MUV-LUV大戦   作:土井中32

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だいぶ遅れましたが閲覧数35万回記念で明日閑話を一つ上げます。
…40万回記念でもありますが。




56話 後悔と決意

 

 

「容態は?」

「体の方に異常はない。ただ眠ってるだけだって」

 

機体とシステムを調べた後、医務室に運ばれた二人のところに来た。

鑑はいまだベッドの上で寝ている。顔色は悪くないようなのでひとまずは安心だ。

 

「なんであんなことになったんだ。システムのスイッチは確かに切ってあったし、あんなことになるものじゃないはずだ…!」

「改めて確認したが確かに切ってあった。それは間違いない」

「じゃあなんで!?」

 

思わず立ち上がって俺に詰め寄る白銀。

言い辛い。だが、話さないわけにはいかない。

 

「昏倒の原因はお前だ、白銀」

「お、れ…?」

「正確には、お前が持ってきてしまった記憶だ」

 

念動力者は、時として同じ念動力者との感応現象を発生させることがある。

互いの過去を見てしまったり、相手の心を感じてしまったり。

T-linkシステムにはそれらを必要以上に行わないセーフティも組み込んでいた。

あの場合は、むしろシステムを起動するべきだったのだ。

 

「念動力者に関する話をしたせいで鑑は自分のテレキネシスαパルスに意識を向けた。たったそれだけで彼女は念動力に目覚めちまったんだ」

 

通常ならあり得ない。

彼女は機械的な増幅なしで念動フィールドを発生させるほどの念動力に、あの場で目覚めたのだ。

あまりに高まり過ぎた念動力を感知したT-linkシステムが彼女の力を抑えるため緊急起動。

システムには停止させた際に念動力者の念動力も抑える機能が組み込まれていたから、緊急停止させた際に彼女の力も強制的に止められたのだ。

 

「だが、停止するまで鑑は同じ念動力者と極めて近い距離にいた」

「…まさか」

「言葉の意味はそういうことだろう。お前の過去を見てしまったんだ」

 

あの短時間で白銀の持っていた自分に関する記憶を目の当たりにし、その内容に耐えられず意識が飛んでしまったのだ。

 

見てしまったのだ。彼女にとって、地獄すら生ぬるい記憶を。

 

「…俺の、せいだ」

 

力なく椅子に腰を落としてしまった白銀が、自分を責める。

 

「俺が、近くにいなければ、こんなことには」

「お前のせいじゃない、責められるべきは俺だ。もっと別の方法で確かめるすべもあった。ものぐさした俺の責任だ」

 

少し考えればその可能性に気づけた。

原作で、彼女は物理法則への干渉を何度か行っている。

 

佐渡島で、BETAを強制的に停止させたり。

桜花作戦で、すっからかんになったエネルギーを瞬時に満タンにしたり。

そもそも空間が不安定だったとはいえ、人間一人分の因果情報を並行世界から集めるなど。

もはや神の所業、と言ってもいいことだ。

 

そして、念動力者も無関係ではない。

 

人知を超えた領域に至った念動力者は、”サイコドライバー”と呼ばれるらしい。

彼らはアカシックレコードへの干渉を可能にし、通常あり得ない現象を起こせる、という話がある。

 

もしも、鑑にその素質が元からあったのだとしたら。

考えてみれば香月が探していた00ユニット候補たちも、能力はともかく結果が突出している、という共通点があった。

あれが念動力、サイコドライバーの片鱗故だったとしたら。

 

そのことに気づけていれば、もっと別の方法があったはずなのに。

 

「香月のことを責められんな、これは」

 

次ガバったら今度こそドタマブチ抜こう、もうそれぐらいの気でいないとまたやらかしかねない。

しかしそんなふうに自虐しても何も好転しない。

起こってしまったことは変えられない。今はこれからどうするかを考えなければ。

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

「武ちゃんのせいじゃ、ないよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

思わずそっちを見る。

 

いつから起きていたのか、鑑が目を開いていた。

目覚める前とは違う、とても理知的で、覚悟を秘めた目で。

 

「純夏!?大丈夫か、どこか痛くないか!」

「痛だだだだだ!?落ちる落ちる武ちゃん!?」

 

白銀が思わず抱きつくが、普段から鍛えてるこいつが手加減なくやればそりゃこうなる。

 

「力抜け白銀。サバ折りにする気か」

「あ、ご、ごめん」

「うう、嬉しいけど痛い…」

 

とりあえず席を外していた医者に診てもらい、問題がないことを確認してもらう。

脳みそ含めて健康体、と太鼓判を押してもらった後、再び席を外してもらう。

ここから先は聞かせられない。

 

「それで?どこまで見たんだ」

「…私と武ちゃんがBETAに捕まったところから、桜花作戦で機能停止するまで。ループさせるために切り取った記憶も少し」

 

ほぼ全部じゃねえか。

あの短時間でそこまで見たのか?

…いや、というより。

 

「今のお前はどっちだ?向こうの鑑か、それとも元々いた鑑か」

「ベースはあくまでこっちの私です。そこに後付けで向こうの私の記憶が付け足された、て感じかな」

「…00ユニットの時の記憶。つまり鑑純夏の視点での記憶、か?」

 

俺からの質問に、彼女はよどみなく答える。

 

「はい。頭脳級から抜き取ったハイヴの構造図なんかも」

「…時間差やバタフライエフェクト考えれば鵜吞みにはできねえが、でかいカードなのは間違いねえな」

 

受け答えが子供のそれではない。

それだけで彼女が因果情報を受け取ったのだと、何よりも雄弁に語っていた。

白銀がループした際に、彼女の因果情報もいっしょに持ってきていた。

それが念動力の共鳴によって受け渡された、ということか?

…白銀と一緒で仮説しかたてられんが。

世界に穴開いて因果のやり取りがなされた、よりは現実的だと思う。というかそうであってほしい。でないと香月が無駄に虐められただけで量子電導脳を否定した意味がなくなってしまう。検証不可なのに。

 

「念動力のほうはどうだ。コントロールできてるのか?」

「よく分かりませんけど、あんな強力なのは今は出せないです。初めてだったから後先考えず吐き出しちゃった、みたいな」

 

要経過観察だが、今すぐどうこうの心配はしなくてよさそうだ。

 

「稲郷さんも、私たちと同じなんですか?」

「少し違う。あの世界の事は知ってるがな」

 

その説明はまた後でもいいだろう。

 

「純夏、ごめんな。俺のせいで」

「さっきも言ったよ、武ちゃんのせいじゃないって」

 

今にも泣きそうな顔で謝る白銀を、今度は鑑がやさしく抱き留める。

 

「むしろうれしいんだ。これで私も武ちゃんの力になれる」

「純夏?」

「ずっと不安だった。私を大切にしてくれるけど、時々すごく怖い顔で、すごく悲しくて苦しそうな顔で考え込んでた武ちゃんの力になれなくて、それがすごく苦しかった。

 

いつか私を置いて、私の手が届かないところへ飛んで行ってしまうんじゃないかって、それがたまらなく怖くて、その理由を話してもらえないことがとても悲しかった。

 

でも、向こうの私の記憶を見てやっとわかった。武ちゃんは私にあんな思いをさせたくなくて、戦おうとしてたんだって。

 

それがすごくうれしくて、すごく腹立たしかった」

 

体を離し、白銀の目を見て、鑑は宣言する。

 

「傷ついてほしくないのは私も同じだよ、武ちゃん。

 

だから、二人で戦おうよ。

 

武ちゃんが私を守って、私が武ちゃんを守る。ついでに地球とみんなも守る、それで万事オールOK!!ね?」

 

楽観が過ぎる。

俺同様にぽかんとした顔をしていたが、やがて白銀は笑い出した。

 

「はは、そうだよな。純夏はこうじゃなきゃな」

「むう。ひょっとして馬鹿にしてる?」

「まさか。これからよろしくな、純夏」

「うん!」

 

改めてお互いを抱き合う二人。話が丸く収まって何よりだが。

 

「美沙か?ブラックのコーヒー持ってきてくれ、大至急」

 

甘すぎて声かけづらいのはどうにかしてくんねえかな。

 

 

-----------------------------

 

 

「さて。万年バカップルの和解と鑑がT-linkシステムのテスターに入る事になったわけだが」

「「万年バカップルて、そんな」」

 

二人して照れてんじゃねえよ。褒めてねえぞ。

 

「鑑の方は親御さんへの説明に緊急対応の必要性から常時モニター用の機材が必要だな。まあ何とかアクセサリーの範囲になるよう小型化するが」

 

街中でいきなり念動フィールドなんか発生されてはたまらん。

コントロールの方もESP発現体である美沙のレクチャーで応用できそうだが、手探りの部分も多い。

きっちりコントロールができるようになるまでここで缶詰にしたいが、俺がやると事案でしかないしな。

 

「とりあえず話つけといたから、今日は煌武院に二人で泊まれ」

「五摂家が民泊扱い」

「むしろ大歓迎だってよ。未来の婿が泊まるとなりゃそうだろうが」

「なにそれわたしきいてない」

「待て純夏。話せばわかる」

「いつも日帰りの通い婿が女連れて泊まるとあって、二人が随分荒れてるらしいぞ?がんばれ白銀」

「ワザと言って楽しんでるなお前!?」

 

ブラックコーヒーでも全然苦み感じなかったぐらい甘ったるい空間にしばらく一緒にいる羽目になったんだ。これぐらいしても罰は当たるまい。

 

「T-linkシステムの実験もしばらく中止だな。一度全部見直して安全性を確保しなきゃ、また同じことが起きかねん」

 

後ろでどったんばったん大騒ぎになってるが無視する。どうせ最後は丸く収まるんだし。

 

「今回はたまたま記憶が付け足される程度で済んだが、次は死に関する因果情報である可能性もあり得る。感応現象だけで死屍累々なんぞにしてたまるか」

「とーぜんだよ!今度はみんなで幸せになるんだから!」

 

顔がボコボコになった白銀の首をつかみながら鑑が宣言する。

…みんなで?

 

「武ちゃんがあんなに傷ついてボロボロになってまで人類の未来を手に入れたのに、武ちゃんが不幸すぎると思わない!?」

「…まあ、確かに。救った後は問答無用で因果レベルにばらけさせられて、最初から世界にはいなかったことになってるし。本人ですら覚えてないってのは救済になるのか?」

 

体よく世界に使われただけ、という見方もできるが。

 

「それでも武ちゃんまた頑張って人類救おうとしてるんだから、今度こそ幸せになってもらわなきゃ帳尻合わないよ!」

「具体的には?」

 

なんとなくわかったが、一応聞いてみる。

 

「武ちゃんのことが好きな皆で武ちゃんと結婚するの!!」

「何言ってんだ純夏!?」

 

振り切ったなー。

 

「私はあっちで武ちゃんと結ばれたけど、皆は結ばれたことすら忘れさせられて、ひたすら戦わせられたんだよ?そうさせた私にはみんなへの罪悪感もあったし、結ばれたからこそこの幸せをみんなで共有したいって思ったの。

 

そして武ちゃんには目いっぱいの幸せを享受してもらいたいの。誰か一人を選ぶんじゃなく、好きな人をいくらでもお嫁さんにして、みんなで幸せになりたいの。

 

皆で武ちゃんを幸せにして、武ちゃんがみんなを幸せにするの」

 

首根っこ両手でつかんで白銀の顔を自分に向けさせ、力強く宣言している鑑。

それでも白銀は無駄な抵抗してるが。

 

「いや、でもみんなと結婚なんて法律的に無理じゃ」

「可能だぞ。武家の人間は重婚できる。近所の篁が正にそうだし」

 

最近嫁さん二人共身籠ったせいで旦那がえらいことになってるけど。

変なマスク被った連中に運ばれてったけど生きてるかな?

 

「武家ならだろ!?俺へいみん」

「崇宰累系じゃん。それでなくても煌武院にでも婿入りすればお前も武家だ」

 

血筋上は特に問題ないしな。

こいつらは知らないが、鑑が正妻でも特に問題ないんだし(●●●●●●●●●●●●●●●)

 

「その場合書類上の正妻は煌武院になるが」

「皆で幸せになれれば問題なし!さっきは殴っちゃったけど御剣さんとそのお姉さんでしょ?だったら武ちゃんのこともこれからお嫁さんになる人も絶対大切にするはずだし!!」

 

真っ青な顔でなおも説得しようとしていた白銀だが、鑑の言葉に頭を垂れた。

 

「私は、これが武ちゃんにとって一番の幸せだと思ったの。

武ちゃんにとっての最高の幸せは、何?」

 

それ以上の幸せとやらが思い浮かばなかったらしい。

笑えよ、白銀。男の夢だぞ?俺はごめんだけど。

 

ニコニコ顔の鑑と涙を呑んで決意したらしい白銀がお泊りの準備している間に、俺もT-linkシステムの再検査の準備に入る。

さっきみたいな簡易じゃなくパーツ単位でばらして見直さなければ。

 

「…話さないと、ダメかな」

 

信じるって決めたんだし、な。

 

 





○恋愛原子核(元祖)
九郎「なんで鑑の奴ボロボロなんだ?」
武「二人と拳を交えて互いの想いを確認したらしい。そんで将来的には207のみんなを中心に俺の嫁同盟なる組織を立ち上げるんだとか」
九郎「よかったじゃねぇか、浮気しても許してもらえるってことだろ?」
武「知らない間にみんな将来の相手決められてんだぞ!?言い訳あるかぁ!!」
九郎「じゃあ彼女たちがどうなってもいいのか?」
武「そんなわけないだろ!あいつらには幸せになってほしいって思ってる!」
九郎「もう答え出てるじゃねぇか。よく知らん他人に託すぐらいなら自分で幸せにしてやれ。幸いこの世界ならできるんだからな」
武「…やっぱ、そうだよな」


○させてもらえるわけがない
九郎「自決用に仕込んでた爆薬と毒薬と拳銃とナイフにワイヤーまでなくなってるんだけど、なんで?」
美沙「ご 自 分 の 胸 に 聞 い て 見 て は ?」(怒)

このあと自決条件増やした事をめちゃくちゃ怒られた。



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