あけましておめでとうございます!そして新年一発目ェ!
今年もよろしくお願いします!
「事の始まりは10年ほど前になる」
ハガネ艦内にて。
頭にたんこぶつけた俺が、会議室にいる面々の前で説明する。
水無瀬艦長以下、佐官以上の軍人と全権大使たち、科学者たちの一部が席に座って俺の説明を聞いていた。
「地球奪還が成った後、余計な事始めない内に全人類の目を宇宙開発と月の奪還、火星への逆侵攻にスムーズに繋げたいと当時から考えていたんだが、そのために必要なものがどうしても用意できなくて悩んでた」
「必要なもの?」
「宇宙基地だよ。いちいち地球から何もかも打ち上げて使うのはコスト面でも補給線の面でも問題大ありなのは理解できるだろ?」
特にアメリカの連中が強く頷く。一番苦労してるからな。
「月の奪還を視野に入れた宇宙基地となると、必要な物資も莫大。全部地球から打ち上げて組み立ててとなると、コストも時間もどれだけかかるかわかったもんじゃない。その間に人類同士の内戦が絶対始まるから、途中で頓挫しかねないし」
何人かが目をそらした。納得してしまったらしい。
「どうしたもんかと悩んでいた時、閃いたんだ。”ないならあるところから持ってくればいい”てな」
「あるところからって、いったいどこから」
「あるだろ、でっかい岩が山ほど浮いてる場所が」
宇宙に関わっている連中はすぐに気づいた。
「アステロイドベルトか!いや、だがそれでもどうやって」
「待て、確かあの岩塊の統括コンピューターとやらは自分のことをAIだと」
「まさか…!」
気づいた連中もいるが、一からちゃんと説明する約束だしな。
「アステロイドベルトから小惑星を調達、宇宙基地に改装するにあたって一番問題だったのが、どうやって持ってくるかだ」
人間を行かせるのはナンセンスだ。何年かかるかわからないし、その間生命維持に必要な生活物資も載せなくてはならない。
雪だるま式に宇宙船がでっかくなるのは目に見えていた。精神が持つかの保障もないし。
「だから、人間以外を行かせることにした」
「それでAIを?」
「人間載せるよりは機能維持にかかる物資ははるかに少ないし、ストレスで狂う心配も薄い。小惑星移動させるための推進装置もアステロイドベルトで作ればいい」
そうして作り出したのがAI”かぐや”とそれを乗せたロケットだ。
内部には採掘・精錬用の機械と万能工作機械だけを搭載し、必要なものは随時それらを使って現地で作る、というコンセプトだった。
「衛星打ち上げるときについでに打ち上げたが、行って戻ってくるだけでも軽く5年。道中様々なアクシデントにあうことも考慮すると成功する確率は1割以下、と見積もってた」
アクシデントに対応できるよう、俺の人格からどんな事にもポジティブに対応できるよう楽天家な部分を抽出。形成したペルソナ型人格をベースにシミュレーターで考えられるあらゆる状況を体験させ、随時自己改造をさせた果てに誕生したのがかぐやだ。
それでも帰ってこれる可能性は低かったのだが、あいつは
「絶対に帰ってきます。希望と共に」
と言って旅立ったのだ。
まさか本当に約束を守るとは。
「正直俺も無理だと思って忘れかけてたんだが。思っていたよりも俺の作ったAIは優秀だったらしい」
『当然です。私を作ったのはマスターなのですから』
大型ディスプレイに”SOUND ONLY”で通信が入る。
『マスター、そして地球代表の皆様。お待たせいたしました。”きぼう”内のエア充填と気密確認が終了いたしました。
いつでも皆様を歓迎できます』
「だ、そうだ。じゃあ見に行くか」
俺が言ったのを皮切りに、見学メンバーが席から立ち上がった。
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「十年ぶりです、マスター」
「そのぐらいになるか。よく戻ってきた、とねぎらいたいが。なんだその恰好?」
宙間プラットフォーム”きぼう”の第3宇宙港。
停泊したハガネから降りてきた俺たちを迎えたのは、一人の美少女だった。
「かぐや、だよな?なんでそんな外装なんだ?メイド服とか着てるし」
「おかしい、でしょうか?マスターの性的嗜好に合わせてあるはずなのですが」
そう言いながらその場でクルリ、とターンするかぐや。
腰まで伸びた銀髪、青い瞳。突き出た胸部。小顔で童顔な彼女を包むビクトリアン調なメイド服。
…うん、なんというか、服装と瞳の色以外は美沙そっくりだ。
後ろから生暖かい視線が突き刺さるが無視する。無視ったら無視だ!
「きぼう建造後初めてのお客様ですから、盛大なおもてなしのために用意いたしました。
改めまして、歓迎いたします皆さま。私はこの宙間プラットフォーム”きぼう”統括コンピューターにして自己開発・自己人格型AI、かぐやと申します。
この端末は皆さまを案内するために用意いたしました遠隔操作型ガイノイドになります。そのままかぐやとお呼びください」
機械らしいカクカクとした動きも澱みもなくカーテシーを決める彼女に面食らう者もいたが、それらを無視してかぐやにきぼうの中を案内させる。
まずはハガネが停泊している宇宙港からだ。
「この第3宇宙港の他に15の宇宙港・造船ドックが存在します。ある程度フレキシブルな対応ができますので、同じドックでシロガネ級から装甲駆逐艦まで建造可能です」
「一度に何隻まで建造できる?」
「優に百隻ほどは。停泊させるだけなら三百は固いですね」
早速船の関係者のアゴが外れているが、これはまだ序の口だろう。
次に着いたのは食糧生産エリアだ。
通路に設けられた窓の外では大量の野菜が規則正しく並べられてすくすくと育っている。
「促成栽培可能な野菜などを中心に生産していますが、家畜類も持ち込めばここで畜産が可能です。収穫できた穀物など長期保存可能なものは物資集積ブロックにて保存しています」
「どのぐらい貯め込んだ?」
「日本帝国を五年はここの備蓄だけで支えられます」
食料生産に関わる連中が目を血走らせて窓にくっついているが、次の説明があるので無理やり引っ張っていく。
「こちらは研究棟になります。といってもマスターが欲しいと言っていた機材が置かれてるだけで、今は何も研究は行われてませんが」
小惑星丸ごと一つを使って作られたそこでは様々な機材と無重力という環境を使った実験が可能だ。
先進国の最新鋭の研究所でも見れない機材などを見た研究者たちが目を血走らせて機材に飛びついている。
「超大型の粒子加速器!?予算がつかないからキロサイズのものなんて作れないと上に却下されたのに!!」
「ナノサイズ観測用の電子顕微鏡っ!?うちにもないものがずらりと置いてある!?一台くれ!!」
「夢にまで見たマルチプル3Dプリンターがこんなにたくさん…!?俺ここに住む!!」
「マスターの許可とってくださいね。では次はこちらです」
火事場の馬鹿力発揮して機材にしがみつく研究者たちを何とか引っぺがし、次のエリアに進む。
「ここから先は軍事エリアになります。軍事物資の生産を行っているエリアです」
元々月奪還のための宇宙基地として用意した代物だ。
当然自前での生産能力も持たせてある。というかそのために鉱山そのものと言っていい小惑星を持ってこさせたんだし。
一辺150kmというとんでもない巨大さだが、基地化されているのは現状その三分の一ほど。
残りは全部資源採掘用の鉱山だ。24時間365日常にここから採掘された金属や各種原材料をもとに物資が製造されている。
採掘が終わった小惑星はくりぬかれた部分を利用して生産工場にしていくわけだ。
「私が出発した10年前の時点でマスターが登録したものと同じ規格の各種消耗品を生産・備蓄していますが、データを更新すればすぐにでもライン変更で新たな物資を量産可能です」
「具体的には?」
「36ミリ弾、推進剤、その他各種爆弾や弾薬などです。今現在も生産は続けられていて、物資集積エリアに備蓄し続けています」
かぐやがタブレットに表示した備蓄量に軍人たちが群がる。
万歳三唱している奴や神に感謝するやつが出てるが案内はまだ終わっていない。ぶん殴って正気を取り戻させる。
「戦術機は?」
「こちらになります」
案内されたのは完成した機体を保管するための格納庫だった。
入った時点では照明が点けられていなかったため見えなかったが、点けられたとたん後ろの連中が絶句する。
整然と並ぶゲシュペンストの群れ。
それがどこまでも果てしなく続いているのだ。
「…何機作ったんだ?」
「2000機ほどです」
今度こそ全員のアゴが外れた。
10年前に登録した設計だから、全部初期型のMk-Ⅱだ。
だがそれでもその性能はいまだ最前線で通用するし、かぐやに最新の設計図とデータを入力すればすぐにでも改修できるはずだ。
何より世界全体で不足していた戦術機が突然2000機も供給されるのだ。現場がもろ手を挙げて歓迎するゲシュペンストが。
「保管できる場所に限りがありますので現在は停止していますが、いつでも生産は再開可能です」
「月産どのくらいいける?」
「完全オートメーション化していますので、月産100機ほどは余裕です」
後でMk-Ⅲのデータ渡しておこう。他の各種最新データも一緒に。
その後もあちこち見回ってそのたび阿鼻叫喚の騒ぎになったが割愛する。野郎の叫びなんぞ聞いても面白くないし。
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一回りした後。
滞在者向けのリラクゼーションエリアにて一息入れることにした。
独立させた小惑星を回転させることで人工重力を発生させているこのエリアは地球上とほぼ変わらない環境を内部に再現し、常に宇宙にいることによる負担を軽減するのが目的だ。
宇宙船という狭い空間の中に居続けるのはそれだけでストレスだし、一定期間ごとに地上に戻ってリハビリしないと体が弱りすぎて重力下で生きることが困難になってしまう。
だがここは地上とほぼ変わらない環境が再現されているので、わざわざ地上に戻らなくてもここで休暇や休息をとるだけでその問題をクリアできるわけだ。
ついでにいちいち地上に降りなくて済むから打ち上げコストも削減できる。
温泉(当然ただの風呂だが)からビーチリゾートまであるから文句を言うやつはまずいないだろう。
とりあえずリゾートの一角で椅子に座って休憩中だ。
ほとんどの奴は驚き疲れてグロッキーになってるし、気の早い奴はここに貯め込まれた物資をどう使うか相談し始めている。
試食の名目でかぐやが出した促成栽培とはいえほぼ天然物の食材と飲み物を涙を流しながら貪っている連中もいるが、ほとんどが軍人なのでどうでもいい。
「かぐや、聞きたいことがある」
「アステロイドベルトの現状、ですね?」
打てば響くように応えてくれる。ベースが俺なだけはある。
「アステロイドベルトには現在、私のコピーAIが残って基地の開発と物資の集積を進めています。定期的に報告を兼ねた小惑星の輸送も行う計画です」
聞いていた全員がこっちを見た。すごい勢いで。
「そ、それはこのレベルの基地がこれからも増える、ということかね!?」
「あくまで鉱山としての小惑星を輸送するだけですので、生産能力の拡張は二の次ですね。一番は継続した生産能力の確保ですから」
結果的に採掘が終了した小惑星を生産工場に改装するから生産能力は増えるが、あくまで主目的は継続した鉱山の確保だ。
この分だとあっという間に備蓄分を食い尽くしてしまいそうだし。
「アステロイドベルトにも基地が建造されている、ということでいいのかね」
「将来の火星侵攻に必要な物資を集積するのが主な役割ですが。いざとなれば通信で小惑星輸送を催促することも可能です」
地球から火星に行くとなれば月に行くよりも大変だ。戦争しに行くとなれば猶更。
だがアステロイドベルトに各種物資や兵器を備蓄できれば、極論地球から行くのは人間だけで済む。
輸送コストは大幅に下がるはずだ。
「何というか、驚き疲れたな。稲郷博士、君は後何枚カードを隠しているのかね?」
「流石に隠し札はこれで全部だよ。構想中の物はいくつかあるけど」
驚き疲れた大使の一人に愚痴られる。結局この人たち来た意味なかったわけだからな。
まあ、すぐにやることあるんだけど。
事前にきぼうのこと話してたら欲の皮突っ張った連中しか集まらなかっただろうからな。最低でもここにいる連中は”異星人との戦端を開いてしまう”という特大のババ引く覚悟があるぐらいにはまともな連中なわけだ。
というわけでちょっと過労死するまで頑張ってもらう。
「で、だ。大使及び軍人の皆様。早急にあんたたちに決めてもらわなきゃいけないことがあるんだが」
「物資の配分かね?」
もっと根本的なことだよ。
「アステロイドベルトの集積基地含めて、全部丸っと百パーセント俺の物なんだが。いくらで誰が買い取るのがいいと思う?」
「「「ゑ?」」」
全員の目が点になる。
徐々に事態が飲み込めたのか、全員の顔が青くなっていく。
そう、ロケットの製造こそ人の手を借りたが。
それに関してはきちんと報酬を払ったし、勝手にロケット上げたことについてもすでに帝国への謝罪と賠償も済んでいる。
つまり、この”きぼう”を物資含めてどうしようが俺の勝手、ということなのだ。
ゲシュペンスト2000機とそれを十二分に賄える物資。帝国を5年は食わせられる食料。宇宙船を百隻同時に建造し三百隻は運用できる港。
当然のことながら俺一人では管理しきれない。かぐやのサポートがあってもだ。
帝国に委託?一国が手に入れればその時点で人類間戦争の開始である。
よって国連預かりで共同管理するしかない、のだが。
これだけの物資、設備を買い取る・借りるとなると一体いくらになるのか。
単独ではアメリカでも破産するんじゃないだろうか。
国連の元共同で出しても相当な額になるだろう。
誰がいくら出す?それでどこまで使わせる?新たにやってくる小惑星の扱いは?
俺から取り上げる、というのは論外だ。結局取り上げた奴とその他の連中で揉めるのは変わらないし。
何よりかぐやが言うことを聞くまい。だいぶ変わってしまったが、こいつのベースは俺なのだ。欲の皮が突っ張ったことをすれば人類見限って外宇宙にでも旅立つだろう。
突然やってきた問題が解決したと思ったら、新たな火種だった。
そして最初に接触した自分たちがそれに対処するのが自然であり、第三次大戦を防ぐために東奔西走することになる。
大使他偉い連中はそのことに気づき、がっくりとうなだれたのだった。
〇理由
九郎「そもそもなんで俺の性的嗜好に合わせる必要があるんだ」
かぐや「当時からすでにマスターは色々こじらせてましたから。再会してもこじらせたままだったら私がお側で全部のお世話するつもりだったんです。おはようからおやすみまで、ついでにシモの世話も。そのためのWナンバーズを素体にしたこのセクシーボディだったんですけど。イヤーよかったです、マスターがちゃんとお嫁さんもらってて。そこまで人間不信こじらせてなくてほっとしました」
九郎「余計なお世話だな!?」
なおWシリーズ(人造人間)製造設備は最重要秘匿扱い(将軍様にも知らせない)となった。
個人で軍隊持てるなんてわかったらその瞬間戦争開始だからね。
〇ペルソナなので
美沙「初めて九郎様とお会いした時、私を見て好悪の感情がすごい勢いで行ったり来たりしていたのですが」
かぐや「性癖にドンピシャリだったのですごい動揺したんですよ。そのあとめんどくさいことに自分では幸せにできないとか思いこんで突き放そうとしたんでしょうけど。
色々こじらせてますからそのまま押しまくって無理矢理幸せにしてあげてください。私も協力します!何せベースはマスターなので性癖から嗜好まで分からないことはありません!」
九郎「かぐやァッ!!」
〇忌まわしき記憶と共に
大使1(この宇宙ステーションを手に入れられれば我が国は大きな優位を得られる…!)
大使2(そのためには何としても他の連中を出し抜かなければ…!)
九郎「実は希望する国にはこいつを丸ごとプレゼントしてもいいかな、と思ってるんだ。
で、どこに”落として”ほしい?」
大使1「皆でしっかり話し合って決めるべきですな!!」
大使2「そうですとも!これは人類の宝なのですから!!」
〇引き取り
「いや、しかしそれは…」
「任務に失敗した挙句、貴重なESP発現体をおしゃかにしたうえでそれが各国にバレた。物理的に首が飛んでもおかしくない大失態だな?どうせ持ち帰っても廃棄するだけなんだろ?今ならそのゴミを俺によこすだけで帝国との遺恨はチャラにできるんだぜ?」
「わ、我々があなたに危害を加えようとした証拠は何もないでしょう?」
「証拠がないならこの先も俺がソ連、ああ間違えた第3計画と距離を置いても問題ないよな?何せ何もなかったんだから」
「…これと引き換えに、手を貸していただけると?」
「Mk-Ⅲの配備先に少し口添えくらいはできるかもな」
「き、今日から、よろしくお願いします…」
「かしこまらなくてもいい、俺を恐れてるのは理解してる。身柄を引き取りはしたが、逃亡防止処置の解除ができ次第美沙の実家に預ける。美沙を優しく迎えてくれた家だ、お前のことも人として扱ってくれるはずだ。
…名前はあるか?」
「ソーラク・ビャーチェノワです」
「…その名前は二度と使うな。これからお前の名は――」