MUV-LUV大戦   作:土井中32

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タグ追加しました!さすがにこれはスパロボに登場してないので。




54話 鋼の咆哮

 

 

帝都襲撃から数ヶ月。

あのテロ事件に端を発する世界規模の大混乱がようやく一段落してきた頃。

 

「大佐、どちらにおられるのですかラウ大佐?」

 

統一中華戦線が駐留する前線基地。

一人の下士官が上官を探し回っていた。

 

「大佐、こちらにおられましたか」

「ああ、シミュレーターで確認をな。何かあったか?」

 

シミュレーター室で訓練に励んでいた男を見つけた下士官が彼に駆け寄り、探していた理由を告げる。

 

「例の機体、先ほど到着しました」

「そうか。わかった、すぐに行く」

 

シミュレーターから降りた男。統一中華戦線大佐、カーウァイ・ラウは下士官の案内のもと、格納庫へ向かう。

 

「ほう、これが」

「確認しました、間違いなくタイプSです」

 

格納庫に運び込まれ、点検を受けている機体。

あのテロで九郎たちを狙った機体。

そして、元々ラウに渡されるはずだった機体だ。

 

コックピット回りは全交換となったが、それ以外は特に問題がなかったため、修理後正当な乗り手のもとに送られてきたのだ。

…杭打機による内部浸透した衝撃の影響がほぼなかったことで、改めてその馬鹿げた耐久性に関係者が閉口したのは余談だが。

 

今回は帝国軍のほか、国連軍からも監視が派遣されており、中抜きなど二度と許さないといういっそ憎しみのこもった眼で監視していた。

一時世界中のタイプSが出撃不可となったのだからさもあらん。

 

「本当に届くとはな。取り止めになってもおかしくないだろうに」

「開発者からの鶴の一声だそうで。”後ろのくだらない暗闘のツケを前線に払わせるな”と。まあ追加でいくつか条件つけられたらしいですが」

「…帝国には足を向けて寝られんな」

 

自分たちを傷つけたテロの片棒を担いだ国に、今もきちんと支援をしてくれている。この機体を送ってきてくれたように。

これ以上恩を仇で返すわけにはいかないと、彼は一層気を引き締めて新しい愛機を見た。

人類を守る盾であり、刃となるはずだった機体。

それが、人類に仇なすために使われた事が、ラウは悲しかった。ましてや、その機体は自分の愛機となるはずだったのだ。上層部に対して食って掛かったのは基地の誰もが知るところだ。

 

「二度と、お前に人は殺させん。俺とともに、人を守るために戦ってくれ」

 

チカッと。

起動していないのに。バイザーの下の目が、応えたように見えた。

 

「カーウァイ・ラウ大佐ですね」

 

点検作業を見ていた彼に、帝国軍の技術者が話しかけてきた。

 

「帝国技術廠の者です。今回タイプSの提供にあたり、見返りとしてある試作機の実戦評価試験を行っていただきたく」

「こちらに拒否権はなさそうだが。現場で部下を預かる身としてよくわからんものに命は預けられんぞ」

「問題ありません。評価していただきたいのは、いわゆる無人機でして」

 

無人機。

その言葉に、ラウはいささか慌てる。

 

「光栄ではあるが、よろしいのか?恥ずかしい限りだが、我が国は」

「承知しています。しかし開発者いわく、この地域でなくばダメなのだと」

 

無人兵器が実用化・量産されれば、前線の人的被害は大幅に減らせる。

同時に、同じ人類に対しても有利に立てる。そう考える上層部の連中が頭に浮かんだため止めようとしたが、ここでないとダメだと技術者は言う。

そんなことを言っている間に、大型のコンテナが運び込まれる。

戦術機サイズのそれが、全部で五個。

 

「無人戦術機ですか?」

「いえ、戦術機とは違う独自規格機だと」

 

ラウが頭を悩ませている間に、コンテナが解放され――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガオオオオォォォォ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁっ!?」

「な、なんだこりゃ!?」

「退避、退避ー!」

 

――それが、飛び出してきた。

力強く地を踏みしめる四肢。

しなやかに振るわれる尻尾。

目に映るものすべてに興味があるのか、右に左に振るわれる頭。

総じて、巨大な獣としか言いようがない。

 

しかし、その体は金属質な輝きを放っていた。

 

「獅子、か?」

「開発コードZDX-00、ライガーゼロと言うそうで」

 

コンテナから飛び出し、格納庫をしきりに見回す巨大な金属の獣達が、彼の新たな部下だった。

 

 

-----------------------------

 

 

「ライガーゼロは無人動物型兵器群、仮称ゾイドシリーズの試作機です」

 

会議室に場を移し、帝国の技術者から説明を受ける。

 

「特殊動力炉を搭載し、学習型AIが採用された動物を模した無人兵器群、それがゾイドシリーズです」

「まず、なぜ動物を模したのです?普通に戦車などを無人化すればいいのでは」

 

共に戦うことになるラウの部下が質問する。

 

「ゾイドシリーズは、ただの兵器ではありません。特殊動力炉”ゾイドコア”は、放射性物質を燃料として動く除去装置でもあるのです」

 

除去装置。

その言葉に、全員が生唾を飲み込む。

 

「つまり、放射能汚染された場所に放てば」

「放射線や汚染された物質をゾイドコアに取り込み浄化。時間はかかりますが無害化することが可能です」

 

中国大陸はBETA大戦初期、侵攻を防ぐため散々核兵器が使われた場所だ。

BETAから取り戻したとしても、戦闘で使われた劣化ウラン弾のこともあり人が住めるようになるのは数千年先だとすら言われている。

それが、大幅に短縮される…?

 

「解せませんな」

 

浮足立つ部下たちをとどめたのは、上司の訝しげな声だった。

 

「それならばテラフォーミング専用の装置としてしまえばいい。何故兵器にしたのです?」

「誠に申し訳ない話なのですが、帝国はあなたたちを信じることができません。特に、指導者たちを」

 

その言葉で、部下たちも暗い顔になる。

 

「自衛する必要がある、と考えたのですな」

「これがあれば核兵器が使い放題、などと考える者が絶対に出ると上は考えたようで。実際の性能はそこまで強力ではありません。大陸を埋め尽くすほどの数があっても、百年単位の時間が必要だと聞いています」

 

人のタイムスケールからするとまだ長いが、それでも十分すごいことだ。

 

「ゾイドコアを24時間、あらゆる敵性体から守るためには無人機が最も適している。加えて既存のライフラインにできるだけ頼らない、長期間無整備でも動けるのが望ましい。

長期間無整備でも動けるのはマシンセルというナノマシンの採用でクリアできましたが、あらゆる環境で変わらないパフォーマンスを発揮する形態を模索した結果」

「動物に行きついたと」

「無人機なので人に寄せる必要がありませんから」

 

そうして開発されたのがゾイドシリーズ、その試作機たるライガーゼロ、というわけだ。

 

「地上移動において安定したパフォーマンスを発揮できる四足歩行。味方との連携をもって目標を仕留める群れとしての習性などから、試作一号機はライオン型となりました」

「無人機なのに習性とか気にしたのか?」

「何をどうやったのか私も知りませんが、ライオンの習性や野生の勘などがプログラミングされてるそうで」

「いつから帝国はびっくり箱になったんだ?」

 

どうりで格納庫内で勝手にフラフラ動き回っているわけである。

最悪の場合既存の命令系統ぶっちぎって野生化することも視野に入れているのだ、あれは。

 

「こっちの言うこと聞くのかあれ?」

「動物に対するしつけと同じですね。基本的には言うこと聞くようにプログラムされていますが、あまりに理不尽なことばかりやらせてると聞かなくなります」

「おもっくそ兵器としては落第じゃねぇか」

 

元がテラフォーミング用とはいえ、兵器として預けられる以上は最低限役に立ってほしいというのが現場の偽らざる本音だ。

 

「その辺はコミュニケーションですよ。信頼があれば向こうも言うこと聞いてくれます」

「次の出撃までに何とかなるか?」

「そこは皆さんの手腕に期待しています」

 

全員が深い溜息を吐いた。

 

 

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いざ実戦、というにはわからないことが多すぎたので、カタログスペックの確認ついでに模擬戦を行うこととなった。

 

ライガーゼロは試作機である故か、運用に人の手が必要な試作装備が盛り込まれていた。

特徴的なのがCAS、チェンジングアーマーシステムと呼ばれる機能だ。

全身の外部装甲を取り換えることで、まったく違う戦い方に対応することができる。生産が始まったゲシュペンストMk-Ⅲによく似たシステムだ。

…今回はアーマーの数をそろえられず、今装備しているので全部らしいが。

 

青い装甲がイエーガーユニット。

全身にダウンフォーススタビライザーと背面に大型ブースターを備えた高機動型だ。

長時間の高速巡行を可能とし、最高速度は陸上兵器としては破格のマッハ1,3に達する。その状態で縦横無尽な機動が可能らしい。

また、この速度での高機動を実現するため高性能なセンサーを装備しており、地上における早期警戒管制の真似事も可能だとか。

直接的な攻撃能力こそ爪と牙と頭部に装備した20ミリバルカン、胴体下部の連装砲と少ないが、地上で音速機動ができるだけで強力な武器になるはずだ。

 

オレンジの装甲を持つシュナイダーユニット。

近接白兵に特化しており、頭部を覆う五本と背中から胴体両脇に展開する一本ずつの、実に7本のレーザーを発振する実体剣を装備する。

頭部には実弾・光学両方を防ぐEシールドが搭載されており、防御力も高い。

半面エネルギーの消耗が激しく、戦闘継続時間が全アーマーで最も短い。扱いの難しい装備だ。

 

緑の装甲はパンツァーユニットだ。

全アーマー中最も重く、機動性も最低。

その代わり圧倒的な火力を身に着けている。

背中にはあのシロガネ級の主砲、衝撃砲を小型化したハイブリッドキャノンを2門装備。

そのほか全身の装甲内に大量のミサイルを内蔵しており、全力発射時にはミサイルで空を覆いつくすほどの弾幕を展開できる。そのうえ高精度のマルチロックシステムも装備しており、全弾を個別に誘導可能だとか。

 

イエーガー二機、シュナイダー二機、パンツァー一機が私のもとに送られてきた新たな部下だ。

タイプSの慣らしも兼ねて、部下と共に彼らと模擬戦を行った。

 

結果は惨憺たるものだった。

突出してきたイエーガーに翻弄されている間に、位置情報を受け取ったパンツァーによる長距離攻撃が襲来。

ミサイルと砲撃で完全に陣形が崩れたところにシュナイダーが突っ込んできて一機ずつ仕留められ、後は完全に乱戦である。

最終的には勝ったものの、生き残ったのは私とタイプSのみ。

他の部下は全員討ち取られてしまった。

 

侮っていたわけではないが、やはり油断があったのだろう。

無人機がここまで見事な連携を行えるとは。

負けた部下たちはシミュレーターに籠りきりになったが、訓練に明け暮れているのだからいい傾向だろう。

あの機械の獅子達も、負けたことで一応は認めてくれたらしい。格納庫で好き勝手に動き回っていたのが、今はお行儀よく並んで待機していた。

前途多難ではある。だがこの困難を乗り越えた先に、確かに光もある。

 

「やって見せようではないか。見ていろBETA共。そして帝国の方々よ」

 

受けた屈辱と大恩、見事に返して見せようではないか。

 

 

 





描写外ですが、兵站や補給関連から中国国籍の人間は排除されました。タイプS再配備の条件として。
企業どころか民間人ですら関わる事を許されず、全て他国か台湾側の人間に任されています。
本来ならとんでもない暴挙ですが、やらかし(人類の切り札と言っていい機体をテロリストに横流し)がひどすぎて誰も抗議出来ませんでした。
民間にすらこのやらかしが周知されていて、大半の人はそりゃ仕方ないと諦めています。
これら全部を中国側が受け入れてようやくタイプSの貸し出しが行われました。
…「貸し出し」です。中国への譲渡ではありません。何かあったらもう言い逃れ出来ません。
帝国しか知りませんが首輪もつけられていていつでも止められるようにされています(システム的な脆弱性を作りたくなくて九郎は嫌がりましたが)。
完全には無くならないでしょうが、横流しなどが多少はマシになることを期待してこの条件となりました。


有人兵器を投入するにはかなり厳しい土地なので、彼らの出番となりました。
カーウァイ・ラウ大佐の懸念通り良からぬことを企む連中もいますが、帝国もそのあたりは織り込み済みだったりします。ゾイドシリーズと帝国の思惑の詳細はこの先の本編にて。


今週の更新は以上です。閑話の方はもう少しお待ちを!

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