電磁投射突撃砲、マガジンラックとサブアームも何とか付けられるか?追加のバッテリーはビームキャノンと一体化しちまった方が早いな。爆圧スパイクは…低出力のプラズマカッターを各部に仕込むか?あ、この対レーザー用リアクティブアーマーのアイデアはいいな、技術廠に実験頼んどくか」

 

見る間にマッドたちが提出した設計書に赤ペンが入れられていく。

タブレットに表示されていた機体図案がどんどんと変えられていき、終わった時にはマッドたちが提出した物より原形に近く、すっきりした印象があった。

 

「こいつを技術廠に投げといてくれ。それとマッドども」

 

びくり、と彼らは震える。今更ながらに暴走しすぎたことを自覚したのだ。

 

「事前に伝えたにもかかわらず、コンセプトから外れ過ぎたものを提出した罰として…一週間、開発禁止

 

マッドたちはくずれおちた!

 

そのうち復活するので放っておいて、九郎は次の仕事にかかる。

仕事はいくらでもあるのだ。

 

 

 

 

 

 

A-10J2 轟天”ごうてん”

 

帝国によって改修されたA-10の近代化改修型。

ゲシュペンストに使われている各種技術を使った既存兵器の性能向上計画「再光計画」の一環で開発された。

もとは欧州連合から依頼されたもので、設計と試作機の完成後はヨーロッパに送られ、そちらで試験と評価、量産が行われた。

あくまでもパーツの追加のみで極力本体をいじらないことで短期間での開発と量産を実現させている。

背中にはビームキャノン×2と大出力アークスラスター、そして大容量バッテリーが一体化した「ブースターキャノン」を追加。

省スペース化と構造の単純化のためスラスターとキャノンのエネルギーは同じバッテリーから供給されている。どちらかを使用すれば両方の使用限界に影響するデメリットがあるが、その分構造が単純化されて故障の頻度は低い。

両足にはマガジンラックと一体化したサブアームが追加され、手持ち火器への給弾が可能となった。

両足には戦闘ヘリから流用したロケットランチャーを搭載。面制圧力を強化している。

機体各所には爆圧スパイクの代わりに低出力のプラズマカッターが追加された。戦車級に取り付かれた場合はこれで焼き切る。

胸部中央、コックピット前面には”ALRA”が装着され、光線級に対するサバイバビリティが向上している。

 

総合的な性能向上を果たし、欧州で運用されていた機体はすべてこれに改修され最前線でその火力を存分に発揮した。

 

名称の由来は”天に響くほどの轟音”。

 

 

 

 

 

A-10JX 惨鉄”ざんてつ”

 

マッドどもによって好き勝手に改造されたA-10の成れの果て。

九郎に却下された後諦めきれなかった連中が技術廠にモスボール保管されていた機体を無許可で改造。一機だけ実機が(勝手に)製造された。

…なお、やらかした連中はこっぴどく怒られた後、一か月間業務以外での機械への接触を禁止された。

 

両肩のGAU-8アベンジャーは試作品のビームガトリングに変更。

それに合わせて弾倉も大容量バッテリーに変更されている。

背中には轟天と同じブースターキャノンを搭載。ただし後述の主動力の影響でキャノン・スラスター共にこちらの方が出力は高い。

両腕にはゲシュペンストのオプションである三連機関砲を装備。

両足にロケットランチャーが装備されているのも轟天と同じだが、片足にそれぞれ一基な轟天と違いこちらは片足につき2基装備している。加えてホバーが組み込まれている。

マガジンラックとサブアームに違いはないが、戦車級対策として爆圧スパイクの代わりに機体周囲に衝撃波を発生させる「ショックバスター」が搭載されている。

轟天と同じく”ALRA”を装着しているが、出力の余裕から装着個所は轟天よりも多い。

主動力が核融合炉に変更されるなど、もはや原形を留めているのはフレームぐらいの物である。

原形機とは別次元の火力を発揮し、その火力投射能力は戦艦にすら匹敵するとされたが、余りにも独自規格部品が多すぎるために改修というより新造機同然、そして製造・ランニングコストがひどすぎるということで試作機しか作られなかった。

 

名称の由来は”無惨な鉄くず”である。

 

 

 

 

 

ALRA(アンチレーザーリアクティブアーマー)

 

研究所に詰めるマッドの閃きによって開発された対光学兵器用の爆発反応装甲。

中空装甲(スペースドアーマー)内の空洞部分に本来装甲表面に塗る対レーザー蒸散塗膜用の塗料を充填しただけの物である。

レーザーを受けた際に蒸散塗料が一気に気化し貫かれて開けられた穴から噴出、本来の役割を果たす。

薄く広く塗る蒸散塗膜と違いピンポイントで蒸散塗膜を厚く塗ったのと同じ効果を得られるため、一発だけ光線級の攻撃を無傷で受け切ることが可能。

その単純な構造(要は塗料を密封できる容器を張り付けられればいい)から最前線で大量に作られ、ビームコートやABフィールドの搭載が難しい第一、第二世代戦術機や旧式の戦車、スコープドッグ等の対光線級防御兵装として瞬く間に普及した。

前線での通称は”日焼け止め””サングラス””光らないお守り”など。

 

 

 





背中に追加されたブースターキャノンのビームキャノンはシュッツバルトのツインビームカノンです。
ただし取り付け位置は頭よりも高い位置になっています。
これは基本地上目標であるBETAに対し、上向きの砲では狙い辛い(実弾砲なら曲射射撃という手があるが、ビームは基本直進しかしないので下方向に射角が取れないとかなり遠くの目標しか攻撃できない)ためです。
シュッツバルトが製造されなかった理由の一つであり、わざわざ一機丸ごと製造するぐらいならゲシュペンストにキャノン背負わせて試験したほうが早い、とオリ主は考えました。
結果として上記の問題点が見つかり、まず汎用機の完成が先、ということでゲシュペンストの完成が急がれ、お蔵入りとなったキャノンだけが倉庫に転がっていました。
ガンキャノンとかのように四つん這いで接地するぐらいなら戦車にビーム砲載っけたほうが諸々の点でメリットがありますし。

半公式でA-10Jが存在するので型番をJ2に。
欧州連合でも改修計画を受けてくれたことへの感謝の気持ちとしてこの型番で通されています。

ALRAは構造が単純すぎたために粗製乱造が起きた模様。
極端な話充填した塗料の量さえ十分で機体に張り付けられるなら入れ物の材質・形状は問わないため、規格通りに作られた正規品から廃材を利用して作られた急造品まで統一性はほとんどなく。
同じ部隊・同一の機体に乗っているのに見た目が随分違うこともあったとか。
…せっかくだからとデザインにこだわった一品も存在するらしい…

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