MUV-LUV大戦   作:土井中32

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何やってんのコトブキヤさん?(コラボしてるのを見て)

何やってんのネクストニンジャさん?(やりたい放題なコラボシナリオで爆笑しながら)

ホントに何とかしてくれよネクストニンジャさん…(コラボのすぐ後にまたコラボ)




43話 爪痕

 

日本帝国、50万のBETAからの防衛に成功。

 

世界中にそのニュースが流れ、多くの人々がそれに勇気づけられた。

いまだかつてないBETAの大攻勢、それに人類は勝ったのだ。

祖国を、仲間を、家族を奪われた者たちにとってそれは心の奥底にこびりついた諦観を払うに十分な内容だった。

 

だが、当の帝国が受けたダメージは彼らの想像以上だった。

最終的に20体もの母艦級が出現し、内陸部全てが戦闘区域と化した九州はもはや人の住める場所ではなく。

決戦要塞もかろうじて破られはしなかったものの最大の激戦区となった長崎方面はほとんど廃墟同然、立て直しにどれほどの時と金が必要かまだ試算すら立てられない。

山口県下関なども戦場と化したせいで市街含めて荒れ放題。BETAの死骸を撤去しても、当分人が住むことはできないだろう。

真っ赤に染まった海では漁業も禁止された。BETAの血を吸った魚にどんな影響があるかわからないからだ。

 

何より、戦闘に参加した戦力の6割が戦闘能力を喪失した、というのが一番痛かった。

矢面に立って戦い続けた戦術機部隊など9割が損傷。うち7割はそのままスクラップ行きだと目算が出ている。

ゲシュペンスト乗りは比較的死傷者が少なかったが、機体が無くては戦いようがない。

艦船群も限界を超えて撃ち続けたため軒並み砲身を交換せねばならず、BETAの攻撃によって沈んだ船も少なくない。

人的被害はそれに比べればましだが、それでも斯衛と合わせて3万を超える軍属が祖国防衛のために散った。

ただの3万ではない、前線を張れるきちんと軍事訓練を受けた3万人だ。

現状、帝国軍は壊滅に近い状態だった。

もし次があれば、帝国は今度こそBETAの海に沈むだろう。

 

戦闘に助力してくれた米軍も少なくないダメージを受けた。

主に遊撃を行っていたため帝国軍よりは被害は少ないが、それでも派遣部隊の3割が未帰還となったのだ。

本当なら九州で行方の分からない仲間の捜索を手伝いたいだろうに、今は残存戦力を再編して中国大陸へ向かっている。大陸側の戦線を再構築しなければならないからだ。

消耗した物資は本国や南半球の国から運んでいる。一部は帝国にも回されていた。

 

 

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戦闘が収束して二日。

シロガネはいまだ山口上空に滞空していた。

 

『して稲郷、シロガネはどうなっておる?』

「轟沈ギリギリ一歩手前。浮いてるのが奇跡な状態だな。補修は今も進めさせてるけど、早急にドックに入れて徹底的にばらして修理しないと」

 

シロガネのブリッジ。

水無瀬艦長とともに、帝都で開かれている御前会議に通信で参加している最中だ。

 

『修理するとして、再度戦線に立てるまでどれくらいかかる』

「今回の戦訓の取り入れ、未完成だった部分を完成させる、ばらして修理まで含めると…1年半、かな?作業員はデスマーチでくたばるだろうけど」

『普通に考えて2,3年はかかるということか』

 

通信先にいる偉いさんたちの顔が曇る。

今回の戦闘で帝国軍は大きなダメージを受けた。

既存の事前に防衛線を張ってそこで食い止める、という戦い方は不可能になったと言っていい。

そうすると考えられる防衛の仕方は攻撃的防御、つまり敵へ積極的な攻撃を加えて敵に侵攻する余裕を与えない。

原作で言う間引き作戦をやるしかない。

そしてそれをやるのに戦艦でありながら空を飛び、連隊規模の戦術機を運用できるシロガネはまさに喉から手が出るほど欲しい存在だ。

現場まで足の遅い砲兵部隊を護衛しながら進み、また護衛しながら帰ってくる手間が省けるからな。

…そのシロガネが使えないとなれば、まあ顔も曇るだろう。

 

『…ハガネはどうなっておる?』

 

将軍様はそう聞いてきた。

やっぱそうなるか。

 

「フレームはすでに組み立て終わってる。戦訓取り入れたいから当初の予定より遅れるけど、まあ、一年で完成できるかな」

『…殿下、ハガネとは?』

『シロガネ級2番艦、ハガネのことだ』

 

シロガネ級二番艦、ハガネ。

スパロボOGにも登場する主役艦だ。

プレイヤー部隊の母艦として各地を転戦するいわば帰る家、とでも言おうか。

シロガネと同時並行でフレームだけは組み立てていた。この辺りは変更少ないからな。

シロガネでのデータ収集が終わり次第、こいつと3番艦の建造に取り掛かる予定だったのだ。

 

『シロガネを直すより早いのだな?』

「ドックに空きがないから、シロガネどっかにほっぽり出すことになるけど」

『呉で建造中のドックで修理すればよい。作業はすべて終わっていないそうだが、収容することは可能だ』

「…機密保持もクソもないぞ?」

『今更であろう。それに作れるならいくらでも作ればいいのだ』

 

シロガネの建造費は莫大だ。

端的に言ってこいつ一隻に紀伊型5隻分くらいはかかった。

実験艦ゆえ仕方ないが、最適化する予定のハガネでも3隻分は下るまい。

そんなもん作れる国など限られている。ゆえに考慮する必要などない、ということか。

ちなみに、シロガネ級は最初から3番艦までで終わりの予定である。

万能戦闘母艦とはいえ、やっぱり建造費と維持費がやばかった。

 

『呉の作業員にも実地で学ぶいい機会だ。そなたはシロガネをドックに預けた後、ハガネの建造に注力せよ』

「承知いたしました」

『して、水無瀬中佐』

「は、シロガネをこのような姿にしてしまい申し訳ありません。すべての責任は私が」

『それについてはよい。結果論だがそなたの判断は間違っていなかった。よくぞ本土防衛を成し遂げた。ほめて遣わす』

「もったいないお言葉であります」

『しかし余が追認したとはいえそなたが勝手な真似をしたのも事実。よって水無瀬中佐、ドックへ入港後、シロガネ艦長の任を解く』

 

小野寺大尉の手が握りしめられるが、たぶん杞憂だろう。

 

『そして改めて、シロガネ級2番艦ハガネ艦長の任を与える。人員はシロガネから連れていくなり新たに集めるなり好きにしてよい。こたびのこと失態と思うなら、ハガネの艦長としてそれを挽回して見せよ』

「は!その大任、確かに拝領いたしました!」

 

本来シロガネが行う予定だったデータ収集をハガネで行う。

その際、実際に戦場での運用も経験している水無瀬艦長を更迭するほど今の帝国に余裕はない。

示しはつけなくてはならないが、そればかりにかまっていられない、ということだ。

 

『そして九郎よ、零式はどうなった?』

「長崎で擱座したよ。乗ってた叔父さんは無事だったけど、回収はちょっと手間だな」

 

グルンガスト零式。

スパロボOGにおいて、地球初の特機(スーパーロボット)として建造された機体だ。

量産機では対処できないような特記戦力への対処方法として試作された機体で、そのコンセプトは極めてシンプル。

 

『でかくて重いものを大出力で加速させて叩きつける』

 

重さ×速さ×硬さ=破壊力、を地で行く機体である。

 

一見すると脳筋だが、実際これが通用したのでこれを考えた連邦軍には先見の明があったのだろう。

BETA相手にどこまで使えるか確かめるため、一機だけ試作したのだ。

 

まあ、結果は散々だったけど。

 

何せ全高50メートルを超えるのだ。でかすぎてBETAを盾に使えないから、光線級の攻撃が間違いなく集中する。そして躱せない。

動力源はシロガネ級に使うジェネレーター、タイプSも装備する重力障壁(Gテリトリー)も搭載、装甲だってゲシュペンストの比ではないが、それでも集中する攻撃を長時間防ぎきれるかと言われると微妙だ。

何より面倒なのが戦車級への対処だ。戦術機でも纏わりつかれると面倒なのに、3倍近い大きさの零式では引っぺがすのも難しい。手っ取り早いのが手で叩いてしまうことだが。

 

想像してみてほしい。戦車級を潰すために自分の体を叩きまくる零式の姿を。

…マヌケすぎる。

 

両目から発するアイソリッドレーザー、胸部熱線砲のハイパーブラスター、両脚部側面に内蔵するクラスターミサイル(スプリットミサイルの流用)など火器がないわけではないが、間違いなく敵中で孤立する以上、一匹も寄せ付けないというのは不可能だ。

…一応ブーストナックルも組み込んだが、まず使わないだろう。片腕でも無くせば戦力半減どころではないし。

 

・建造費。

・ワンオフのデメリット。

・高度な専用の整備環境が必要であること。

・何よりTGCジョイントがまだ研究中で関節部の過負荷を解決できておらず、連続稼働時間が100時間にも満たないこと。

 

これらの理由で実戦投入はほぼ無理と結論付けざるを得なかった。

今回は乗り手の技量が隔絶していたこと、シロガネに乗せて現場ギリギリまで持っていったから最後まで動けたのであって、研究所から出撃していたら途中ででかいだけのオブジェになっていたはずだ。

 

ちなみに斬艦刀はまだない。今の関節強度では振り回せないからな。

試作品の特機用シシオウブレードで出撃してもらった。

 

『そちらの回収はこちらでやっておこう。まずは呉に向かい、シロガネを預けよ。その後ゆっくりと休むがよい。これは勅命である』

「ち、そんな暇ないってのに」

『聞こえとるぞ。特にそなたには厳命する。ここまで一週間以上働き詰めで寝てないそうだな?』

 

美沙だな、ばらしたのは…!

 

『やることが多いとはいえ、今そなたに倒れられるほうが困るのだ。休まなければ一条には無理やり休ませるよう言わねばならん。わかるな?』

「はぁ、分かったよ。呉につくまでに改良案まとめてやる…!」

『まったくわかっとらんではないか』

 

ディスプレイに映るお偉いさん方はあきらめ顔だ。

将軍様もやれやれ顔だが、これ以上は言っても無駄と悟ったんだろう。それ以上は何も言ってこなかった。

 

…何も、聞いてこなかったな。

 

 

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「…よろしかったのですか、殿下?」

 

通信が切れた後、武家の一人が将軍に問う。

 

「戦闘中に起きたシロガネへの攻撃集中。あの者が何かやったのは間違いないはずです。問い質さずともよろしかったのですか?」

「…あやつの顔を見て、気づいたものはおるか?」

 

返された問いに、答えられる者は少なかった。

 

「いつもの真っ黒なクマができた顔に見えましたが」

「…クマだけではないな、あれは」

「榊?どういうことだ」

「何か、重大な過ちを犯してしまった、そんな空気を感じました。それが何かまでは分かりませんが」

「榊よ、余も同じものを感じた。ゆえにこの場では問い質さん。あやつが自分から話すのを待つ」

「それは、しかし何かあってからでは」

「今回の帝国侵攻、あやつが帝国に居なければこの程度では済まなかったであろう。もしやすれば余も、そなたらも九段に行っていたかもしれん。

忘れがちだが、あれはまだ成人にも至っていない子供なのだ。それに頼り切りというのは先達として情けなさ過ぎると思わぬか?

たまには我らが支えてもよかろう。これ以上、あの者に重荷を背負われてたまるか」

 

将軍の言葉に、居並ぶ彼らもたたずまいを直す。

 

「そうですな。自分一人で戦ってるつもりのあの馬鹿者に、大人の意地というものを見せてやろうではないですか」

「まったくだ。あやつなどおらずとも星の一つや二つ守れると、われらの手で証明してやろう」

「子供に負けたままでは大人だ武家だと名乗れん。やってやりましょう、皆の衆」

 

それぞれに思うところ、因縁、恨みつらみ、個人的な好悪はあるだろう。

だが、それをあえて飲んで、彼らは共に戦うことを選んでここにいる。

誰よりも前で、誰よりも若く、誰よりも身を削って戦っているものがいるところで、個人の感情のままふるまえるものは少ない。

それ以上に、子供に負けたままなど大人としてのプライドが許さなかった。

 

 

-----------------------------

 

 

帝都、地下研究所。

 

シロガネを呉の専用ドックに預け、俺は一足先にここに戻ってきていた。

 

…今回の原因となった物をもって。

 

「…どう、責任取ったらいいんだろうな」

 

それを前にしながら、思わずそんな言葉が出た。

言わなくても分かり切っていることだ。カシュガルを落とし、BETAを地球からたたき出す。

最低でも火星まで追い返して、防衛圏を作り出す。

以前から考えて、口が酸っぱくなるまで言ってきたことだ。何も変わらない。

…それでも、今回の俺の失態は、重い。

頭では理解していても、感情が邪魔をするのだ。

 

「は、普段から見下していたくせに、しょせん俺も人間か」

 

自分は違うと思っていた。

この世界の連中よりも先が見えているのだから、あんな失敗はしない、と。

だが結果はこれだ。

作り出せたものに有頂天になって、慎重に調べもせずに実験した結果がこれだ…!

一度失敗していながら、俺は何も学べていない……!!

 

 

 

「…クソ。

  クソ、

  クソッ、

  クソッ!

  クソッッ!

  クソッッ!!

 

 

 

どこにぶつけていいかもわからず、ただ目の前にあるそれを殴り続ける。

自分で作ったものだ。殴ればどうなるかぐらいわかってる。

それでも、赤く染まる自分の手を止められなかった。

 

――他人を信じられれば、こいつに関して他の人間の意見を求めていれば!

ちょっと考えればわかったことじゃないか!これだけのトンデモ物質、BETAの興味を引いてもおかしくないことぐらい!!

一人で進めず他の人間も研究に噛ませていれば、別の視点からの意見で気づけたかもしれないのに!!

人類が協力し合えばBETAに勝てるなんて、口先ばっかりで全然信じることができていなかったから!!

どうせ裏切って、憎み合って、一つにまとまることなんかできやしないなんて見下してたから!!

傲慢?勝手に背負うな?うるさい、間違いなくこれは俺の罪だ!!俺の責任だ!!

きちんとこの世界と向き合わなかったツケがこれだ!!

 

「このクソッ――」

「――おやめください、九郎様」

 

どれほどぶん殴っていただろうか。

それでも気が晴れなくて、頭をぶつけようとしたら。

格納庫に機体を戻していた美沙がいつの間にか隣にいて、俺の手をつかんでいた。

いつものごとく無表情で、しかしどこか悲しそうな目に見えるのは錯覚だろうか。

 

「放せ」

「ダメです。まだ殴るつもりなのでしょう?」

 

丸わかりか。当然だな、こいつは俺の心が読めるのだから。

 

「腕の一本ぐらい壊れたって仕事に支障はねぇよ。やること山積みなんだ。まだ死んだりは――」

 

 

 

 

――ソウダ、サイアクノウミソサエノコッテイレバダレモモンクハ――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私が、いやなのです!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

言いかけた言葉が引っ込み、美沙を見てしまう。

…泣いていた。

いまだかつてないほど強い目で、俺を睨みながら。

 

「あなたが、自分を責めている理由は知っています。

世界を変えられるのは自分だけだと思っていることも、知っています。

そう思う原因、あなたが前世で見聞きしたことも、知っています。

それを全部分かっているうえで、あえて言います」

 

今までにない、感情と意思を乗せた瞳から、目を離せなかった。

 

「もっと、頼ってください。

この世界をよくしたいと思っているのは、あなただけではありません。

あなたの背中を見て、今のままじゃだめだと、何とかしようと頑張っている人たちも大勢います。

必死で頑張るあなたを見て心配したり、一緒に頑張りたいと思っている人たちもたくさんいます。

だから、恐れないで。

人と人は分かりあえると、心から信じてください。

信じれば、応えてくれる。今まで会った人はそうだったでしょう?

それでも、他人を信じるのが怖いなら――」

 

美沙が、顔を近づけてきて。

 

「――私の全部を、見て」

 

距離が、ゼロになり。

 

直後、美沙のプロジェクションに飲み込まれた。

 

 

 

 

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