MUV-LUV大戦   作:土井中32

53 / 107

日間ランキング10位…!?(12月16日時点)
急にお気に入り登録が伸びて何事かとビックリしてたらランキング最高位更新でもっとビックリ。
皆様ありがとうございます!

連日投稿4発目ェ!!(だといいなぁ)

ご飯食べてる時に見ないでください。警告しましたよ?
ダメだと思った人はバック推奨です。




IF2  人間だけが……

 

 

エルザム・V・ブランシュタインは美食家である。

食べるだけでは飽き足らず自分でも料理をするようになり、その腕前は本職顔負けである。

そして時折その腕を部下のために振るうことがあり、彼の腕前を知る者たちのひそかな楽しみでもあった。

 

某日、食堂にて。

いつもなら受け取った食事を適当に選んだ席で思い思いに食べている者たちが、今日に限って姿勢を正して物音一つ立てず席に座っていた。

理由は至極単純で、すぐにやって来た。

 

「待たせたな。今日の夕食だ」

 

エルザムが腕を振るっていたからだ。

めったに食べられない上手い飯が食えるとなれば、どんな荒くれ者でも姿勢を正すぐらいはするだろう。

そして彼らの前に差し出されたのは。

 

「今日はよい肉が手に入ったのでな。ステーキにしてみた」

 

ジュウジュウと肉汁が焼ける音を響かせる、分厚い肉だった。

においを嗅いだだけで、すでによだれが止まらない。

もはや我慢ならぬと、彼らは今日の飯にかぶりついた。

 

「「「美味ぇ~~~~!!」」」

 

それしか言葉が出てこない。

口の中で弾ける肉汁も。

鼻を殴りつける(かぐわ)しいにおいも。

程よい弾力で、これが合成などではないと強烈に主張する肉の感触も。

 

それらを表現する言葉を、彼らは有していなかった。

ひたすらにそれを貪り続ける。

 

やがて、ソースの一滴すら残らず食べ尽くした一人がエルザムに問うた。

 

「今日も美味かったです、中佐。しかしこれは何の肉なんです?今時天然物の肉なんてとんでもない高級品じゃ?」

「なに、そこらで簡単に手に入るものだ。元手などほとんどかかってはいない」

「…いや、そんな馬鹿な」

 

BETAによってユーラシアの半分が失われた昨今、世界の食糧事情はかなり悪い状況となっていた。

苦肉の策として最低限栄養だけは無理矢理取らせるというそれ以外の一切を無視した合成食料が食卓に並ぶぐらいには。

そんな情勢下において、生産に莫大なコスト、食料、手間暇のかかる食用肉の生産は零落の一途をたどっている。

家畜に食わせる余裕があるなら人間に食わせろ、と言われれば反論できないからだ。

結果として天然物の肉が食べられる国など後方国家でも少なくなってきている。

 

そんな情勢で、元手などほとんどかからず手に入る天然肉とはいったい…?

 

「一体、何の肉なんです?」

「皆もよく知っているものだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「闘士級の鼻だ」

 

「「「ブオッフォッッッッ!!!?」」」

 

一瞬にして、食堂は地獄絵図と化した。

 

「うおおおおおおおええええええぇっぇっぇぇ!!!?」

「馬鹿野郎、ここで吐くな!?便所いけ便所!!」

「ぎゃあああああああああ!?BETA食っちまったあぁぁァァぁぁ!!!!?」

「アッチいぃ!?プレート触っちまった!水、水!?」

「何つーもん食わせんだ中佐ァ!?」

「何をそんなに驚く?食べても問題ないことはすでに調べがついている」

「「「そういう問題じゃないだろう!?」」」

 

まさか不倶戴天の敵を食わせられたとはだれも思わず、食堂の騒ぎはすぐに基地全体へと伝播した。

 

結果、わずか数分でエルザムは拘束され、椅子に縛り付けられて詰問されていた。

 

「まず大前提から行きましょう、中佐。なんでBETAを食おうなんて思ったんです?」

「思いついたのは私ではない、彼だ」

「彼?」

 

666大隊、特に中隊の頃からの古参メンバーの方を向いて、エルザムはこの騒動の張本人の名を告げた。

 

「稲郷博士だよ。君たちにはアッシュと言った方が分かりやすいかな?」

 

「「「ま・た・あ・い・つ・か!!!?」」」

 

-----------------------------

 

 

それは、九郎がパッチアーマーの開発に携わっていたころ。

 

トラックに乗せられて運ばれていくBETAの死骸を見て、彼は唐突にその言葉を放った。

 

「BETAって食えるのかな」

 

その言葉を聞いた大人たちは、すぐに動き出した。

 

「すまない、すぐに医者を呼んでくれ。稲郷博士が壊れた」

「いやきっと寝不足だ。睡眠薬をぶち込むべきだ」

「ホームシックなのかもしれん。やっぱり一刻も早く帝国に戻すべきだ」

「お前ら俺をなんだと思ってんだ」

 

頭に血管を浮き立たせながらも、彼はきちんと理由を説明する。

 

「ぶっ殺した後の死骸の片づけって常に悩みの種だろ?なんかちょうどいい処理方法はないかと思っただけだよ」

 

BETAとは異星生命体だ。今現在の人類の認識では。

当然、駆除した後そのままにしていては感染症の温床となる可能性や、単純に邪魔であるため片づけなくてはならない。

しかし、一か所にまとめた後どうするかについてはずっと前線国家にとって悩みの種だった。

単純に燃やせばいい、というわけにはいかない。まず燃やして大丈夫なのかいまだに判明してないのだ。中途半端な温度で燃やしてダイオキシンのような有害物質を発生されてはたまらない。

それ以前に、最低でも千単位で出る死骸を燃やすのに必要な燃料などいったい何ガロン必要なのか。

戦闘の度にそんなことをしていてはそれだけで国家が破産しかねない。

埋めても大丈夫なのか、海洋投棄は可能か、様々な案が検討されたが上手い方法は見つからず、結局人類の生存圏では専用の埋め立て所に集め、それ以外では野ざらしというのが現状だった。

 

「で、なんか有効活用する方法ないかと考えた時にふと思ったんだ。一応生き物みたいなもんなんだから食うことも可能じゃないのか、って」

 

そこでなぜ”食べる”という発想が出てくるのかエルザムたちにはさっぱりわからない。

 

「考えてみたら構造的な解析はやったけど食えるかどうかで調べたことはなかったな。ちょっとやって」

「ゼンガー」

「うむ」

 

即座に睡眠薬が撃ち込まれ、九郎は強制的に眠らされた。

それで終わったと、誰もが思っていた。

 

数日後。

 

「ああ、中佐。ちょうどよかった、暇なら手ェ貸して」

「む?確かに今は手が空いているが、一体何を」

「BETAの肉。食っても問題なさそうだから、どういう食い方ならうまいのか一緒に味見して考えてほしくて」

「」

 

仕事の合間に調べていたらしい。なんでそんなことに情熱を燃やしてしまっているのか、エルザムにはまったく理解できなかった。

しかし現実逃避している合間にも話は進んでいく。

 

「まずは軽く焼いてみるか」

 

そうして始まる直視したくない光景。

一体どこから調達してきたのか、闘士級の鼻のような部分をそのまま適当に串にぶっ刺して直焼きしようとしている。

料理人として、一人の美食家として、そのような暴挙を見て見ぬふりはできなかった。

 

「貸したまえ。それは私の領分だ」

 

そうして程よく焼けた鼻に、意を決してかぶりつく。

間違っても九郎に先に食わせるわけにはいかなかった。

 

その結果は。

 

「…そこまでひどくはないな」

 

無論、ただ焼いただけなので味はしない。

しかしあふれ出る油や食らいついた時の感触は悪くない。

この程度ならば、調理で十分おいしくできる。

そして食えることが証明されて満足した九郎と違い、エルザムは美食家である。一度食材と認識してしまえば、後は坂を転がり落ちるだけだった。

あっという間にエルザムはBETA肉をおいしく調理する専門家となっていた。

 

 

-----------------------------

 

 

「というわけで他の人間の意見も聞きたくてな。上の許可を取って出したというわけだ」

「根回し済みかよ!?」

「むしろなんで許可出てるんだ…」

「いや、確かにおいしかったけど、美味かったけども!それは超えちゃならん一線でしょう中佐!?」

 

「ちなみにBETA肉を出したのは今日が初めてではない」

「「「」」」

 

呆然とする一同に、何でもないかのようにエルザムは言う。

 

「軍や政府上層部にレポートとして提出、実際に試食もしてもらって認可が出ている。栄養にこそならないが家庭でもおいしく食べる方法の確立も終わっている。

政府上層部では真面目に栄養を添加した合成食料の一種として検討が行われているぞ?」

 

今まで只場所を取るだけだった厄介者を、食料という形で資源にできる。

使い道のないゴミが金になるのだから、まじめに考えもするだろう。しかも慢性的に不足しがちな食料になるのだから。

 

なお、この「エルザムレシピ」は狂気の産物と恐れられながらも国連を通して各国で共有され、人類を食料不足から救う希望として研究が進められている。大急ぎで。

 

「というわけで、これからもBETA肉は食卓に並び続けるだろう」

 

聞かされた軍人たちの顔は千差万別だ。

この世の終わりを見た、といった顔をしている者。

頭を垂れて諦めた者。

とりあえず美味けりゃ何でもいい、とお代りをしようとしている者。

 

しかしやっぱり納得できないといった顔をする者たちに、エルザムはBETA肉のメリットを話す。

 

「先ほど栄養がないといったが、これは別に悪い事ばかりではない。栄養がないということはカロリーもない、ということだ」

 

ピシッと。一部の人間、特に女性陣の動きが止まる。

 

「つまりいくら食べても身にならない、要するに太らないということだな」

「中佐、今すぐお代りを!!」

「アネットォッ!?」

 

腹一杯食べても太らないなど、人類の夢の一つを見せられてはさもありなん。

あっという間に女性陣と一部の健啖家は陥落した。

それでも抵抗しようとする者たちに、エルザムは止めを放つ。

 

「そもそもの話、合成食料をもってしても世界の食糧事情は改善されていない。BETAを駆逐して食糧事情が改善されない限りこの状況は変わらんだろう。諦めたまえ」

 

その言葉に、残りの者たちはがっくりとうなだれた。

 

その後、食事に関して食材が何なのか聞くのはタブーとなり。

一部の兵士によるBETAへの攻撃が過剰になったのは余談である。

 

 





毎回大量に出る死骸をどう処理してるのだろう、とふと思ってしまい。
何か妙な電波を拾ってしまいました。
不評なようなら取り下げたいと思います。
そもそも劣化ウラン弾ぶち込まれてるから食えるはずもないしネ!

今回の更新は以上です!!

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。