MUV-LUV大戦   作:土井中32

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5話 開発中

 

 

PTXー001 ゲシュペンスト。

 

OG世界において地球初の人型機動兵器として作られた機体だ。

高い汎用性と拡張性を備えた優秀な機体だったのだが、その後より量産性に優れた機体が現れたため、後継機含めて50機も作られなかった悲劇の機体。

しかしその優秀性は並行世界において3000機も作られたという事実が証明している。

 

今回作るにあたって対BETA戦向けにいくらか設計変更を行った。

最大の違いは両腕のハードポイント化である。

原型機においては左腕にプラズマバックラーを装備し、プラズマエネルギーを発する杭を叩きつけるプラズマステークという攻撃か、ビームサーベルと同種の武器プラズマカッターをマウントできたが、これを外して選択武装とした。

BETA戦においては一匹ずつ殴り殺していては物量に潰されるし、片腕前腕部に近接武装全部集約するというのは腕を破損して片腕になった時危険極まりない。

なのでプラズマカッターは前腕部の内側、袖の手の平側に内蔵し、必要時に飛び出して手に収まる形にした。

緊急時にはそのまま使用もできるうえ両腕に装備したから片腕でも最低限の近接戦闘は可能だ。

 

次に両腕のハードポイントに装備する兵装としてクローバックラーを開発した。

見た目はプラズマバックラーからプラズマステークないしカッターを外しただけ、といった感じだが、ステークが収まっていた場所からプラズマカッターを展開。

光の三本爪が展開されるという武装だ。

BETA戦では常に一対多数の戦いを強いられるため、殺傷範囲を少しでも広げるため三本爪とした形だ。

 

これとは別に3連機関砲も開発した。

使用する弾薬は突撃砲と同じ36ミリ弾で、マガジンもそのまま流用できるよう設計している。

手にライフルやプラズマカッターを持ったまま弾幕を展開できる、というのは大きな助けとなるはずだ。

 

次に背中のウエポンラック。

原型機では拡散型ミサイルであるスプリットミサイルを装備していたが設計変更。

戦術機に合わせた各種兵装を装備・そのまま使用できる万能型兵装担架とした。

スプリットミサイルも使えるが、継戦能力的に怪しいのでそこは衛士たちに判断してもらう。

 

大きな違いはこんなところだろう。

完成した機体は現在、開さんが振り回して――

 

『ぬおおおおおぉぉぉ!?』

 

――訂正。振り回されている。

 

今いるのは水鳥島。

別人名義で買った無人島だ。

こっそり整備して秘密の試験場として使っている。

現在は完成したゲシュペンストの実機試験中なのだが。

 

「ふう、とんでもないじゃじゃ馬だな」

 

一通り動かして降りてきた開さんの第一声である。

 

まあ、ある程度は仕方がない。

機体性能が文字通り別次元なのもあるが、何より制御用のOSが未完成なのだ。

 

ゲシュペンスト、というかそれに連なるPT、”パーソナルトルーパー”と呼ばれる機体群には共通してTC-OSというオペレーティングシステムが採用されている。

これは”タクティカル・サイバネティクス・オペレーティング・システム”の略称で、パイロットが行動を選択した際、機体に登録されたモーション・パターンから人工知能(AI)が状況的に最も適切である機動を選んで行うというものだ。

 

これによりPTの操縦はある程度自動化され、パイロットは状況判断に気を割く余裕が生まれるのだが。

そのためにはTC-OSに様々なモーション・パターン・データを覚えさせなくてはならない。

当然出来立てほやほやのこいつにそんなモーションデータなんぞ入っておらず、現在開さんはモーション登録をほぼ一人でやっている、というわけだ。

 

「機体性能に文句はないが、やはりモーション登録の人手が足らん。衛士を増やすべきなんだが」

 

現場の苦労は把握しているのだが。

 

「安易に増やすのはちょっと……。設計図封印の件もあって信用できないです」

 

この手の作業は人海戦術が一番手っ取り早いのだが、こっそりやっているうえ、偉い人間がいまいち信用できない。

難癖付けて全部持って行ったうえ、俺を便利な打ち出の小づちにするんじゃないかという疑念。いや、確信があるのだ。

 

しかしこのままではゲシュペンストの完成が遠のくのも事実。

どうしたものか、と考える俺たちに、声をかける影一つ。

 

「ならば俺にも手伝わせてくれ。戦術機の操縦経験はないが、剣戟戦闘のモーション登録には役に立つはずだ」

 

そこにいたのは銀髪の偉丈夫。

 

「おじさん」

 

ゼンガー・ゾンボルト。

 

じいちゃんの弟子で示現流の達人。そして、俺の叔父さんだ。

俺のお袋の弟さんで、ドイツ人。両親が亡くなった時にはじいちゃんと一緒に駆けつけてくれた人だ。今は俺の専属護衛、みたいな感じだ。

 

「いいのか?戦術機の操縦経験がないというのは問題があると思うが」

 

開さんは渋ったけど、俺はむしろ大歓迎。

 

「いや、どのみち経験のない人間のデータも必要だったし、ゲシュペンストの対Gシステムなら強化服なしでもある程度の戦闘機動は可能だ。衛士適正にかかわる話だからデータが取れるなら取っておきたい」

 

というわけで叔父さんも参加決定。それでも手が足りていないのは変わらないが。

 

「二人で分担すると仮定しても問題がある。俺もゼンガーも接近戦のほうが得意なせいで、いまいち中遠距離戦、特に銃撃戦のデータが取れん。モーションパターンに偏りが出るぞ」

 

それは困る。

いずれゲシュペンストは世界中に配備させる予定なのだ。

各国の戦術・戦略に基づいた仕様変更はゲジュペンストの持つ高い拡張性で何とかなるにしても、システム面に関してまであまり時間をかけたくない。そのためにも今の段階で基礎となるモーション・パターンデータの蓄積はある程度終わらせておきたいのだ。

 

しかしそのためには口が堅くて銃撃戦に強い衛士が必要。

いったいどこから引っ張ってくるのか。

 

難問を解決してくれたのはゼンガーの叔父さんだった。

 

「一人、心当たりがある。軍人で重要なポストについている故手が借りられるかは分からんが、一度聞いてみよう」

 

なんか、遠くで風が巻く音がした気がした。

 

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