MUV-LUV大戦   作:土井中32

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ようやくお目見えです。長かった…!




41話 希望/絶望を運ぶもの

 

「ドック内作業員退避完了」

「係留ケーブル、排除を確認」

「艦内チェック、問題ありません」

「動力炉は順調に圧力増加中、起動レベルまであと3分」

「テスラドライブにも問題なし、いつでも稼働できる。水無瀬中佐、いや艦長。発進準備はほぼ完了だ」

 

シロガネのブリッジ。

艦長席にドンと構える中佐に報告する。

 

「16大隊の積み込みは」

『固定完了。ありったけの武器と弾薬もです』

『現場での部隊指揮はわしがとる。全体指揮は頼むぞ、中佐』

「よろしくお願いします、紅蓮大将」

 

トレーラー使うかと思ったら機体一つで飛んできやがったからな。確かにそっちのほうが早いが。

 

斯衛軍第16大隊。

原作においても斯衛最精鋭で有名だが、この世界においては世界最強クラスと言っても過言ではない大隊だ。

何せ、全機がゲシュペンスト・タイプSで構成されているのだ。

こいつらだけで米軍全てとガチンコできるかもしれない化け物集団だ。そしてカシュガルハイヴ攻略の大本命でもある。

正直、突入・帰還方法の確立が済んでいればどんな手を使ってでも、一秒でも早く彼らをカシュガルに送り込んでいただろう。

とりあえず今は帝国を守ることに注力してもらうが。

指揮を執るのは”斯衛の赤鬼”の異名を持つ紅蓮大将。現場では大いに暴れてくれるだろう。

 

「例の機体は?」

「積み込み完了してる。個人的にはいきなり本番とか二度とごめんだったんだけど」

 

叔父さんの機体も積み込んだ。あれはまだ継戦時間に問題あるからな。戦線が研究所に近づくかシロガネ出撃まで出せないって言って説得したのに、結局こうなっちまった。

 

「補修用のパーツも載せられるだけ載せた。後はこいつが予定通り飛べるかどうかだな」

「博士、今になって弱気なことを言わないでください」

 

小野寺大尉がこっちに言ってくるが、知ったことか。

 

「テストもなしにぶっつけ本番で飛ばしたうえ、戦闘までやろうってんだぞ?絶対にどっかで不具合が出るに決まってる。戦いながら直すのに比べりゃ飛べないなんてまだ優しいほうだ」

「それを何とかするためにここにいるのでしょう、博士?」

「死んでなけりゃ何とかするさ。…動力炉内圧力、規定値に到達。艦長?」

「機関始動」

「機関始動!!」

 

テスラドライブにエネルギーが注がれる。

わずかな振動を経て、高度計がゆっくりと動き出す。

 

「テスラドライブ、順調に稼働中。予定高度よりプラス10メートルで安定」

「ハッチを開放せよ」

「ハッチ開放」

 

シロガネの前方。発進口が開く。

 

「メインエンジン始動。シロガネ、発進!」

「シロガネ、発進!」

 

後方に備えられたメインノズルから、光が放たれる。

銀の箱舟が今、戦場へと飛び立つ。

 

-----------------------------

 

山口県沖、本土と九州をつなぐ関門橋の近く。

戦艦紀伊の艦橋にて、小沢大佐はかろうじて集められた艦隊の指揮系統の確立を急いでいた。

本来なら連合艦隊に合流する予定だったのだが、衝撃砲事件でドック入りしていたため艦隊訓練に間に合わず、予備戦力として日本海側で待機していたのだ。

そこにこの急報。急いで周辺の艦をまとめたが、ほとんどは旧式の駆逐艦ばかり。

本土側の部隊も水際迎撃のため展開しているが、ほとんどは二線級の部隊だ。

 

(戦力の集中が裏目に出たか…!)

 

最大の激戦区に戦力を集中するのは戦略的に正しい。

しかしその結果、敵の別働隊に後方を脅かされようとしている。

九州方面の要塞化を急いだために、本土側にはそういったものはほぼない。遮るもののない平地戦になる。

頼りにできる戦力は少なく、どれほどの敵が迫っているかも判然としない。

小沢大佐の顔を、冷や汗が流れた。

 

「艦長、司令部より打電です!」

「なんだ、敵が来たのか!?」

「いえ、”援軍が向かう”とのことです!」

「何だと!?」

 

この状況でまだ動かせる戦力など、帝都を守る守備隊ぐらいしかいない。

帝都の防衛戦力を空にするなど信じられなかったが、それの移動とて時間がかかる。

敵の第一波には間に合わないだろう。何とか今ある戦力で押しとどめねば、そう思っていたところに。

 

「海底に敷設したセンサーに感アリ!BETAが来ます!」

「ちイッ!総員戦闘配置!これ以上奴らの狼藉を許すな、なんとしてもここで止めるぞ!」

 

上陸を始めたBETAに鉛の雨を降らせる。

数少ないベテラン衛士たちが最前衛となり押し留めているが、砲兵も少なく、海上戦力で当てにできるのは紀伊のみ。

面制圧力が足りず数の差に押され、徐々に前線が下がり始める。

 

「砲が壊れても構わん!撃ちまくれ!」

『クソ、クソ、クソ、これ以上行かせてなるかよ!』

『来るな、来るなっつってんだよ!家族がまだ避難できてないんだ、お前らなんかにくれてたまるかぁ!!』

 

必死に防戦する守備隊が、徐々に欠けてゆく。

 

あるものは光線級の集中照射に焼かれ。

あるものは戦車級に集られ。

あるものは要撃級の滅多打ちで、ボコボコに凹みながらも手に持ったプラズマカッターで刺し違え。

 

一機当たりのキルレシオは比べるまでもないが、それを数の暴力で無理やり押し流される。

戦闘開始から一時間、既に補給線ギリギリのところまで押し込まれていた。

 

(ダメなのか?我々はBETAに勝てないというのか!?)

 

白くなるほどきつく引き結んだ口と鉄面皮の下で、小沢大佐は絶望に飲まれそうになる。

それでも必死に自分を鼓舞し、指示を出そうとした時。

 

「レーダーに感アリ、識別、味方です!」

「レーダー?…空路だと!?馬鹿な、撃ち落とされるぞ!」

 

光線級がいる場所で、飛行するなど自殺に等しい。

すぐに通信をつなぎやめさせようとしたところで。

 

光が、本土に向けて伸びる。

 

「光線級の迎撃か!?被害は!」

「か、確認しま」

「高エネルギー反応探知!本土側からです!?」

 

直後、降ってきたそれがBETAを吹き飛ばした。

 

「刮目せよッ!!そして聞けッ!!」

 

土煙の中で降ってきたそれが立ち上がり、外部音声で戦場に名乗りを轟かせる。

 

「我が名はゼンガーゾンボルト!!悪を断つ剣なりィッ!!」

 

最初に見えたのは、怒りに満ちた顔。

歯を食いしばった鬼が、自らの故郷を荒らさんとする化け物たちを睨みつけていた。

新型の戦術機かと思ったが、それが間違いだとすぐに気づく。

 

ひたすらに、でかい。

間違いなく一般的な戦術機の、3倍近くはある。

あれを”戦術歩行戦闘機”とはとても思えなかった。

その巨大な鬼は、これまた自分に比肩しうるほどの巨大な刀を蜻蛉に構え、BETAの真っ只中へ突っ込んでゆく。

 

「チェェストォォォォォッ!!」

 

振り下ろされた刀はいかほどの膂力かはたまた乗り手の業か、剣先から巨大な衝撃波を発生させBETAをまとめて木っ端みじんに吹き飛ばしていく。

 

余りの光景に思わず見入っていたが、すぐに自らの職務を思い出す。

 

「惚けるな!総員己の職務を思い出せ!あの大鬼が時間を稼いでいる間に立て直すんだ!」

「続けて高エネルギー探知、戦域に突入してきます!」

 

今度は複数の、あの鬼よりは小さいが力強く発光する物体がBETAに降り注いだ。

次々と着弾するそれは、平地に広がったBETA達を種別関係なく消し飛ばしてゆく。

本土側から飛んでくるそれに、小沢提督以下紀伊の人間は見覚えがあった。

 

「援軍より通信!”我シロガネ、これより本土防衛戦に合流す”です!」

 

それは、白亜の巨艦だった。

紀伊をはるかに上回る、どころか倍以上の巨体。

それが、”空を飛びながら”向かってきている。

艦体に備え付けられた衝撃砲から次々とエネルギーを解き放ち、帝国を食い荒らそうとする化け物どもを吹き飛ばしていく。

時折光線級からのレーザーを食らっているが、透明な障壁で受け止め、それを抜かれてもなぜか傷一つついていない。

ある程度吹き飛ばせば、艦体から次々とゲシュペンストが出撃して戦域に突っ込んでいく。

色からして、斯衛の部隊に間違いなかった。

 

「あれが、衝撃砲の本来の持ち主か!」

「シロガネと通信確立しました!」

『小沢大佐、遅くなって申し訳ない』

 

通信装置から水無瀬中佐の声が響く。

 

「水無瀬中佐、よく来てくれた!しかし、シロガネはまだ未完成と聞いていたが」

『この危機的状況において、おとなしく完成を待ってはおれまいよ。足りない面制圧力は本艦が補う。戦線の穴埋めは斯衛16大隊とあの大型機、グルンガスト零式で何とかする。そちらは守備隊からの要請に集中されたし』

「了解した!」

 

今もBETAを吹き飛ばす大鬼と白亜の巨艦に勇気づけられる。

そうだ、まだ負けたわけではないのだ、人類は。

 

「戦線を立て直せ!これ以上奴らに何もくれてやるな!」

 

-----------------------------

 

「主砲一番二番、右十度、上下角30度に設定、撃てェ!」

「副砲は各射撃指揮所の任意で射撃せよ、おおよその範囲は指示する」

「右舷第13装甲板にレーザーが直撃、許容範囲内です!」

「被弾など気にするな、撃ちまくって奴らの目を引き付けろ!」

 

シロガネのブリッジは嵐のごとき忙しさだ。

シロガネ自身の情報もそうだが、戦域全体の情報もこちらに飛んできて、それを処理して各守備隊に指示まで飛ばしているのだ。

なんでこうなっているかというと、シロガネのコンセプトが原因だ。

 

建造時、テストのために様々な機能を詰め込めるだけ詰め込んだのがシロガネだが、一応は実戦に出ることを考えてある程度方向性は定めていた。

それが”戦域全体の情報を統括・処理できる動く戦域司令部”、つまりは艦隊旗艦機能の強化型航空戦艦だ。

本来はその打撃力と連隊規模の戦術機を輸送・運用できる能力に加え、動く前線司令部としての役割も持たせた船なのだ。完成していれば。

未完成のまま飛び出したうえ、そのあたりの人員を選定する前だったから飛んでくる情報を今いるブリッジ要員だけでは処理しきれず、本来16大隊専任予定だったCPやダメコンの指揮を執る予定だった俺まで加わって戦域全体の指揮管制を行ってる始末だった。

水無瀬艦長?聖徳太子張りに入ってきた情報聞いて片っ端から指示出しまくってるよ。階級上の小沢大佐とかいるけどあっちは艦隊の指揮で手いっぱいだし。

シロガネの運用はほとんど小野寺大尉に任されてるが、シロガネ自体の性能も合わさって何とか捌けてる。やばそうなときは水無瀬艦長がフォローしてるし。

 

シロガネがまた揺れた。今度は少し大きかったな。

 

「右舷中央付近に重レーザーが直撃しました!」

「問題ない、エネルギーキャパシタにはまだ余裕がある」

 

焦るオペレーターを落ち着かせる。

 

シロガネの防御システムは主に二つだ。

対空機銃がないわけじゃないが、BETA相手には意味がないし取り付け前だったので今はない。

一つはエネルギーフィールド。(以下Eフィールド)

ビームコートと違って実弾にも効果のあるバリアだが、ブレイクフィールド程の強度はない。光線級の攻撃でも10本ぐらい同時に喰らえば抜かれる程度の強度だ。

それでも喰らった攻撃に対する軽減効果はあるので張りっぱなしにしている。

もう一つがビーム吸収システム。

これはスパロボOGに登場する異星人勢力”ゾヴォーク”の兵器に採用されている技術だ。

食らったビームを吸収して機体を修復するというトンデモ技術で、こいつの前では光学兵器はほぼ意味をなさない。

しかし腐ってもEOT、異星人の進んだ技術というべきか、オリジナルそのままの再現はできず、光学エネルギーを吸収してキャパシタに蓄積するのが精いっぱいだった。

それにしたって特機に搭載できるほどのダウンサイジングはできず。こいつと艦載機運用能力強化のため格納庫を大型化した関係で、シロガネはオリジナルが550メートルほどなのに対し、+200メートルも大型化してしまったが。

その甲斐あってシロガネは艦首格納庫とカタパルトモジュールも相まって実に1個連隊を運用できるのだから、苦労の甲斐はあったと思いたい。

ともかくどれだけレーザーを食らおうが、許容範囲内であれば装甲を抜かれることはない。ただし食らい過ぎてキャパシタの許容限界を超えると吸収できなくなって防御力が低下する、というデメリットもあるが。

ちなみにキャパシタにため込んだエネルギーはシロガネの動力として再利用可能だ。

レーザーを食らえば食らうほどこちらの反撃も苛烈になる、というわけだ。

…相変わらず俺の知識は謎だ。この手の技術が地球に提供されたという描写はないはずだが。他にもテラフォーミングに関わる技術なんかもあったし、俺はいったいどこからこの知識を得たんだ?

いや、それを考えるのは後でいい。

 

「エネルギー余りはじめてんぞ、もっと撃ち返せ!」

『やってます!』

「クソ、光線級は引き付けられてるが他が素通りだ、止めきれてない!」

「零式と16大隊は!?」

「守備隊の穴埋めで手いっぱいです!周囲のBETAは薙ぎ払ってますが…!」

 

タイプSは攻勢に強いが、防衛に向いてるとはいいがたい。零式は目立つが、シロガネのほうがもっと目立つから相対的に注目を集められていない。その馬鹿げた性能と乗ってる連中のふざけた腕前でぎりぎり押し留めているが、いつまでもとはいかない。

この戦域で最も高性能な電子機器を積んでいるのがシロガネと零式、次いでタイプSだ。それへの反応がここまで薄いとなると…!

 

「BETAの一部が海底を移動して再び東進を開始!」

「不味い、もう対処できる部隊はいないぞ!?」

『こちら小沢だ、こちらの戦力を向かわせて抑える!』

「無茶言うな、駆逐艦の火力ではそう持たないだろう!」

 

(やるしか、ないのか?)

 

ポケットに入れた遠隔操作のスイッチに触れる。

予想通りなら、これを起動すれば奴らの攻撃はこちらに集中する。

シロガネが危険にさらされるが、これ以上の東進は防げる。

だが、予想が当たっていたら、それは…!

 

『補給線まであと1キロ、もう後がありません!』

「諦めるな、まだ負けたわけではないのだ!」

『腕が引きちぎれても勝てェ!これ以上奪われてたまるかぁ!』

 

…悩んでいる暇はない。

スイッチを、押した。

どうか、予想が当たっていてくれ/外れていてほしい、と願いながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、答えは出る。

予想が大当たりする/外れてくれない、形で。

 

 

「べ、BETAの攻撃がシロガネに集中し始めました!?」

『東進中だった連中も引き返してきます!』

「どうなってる!?さっきまで攻撃に加わってなかった連中までこちらに殺到し始めたぞ!」

 

当たった。

当たってしまった。

やはり、今回の帝国侵攻の原因は…!

 

(思考を止めるな!それは後でいい!)

 

無理やり意識を切り替え、水無瀬艦長に提言する。

 

「水無瀬艦長!攻撃が集中するのは好都合だ、このままシロガネを囮にして引き回そう!」

「よし、鉄哉大尉!」

「了解!操舵手、戦場を移動させる!右舷回頭!」

 

それまでの無視っぷりが嘘のように、BETAがシロガネの後を追う。

引き離し過ぎないよう気を付けながら、シロガネが移動する。

 

 

 

 

 

 

俺の後悔を引き連れて。

 

 

 

 

 

 





遂に登場!グルンガスト零式!!
でも諸々問題があって性能はオリジナルに届きません。持ってる刀もまだ斬艦刀じゃないし。

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